
拘縮の定義、そのリハビリによる治療法の概要について理学療法士が説明します。
拘縮とは?
”拘縮”とは、なんらかの原因により、関節が動かなくなった状態のことを言います。
つまり、関節運動が正常に出現しなくなった関節の状態を拘縮と言います。
関節運動とは?
関節の主要な機能として、関節運動があります。
関節運動を理解しておくことが拘縮や関節可動域制限を理解する上で大切になります。
関節の運動特性は形状や結合状態により下記に分かれます。
- 1軸性の関節
車軸関節、蝶番関節
- 2軸性の関節
顆状関節、楕円関節、鞍関節
- 3軸性の関節
球関節、臼関節
- 多軸関節
平面関節(例:仙腸関節)
例を挙げると、肘関節では、
- 曲げる
- 伸ばす
の二軸性の関節ということになります。
この関節ごとに違う関節運動、これが出現しなくなった状態のことを拘縮あるいは、関節可動域制限と言います。
関節ごとに日本整形外科学会・日本リハビリテーション医学会が定める参考可動域というものがあり、この可動域が出ない関節は何らかの異常があると推測されます。(もちろん年代などによって個人差はあります。)
参考)参考可動域
ちなみに、理学療法士はこの参考可動域を専門学校で覚える勉強をしているはずなので、おおよそ頭に入っています。
この知識を元にリハビリでは関節可動域練習を行います。
軟部組織性の因子による関節可動域制限が拘縮
関節が正常に動かくなる原因には、様々なものがありますが、
詳細はリハビリで重要な「関節可動域制限の因子・原因、エンドフィールの種類」について分かりやすく解説
その中で、軟部組織性の関節可動域制限を一般的には拘縮と呼びます。
軟部組織とは?
軟部組織とは、
- 腱
- 靭帯
- 筋膜
- 皮膚
- 脂肪組織
- 血管
- 横紋筋
- 平滑筋
- 末梢神経組織(神経節と神経線維)
の総称のことです。
これらの組織が何らかの原因で異常を起こしていると拘縮が発生することになります。
拘縮の代表的な原因
- 廃用症候群などの不動によるもの
- 筋緊張の異常な亢進(痙性など)
- 疼痛による長期間の不動によるもの
- 浮腫
- 皮膚組織の短縮(火傷のケロイド、外傷による皮膚組織の瘢痕化など)
- 靭帯損傷後
- 脳卒中後遺症などによる運動麻痺
主にこれらの原因で軟部組織の変性が起きると正常な関節運動が出現しにくくなります。
特に廃用症候群、いわゆる”寝たきりの状態”で拘縮が起きるのはみなさん良くご存じだと思います。
上述のどの原因も、結局は関節が長期間不動になりやすい状態になるため、拘縮が発生しやすくなります。
拘縮があるとなぜ困る?
例えば、立ち上がり動作を行う際に、

この様に足首がしっかりと曲がる(背屈できる)状態でないと、立ち上がり動作自体を行うことが大変難しくなります。
和式便器で用を足す時も足首がしっかりと曲がらないと座れません。
歩行でも、
歩行周期のうち、ターミナルスタンスという時期で、足首がしっかりと曲がらないと、股関節を伸展させてしっかりと足を使って歩くことが難しくなります。
このように、関節がしっかりと動かないと日常生活で行う動作に支障が出てきます。
拘縮により、日常生活の動作に支障が出る場合、療法士はその関節に対してROMを行います。
よって、何が何でも拘縮があるとダメ!というわけでもありません。
- その拘縮によってどんな動作が障害されるのか
- その動作が障害されるとどんな問題があるのか
そこを考えて療法士は拘縮に対してリハビリの中で改善を図っていきます。
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拘縮のリハビリ治療
それでは、リハビリではどのように拘縮の改善を図っていくのでしょうか?
拘縮は基本的に改善が可能です。
リハビリでは関節可動域制限があり、日常生活動作に支障がある場合に、ROM(アールオーエム:Renge Of Motion:関節可動域練習)を行います。
その際には、なぜその関節が拘縮を起こしているのか原因を推測しながら可動域改善を図っていきます。
例えば、筋肉の短縮による拘縮の可能性が高ければ、ストレッチなどで筋肉を伸長します。
参考)詳しいストレッチの方法についてはこちらストレッチとはそもそも何なのか?ストレッチの種類と効果を再確認
多くの関節可動域制限の因子は何種類も重複していることが多いので、見分けるのは非常に難しいですが、リハビリでは、エンドフィールと言われる関節の最終域の抵抗感を感じながらその因子を探っていきます。
これは非常に大切なことです。
なぜなら、骨折などの骨の変形などが原因で関節可動域制限や拘縮が起きている場合、いくら筋肉をストレッチしても、関節を動かしても可動域制限が改善する見込みは無く、観血的手術をする他ないからです。
リハビリ職は、関節を動かしたときの感触などを手が掛かりにしながら、リハビリで改善できる拘縮なのかどうか?それを探りながらROMを行っています。
一方で、骨の変形などにより、徒手的に改善が困難な関節可動域制限を強直と言います。
私達療法士が実習生の頃は、よく拘縮と強直の違いは?などとバイザー(指導する先生)に聞かれたものです。
それくらい紛らわしく、混同しやすいものだということです。
- 拘縮は徒手的に改善が可能な原因による関節可動域制限のこと
- 強直は徒手的に皮膚の外から触るだけでは改善が困難な関節可動域制限のこと
と覚えておくと良いと思います。
拘縮予防の方法
それでは、拘縮を予防するためにはどうすれば良いのでしょうか。
原因のところで述べましたが、後天的な拘縮はほとんどが関節の不動によって発生します。
よって、結局は、各関節を日常生活の中でしっかりと動かすことが最善の予防策になります。
例えば、仰向けでずっと寝ている方は、足関節が底屈方向に拘縮してしまうことが良くあります。

そういった方に、しっかりと立位を取って貰うことで、立位を取る練習だけでなく、自然と足関節は正中位に保持されることになり、足関節の関節可動域訓練となります。
人が座る。
さらに、立って歩いて活動をする。
そういった動作を日常的に行うことで、各関節に必要な可動域は維持されるようにできています。
しかし、廃用症候群の患者さんなどは、動けないから拘縮が起きるのであり、そういった方に運動を毎日しなさいと言ったところであまり現実的ではないでしょう。
自身できちんと関節を毎日動かすことが困難な方の場合、家族さんがROMを療法士から教わるか、療法士によるリハビリを行うことで拘縮を予防することが必要だと思います。
まとめ
拘縮とは、正常な関節運動が出なくなった関節の状態のことを言い、原因は、様々な要因による関節の不動が長期間続いたために起こることがほとんどです。
徒手的に改善が困難なものは、強直と言います。
拘縮を予防するためには、できるだけ日常生活のなかで各関節をしっかりと動かすこと。
それが難しい場合は、他の人が関節を動かし、拘縮を予防していく必要があります。
リハビリでは、拘縮の緩和を図るために、関節を動かしたときの抵抗感などを診ながら原因を探り、ROMを行います。
やみくもに治療を行うのではなく、動作を行う際に支障がある関節の拘縮をターゲットにして改善を図っていきます。
拘縮についてご紹介しました。
リハビリでは基本的な知識になるのでよければ参考にしてみて下さいね。
<参考文献>