
ストレッチの種類と効果について詳しくご紹介しています。
リハビリの臨床でも多用されるストレッチ。そもそも、ストレッチにはどんな種類があり、それそれどんな効果があるのでしょうか。
以下に詳しくご紹介していきます。
ストレッチとは?
ストレッチとは「筋肉を伸張(伸ばす)」ことです。筋肉は筋繊維と言う細い繊維の束でできています。
その繊維はコラーゲン成分を含んでおり、伸縮します。
また、筋肉を解剖学的に見ると、多くの場合骨から骨へ起始し、停止しています。よって、ストレッチとは、「物理的に筋肉の起始と停止を遠ざけて、筋繊維を伸ばすこと」を言います。
※)ここで言う「筋肉」とは骨格筋のことを指します。
なので、「骨盤ストレッチ」など、骨に対してストレッチと言う言葉を使用している場合、正確には正しいストレッチの言葉の使い方ではありません。
ストレッチの種類
ストレッチはその方法によって大きく二種類に分かれます。
- 静的ストレッチ(スタティックストレッチ)
- 動的ストレッチ(ダイナミックストレッチ)
です。
以下に詳しくご紹介していきます。
静的ストレッチ

このような姿勢で少しももの裏(ハムストリングス)が突っ張るような状態(ストレッチされた状態)で静止してストレッチを行うことを「静的ストレッチ」と言います。
お風呂上りなどにすると効果的と言われています。(筋が温浴効果で伸びやすくなっているためです。)
一般的にストレッチと言われる場合、この静的ストレッチを指していることが多いです。
動的ストレッチ
動的ストレッチとは基本的には反動を付けて筋繊維を伸張させるストレッチの方法です。
ラジオ体操第一の中にあるストレッチがこの動的ストレッチです。
少し余談ですが、ラジオ体操は運動する前のウォーミングアップとして凄く理にかなった体操です。
ダイナミックストレッチを行うと良い場面は、
- 運動・スポーツをする前
です。
運動前のウォーミングアップで行うと効果的です。
動的ストレッチの特徴としては、静的ストレッチよりも負荷が高いことが挙げられます。
ストレッチの効果
ストレッチの効果は、上述のストレッチの種類によって異なります。
それぞれ以下にご紹介していきます。
静的ストレッチの効果
静的ストレッチを行うと、
- 各関節の可動域向上
- 身体と心のリラクセーション
- 疲労軽減
- 運動後のクールダウン
が主に得られます。
運動前やスポーツを行う前に静的ストレッチを行うと良いと一昔前は言われていました。
しかし、最近は静的ストレッチは筋緊張を低下させ、筋のリラックスを促す効果もあるため、その直後に激しい運動をするとパフォーマンスが下がってしまうことが報告されています。
効率良くパフォーマンスを発揮するためには、筋肉の緊張がある程度高い状態の方が収縮しやすく、効率が良いのです。
よって運動前に行うべきストレッチは静的ストレッチではなく、動的ストレッチ(ダイナミックストレッチ)の方が適しています。
また、運動前の怪我の予防効果も静的ストレッチにはないという説が主流ですので、スポーツ・運動前に静的ストレッチを行ってもあまり意味がありません。
静的ストレッチは就寝前など、心と体を休める前のリラクセーションとして行うと良いでしょう。
また、運動後に血液循環をあげて疲労物質を代謝させる際にも静的ストレッチは有効です。
静的ストレッチは、習慣的に行うことで始めて本来の良い効果が得られます。筋の柔軟性を高めたり、関節の可動域を上げるためには、運動後に行うだけでなく、日常的に行うことで始めて筋肉の質の器質的変化が望めます。
動的ストレッチの効果
動的ストレッチには、
- 運動による怪我・外傷の予防
- 筋肉の温度を上げるウォーミングアップ効果
があります。
動的ストレッチは、反動を使って体を常に動かしながら筋肉を収縮させたり伸ばしたりしてダイナミックに筋肉の柔軟性を上げていくストレッチになるので、運動前に筋肉のコンディショニングを調節するのに有効とされています。
ストレッチの方法
静的ストレッチと動的ストレッチの具体的な方法について以下にご紹介していきます。
静的ストレッチの方法
例として、下腿三頭筋の静的ストレッチをご紹介しながら、静的ストレッチの方法について述べていきます。
下腿三頭筋とは、いわゆる”ふくらはぎ”の筋肉です。
この筋肉の静的ストレッチを行うには、以下の写真のようにして行います。
いわゆる”アキレス腱伸ばし”ですね。
この時に反動を付けて、体を揺すらない様にして行うと静的ストレッチとなります。
ターゲットとなる筋肉に伸張感、つまり”伸びている感じ”がある状態で体を前に倒していき、下腿三頭筋をストレッチします。
筋肉が伸張されて痛みが出る少し手前で体を倒すのを辞めて、そのまま静止します。静止したまま約30秒から60秒程度止めて、伸張感が薄れてきたらストレッチを辞めます。
伸張感が強すぎて、痛みとして感じる場合は伸ばし過ぎです。そうなると、ストレッチ効果はほとんどありません。
なぜなら、人体には生体の防御反応として、筋が伸張され過ぎると、防御収縮といって、筋肉が不随意的に(無意識に)収縮するからです。
よって、「痛みが強く出る寸前で止めておく」ことが効果的なストレッチの方法になります。
静的ストレッチの適切な時間は?
「ストレッチは何秒やればよいですか?」
とよく当ブログにもお問い合わせを頂きます。
これは「何秒と言いきれない」としか答えようがありません。
なぜなら、人体の筋肉の中には長いもの、太いものもありますし、人によってその太さ、硬さ、伸びやすさが違うため、その状態に合わせてストレッチの時間を柔軟に変えていくしかありません。
私達が臨床でストレッチを行う場合は、筋肉を触ったり、動作の変化を見てストレッチの時間を決定しています。
筋肉に触り慣れていると、ストレッチをして筋肉の緊張が落ちた状態になっていることが触るとすぐに分かります。
しかし、触り慣れていない方がこの方法でストレッチの適切な時間を把握することは難しいと思います。
よって、一応の目安として、30秒から60秒秒程度ストレッチする、と考えておけば良いと思います。
それ位の時間ストレッチをしていれば、伸び過ぎることもないし、逆に伸びないで固まったまま、ということもないと思います。
動的ストレッチの方法
動的ストレッチの方法はラジオ体操を参考にすると良いと思います。
ラジオ体操第一には、以下の様にハムストリングスを動的ストレッチ(ダイナミックストレッチ)する体操があります。
立位から、反動を付けて、勢いよく指先を地面に向けて伸ばしています。
伸ばしたらまた元の立位姿勢に戻ります。
このようなストレッチ方法が動的ストレッチになります。
反動を利用して筋をストレッチするので、静的ストレッチよりもやや負荷調整が難しく、急激に筋が伸張され、痛める可能性もあります。
特にご高齢の方は、反動をゆっくりと行い、急激な筋のストレッチは控えるようにした方が無難だと思います。
逆に、普段から運動やスポーツをしていてある程度筋の柔軟性がある方は、こちらの動的ストレッチの方が適しています。
私も臨床では、やや活動性の高い方には、動的なストレッチ主体で行って頂き、普段寝ていることが多い方には静的ストレッチを少し行って、その後にゆっくりと動的ストレッチを行って頂いています。
動的ストレッチ実施の際の注意点
筋肉は急激に伸長されると伸張反射が出現します。
伸張反射とは、筋がちぎれてしまうことを防ぐために生体に備わった反射です。伸張反射が起きると、筋肉は不随意的に収縮します。膝蓋腱反射もその一つの例です。
参考)深部腱反射って何なの?意義・目的、実施方法と臨床での実際
よって、あまりにも急激な反動を付けて動的ストレッチを行うと伸張反射が出現して、ほとんど効果がないばかりか、怪我にも繋がりかねません。
気持ち良い程度の反動で充分ですので、ゆっくりと”体を温める意識”で体を動かしていく程度の反動で行いましょう。
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ストレッチ効果を最大にする方法
ストレッチの方法は上述の2種類に分類されますが、静的ストレッチを行いながら、等尺性の筋収縮を行うとより筋腱移行部が効果的にストレッチされると言われています。
等尺性収縮とは、
写真のように、筋肉自体は動かさずに筋肉が収縮している状態のことです。(筋肉の長さが変らない=等尺)
具体的には先ほどの下腿三頭筋のストレッチであれば、上述のいわゆる”アキレス腱伸ばし”の姿勢から、
このように下腿三頭筋を伸ばしたまま、反対側の足を地面から浮かすことで、等尺性の収縮を加えより効果的にストレッチできます。(壁などを手で支えて行います。)
この運動は以前の記事、ふくらはぎを鍛えて”キビキビ動く、軽い体”になる!リハビリの現場で行う効果的な下腿三頭筋の筋トレ3種類という記事でご紹介した下腿三頭筋の筋力トレーニングの方法ですが、同時に筋短縮による足関節背屈可動域制限にも有効な運動になります。
まとめ
ストレッチの種類には静的ストレッチと動的ストレッチがあり、場面や目的によって使い分けると効果的です。
静的ストレッチは、運動後や就寝前に行うと良く、
- リラックス効果
- 疲労回復効果(血液循環促進)
があります。
動的ストレッチは運動前などのウォーミングアップに行うと、
- パフォーマンス向上
- 怪我・外傷の予防
が図れます。
ハビリの臨床でも、歩行訓練前など、パフォーマンスを上げたい場合には動的ストレッチをできるだけ取り入れるようにし、リラックス効果や、疲労回復を図りたい場合には静的ストレッチを中心に行っています。
ストレッチは目的に合わせて使い分けるようにすると、より効果的に筋肉のコンディショ二ングを整えることができます。