
脳卒中を発症すると、程度によって差はありますが、半身の運動麻痺、感覚障害、嚥下・構音障害などが出現します。
そのまま放置しておくと、二次障害である筋萎縮、関節拘縮、疼痛などが出現します。
そこで、多くの場合、発症後にリハビリをすることになりますが、一体どの様な流れで、どのくらいの期間リハビリを行うのでしょうか。
脳卒中とは、脳梗塞、脳出血など、脳内の血管の異常により脳細胞が壊死するとを指します。
障害された部位が少ない場合、ほとんど後遺症がみられない場合もありますが、多くの場合、残念ながら後遺症が残ってしまいます。
※)脳卒中の実際のリハビリの内容については脳卒中のガイドラインに基づくリハビリの方法
発症直後 急性期の病院に1か月入院
まず、脳卒中を発症すると、急性期病院に運ばれます。
急性期病院では、MRIなどの検査を行い、脳卒中の状態を詳細に確認し、適切な処置を施します。
多くの場合、発症直後が最も症状が激烈で、意識の混濁、排尿障害などがある場合もあります。
よって、急性期病院では主に全身状態の管理が行われます。
この時にもリハビリは行われる場合が多いですが、せいぜい1日20分程度のところが多いです。
というのは、先ほど申し上げたように、発症直後の全身状態が安定していない方が多いため、積極的に立ったり、歩いたり、麻痺した筋肉を動かすことができないことが多いためです。
急性期病院で入院する期間はおおよそ1か月程度です。
全身状態が安定し、リハビリ(運動)を積極的に行ってもリスクが少ない状態になると、次は回復期病院への転院を勧められます。
症状が極軽度の方はそのまま退院され、自宅に戻られる方も最近は増えています。
発症から1か月以降 回復期病院でリハビリが本格的にスタート
回復期病院ではいわゆるリハビリ病院が多く、積極的に運動をするリハビリが行われます。
大体、1日に3時間程度(2016年現在)、最大約150日(5か月)、重度の場合180日に渡って入院し、リハビリを行います。
1日3時間までで症状に応じて必要なリハビリ(理学・作業・言語)が提供されます。
リハビリでは、自宅復帰を基本的に原則としているため、
- 入浴動作(浴槽を跨ぐ、湯船に浸かる)
- 歩行(屋内外)
- トイレ動作(自分でズボンを下げる、用を足して拭く)
- 洗面動作
- 更衣動作
などありとあらゆる日常生活で必要な動作が行えるかどうかを確認し、必要であれば、動作を行えるように足を鍛えたり、動作自体を工夫してできるようにならないか検討しながら、リハビリが行われます。
理学療法士、作業療法士などのリハビリ専門職は、FIM(Fanctional Indepenndenns Majar:機能的自立度尺度)といわれる指標を使い、評価、改善を目指します。
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平均入院期間はおおよそ3か月
脳卒中の方の最大入院期間150~180日(5~6か月)は国によって決められています。
予後予測として、脳卒中の機能的な回復期間は発症後6か月までが最大と言われており、国もデータをしっかりと取ったうえでこの150~180日という日数を提示してきていると思います。
入院期間が最大150~180日であって、後遺症が軽症で特に自宅に帰っても問題がない方は、2週間程度で退院される方もいます。
逆に、後遺症が重度で、自宅で介助者がいない、もしくは介助者が高齢などで、自宅に帰っても生活が困難である、かといって、諸々の事情で施設などに行けない方の場合は、リハビリ期間最大まで入院し、最大限の回復を図る方もいます。
平均すると、3か月程度回復期病院でリハビリをされる方が多いです。
回復期病院は早期の退院を求められている
しかし、昨今の社会保障費の増大により、病院での入院期間(リハビリ)は短縮傾向にあります。
恐らく、数年経過すると、回復期の平均入院期間は徐々に短くなってくるでしょう。
入院期間が長引くと社会保障費がよりかかってしまうため、国は入院期間をできるだけ短くするように回復期病院に強く要求しています。
実際、あれよあれよと言う間に、思ったより早期に退院する運びになってしまい、「まだ病院に置いてほしいと頼んだのに、病院を追い出された」と訴える患者さんも多いです。
しかし、病院でも自宅に帰って何とか生活できるレベルであると判断して退院させている場合も多く、止む無しの判断である場合がほとんどです。
一昔前は「病院に居たいだけいても良い」という時代があり、その時代には病院に住んでいるような元気な人がたくさんいたとかいないとか・・。
現在の日本の財政状況を考えると仕方ないのかもしれませんね。
発症後4か月以降 多くの方が自宅で訪問リハビリやデイサービスを継続
回復期病院を退院すると、多くの方が自宅で訪問リハビリを受けたり、デイサービス、デイケアに通いながらリハビリを継続しています。
脳卒中発症後は、体を自由に動かすことが困難になることが多いため、自宅で日常生活を送っていても、自然と麻痺側の腕や足を使わないようになることが多く、そういった意味で廃用症候群を予防するためにもリハビリは重要と言われています。
国は財政を圧迫する社会保障費を削減するため、地域や在宅での疾病の療養を活発化させようとしており、「地域包括支援センター」を中心に、在宅でのリハビリが現在(2016年)急速に整備されています。
国の狙いとしては、できるだけ病院に入院する期間を短くし、在宅における訪問リハビリなどで機能的回復を促していくことです。
実際に、回復期病院への締め付け(診療報酬の低下、リハビリ提供時間の制限)も年々厳しくなり、回復期病院の立場は狭くなっていっています。
まとめ
脳卒中を発症すると、
- 急性期病院・・およそ1か月
- 回復期病院・・平均3か月程度(最大5~6か月)
- 退院後の自宅・・・訪問リハビリやデイサービス・デイケアでリハビリを継続
の流れでリハビリを受けていくことになります。
発症してから自宅に帰って来るまではおおよそ4か月程度が最も多く、それ位には機能的な回復も落ち着き、病態の変動が少なくなってきます。
脳卒中は現在の医療技術では完治出来ない病気のため、二次障害を予防する、もしくは少しでも機能的回復を促すために退院してからもずっとリハビリを継続されている方がほとんどです。
焦らずに気長にリハビリを続けていくのが良いのではないでしょうか。