脳卒中片麻痺の予後予測と目標設定で悩む人へ「3分でわかる!二木の分類まとめ」


脳卒中片麻痺の方で、入院中であれば、退院の時期を最終目標到達期間に設定し、予後予測を元に目標設定を行う必要があります。

後輩の療法士の脳卒中の患者へのリハビリプログラムの目標設定を見ると、病前のADLを最終目標にしているか、ただ担当療法士の希望を最終目標にしていることが大変多いです。

 

目標設定に活かせる、予後予測の知識を簡単にわかりやすくまとめてみました。




予後予測の方法はどれがベスト?

脳卒中片麻痺の予後予測の手法として、

◇脳画像から運動麻痺の回復の程度を予測する方法

◇ADLから予後予測する方法

があります。

 

画像診断は私も何回も勉強会に参加しました。

その時はなるほど、と思うのですが、実際に臨床で予後予測に活かそうとすると、患者さんごとに個別性があり過ぎて、何度も画像を診て、経験を重ねて精度を高めることが必要です。

 

つまり、経験を積まないと、精度がかなり低く、ある程度の精度で予後予測ができるようになるまで、目標設定に予後予測の視点が足りないことになります。

 

私達は「動作」の専門家です。

私は画像からではなく、動作から予後予測をする方法をお勧めします。

いくら機能回復が進んでも、リハビリとしては動作が改善しなければ意味がありません。

年齢・動作での予後予測 二木の予後予測

年齢や動作など、私達療法士にとってわかりやすい項目で判断する脳卒中予後予測で有名なのは「二木の予後予測」です。

1982年に発表された文献で、少し古いですが、いまだに現役で臨床で使われています。

参考)脳卒中のリハビリテーション患者の早期自立度予測

年齢別での大まかな予後予測

・80歳以上 運動障害が重度なだけでそれ以外に重大な機能障害が無くても歩行自立不能

・70歳以上 発症時2,3桁の意識障害では、下肢stage4以上で無い限り自立歩行困難

・60歳代  運動障害が重度でもそれ以外に機能障害が無ければ歩行自立

・50歳代  重度運動障害+重度機能障害でも長期間のリハビリで歩行自立

・発症時、Stage4以上なら年齢に関わらずほぼ全員がStage6にまで回復する。Stage1,2なら年齢の影響を受ける。

機能回復の目安

 下肢機能回復の目安

発症から

1ヶ月で 72.6% 

3ヶ月で 94.1% 

4ヶ月で 97.1% 

6ヶ月以降 2.9%

 

上肢の機能回復の目安

発症から

3ヶ月で 92.5%     

6ヶ月以降 5.3%

 

起居動作レベルの回復

発症から

1ヶ月で 37.8% 

3ヶ月で  84.7%

基礎的ADLによる自立歩行獲得の判断

二木の分類では最終的に自立歩行が獲得できるか予測する時に、ADLを4段階に分類して評価します。

全て「しているADL」であることに注意が必要です。

ADLを以下の項目で評価します。

・屋外歩行 

最低限、一人で家の近所を散歩する。装具、杖の使用は問わない。

・屋内歩行 

最低限、一人で日中トイレに行っているかどうか。

・ベッド上生活自立 

ベッド上の起座および座位保持ができることで、車椅子への移乗・操作の可否は問わない。

・全介助

基礎的ADL3項目(食事、尿意の訴えがあるか、寝返り)が全て何らかの介助が必要な状態です。

 

これらを予備知識として、
 

自立歩行不能~屋内歩行自立

◇発症から50日以内の時点で、60歳以上で全介助(食事、尿意の訴え、寝返りに介助を要する状態)

◇発症60日以内の時点で、60歳以上で基礎的ADLの食事、尿意の訴え、寝返りのうち一つしか自立していない。

◇60歳以上、発症前の自立度が屋内歩行以下で、下肢Br.stageⅢ以下の場合 

◇発症3か月までにベッド上生活自立すれば7割が歩行可能だが、ほとんどが屋内歩行に留まる。

 

最終的に歩行自立

 ◇発症後60日以内にベッド上生活が自立(寝返り・起き上がり・座位保持可能)
 

また、歩行能力の機能回復は6ヶ月がプラトーとしています。

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脳卒中発症直後の患者の状態は安定しません。反射の消失、意識レベルの低下など頻繁に認められます。

そこで、二木の予後予測は「機能障害でなく、能力障害で予測を立てる」ことが特徴で、強みです。

 

画像診断はどちらかというと、医者の専門分野に属すると私は思います。

動作の専門家である療法士に向いている予後予測は、能力障害で予後予測する二木の分類である、と言えるのではないでしょうか。

 

また、二木は、機能回復は脳卒中発症後2~3ヶ月までが最大としており、その間に集中的にリハビリを行うことを推奨しています。

そのためにも早期に良くなる患者とそうでない患者を振り分ける必要性があると述べています。

およそ35年前の文献なので、療法士が少なく、手厚いリハビリを患者全員に行えない状態だったため、このような発想になったのだろうと思います。

しかし、2015年現在は療法士も増えて、当時とは少し状況が違うかもしれません。

 

二木は、予後予測を行った上で、最終的に自立歩行不能、または寝たきりになる患者は、積極的なリハビリが不適応なので、家屋改修、家族指導、社会資源の活用など「安全で円満な家庭復帰」に向けて努力する必要性がある、と述べています。

まとめ・・目標設定で最も大切なこと

脳卒中に限らず、その患者さんの将来を考えて目標設定をすることが大切です。

その時に、予後予測の視点を持つことは大変重要で意義のあることだと思います。

 

しかし、画像診断やデータだけに囚われて、「この患者はもう回復しないからリハビリを積極的にしないで、環境調節に重点を置いて関わろう」というのは少し違うと思います。

 

経験を積んだ療法士は、確かに予後予測の精度も高いし、効率的にリハビリを行っていると思います。

 

しかし、私達は予後予測の専門家ではありません。

学校でも習っていないし、独学で勉強しているだけです。

もし、本当に予後予測が正確にできるのであれば、それだけでご飯が食べられる仕事になると思いますよ。

 

勝手に予後を予測したつもりになって、「もう回復しない」、「もうリハビリは必要ない」などと患者さんの人生の今後に関わる重大なことを決めてしまってはいけません。

 

臨床を10年やろうが、20年やろうが、医師でもない私達にそんなことを決める権利はないと思います。

 

 

患者さんが良くなりたいと思ってリハビリをしている、その想いを十分に受け取り、精一杯それに答えようとすることがまず第一にあり、その一つのテクニック・知識として予後予測の知識があります。

あくまで予後予測の知識は”ツール”です。

 

なので、あなたが諦めて、患者さんが一生懸命頑張っている、なんて、悲惨なリハビリにだけはしないで欲しいと思います。

 

発症から6か月がプラトーと言われていても、6ヶ月以降も下肢機能は2.9%回復し、上肢機能は5.3%回復するとあります

 

これを少ないと思って諦めるのか、この数字を追い求めて6か月を過ぎてもリハビリを頑張るのか、それは私達が決めることではないのです。

>>次の記事は「転倒予防の基礎知識はこれを見ればOK!転倒予防ガイドライン・文献の要約」です。

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