
足首の捻挫は非常に多い怪我の一つです。
今回は足首の捻挫とそのリハビリ方法についてご紹介します。
足首の捻挫は特にスポーツで起こりやすく、
ジャンプ系の競技(バスケットなど)の着地
コンタクトスポーツ(ラグビーなど)
で頻発します。
その他にも走りながら急激な方向転換を行う、サッカーなどのフィールド競技にも大変多い怪我です。
「捻挫」ってなに?一体どんな状態?
捻挫は簡単に言うと、何らかのきっかけで足首が本来曲がるべき方向に曲がらず、違う方向に曲がってしまったため、
足首を支えている組織(靭帯・筋肉・骨・関節包など)が過剰に伸ばされたり、重症の場合は切れてしまう状態のことです。
なので、みなさんご存じの「突き指」も捻挫の一種です。
足首は構造上、外側に足をひねるより、内側に足をひねりやすくなっています。

なので、多くの場合、足首を内側にくじいて(内反)捻挫します。
ねじる程度によっては、靭帯だけでなく筋肉が損傷したり、最悪の場合、骨折を併発してしまうこともあります。

捻挫も骨折もかなりの痛みがあり、歩くときに足を満足に使うことができず、いわば「びっこを引いた状態」で歩くことになる場合が多いです。
その時に「ひょっとして骨も折れてる?!」と不安に思うこともあると思います。
捻挫と骨折の違いは、
骨折の場合、
- 全身性ショックや臓器不全が起きる場合もある(全身症状がある)
- 骨の変形がある
ということです。
しかし、全身性の症状が必ずしもある訳ではなく、確実な診断になりません。
なので、見分ける方法は「骨の変形があるかどうか」ということになります。
しかし、骨折にも様々な種類があります。
骨にひびが入っているだけの場合もあり、触ってもほとんど分からない場合もあります。
捻挫の場合は、足首に付着する靭帯の骨部が剥がれる、「はく離骨折」の場合も多いです。
解剖学的な知識に自信があり、触診に慣れた方であれば見分けがつく可能性はありますが、一般的に言ってレントゲンなしで判断するのは困難です。
結論としては、骨折したかも?と言う場合は、できるだけ早く医療機関に受診し、レントゲンを撮ってもらうことをお勧めします。
足首捻挫の症状
足首の捻挫の症状
一次障害
- 内出血
足首周囲の組織と血管が損傷するので、内出血を起こし、周囲の部位が青紫色になってきます。
- 腫脹
内出血するため当該部位が張れてきます。
- 痛み
当然痛みも強く、歩くのが大変になります。
- 関節可動域制限(一次的)
足首が張れと痛みのため動かしにくくなります。
二次障害
捻挫したまま適切な処置がされないと、後遺症(二次障害)が発生する可能性もあります。
- 再発のリスク⤴
損傷した部位の本来の耐久性が失われるため、再び捻挫しやすくなります。「捻挫は癖になる」と言われる由縁です。
- 関節可動域低下(長期的な)
回復後に適切なリハビリを行い、可動域の制限が残ってしまわないようにストレッチや適切に関節を動かす必要があります。
- 筋力低下
捻挫した部位は固定して回復を待つため、その間動かせず、周囲の筋力が低下します。結果、筋肉の足首を安定させる力も低下するため、再発リスクも高くなります。
捻挫の応急処置「RICE」
その場でできる処置では、「RICE」を行います。
外傷性の怪我の炎症や出血を医学的な根拠から抑えるために行われる応急処置の方法です。
それぞれ必要な処置の頭文字を取っており、
R:Rest 休憩・安静にすることです。
捻挫に限らず、損傷した部位を怪我してしばらくは動かさないことで損傷の範囲を最小限に抑えることができます。
また怪我した部位を動かさなくても、全身性の運動を行うと、心拍・脈拍が上昇し、出血が多くなります。
捻挫などの怪我をした直後は、怪我の部位だけを安静にするだけでなく、全身的な運動もできるだけ控えるようにします。
湿布を貼って、冷たい感じがするので冷やしている気になりますが、本当の怪我の冷す処置の仕方としては充分ではありません。
ビニール袋に氷を入れて怪我した部位に当てて冷やしたり、バケツに氷を入れて足首浸すなどの方法できちんと冷やす必要があります。
炎症における、充血による組織細胞のダメージを抑えるために、怪我した部位の血液循環を一時的に抑えます。
冷やし過ぎると逆に循環障害になる可能性があるので注意が必要です。出血が収まってきたら速やかに冷やすのを辞めます。基準は20~30分程度と言われています。
C:compression 圧迫です。
怪我した部位の上部の動脈などを圧迫し、血管を物理的に狭めることで血液の流出を抑えます。この方法も、出血が収まってきたら冷却と同じように循環不全の原因になるので、速やかに圧迫を解除する必要があります。
E:elevation 挙上を意味します。
患部を心臓よりも上にあげることで、出血を抑えることを目的としています。
足部の捻挫の場合、上向きに寝転がって、台などに足を乗せる方法があります。
安静も考慮する必要があるため、自分の力で足を上げているとあまり効果的ではありません。
できるだけ力を入れなくても患部を心臓よりも上にあげるように周囲の環境設定を工夫する必要があります。
捻挫の分類と治療期間の目安
捻挫はその損傷範囲から、重症度が分けられます。
捻挫の重症度分類と完治期間の目安
Ⅰ度・・歩ける。患部を押すと痛む程度。最低2週間程度の安静。
Ⅱ度・・腫れる。痛みがあるが何とか歩ける。捻挫した関節を曲げると痛む。しかし、曲げることは可能。最低2週間~1か月程度の安静。
Ⅲ度・・腫れる。歩けない。痛くて患部の関節を曲げれない。捻挫した部位が普通ではあり得ない方向に曲がっている。(骨折を併発している可能性が高い)。最低1か月以上の安静
Ⅰ度:歩ける
中等度のⅡ度:関節を曲げると痛みが強くある
重度のⅢ度:痛くて歩けない、関節が曲げれない程痛い
と理解しておくとおおよその目安になり、覚えやすいでしょう。
また、軽い捻挫でも最低1週間は患部を安静にしておき、重度の場合は最低1か月以上の治療期間が必要と言われています。
後述しますが、捻挫のリハビリに焦りは禁物です。じっくり時間をかけ過ぎるくらいゆっくりと治していくのが結局は早道です。
足首の捻挫のリハビリは痛い?!
リハビリは上述の二次障害を予防するために行います。
足首の捻挫の場合、損傷した組織をさらに傷める可能性があるため、基本的に痛みを伴う無理な運動やリハビリは行いません。安心して下さい。
リハビリの方法によって、競技生活に早く復帰できるかが決まると言っても過言ではありません。
以下に具体的なリハビリの方法をご紹介します。
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急性期(発症直後~2週間程度)
まず、急性期では、何よりも、痛みと炎症を抑えることを第一優先でリハビリを行います。
固定にサポーターや装具を使ったり、テーピングを使ったりして、損傷部位の回復に妨げにならない様にして回復を待ちます。

また、足首を固定していても足の指の運動やスクワットなど、できる範囲で足首周囲の筋肉・関節を使っておき、できるだけ筋力の低下や関節の柔軟性の低下を抑えて、早く日常・競技生活に戻れるようにします。
急性期のリハビリでは、積極的な運動をするというイメージよりも、急性期を脱した後、
- 痛みが無くなった時にすぐに動ける状態に整えておくこと
- 二次障害をできるだけ抑えるようにすること
をリハビリの目的としています。
なので、「痛いのに無理やり足首を曲げられる」ことはありません。
慢性期(2週間~)
痛みが緩和して、少し足首ば動かせるようにようになってきたら、積極的に足首を動かす運動や関節可動域訓練(拘縮の予防)を行っていきます。
もちろん痛みが出るような激しい運動は、せっかく回復しかけている組織を再度痛めてしまうことになるため、行うべきではありません。
捻挫後の筋トレ
鍛える部位は主に、
下腿三頭筋(ふくらはぎ=足関節底屈筋
前脛骨筋(足先を上げる筋肉)
腓骨筋群(足首を外反させる筋肉)
になります。
図を見て頂くと分かると思いますが、上記の筋肉は全て足関節周囲に付いている筋肉です。
これらの筋肉を鍛えることで、伸びて弱ってしまった靭帯や筋肉を強くし、足関節の固定性(stability)を向上させることで再発を予防します。
下腿三頭筋(ふくらはぎ)を鍛える運動
ヒールライズを行います。簡単に言うと背伸びですね。
写真では立って行っていますが、座って行うとよりソフトな負荷の軽い運動になります。
足先に雑誌を踏んで行ったり、段差を利用して行うことでさらに負荷が強くなります。
前脛骨筋を鍛える運動
普通に足先を上げ下ろしするだけでは、負荷が軽すぎるので、写真のようなセラバンドと呼ばれるゴムを使って負荷量を調節します。
詳しくはつまさきが上がらない人でもできる!前脛骨筋のトレーニング方法
腓骨筋群を鍛える運動
腓骨筋群を鍛える運動は捻挫のリハビリですごく重要です。
捻挫により、靭帯・筋肉などの組織が一度無理やり伸ばされてしまうと、その後足関節の安定性・固定性は緩くなり、再発しやすくなります。
多くの足首の捻挫は前距腓靭帯の損傷で起こります。
足関節の外側にある長短腓骨筋(腓骨筋群)を鍛えることで、足首の内反方向へのストレス耐性を高め、足関節の固定性(stabirity)を効果的に向上させることができます。
結果、捻挫の再発を効果的に予防することができます。
腓骨筋群を鍛える運動には、セラバンド(ゴムバンド)を使ったトレーニング方法もありますが、ここでは家にあるもので簡単にできるトレーニング方法を方法をご紹介します。
まず、踏み台や雑誌などを用意します。(高さは数㎝程度のもので結構です。)
腓骨筋群は足首を外反させる筋肉です。
鍛えたい方の足を、踏み台の端に掛けます。その時に足の外側が少しはみ出すようにします。
少しづつ台に乗せている方の足に体重を乗せていきましょう。
そうすると、足の外側が地面に落ちてしまわないように自然と足の外側(外反方向)に力が入ります。
この時に足関節を外反させる筋肉である腓骨筋群に収縮が入ります。
捻挫をした時の足首に近い関節の状態になるので、恐怖感がある場合もあると思います。
写真のように足を置く位置を内側にして、少しだけ台から足の外側をはみ出させるようにして行うと負荷が少なく、恐怖感が少なくなります。
バランストレーニング
足首の捻挫のリハビリで、足首周りだけを鍛えるだけでは不十分です。
特にスポーツをされる方で、早期の競技復帰を目指している方の場合、上述の筋力訓練と並行してバランストレーニングも取り入れることをおすすめします。
捻挫により足首をしばらく使わずにいると、足首の関節の感覚も低下しています。
足首は走ったりジャンプしたり、スポーツを行う上で大変重要な部位で、この足首の感覚(固有感覚)が悪くなっていると、また簡単に足首をくじいてしまったり(再発)、上手く走ったり、ジャンプしたりすることが以前より難しくなります。
足関節の固有感覚を賦活させ、足首の使い方を体に思い出させる運動には、バランスディスクを使った運動が手軽でおすすめです。
足首の捻挫のリハビリでよくある注意点「焦りは禁物!」
足首捻挫後に一番良くあるのは、「もう治った」と自己判断でリハビリを辞め、競技に無理に戻ってしまうことです。
捻挫は完治する前に動かし過ぎて組織を再び傷つけてしまうと、何度も痛みが出たり、結局長引いてしまいます。
無理して競技に戻ったところで痛みのためパフォーマンスも低下し、満足のいくプレーが出来ません。
焦る気持ちは分かりますが、本当に完治するまでゆっくりと静養されることをおすすめします。
結局それが1番効率が良いです。
じっくりとリハビリに取り組むことで捻挫が癖になるようなことも少ないです。
まとめ
今回は足首の捻挫の症状やリハビリについてご紹介しました。
捻挫はどれだけじっくり治せるかが重要です。焦らず、リハビリをできるだけ根気よく続けて、完治するまで頑張ってください。