
「腰が痛い・・」という悩みを抱えている方は大変多いです。人類の宿命とも言われてる腰痛。今回はそんな腰痛の方におすすめの腰のストレッチの方法をご紹介します。実際に私がリハビリの臨床で行っている方法です。
腰はお尻や背中と繋がっており、腰痛の方はそれらも同時にストレッチすることで、より効果が高まります。
腰の痛みや筋肉の硬さは以下に挙げる腰周りの筋肉が大きく影響しています。
理解を深めるために、まずは、腰周りの筋肉について少し説明していきます。
(もし、あまり興味が無い方は目次をクリックして、「腰のストレッチの方法」をご覧下さい。)
腰の筋肉について
腰方形筋は、腸骨稜と腸腰靭帯から起こり、第12肋骨(肋骨の一番下)に停止しています。
収縮すると、体幹を側屈させる作用があります。
両側の腰方形筋が同時に収縮すると、骨盤を引き上げる作用があります。
運動麻痺などにより、歩くときに足を引きずってしまう方は、この腰方形筋を無意識に過剰に収縮させ、骨盤を挙上させて歩行している方も多いです。
そのような歩き方をしている場合、腰方形筋を腰痛の原因として疑うこともあります。

腹横筋は「天然のコルセット」と言われるように、腰からぐるっと前方までお腹周りを包み込むように肋骨下縁から起こり、腸骨稜に停止しています。
腹圧と密接に関係しており、この筋肉が収縮することで、お腹をひっこめる作用があります。
立った状態で腕を挙げたりするときにも、無意識に収縮し、体幹の固定性を高める働きがあります。
この腹横筋や以下に挙げる腹斜筋群が弱いと腰のストレスに対する耐久性が下がってしまいます。
結果、少しかがむ様な作業をしたり、ちょっと歩くだけで腰が痛くなってしまうこともあります。
腰痛がある方は、この筋肉を意識すると良いです。
腹横筋は「ドローイン」という方法で鍛えることができます。
ドローインのトレーニング方法、体幹トレーニングについては体幹筋の解剖・コアトレーニングの方法

内腹斜筋は体幹を回旋させる作用があります。後述の外腹斜筋の内側にある筋肉です。
主な作用としては体幹の側屈、屈曲、回旋ですが、立位・座位などの抗重力位では、腹横筋と同じように体幹を固定させるために重要な働きをします。
内腹斜筋の表層にあるのが、外腹斜筋です。
内腹斜筋や腹横筋と同じように肋骨から骨盤を走行しており、内腹斜筋とは筋繊維の走行が逆になっています。
よって、体幹回旋時には反対側の内腹斜筋と協働して収縮します。
この筋肉も体幹を固定し、腰の負担を軽くするために重要な役割を果たします。

中殿筋はお尻の筋肉で、腰を支える土台となる場所です。骨盤と大転子に付着しており、立った時に骨盤を水平に保つ働きをします。
中殿筋は人体が抗重力位を取るために非常に重要な筋肉であるにも関わらず、離床では筋力が弱っている方を多くみかけます。
鍛えることで、骨盤のぐらつきを抑え、腰の負担軽減に繋がります。
具体的な方法は中殿筋のストレッチと筋トレの方法
多裂筋は、脊柱の支持と伸展、回旋、側屈を行う筋肉です。
仙骨から腰に付着する多裂筋は5つの筋束からなり、脊柱を支える為に強力で重要な筋肉です。
多裂筋は収縮することで脊柱を伸展させる方向に作用しますが、体幹を伸展させる主動作筋ではなく、主に脊椎同士の固定性を高め、姿勢の保持や支持に大きく影響します。
また、その付着部から、骨盤と脊柱の位置関係にも影響しており、骨盤にある仙腸関節の安定性にも強く関与しています。
腰の筋肉の硬さはこれらの筋肉の弱さや柔軟性の低下により引き起こされている場合もあります。
これらの腰に関係する筋肉を簡単にストレッチする方法をご紹介します。
腰のストレッチの方法
- 座って手軽にできる方法
- 寝て本格的にストレッチする方法
をそれぞれご紹介します。
上述の様に腰に問題がある方は、腰だけでなく、お尻や背中の筋肉も一緒にストレッチすることで効果が高まります。
よって、ここでは、お尻→腰→背中と段階的にストレッチしていく方法でご紹介します。
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座って手軽にできる腰のストレッチ
まずは手軽にできる、座ってできる腰のストレッチの方法をご紹介します。
仕事の合間などでも手軽行えますが、抗重力位のため、体幹筋に僅かですが収縮が入っているため、ストレッチ効果は高くありません。
なので、あくまで、補助的に行うようにされると良いと思います。
お尻のストレッチ
方法
①座って伸ばしたい方の足首を反対側のももの上に乗せます。(この時に股関節に痛みがある方は無理しないで下さい。)
②そのまま体をお辞儀するように倒していくと、中殿筋がストレッチされます。20秒程度伸張感を感じながら伸ばします。
腰が固い方、痛みがある方は中殿筋などお尻の筋肉も固くなっている場合が多いです。
腰をストレッチする前にこの方法で中殿筋を伸ばしておくとスムーズにストレッチできます。
腰のストレッチ
方法
椅子に座り、腰をねじります。肘かけか、背もたれを持つとより腰をねじることができます。
腰から背中のストレッチ
方法
①椅子に座り、クッションや枕などを両腕で抱えます。この時に必ず腰は反らせず、丸めるようにします。
②クッションを左右に動かすように体全体をひねります。10回程度行います。
この方法では腹筋群を収縮させると同時に腰背部を伸ばすことで、相反抑制という効果を狙っています。
腰を伸ばしている感覚はあまりないと思いますが、この相反抑制により腰回りの筋肉は緩みます。

人体の筋肉には、拮抗筋が存在します。主動作筋が収縮する時に、拮抗筋が弛緩するという神経的メカニズムが相反抑制です。
例えば、上腕二頭筋の拮抗筋は上腕三頭筋です。
肘を曲げる場合、主動作筋である上腕二頭筋が収縮すると同時に、反対側にある上腕三頭筋が弛緩します。
この作用を利用して、上腕三頭筋を弛緩させたい場合、上腕二頭筋を意図的に収縮させたりします。
腰の筋肉をほぐしたい場合、腹筋群を収縮させると相対的に腰の筋肉は緩みやすくなります。
寝て行う腰のストレッチ
寝ている姿勢では体幹筋の収縮がほとんどなくなるので、座って行うよりも効果的に腰を伸ばすことができます。
寝る前などに行ってみてはいかがでしょうか。
※全てのストレッチで顔は必ず真上を向いて行って下さい。顔も回旋させると、腰をストレッチする効果が落ちます。
お尻のストレッチ
方法
①仰向けで寝転がり、伸ばしたい方の膝を曲げ、足部を反対側の膝の外側に起きます。
②伸ばしたい方と反対側の手(右足なら左手)で、伸ばしたい方の足の膝を持ち、倒していきます。
この方法では腰部が回旋され、特におしり周囲の筋肉(中殿筋)がストレッチされます。
上述の様に、腰痛がある方はおしり周りも固いことが多いので、この方法でしっかりとほぐします。
腰のストレッチ
方法
②そのまま横に倒していきます。
この方法で腰が回旋し、腰周りの筋肉がストレッチされます。腰などに痛みがある場合は無理に行わず、ゆっくりと行って下さい。
注意点としては、腰をねじることでストレッチ効果があるので、必ず両肩を床に着けたままにして行って下さい。
腰から背中のストレッチ
方法
①仰向けに寝て、両膝を曲げます。
②伸ばしたい方の足の踵を反対側の足の膝の上に乗せます。
③そのまま体幹を回旋させます。
上述のストレッチよりもさらに体幹の上の部分、背中周りをストレッチする方法です。
この時に写真のように腕を伸ばしておくとより効果的です。
同時に腰もしっかりと伸ばされるので、痛みが出ない程度に行って下さい。
こちらの方法は肩が浮いてもストレッチ効果が充分にあるので、あまりに気にしなくても結構です。
まとめ
私も仕事などで腰が痛くなると、昼休みに上述の座ってやるストレッチをしたり、夜寝る前にストレッチをしてから寝ます。
腰の筋肉のコリを溜めず、小まめにストレッチしてほぐしておくことで腰痛が慢性化しにくくなる場合も多いです。
腰痛に限らず、どんな疾患でも言えることですが、症状が重症化する前に対処しておくと、何倍も労力が少なくて済みます。
少し腰が疲れたなーと思う時に普段から今回の記事を参考にぜひ腰のストレッチを試してみて下さいね。