ROMと日常生活動作「実際に臨床でよくある可動域制限と影響する動作」

関節可動域制限,ROM


ROMをしっかり目的を持って行えていますか?ROMって療法士にとって大切な技術です。

実際に臨床でよくある、動作へ影響を与える可動域制限について、まとめてみました。




何のためにROMをするのか?

Renge of Motion、略して「ROM(アールオーエム)」と言われます。

 

定義としては、ストレッチからモビライゼーションまで、広範囲に及びます。

リハビリというと「ROM」と言うぐらい療法士は毎日必ず行っていると思います。

それだけ身近な存在であるだけに、目的意識を持たずに「何となく」行ってしまうことがよくあります。

 

ここで、何のためにROMを行うのか、再確認しておきましょう。

動作への影響を考える

関節可動域に制限があるからといって、必ずしも改善しなければいけないか、と言ったら全然そんなことはありません。

 

私の友人はバスケットを趣味でやっていて、足関節を何回も捻挫し、背屈可動域制限があります。

多少ぎこちない歩容ですが、日常生活に介助は必要ありません。

日常生活に支障がなければ、ROMを行う必要はないです。

 

当たり前ですが“何のためのリハビリをしているのか”が大切です。

理由は人によって様々ですが、大半の方は「日常生活に戻るため、より安全に快適に日常生活が過ごせる」ように、リハビリを受けています。

よって、日常生活動作でどの関節可動域制限が影響してくるか知っていると、より効率的なアプローチができます。

 

 

可動域制限による日常生活動作への影響に関して、様々な文献で述べられています。一度検索して見て下さい。

参考)文献検索の方法「理学療法おすすめの文献検索エンジン」

 

しかし、文献では、例えば、正座では「股関節屈曲65°、内転5°必要」と言われていますが、この角度を得るためにROMを臨床ですることはほぼありません。

データ上は恐らく文献の通りだと思いますが、そのまま覚えているだけではあまり役に立ちません。

他のリハビリに関する知識でもそうですが、使える知識でなければ意味がありません。

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臨床で使えるROMと関係する日常生活動作

臨床で重要な動作は基本動作(寝返り、起き上がり、立ち上がり、立位)と歩行です。

主にそれらの動作に影響を及ぼす関節可動域制限を下記にまとめています。すべて私が臨床で頻繁に遭遇したものばかりですので、使える知識であることは保証します。

”実際に臨床でよくある” 動作に影響を及ぼす関節可動域制限

 

■足趾 伸展 制限(Crow Toe含む)

歩行での立脚後期(TSt)で足趾が伸展できないため、立脚後期(Tst)が消失、または減少します。

その影響で、

  • 歩幅の減少→歩行速度低下、歩行効率の低下(易疲労)が起こる。
  • 重心移動不足・足関節背屈角度低下による下腿三頭筋のストレッチの消失→振出し時のクリアランス低下→つまずきやすくなる。

■足関節 背屈 制限

  • 立ち上がり動作や着座動作困難、又は性急による転倒・圧迫骨折のリスク増大。

足を引きつけることができず、後方重心となるため、起立時には立ち上がり困難、着座時には性急な着座となり、脊椎圧迫骨折が発生する可能性が高くなる。

  • 歩行では立脚後期(TSt)の消失または減少→無理に立脚後期を作った場合は反張膝の出現
  • 背屈制限が0度以上の場合(常に足関節底屈位の状態)→遊脚相の顕著なクリアランス低下→鶏歩の出現

■膝関節 伸展 制限

  • 立位姿勢および歩容の変化→足関節背屈位、股関節屈曲位、骨盤前傾位、腰椎過伸展→腰痛出現頻度増加、後方重心による転倒リスク増大(後方転倒、尻もちを付きやすくなる。)
  • 歩幅の減少→歩行速度低下、歩行効率の低下(易疲労)

■股関節 外転 制限

股関節外転制限が0度以上(立位で股関節正中位よりも内転位になる)で、歩行時にトレンデレンブルグ兆候が出現。(トレンデレンブルグについて詳細は過去記事リハビリに使える!中殿筋のストレッチと筋トレの方法”に記載しています。)

■股関節 伸展 制限

歩行で立脚後期(TSt)の消失または減少により、

  • 歩幅の減少→歩行速度低下、歩行効率の低下(易疲労)
  • 歩行で立脚後期(TSt)荷重量減少による重心移動不足・下腿三頭筋の伸長低下→振出し時のクリアランス低下→つまずきやすくなる。

■股関節 内旋 制限

  • 寝返り動作での骨盤帯回旋の阻害因子

※股関節外旋位で拘縮している場合・・移乗全介助レベルの患者の場合、介助者が介助しにくくなり、離床する機会の減少に繋がる。

上記の可動域制限は主に、廃用症候群や脳卒中後遺症で出現しやすい可動域制限をまとめています。

 

整形疾患で手術をした場合なども、治療としてROMは大きな役割を持ちますが、その場合はその手術の部位や術式、手術の程度によるので一概には言えません。

 

しかし、上記の内容を理解して、「ROMをする意義」を明確に意識し、文献を検索して必要な情報を集めれば、廃用症候群やCVA以外の疾患でも充分応用できます。

まとめ

国の財政圧迫により、リハビリの存在意義が問われている今、ROMをなんとなくやっているだけでは、本当にこの先診療報酬がなくなってしまうかも知れません。

ちゃんと目的をもって、専門家としてなにを目指してROMをしているのか?聞かれたら即答できるくらいは当たり前にならないとダメです。

 

私達専門家の役目は、知識により「患者さんや周りの人より先を見ている、もしくはそれを提示できる」ことだと思います。

参考)これからのリハビリで大切なことは「その先」を提示すること

 

未来を提示して、リハビリの有用性をしっかり説くことができるようにしていきましょう!

>>次の記事は、「ROMの効果を劇的に高める!モビライゼーションの方法とコツ」です。

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