筋萎縮性側索硬化症(ALS)のリハビリの実際

ALSのリハビリ


筋萎縮性側索硬化症(ALS)のリハビリ方法について記載しています。

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筋萎縮性側索硬化症(ALS)の症状

筋萎縮性側索硬化症(以下ALS)は、上位及び下位運動ニューロンが変性してしまう原因不明の神経変性疾患です。進行性で、発症から2~4年程度で全身の骨格筋を侵し、球麻痺や呼吸筋麻痺を起こし、最終的に死に至るとされています。

私も何度か担当させて頂いたことがありますが、他の進行性疾患と比べて特に進行が早いのが特徴で、先月できていた日常生活動作が今月にはできなくなるなど、本人にとって精神的ショックを伴うことが日常的に起こるため、精神的に落ち込みやすく、進行していくことへの心理的なストレスも相当なものがあります。

臨床的には、

  • 球症状
  • 錐体路徴候
  • 前角徴候

が出現します。以下に詳細を記載します。

球症状

球症状では以下のものが出現します。

  • 構音障害
  • 嚥下障害
  • 舌の麻痺及び萎縮
  • 繊維束性攣縮
球症状とは?

球症状の”球”とは”延髄”のことを指します。延髄を外側から見るとボールのように丸い形状をしているので、このような名前がついたと言われています。よって、球麻痺とは延髄麻痺を意味します。臨床的には延髄の運動神経核(Ⅸ、Ⅹ、Ⅻ)の麻痺によって起る症状が球症状と呼ばれます。

錐体路徴候

前角徴候

陰性症状

陰性症状として、

  • 眼球運動障害
  • 膀胱直腸障害
  • 感覚障害
  • 褥瘡
  • 小脳徴候
  • 錐体外路徴候

が挙げられます。

ALSのリハビリテーションとガイドライン

ALSのリハビリでは、

  • 進行が早いこと
  • 緩解する可能性が低いこと

を念頭に置いた関わりが重要となります。すなわち、身体の状態を的確に把握しながら、機能的な予後予測を行いつつ、適切な時期に適切な方法を選択していくことが第一選択となります。

参考までに、日本神経学会、筋萎縮性側索硬化症診療ガイドライン2013より、リハビリテーションの項目を以下に抜粋します。

  • ストレッチ・ROM(関節可動域)維持訓練を行う。(グレードC1)
  • 軽度~中等度の筋力低下の筋に対しては、適度の筋力増強訓練も一時的には有効である。(グレードC1)
  • 過剰な運動負荷は筋力低下を悪化させる可能性がある。(グレードC1)

疾患の進行による一次障害の治療は、残念ながら現在のところ不可能とされています。よって、基本的には、失われた機能を他の方法で代償し、廃用による二次障害を予防することが重要なリハビリの目標になります。

また、病型や病期を医師と連携を取りながら把握し、機能的予後を予測したプログラムを考慮します。注意することは、上述の様に、本人及び家族の精神的なストレスも高いので、充分考慮しながら関わらなければなりません。

疾患の病型と病期を把握(評価)

ALSでは上述の様に病型と病気を把握してリハビリを進めていく必要がありますが、ALSは進行が非常に早く、自然経過の長さが一定ではないため、時間を基準とした予測が立てにくいことが多いため、細心の注意が必要です。

 

ALSの評価には、ALS Functinal Rating Scale-Rvised(ALSFRS-R)が用いられます。

ALSFRS-Rとは?
  • 言語
  • 唾液分泌
  • 嚥下
  • 書字
  • 摂食動作
  • 身の回りの動作
  • 寝床での動作
  • 歩行
  • 階段登り
  • 呼吸

の項目を0.1.2.3.4.の5段階で評価するスケールのことです。詳細は上記リンクへ。

ALSの重症度の評価には、以下の重症度分類が参考になります。

<筋萎縮性側索硬化症の重症度>

  1. 家事、就労はおおむね可能
  2. 家事、就労は困難だが、日常生活はおおむね可能
  3. 自力で食事、排せつ、移動のいずれか1つ以上できず、介助を要する
  4. 呼吸困難、痰の喀出困難あるいは言語障害がある
  5. 気管切開、非経口栄養的摂取(経管栄養、中心静脈栄養など)、人工呼吸

病期の分類

重症度病型の分類のうち、1.2を初期、3.4を中期、5を末期とします。それぞれ介助量を目安にすると理解しやすく、1.2の初期では日常生活動作自立、3.4では一部介助、5では全介助レベルとなります。

以下にそれぞれの時期による基本的なリハビリの目的を記述します。

初期

初期は筋力低下や球症状があってもADLは自立していることが多いです。この時期には主に廃用症候群の予防がリハビリの目的となります。

中期

筋力低下が進行しADLに介助を要するようになります。進行するに従い出現する能力障害に対する代償的アプローチが主になります。

末期

全身性の筋力低下が著明となり、全介助が必要となります。気道のクリーニングやコミュニケーションを維持できる方法などを考え、他の職種と連携したケアが必要になります。

病型の分類

病型は、上位運動ニューロン症状(中枢神経症状)と下位運動ニューロン症状(末梢神経症状)が混在することが多く、著明に出現している症状により、

  • 上肢型(普通型)
  • 下肢型(偽多発神経炎型)
  • 球型(進行性球麻痺型)

に分類し、把握しておきます。

上肢型のリハビリ

上肢型では、

  • 手指の筋力低下
  • 巧緻動作障害
  • 頸部・上部体幹筋力低下
  • 座位・歩行能力低下
  • 基本動作能力低下

の症状が著明となることが多いため、病期により以下のリハビリを行います。

初期
  • 上肢ROM
  • 起居動作練習
  • 歩行練習(歩行量の維持)
  • 関節拘縮予防のためのストレッチ・関節可動域訓練
中期

中期では、

  • 自助具、スプリントの作成・使用
  • アームサスペンション(BFOなど)の使用
  • 代償動作練習や指導
  • 頸椎装具・体幹装具

などの自助具の活用や代償動作も視野に入れたリハビリを行います。

(↓写真は市販のBFOです。)

下肢型のリハビリ

下肢型では、

  • 下肢筋力低下
  • 起立・歩行動作困難

が著明な症状として現れます。

初期
  • 下肢筋力の維持のための運動・ROM
  • 基本動作、歩行練習
中期
  • 各種杖や歩行器、車いすの使用
  • 短下肢装具の使用
球型のリハビリ

球型では、

  • 構音障害
  • 嚥下障害
  • 呼吸筋
  • 腹筋筋力低下
  • 呼吸機能障害
  • 肺痰困難

が著明に出現します。

初期
  • 調理形態の工夫
  • 呼吸法・横隔膜呼吸維持、肺痰法(体位肺痰法、タッピング)などの呼吸リハ

などで症状に対応します。

中期
  • 指文字、パソコン、トーキングエイド、クリアボードなどの活用
  • ポジショニング(障害に対して)
  • 胸郭・体幹のROM維持
  • 人工呼吸器導入

中期になると上記の代償的方法も検討していきます。

全病型の末期

全病型全て末期には寝たきりとなることが多いため、共通した介入方法となります。

  • 体位変換・ポジショニング
  • 座位保持可能な車椅子の工夫・改造
  • 呼吸管理(気管切開人口呼吸器、吸引器など)
  • コミュニケーションの維持(環境制御を含む機器の導入など)

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ALSのリハビリの実際

実際にどのようにしてALSのリハビリを進めていくのか具体的に述べていきます。

筋力低下

筋力維持や増強の運動を前期に行うことも多いですが、継続的な過負荷は過用症候群を招きます。運動後の疼痛や疲労感など考慮しながら無理のない範囲で進めていきます。やがて筋力低下が日常生活動作障害に進行し、立ち上がりができない、歩行が困難などの症状が出現します。

初期はできるだけ効率の良い動作指導や代償動作を用いて、活動性が低下しない様に配慮します。

 

中期になり、代償動作を使っても実用性が低下するようなら、補装具を使うことを検討していきます。

補装具は作成から完成までしばらくの時間を要します。

上述のようにALSは非常に進行が早いので、完成する頃には残存機能が低下していて、装具が使用できない、という可能性もあります。

作成する際には、できるだけ早期に作成することも考えておく必要があります。

歩行が困難になると、車いすを製作したりレンタルしたりすることになります。この際も製作や手配が間に合うように配慮が必要です。

 

下肢の尖足や下垂足に対してはプラスチック製短下肢装具がよく用いられます。

関節可動域の低下

下肢型では、痙性麻痺を下肢に生じる場合、入念に運動やストレッチを行い、可動域を維持するように努めます。上肢型では体幹(脊柱)の可動性維持にも注意が必要です。その他、肩甲骨の可動性の低下、肩関節の拘縮も起きやすいので注意します。

関節可動域訓練は全期間と通して行い、可動域をできるだけ維持できるようにします。

呼吸障害

ALSは呼吸筋の筋力低下による換気障害によるものです。徐々に肺活量が低下し、拘束性換気障害を呈します。血液ガス検査では、PAO2の低下とPACO2の上昇も認められるようになります。

また、腹筋群の筋力低下により喀痰能力も低下します。末期には呼吸器感染症を併発しやすくなります。

これらの症状に対して、初期は腹式呼吸を行い、横隔膜の筋力維持のため、呼吸筋のトレーニングを行います。中期は胸郭の可動性低下も出現し始めるため、胸郭・脊柱の可動域訓練も合わせて行います。

呼吸障害に対しては、最終的には気道のクリーニングや呼吸器の管理の視野に入れた、”緩和ケア”を目的としたチーム医療が必要になります。

コミュニケーション障害

球型だけでなく、他のどの病型も進行すると構音障害が進行し、日常会話が困難となってきます。

構音障害が進行しても、上肢機能が残存している時期であれば、

  • 筆談
  • トーキングエイド
  • パソコンやスマホのテキスト機能
  • 透明文字盤(※こちらのサイトで無料ダウンロードできます。→http://www.byouin.metro.tokyo.jp/tmnh/medical/rehabilitation/page3_3.html)

などを利用してコミュニケーションの維持を図ります。最近ではiPhoneやiPad用でトーキングエイド機能のあるアプリもあるので活用できるかもしれません。

病室で過ごす患者の場合、忘れてはならないのがナースコールを押しやすいセンサーに工夫することです。

コミュニケーションに障害が出始めると、患者の精神的ストレスは非常に熾烈になります。末期に備えて、中期頃よりそれらの機器を導入し、操作に慣れておくことも必要です。

嚥下障害

嚥下障害に関しては食形態や調理方法を工夫する方法がメインになりますが、食を取りやすいポジショニングを検討することもそれと同じくらい重要です。

特に頭と頸部、体幹の角度調節が重要です。

まとめ

ALSに対するリハビリでは、

  • 廃用症候群の予防
  • 能力障害への代償的アプローチ

がメインになります。そして、次第に日常生活でできなくなっていくことが増えてくる患者さんの恐怖感、焦燥感、喪失感などにも充分配慮した関わり方が重要です。

現在では、ALSに対する根源的な治療法もなく、エビデンスのあるリハビリ方法も不十分な状況です。しかし、リハビリの基本方針として、個々の患者の状態を注意深く観察し、適宜評価を行い、その人に合った環境調節や身体機能の維持を図ることは全ての疾患のリハビリに共通していることです。

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