
ギラン・バレー症候群のリハビリ方法についてガイドラインを参考にして記載しています。
ギランバレー症候群とは
ギラン・バレー症候群(Guilan-Barre Syundrome:GBS)は急性発症の
- 運動麻痺
- 深部腱反射の消失
- 髄液の蛋白細胞乖離
を特徴とする急性炎症性 脱髄疾患と定義 されています。10万人に年間約1.15人発症するという稀な症例です。全年齢層に発症し、男女比は3:2で男性に多いとされています。
ギラン・バレー症候群の多くは前駆症状として、
- 上気道感染様の発熱
- 下痢・腹痛
を伴います。先行感染症状とも呼ばれ、GBSに特徴的なものです。
次第に
- 四肢の脱力感
- 感覚異常
- 関節痛
などが続き、やがて
- 四肢麻痺
- 呼吸障害
- 顔面神経麻痺
- 自律神経障害
を呈します。
重症例を除いて多くの場合、運動麻痺は2~4週間で落ち着いてきます。GBSは軽症例では一般的に予後良好ですが、重症になると呼吸不全や全身の麻痺により死に至るケースもあることが報告されています。
1991年のRopperの調査によると、105の症例数(経過観察期間2~30か月)のうち、
- 87人(83%)が回復良好
- 12人(11%)が軽~中等度
- 6人(6%)が重症
となっています。

鼻水、くしゃみ、鼻づまり、喉の痛みなどの症状があらわれることを上気道感染症(かぜ症候群)と言います。それに類似した症状がギラン・バレー症候群の前駆症状として出現します。
GBSの診断
診断には1978年に作成されたNINCDSが用いられます。
※)NINCDSの基準について詳細は「浜松医科大学HP」に記載されています。参考までにリンクを貼っておきます。
GBSの症状
運動麻痺は弛緩性麻痺が主体で、体幹部よりも末梢部が左右対称に侵されます。特に上肢では手内在筋、下肢では前脛骨筋に麻痺が強く出ることが多いです。
感覚障害は、表在感覚は比較的軽度で、深部感覚が侵されることが多いとされています。しびれを伴った異常感覚を訴えことが多いです。
脳神経症状では顔面神経麻痺の症状が主体で、
- 嚥下障害
- 視神経障害
- 聴神経
が侵されることもあります。
自律神経症状では、
- 洞性頻脈
- 不整脈
- 起立性低血圧
- 体温調節の障害
が出現します。
重症例では呼吸障害もあり、
- 横隔神経麻痺
- 呼吸筋麻痺
- 無気肺
を呈し、死に至る可能性もあるとされています。
その他の臨床所見としては、深部腱反射は消失か低下し、病的反射は出現しません。
GBSのリハビリの実際
日本神経学会が作成した、ギラン・バレー症候群・フィッシャー症候群診療ガイドライン2013より一部抜粋します。
1.筋力低下の著しい症例では、関節拘縮予防と良肢位を心がけ、回復期においても筋力負荷の強すぎる訓練は避ける(グレードなし)
2.リハビリテーンは、個々の症例の実情に応じたプログラムが必要であり画一的に勧められるメニューはない(グレードなし)
3.患者の状況に応じた多面的なリハビリテーションプログラムを遂行することにより機能予後のを改善する(グレードC1)
4.個々の患者の状況により異なるが、1〜2年を超える長期の介入が機能予後を改善する(グレードC1)
症例数も少ないため、充分なエビデンスのあるリハビリ方法は確立されていないのが現状です。
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急性期
急性期は運動療法などを実施困難なことも多いため、基本方針としてベッド上でのリハビリを挙げておきます。
- 胸部のストレッチ
- 口すぼめ呼吸
- 腹式呼吸
他には、廃用予防のためにROMと筋力トレーニングを行います。筋力トレーニングは様子観察を行いながら、できればCKCでの運動(座位・立位での運動)を行います。過用性筋力低下を予防するため、翌日以降に疲労が残るような高い負荷の運動療法の実施は慎重に行わなければなりません。
回復期・慢性期
回復期・慢性期では、運動療法を中心に行います。
特に呼吸筋のトレーニングとして、
- 腹部に重りを乗せた腹式呼吸運動
- 吹き戻しを使った呼吸筋トレーニング
- 風船を膨らませる
などを行います。
その他の筋力トレーニングでは、抗重力位のCKC運動をメインに行います。特に上下肢の遠位部の筋力が低下しやすいので、
下肢筋群では足趾を鍛える、タオルギャザー、前脛骨筋を鍛える運動なども効果的です。
また、呼吸と関係の深い胸部筋群、体幹筋を強化する目的コアトレーニングも行われます。床に膝を着いた状態での片膝立ちなども体幹の筋力増強、バランス練習になります。

まとめ
GBSは弛緩性の運動麻痺を主体として、
- 感覚障害
- 呼吸障害
- 脳神経障害
- 自律神経障害
など多彩な症状を呈します。個人差も大きく、評価の際には症状の進行に充分注意する必要があります。
リハビリでは、過用性筋力低下に注意(易疲労性)し、プログラムを立案します。軽い運動から始め、休憩を充分とりながら低負荷を反復することを原則として行います。