
ネットを見ていると巷に溢れる医療情報は、眉唾物が比較的多い印象があります。
国家資格を持つ医療の専門家として、眉唾物の医学的知識と差別化を図るためには何が一番大切でしょうか?根本的には情報収集力と問診のテクニックが大切だと思います。
基本的な技術でありながら、臨床でとても大切な「聞き出す・情報を集める」こと、つまりは「問診」についてポイントを紹介していきます。
なぜ情報収集と問診が重要なのか
良い臨床家とは何か?
それは「患者さんの訴えを正確に聞き出し、判断し、答えを出せる」臨床家です。
つまり、良い臨床家になろうと思うなら、
- 情報を聞き出す→
- 判断する→
- 答えを出す
というステップを踏む必要があります。
しかし、1.の情報を聞き出す時点で間違えてしまっていると、その後のステップを適切に踏むことは絶対にできません。
逆に情報収集・問診で正確な事柄を抽出できていれば、それ以降のステップは比較的容易に進みやすくなります。
これは臨床だけでもなく、日常生活の中のちょっとしたことでも言えることです。
例えば、「明日の天気は晴れるか?」という問題に対して、あなたはどう答えますか?
天気予報を見て、「”明日は晴れ”となっているから晴れだろう・・」
と思いますか?
しかし、それは正解ではありません。
この問題の答えは、「時間・場所によって天候が違うため、何とも言えない」が正解です。
少し意地の悪い問題ですね・・。申し訳ありません。
この例題の場合、「問題提起自体が間違っている」ことが正解に辿り着きにくくしている因子のひとつではないでしょうか。
問題提起自体が間違っている場合、いくら考えても正しい答えに辿り着けません。
よって、問題を正しく提起することが、正しい答えに辿り着くためには必要最低限な要素になります。問題は情報収集・問診によって提起することができます。
よって、適切に情報収集・問診ができなければ、結果(正解)を出すことができないということが言えます。
情報収集・問診のポイント
臨床場面、特にリハビリの現場で行われる問題収集の基本的項目は以下になります。

○診断名
○入院期間・入院日
○社会的背景(※参考:リハビリでのQOL向上のために大切な「ICFの参加」ってどうやって評価するの?)
- 職業
- 住所(自治体によって福祉サービスが異なる)
- 保険の種類(疾病か事故か)
- 家族(構成人数、主介護者、キーパーソン、見舞いの頻度など)
- 家屋状況
○病前の状態(既往も含む)
○病棟での過ごし方(もしくは家での過ごし方)、臥床時間、トイレに行く回数(昼/夜)
○本人及び家族のニーズ・デマンド(※参考:教科書には載っていない,リハビリにおける”デマンド”と”ニード”の詳しい違い)
○服薬状況
- 薬剤名
- 量
- 副作用
- 開始時期による体調の変化(眠け、疼痛の程度、睡眠状況の変化など)
○治療方針・期間
○医学的情報
- 画像
- 血液検査
- 心電図
○転帰先の予測(家に帰れそうか)(※参考:脳卒中片麻痺の回復はどれくらい?どうやって考えるの?予後予測・回復の経過を予測する方法 まとめ)
○関連部門からの情報収集(※参考:リハビリテーションチームの「チーム医療」について)
○禁忌事項の確認
- 安静度
- 荷重制限
- 血圧
- 運動負荷量
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患者さんへの熱意があると自然と情報収集がうまくいく
最低限上記のことを問診し、情報収集しておく必要があります。
実習生の頃に習った内容ばかりですね。しかし、臨床の現場で働いていると、基本を忘れて聞き漏れていることもあります。
特にチーム医療におけるチームでの情報共有はすごく大切です。
私達と違う視点で他職種の方は患者さんの状態を見ています。特に看護士さんは療法士にとってかなり有益な情報を教えてくれることが多いので、普段から仲良くしておくことをお勧めします。
私が臨床で凄いと思う療法士は、みんな情報収集が緻密です。何を聞いてもその患者さんに関することなら的確に答えが返ってきます。患者さんへの熱い想いが伝わってきますよね。
上述の問診事項は基本的なものばかりです。しかし、これを満たせば完璧というわけでもありません。
療法士と患者さん=治療者と患者の関係性を超え、”ヒトとヒト”としての関係性を意識して問診に当たること。
疾患の状態や病名だけでなく、「一人の人として、その人を知ろうとする強い気持ち」
そういったことが臨床において情報収集・問診するにあたって一番大切なことかもしれないと私は常々思っています。