
問題点の抽出に使われる「ICF(国際生活機能分類)」
患者さんをリハビリしていく時に、問題点の抽出を行います。
問題点抽出の方法として、ICIDHとICF(国際生活機能分類)があります。

最近では、障害よりも、その人の活動や参加(社会的な活動)に焦点を当てた、ICFが臨床でよく使われます。
その中で、「参加」の部分は特に非常に重要なのですが、意外と語られることは少ないように思います。
心身機能や身体構造の面の問題点を多く抽出できるセラピストも、こと「参加」に関しては、少し他と毛色の違った知識を必要とするため、追究して言及できる方は少ない印象があります。
今回はICFでの「参加」をリハビリでどう考えていくか?というテーマで記事を書いていきます。
参加制約の評価の重要性
具体的にはどのような支援を行っていけば良いのでしょうか。
参加制約の評価はチームで行う
- 医師
- 看護師
- PT ・OT
ICFの参加制約とそれに影響する因子の評価
- 社会参加を評価する社会参加そのもの
- 社会参加に影響する背景因子(環境因子と個人因子)
①家族・介護者
ICF「参加」制約の評価
以下にICFで参加の項目を検討する時に考慮してくべきことを記載します。
生活の広がりの程度
- ベッドの上
- 部屋の中
- 家屋内
- 庭先
- 自宅の近隣
- 車で移動するような広域圏
社会参加、社会的役割
たとえ、一生懸命リハビリをして、介助を受けることでなんとか移動が可能になっても、目的や行き先がなければ、いずれ閉じこもりがちになるのは目に見えています。
デイケアやデイサービス、地域での集まりなど、要介護レベルとなっても参加可能な場所は最近増えてきています。
患者が家庭や社会で果たしうる役割についても評価しておく必要があります。
自己実現、自己表現など
環境因子について
個別性の強い、環境因子についても深く評価しておくことで、リハビリの結果の質は飛躍的に向上します。
家族・介護者
リハビリテーションでは家族の果たす役割は大変大きいです。特に私が普段行っている訪問リハビリではそれを痛感します。
本人の気持ちを理解し受け止める役割があります。リハビリテーションの可能性を信じ、能動的な援助姿勢を取ります。
介護者としての役割
心理・情緒的支持者としての役割
方針を選択判断する役割
家屋環境・家屋評価

- 一戸建てか
- 集合住宅なら何階かエレベーターの有無
- エレベーターまでの段差の有無
- 賃貸か、持ち家か(改造の可否に関係します。)
- 食事をする部屋は洋室か和室か
- ベッドか布団か
- 床からの起立の必要性
- 寝室・居室は1階か2階か
- トイレは和式から洋式か
- 風呂の構造はどうなっているか
- 道路から建物の入り口までの段差の有無
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生活環境・交通移動手段
本人の自宅周辺の環境や外出手段を評価します。
本人を自宅に閉じこもりがちにさせないためには生活空間や生活圏を地域に広げる必要があります。
家庭復帰より1段高い地域復帰の可能性を探ります。
退院後も医療的・維持的訓練を受けることも必要です。デイケアやデイサービス、、訪問リハビリの必要を検討します。

- 自宅周辺の道の状態
- 散歩、屋外歩行練習をする場所はあるか
- 外出する時の交通手段
- 公共施設へのアクセス方法
- 交通機関は何を利用するか
- 外出時の介護は誰がするか
- 費用はどれくらい必要か
- 身体的に外出の負荷に耐えられるか
地域の社会資源の状態

- 通院往診可能な医療機関
- 維持的訓練場所(デイケア、デイサービス、福祉サンターなど)
- ショートステイなどの入所可能施設
- 在宅でのホームヘルパー、保健師、訪問看護、ボランティアの有無
- 訪問、デイサービスでの入浴サービス
- 居宅介護支援センター
- 自治体の家屋改造費助成制度の有無と程度・要件
復職の条件

- 病前の仕事を遂行する能力
- 配置転換、フレックスタイムなど企業側の配慮の可能性
- 通勤手段、雨天の通勤
- 職場の改造は可能か(手すり、段差解消、車椅子使用可能な環境か)
- 仕事が本人の身体に与える影響
個人因子について
個別性が強く、個人因子に関しての評価は個人情報やプライバシーの問題を多く含んでいます。
それらの取り扱いを熟慮した上で、患者さんと信頼関係を築き、気長にできる範囲で情報を収集する姿勢が必要です。
また、どうしても聞きにくい場合には、チームに相談してみると良い情報を持っている場合があります。
経済条件

- 加入している年金の種類
- 生命保険の障害特約・住宅ローンの有無
- 有給休暇の日数
- 加入していた健康保険に、傷病手当金はあるか
本人の生きがい
今までどんな生活を送り、何を大切にしてきたのか、本人の生きがいを聴取します。目標を設定する上で必須の情報です。
本人の生きがいの評価は、患者さんの人生の評価という側面もあるため、本人の人格や価値観を尊重し、節度を持って行います。
医療従事者特有の価値観の押しつけや、パターン化(信じている宗教に関する反応など)は当然排除して望まなくてはなりません。
疾患を発病し、障害を負ってしまうことは大変なショックです。
タイミングによっては、生きがいを聞き出すことは大変難しいでしょう。
しかし、普段から頻繁にコミュニケーションを取っておけば、何についてよく話をされるかなどの情報である程度の興味や関心、価値観を推測することはできるはずです。
また、患者さんが本当の新たな生きがいを見つけることができるのは、数か月から数年経ってから、というケースも珍しくありません。
待つことも重要なことです。
まとめ
リハビリにおける機能障害・身体構造の評価は、今回ご紹介した、社会参加の評価と比べると割と短時間でできるものが多いです。
自身の経験では、実習生の症例発表を聞いていると、ICFの「参加」の部分が評価できていない場合が多いように思います。
限られた期間で、患者さんと信頼関係を築き、これらの個人情報を直接聴取するのはいかに難しいかという良い参考になります。
そういった場合はチームに頼るのが一番効率よく情報収集ができるでしょう。
実習生の方は、今回の記事を参考に、チームに積極的に質問してみて下さい。症例発表の質が大きく変わると思いますよ。
臨床で私達は、普段から信頼関係を築き、長い目で見て少しづつ患者さんの個別的な問題を解決できるようにしていきたいものです。