脳卒中片麻痺の回復はどれくらい?どうやって考えるの?予後予測・回復の経過を予測する方法 まとめ

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脳梗塞や脳出血などの脳卒中を発症した後、どれくらいの期間でどの程度運動麻痺や生活能力が回復するか、予後予測の方法と回復の経過について詳しくご紹介します。




脳卒中を発症すると、早期にリハビリテーションを行うことが回復を促すことを脳卒中ガイドラインでは謳われています。軽度の症状であれば、入院翌日から座位訓練などが行われることが普通です。

その後の回復の指標として、

  • ①機能障害(上下肢の運動麻痺)
  • ②日常生活動作の活動制限
  • ③自宅退院率

それぞれのレベルでの回復について記していきます。

 

①機能障害では、上下肢の運動麻痺の評価で一般的に用いられているブルンストロ-ムステージ(以下BRS)、

②日常生活動作の活動制限では、ADLの評価尺度であるバーセルインデックス(以下BI)、

③は自宅退院率を焦点に当てて解説します。

 

脳卒中の予後予測や回復の過程は専門家の研究による統計データがありますが、全ての患者さんに固定的に当てはまるものではありません。

リハビリでの訓練の質や量、社会資源の有効な利用などでさらに改善することも多く事実としてあるということを念頭に置いておくべきです。

脳卒中の回復の経過と予後予測をどうやって考えるか?

上記の三つの指標に共通する大まかな回復過程の目安としては、入院時の状態があります。

 

入院時の状態が重症なほど、退院時にも重症にとどまることが多いと言われています。

また、発症直後の早期ほど回復が早く、発症後初めの二か月間に8~9割程度回復するとされています。

 

この知識を基礎として、それぞれ項目ごとの回復の特徴をみていきましょう。

機能障害(上下肢の運動麻痺:ブルンストロ-ムステージ)

脳卒中の機能障害の中心である、上下肢の運動麻痺の回復過程は、先程述べたように、発症時に重症であるほど、回復は緩やかで、時間が経過しても重症のままとどまることが多いとされています。

特に、歩行能力と関係の深い、下肢の機能回復については、入院時にブルンストロームステージⅣ以上であれば、年齢に関わらず、 最終的にブルンストロームステージⅥ(ほぼ正常レベル)にまで回復するとされています。

 

80歳以上ではやや運動麻痺の回復は遅いものの、機能的な麻痺の回復自体は基本的に年齢に影響を受けにくいと言われています。

活動制限(Barthel index:バーセルインデックス)

日常生活動作(ADL)の代表的評価尺度であるバーセルインデックスの合計点(100点満点)を指標として、脳卒中の回復を見てみると、やはり、入院時に重症例ほど退院時も重症で、早期ほど回復が良く、2か月(8週間)で8~9割回復します。

 

ブルンストロームでの機能的回復との違いは、年齢の影響がみられる点です。

入院時にバーセルインデックスが50未満の群で年齢の影響が著明にみられ、60歳未満で回復は良好で、80歳以上で回復は不良となっています。

入院時4週までにバーセルインデックスが25以上になった患者さんの、84.8%は退院時に75以上(ほぼ自立レベル)に達するというデータがあります。

Barthel index(バーセルインデックス)ってなに?

 

日常生活動作の内、以下の10項目を評価します。

  • ①食事
  • ②車椅子・ベッド間の移乗
  • ③整容動作
  • ④トイレ動作
  • ⑤入浴
  • ⑥歩行・車椅子の移動
  • ⑦階段昇降
  • ⑧更衣動作
  • ⑨排便コントロール
  • ⑩排尿コントロール

「できるADL(最大努力のADL)」を評価します。部分介助と自立で分けられています。

0点、5点、10点、15点と5点刻みで、項目によって異なりますが、3段階評価で、移動動作、移乗動作は配点が高くなっています。

基準に満たない場合は0点(最低点)で、最高点は100点ですが、100点でも社会生活を営めることを意味するものではありません。排尿と排便が重要視されており、別々に評価されているところも特徴です。

点数の目安:60点以上→介助量が少ない、40点以下→介助量が多い、20点以下→全介助レベル

自宅退院率

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発症後30日以内に入院した脳卒中患者126人を調査したところ、全体では78%の患者さんが自宅に退院できたとされています。

 

しかし、障害の重さにより、自宅退院率は全く異なってきます。

ADLがほぼ自立している、BIで80点以上の患者さんであれば、94~97%の患者さんが自宅退院しています。

BIが20点以下の全介助レベルの方の場合、45%と半分以下の自宅退院率となっています。

 

BIが1点上がるごとに1.36倍、介助できる家族の数が1人増えるごとに1.84倍自宅退院率の確率が増える、と言われています。

 

BIを使って、入院時の情報で退院先は7~8割程度予測可能と言われています。

 

しかし、私は以前回復期の病院で働いており、これらの知識を元に予後予測をしたりしていましたが、私たちの想像を超えて回復が早く、見事自宅退院された患者さんもたくさん知っています。

 

これらの情報は、あくまで”予想”であるということを肝に銘じておくことが重要です。

歩行自立の予後予測

数か月のリハビリでの練習後に歩行が自立するかどうかは患者さんにとっても、周りの関係者にとっても大変重要です。

臨床で、「私は歩けるようになるんでしょうか?」と患者さんに聞かれないことはほとんどないくらいです。

 

 

歩行の自立の予後予測でも、基本的には、

  • 入院時に重症であれば、退院時にも重症であること
  • 初期に回復が早いものほどその後の回復も良好

という基本的事実に基づいて判断していきます。

 

歩行自立の予後予測の基準として、二木の分類(最終自立度予測基準)が非常に優秀です。

 

二木の予後予測の特徴は、

  • ①活動制限を重視
  • ②年齢・機能障害・活動制限を組み合わせて精度を高めていること
  • ③入院時だけでなく、2週間、1か月の期間で再評価を行うこと。入院時で7割、2週間で8割、1か月で9割の患者の予後予測が可能

です。

二木の予後予測についての詳細は、こちらの記事にまとめています。

 3分でわかる!二木の予後予測まとめ

病変部位による予後の特徴

病巣や病型、障害の診断により予後に特徴があるものも存在します。

 

回復が良いとされているものには、

  • 運動障害が軽く、意識障害が中等度でやがて回復する疾患
  • 小脳病変による失調症

逆に回復が遅い、予後不良なものとして、

  • 多発病変や両側障害
  • 病前からのADL障害

があります。

 

だたし、これらにも当然、重症から軽症までレベルの差があり、それによって一概に断定できるものではありません。あくまで、参考や加味する程度にして、二木の分類などを優先させて考えることが基本です。

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意識障害が強い病変

急性期に入院する患者の内、意識清明な患者は約1/4、意識が一桁が半数です。

急性期に2桁以上の意識障害があれば、運動障害も重度である場合が多く、全介助に留まる可能性が高いです。

小脳病変による失調症

小脳出血や梗塞の例では、めまいや嘔吐、吐き気を伴うものが多いです。それらは早期リハビリの重大な阻害因子となります。

症例によっては1か月以上も続くこともあり、その場合、リハビリが満足に行えないため、回復が遅くみえることもあります。

 

しかし、これらの症状は、最終的にはほとんど消失し、失調症も長期的には予後が良いことで知られています。

運動失調症状を呈することが多い脳幹病変でも、ワレンベルグ症候群では、感覚障害は残る場合が多いですが、失調症は

改善し、運動機能も回復することが多いとされています。

多発病変や両側障害

明らかに麻痺が両側にみられる場合、予後は不良となることはお分かり頂けると思います。

しかし、症例によっては、両側の麻痺が明らかでなく、体幹機能やバランスが著しく悪い多発性脳梗塞の場合も、予後不良となります。

 

これを理解するのに、イメージとしては乳児が参考になります。

乳幼児は両側に明らかな麻痺が無い場合でも、体幹の機能が未発達のため、日常生活で行える動作はかなり限定的です。

何かに掴まらないと立つことができませんし、歩いてもすぐに転んでしまいます。

 

また、気が付いたら動けなくなって寝たきりになっていた症例の中には、多発性脳梗塞による両側障害と廃用症候群が入り混じっていることも多いです。私の経験から言ってもそういう場合が非常に多かったです。

入院する前からのADL制限

入院前から歩行するのがやっと、という方が脳卒中を発症した場合、予後は不良となりやすいのは当然と言えます。

入院前の患者さんの状態は家族さんから聴取する場合も多いですが、「年のせい」として、屋外にほとんど出ていなかった患者さんでも「元気でした」と答える方も多いです。

 

入院時に、病前の状態を簡単に聞くだけでなく、

  • 生活範囲(外にどの程度の頻度、どんな状態で外出していたか)
  • 入浴・排せつ動作の自立の程度

などを詳細に確認しておくことをおすすめします。

まとめ

リハビリ職はリハビリの計画を立てる際に、予後をある程度予測しておくことは非常に重要です。

また、患者さんや家族さんにとっても、どれくらい回復する可能性があるのか、把握しておくとその後の計画も立てやすく、有意義でしょう。

 

関係する医療従事者によっては、予後を曖昧に考えている人も多いので、「予後や回復はおおよそ予想が立てられるもの」という事実を、知識を元に伝え、周りの協力を得ながらリハビリを考慮し、計画を立てておくことは非常に重要だと思います。

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