線維筋痛症(FM)のリハビリと評価

繊維筋痛症のリハビリ


繊維筋痛症のリハビリの方法について記載しています。




線維筋痛症とは

線維筋痛症(Fibromyalgia:FM)は、全身の筋骨格系に慢性的、持続的な痛みが生じる疾患です。

  • 関節のこわばり
  • 不眠
  • 疲労感
  • 抑うつ

などの症状も随伴し、原因不明の症候群です。

不眠は約90%の繊維筋痛症の患者にみられます。入眠しにくいことに加え、体位変換時に全身に疼痛があるため、睡眠を妨げます。特に眠りの浅いすっきりしない睡眠障害がFMのと特徴です。

抑うつは不定愁訴を訴えるFM患者の中でも代表的なものです。痛みの訴えが周りの人に理解されないまま長期に及び、次第に不安が強まり、抑うつ傾向になりやすいと言われています。

有病率は人口の約1.7%、患者数は200万人。全体の約75%以上が女性で、特に20~60歳代中高年の発症が高いと言われています。

線維筋痛症の症状

繊維筋痛症のリハビリ

FMの症状の特徴は「痛み」です。安静にしていても痛みが強く、どこに触れても、何をしても全身に痛みがあります。日々習慣的な痛みが慢性的に続くため、筋骨格系の運動機能が低下し、日常生活動作もそれに伴い阻害されます。

多くの場合、痛みの訴えは激烈で、

  • 車椅子の肘かけに腕を置いているだけで痛い
  • 携帯電話のボタンも押せない
  • 首を回すと激痛が走る

などの訴えがあります。

痛みは身体の広範囲に及びます。ご存じの通り、痛みは自覚的なものなので、セラピストは患者の訴える言葉に注意深く耳を傾け、痛みの程度と質、種類を精査していきます。

FMの痛みの特徴
  • 時に灼熱痛、電撃痛のように激しい痛み
  • 痛みと掃除に不快で感覚を失う(異常感覚)
  • 軽く触れるだけでも痛い
  • 痛み刺激が無くなった後でも痛みが持続する
  • 痛みが痛みを呼び、刺激を繰り返すと痛みが強くなる
  • 後頭部、頸部、肩、腰の痛み、眼痛、胸痛、腹痛、四肢の痛みなど範囲は全身に及ぶ
  • 鎮痛剤などの薬物やマッサージ、牽引などの理学療法でも改善いないことも多い

繊維筋痛症の診断

症状を診断するために、圧痛点(Tender point)を確認します。

圧痛点は、

  1. 身体の広範囲な痛みが最低3か月以上持続していること
  2. 特定の圧痛点18か所のうち11か所に圧痛が認められること

の2つの基準を満たしている必要があります。

 

FMの診断に用いる圧痛点は18か所あります。

  1. 後頭部・後頭下筋腱付着部
  2. 下部頸椎・第5~7頸椎間の前方
  3. 僧帽筋上縁の中央部
  4. 棘上筋・肩甲骨棘部の上
  5. 第2肋骨と肋軟骨結合部のすぐ外側
  6. 肘外側上顆から2㎝遠位
  7. 臀部の上外側1/4部、中殿筋部
  8. 大転子突起の後部
  9. 膝関節裂隙近位

圧痛点,前

圧痛点,後ろ

これらの部位を、左右両方とも上の部位から順序良く、拇趾指腹で垂直方向に圧迫していきます。このうち11か所以上に圧痛が認められれば陽性となります。

参考)米国リウマチ学会

線維筋痛症のリハビリ

まず、その特徴的な痛みに関して訴えを聴きます。身体の圧痛点を調べ、運動機能障害を評価していきます。

疼痛抑制のために薬物療法がおこなわれることが多いため、その中で、理学療法では関節可動域練習、ストレッチ、歩行練習などその人個人の症状に合わせたプログラムを立案します。

評価

FMの評価では、疼痛の評価が重要となります。また、それに伴うQOLの障害の程度を総合的に評価します。

Fibromyalgia impact questionnaire(FIQ)と痛みの評価(VAS・face scale)

全身に痛みの訴えがあるため、

  • 箸が使えない
  • お茶碗が持てない
  • 起き上がれない
  • 歩けない

などの日常的な動作の広範囲が著しく妨げられ、生活の質(QOL)の低下も大きな問題となります。

そこで、多岐にわたる痛みの症状を総合的に評価できる機能評価法として、Fibromyalgia impact questionnaire(FIQ)

があります。

<機能評価質問票 Fibromyalgia impact questionnaire(FIQ)>

1.運動機能障害 評価

  • 買い物
  • 洗濯(洗濯機使用)
  • 食事の用意
  • 食器手洗い
  • 掃除(掃除機使用)
  • 寝具の交換
  • 数百メートルの歩行
  • 友人や親せき宅訪問
  • 庭仕事
  • 車の運転

2.気分の良さ

・・最近1週間で気分が良いと感じたのは何日だったか?(1~7日の間で解答)

3.仕事(家事を含む)を休む:最近1週間で繊維筋痛症のため仕事を何日休んだか?

・・最近1週間で線維筋痛症のために仕事を何日休んだか?(1~5日の間で解答)

4.線維筋痛症の症状はどの程度仕事(家事)に影響をきたしたか?

5.痛みの程度

6.疲労の程度

7.朝の目覚め感

8.こわばりの程度

9.不安の程度

10.憂鬱の程度

FIQでは、最近の1週間の生活状態について質問し、自己記入にて行います。

項目は10項目、総合得点は100点で、点数が高いほど状態が悪いということになります。

設問1のみ、

  1. 常にできた(0点)
  2. だいたいできた(1点)
  3. 時々できた(2点)
  4. 全くできなかった(3点)

の4段階で評価します。

4項目目以降は、問題のない状態を0点とし、最悪の状態を10点として評価します。

 

その他、痛みの評価として、

  • visual analog scale(VAS)

ビジュアルアナログスケール

  • face scale

facescale

が簡便で有用です。

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繊維筋痛症のリハビリ

原因不明の疾患のため、痛みに対しては多彩な薬物療法がおこなわれます。

薬物療法で痛みを抑えながら並行して運動療法を行い、運動機能の維持やできるだけ自立した生活を送るため、個々の患者の状態を注意深く観察しながらそれぞれに合ったプログラムを立案します。

運動療法

心肺機能の維持、全身持久力低下を防止するため有酸素運動が勧められます。有酸素運動は比較的負荷が少なく、全身持久力を維持・強化することができます。

方法としては、

  • 歩行練習(その人の体力に応じた時間を設定し、その時間歩行するなど)
  • トレッドミル
  • 自転車エルゴメーター
  • 階段の昇降運動

などがあります。

筋力増強

股・膝・足関節の筋力の低下防止のために筋力増強運動を行います。

重錘や徒手的な負荷を利用して、等尺性や等張性の運動を行い、ゆっくりと関節を最大可動域まで動かします。

肩関節の内旋・外旋運動・・特に肩甲上腕関節の内旋と外旋運動を行います。

ストレッチ

  • 顔面
  • 体幹
  • 頸部
  • 上肢
  • 下肢

の関節の可動性を維持するために関節周囲の軟部組織の柔軟性と筋の伸張を行います。

教育的指導

線維筋痛症に関する認識を高め、患者の恐怖感、心理的社会的問題を解決するために教育的な指導を行います。家族や友人にもできるだけ参加して頂き、リハビリ職以外の専門職(リハビリテーションチーム)と連携を行いながら、指導を行います。

理学・作業療法士は運動療法や自宅での生活動作の方法について一緒に考え、管理栄養士は食事の内容について説明します。

まとめ

線維筋痛症は原因不明の疾患ですが、痛みが強くでることが特徴です。

治療・リハビリでは慢性化しやすい疼痛のための薬物療法だけでけでなく、生活動作・QOLを向上させるためのプログラムをチームで連携して考慮します。痛みの訴えは激烈な場合が多く、精神的ストレスの緩和も充分考慮してリハビリを実施していく必用があります。

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