
急に激しい運動をすると、筋肉が痛くなる「筋肉痛」になります。では、筋肉痛とは一体どんな状態のことでしょうか。
原因を知ったうえで、どんなことをすると筋肉痛になりやすいのか知っておくと筋肉痛をある程度コントロールすることができます。
また、よく「歳を取ると遅れて筋肉痛が来る」と言われていますが本当でしょうか?それはなぜでしょうか?
筋肉痛の原因
筋肉は筋繊維により構成されています。
この筋繊維は糸の様な繊維でできており、これが束になって筋肉を構成しています。
筋繊維1本の太さは(0.01~0.15㎜)。
髪の毛の太さが0.08㎜といわれているので、それよりもかなり細いですね。意外と脆いことが理解できると思います。
運動をすると、この筋繊維が束になって収縮し、人体を効率良く動かし、運動課題を遂行します。
しかし、この時の筋繊維の収縮が限界を超えて強い力で行われると、筋繊維が損傷し、ダメージを受けてしまいます。分かりやすく言うと、筋繊維がちぎれてしまうのです。

これがいわゆる筋肉痛の原因となる、筋繊維の損傷です。
つまり、目には見えないので何となく分かりにくいのですが、「筋肉の繊維がちぎれて怪我をしている状態」が筋肉痛です。
どんな時に筋肉痛になりやすい?
筋肉が収縮する負荷に筋繊維が耐えられないと損傷し、筋肉痛になります。
その損傷の程度は以下の因子に影響を受けます。
- 運動する方法(筋肉の収縮様式)
- 普段運動をしているか?(筋繊維の毛細血管の状態)
- 運動の速さ(速筋と遅筋)
順番に説明していきます。
運動する方法(筋肉の収縮様式)
筋肉が収縮する様式には、
- 等尺性収縮
- 遠心性収縮
- 求心性収縮
があります。
この中で、最も負荷が高くなり、筋繊維が損傷しやすい(筋肉痛になりやすい)のが、遠心性収縮です。
それぞれの筋肉の収縮様式について、上腕二頭筋を例に説明していきます。

等尺性収縮
等尺性収縮とは、筋肉の長さが変わらずに収縮している状態です。
等尺=等しい長さ、の通り、写真のようにダンベルを持っているだけで、腕が重みに負けて肘が伸びてしまわない様に筋肉が収縮しています。
この状態が上腕二頭筋が等尺性収縮している状態です。
リハビリでは等尺性収縮を用いて、例えば関節を動かすと痛みがあるような方の筋トレを行ったりします。
代表的なトレーニングが変形性膝関節症の方のパテラセッティングです。
遠心性収縮
遠心性収縮は、筋肉が伸ばされながら収縮する様式のことです。
ダンベルの例で言えば、肘をゆっくり伸ばしてダンベルを降ろすような運動です。
写真の状態の時に上腕二頭筋は遠心性収縮を行っています。
この時、他の収縮様式よりも筋肉への負荷は最大となり、最も筋肉痛が生じやすいと言えます。
ダンベルで腕を鍛えたいなら、このような降ろす動作の時ほどしっかりと筋肉の収縮を意識して行うべきです。
日常生活の動作では、
- かがむ運動・動作(スクワットなども含む)
- 階段昇降
- 立ち座り
などが膝関節伸展筋群の遠心性収縮を行っているため、大腿部の筋肉痛が起きやすいです。
ちなみに、運動や動作をゆっくりやった方が良いと言われるのは、この遠心性収縮をしっかりと行うことにより、トレーニング効果を高めるためです。
立ち座りの動作を例に挙げると、立つときはみなさん嫌でも筋肉をしっかり使わなければ立ち上がれませんが、座る時は重力と体重の重さを利用して、ほとんど筋肉を使わず、「ドスン」と座ることもできます。
この時にゆっくりと意識して座る動作を行うことで、膝を伸ばす筋肉の遠心性収縮がしっかり入り、より効果的な運動となります。
運動を日常的に行っている方はこの遠心性収縮を意識して行うと、よりトレーニング効果が高いことは間違いありません。

求心性収縮
求心性収縮はごく普通のイメージの運動だと思って頂いて構いません。
ダンベルの例でいくと、肘をゆっくり曲げながらダンベルを上げていく運動です。筋肉は収縮しながら短くなっていきます。
普段運動をしているか?(筋繊維の毛細血管の状態)
この筋繊維のちぎれる現象には、外力(負荷)の強さも大きく影響していますが、筋肉に栄養が充分に来ないと、その分ちぎれやすくなります。結果、栄養が充分でない筋肉は筋肉痛が起こりやすいです。
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少し前に加圧トレーニングが流行りましたよね。
あれも、腕や足の鍛えたい部位をしばったりして、血流を阻害し、少ない栄養素で筋肉を収縮させ、筋繊維が損傷することを狙っています。
筋肉には収縮するために必要な血液の栄養を取り込むために、毛細血管がはりめぐらされています。
この毛細血管は、よく使う筋肉ほど多く発達しており、栄養交換が円滑に行えます。
しかし、あまり普段使わない筋肉は毛細血管が充分でなく、少しの運動でちぎれてしまいます。
また普段使わない筋肉は、筋繊維自体も細く、物理的に弱い状態ですので、この栄養交換の非効率によりさらに筋肉痛になりやすい状態にあるといえます。
運動の速さ(速筋と遅筋)
動きの速い運動をすると、ゆっくりとした運動を行うよりも筋肉痛になりやすくなります。
それは筋肉の種類によるものです。筋肉には速筋と遅筋があり、それぞれ特性があります。
速筋繊維(白筋繊維)
速筋繊維は素早く収縮することが得意ですが、長く収縮する(持久性)は苦手です。瞬発力があるために無酸素運動で頻繁に使われる筋肉です。
白色をしているため、別名白筋繊維と呼ばれます。
この速筋を鍛えたい場合は高負荷の運動を低頻度で行うと良いと言われています。
遅筋繊維(赤筋繊維)
逆に、遅筋繊維は素早く収縮することはできませんが、持久性が高く、長く収縮することができます。
遅筋繊維は赤色をしており、別名赤筋繊維と呼ばれます。ジョギング、マラソンなどの有酸素運動をしている時に良く使われています。
速筋を使う運動では早く筋肉痛になり、遅筋を使う運動では筋肉痛は遅くに来る!
「歳を取ると筋肉痛が2.3日後に来る?」
こういった話を聞いたことがあると思います。
しかし、実際には年齢の問題ではなく、運動の種類が年齢によって変わってくることが原因だと言われています。
つまり、歳を重ねて行う運動は、ただでさえ、ゆっくりした運動が自然と多くなります。
さらに、心肺機能などの体の運動に関する他の各要素も低下しているため、若い時に行う運動よりも頑張っているつもりでも、そこまで体(筋肉)を追い込めていないことがほとんどだということです。
例えば10代の時に100mを全力疾走した時と、20代・30代になってから同じ100mを全力疾走したのでは、当然途中で息も切れ、スピードも落ちるし、筋肉を精一杯使う前に息が続きにくいことが想像できると思います。
まとめ
筋肉痛の原因は筋繊維の損傷によるものです。
筋肉痛の程度は、運動の方法や種類(早い運動か遅い運動か)、普段の運動の状態により変わってきます。
筋肉痛が酷いときは、「筋肉が怪我をしてるんだな」と思って、ゆっくりと回復を待つとよいでしょう。
しかし、筋肉痛は決してネガティブなものではなく、運動には付き物で、その後に超回復が行われ、筋繊維はより太く・強くパワーアップします。
今回の記事を参考に、上手に筋肉痛と付き合って、健康な体を維持できるよう、適度な運動を楽しんで下さいね。