
肩こりに大きく影響していると言われる肩甲骨。肩甲骨はどのように肩こりに影響してるのでしょうか。その構造を理解すると、肩こりに姿勢が大きく影響していることが分かると思います。
肩甲骨には筋肉が多く付着している!
肩こりの痛みや凝りの元は筋肉です。
肩甲骨に付着する(起始、停止を持つ)筋肉はなんと17個!もあります。
肩甲骨の位置や状態が悪いとそれだけ筋肉が凝り、肩こりになりやすいことが伺えると思います。
※参考記事肩甲骨周りの筋肉「ローテーターカフについて」
肩甲骨は人体の中でも比較的大きな骨で、「体の中で浮いている」特殊な骨です。
人体の中で「浮いている骨」である肩甲骨
同じように、人体の中で大きな骨では骨盤があります。
しかし、骨盤は、股関節で大腿骨による強固な骨性の支持があります。(立っている時)
しかし、肩甲骨の場合、連結している骨は鎖骨と上腕骨のみです.
立っている時に肩甲骨の重みを支えているのは、主に肩甲骨周りの筋肉という事になります。
元々四足歩行をしていた時は、上腕骨が股関節における大腿骨のように肩甲骨を骨で支持していたのかもしれませんが、二足歩行となり、その強固な骨性の支持は無くなり、肩甲骨は宙ぶらりん、つまり、浮いている状態になってしまったのです。
よって、普段の姿勢で肩甲骨の位置が悪いと、肩甲骨に付着する周囲の筋肉に異常な緊張が常に強いられ、肩こりになりやすくなります。
肩甲骨の位置を確認しよう!
普段の肩甲骨の位置は肩こりに大きな影響があります。
肩こりが酷い人は、肩甲骨が下に下がっており、さらに前に出ている(外転している)人が多いです。
一度チェックしてみると良いと思います。
正常な肩甲骨の位置
肩のラインが水平で、肩甲骨の位置はまあまあ適切です。
本来肩甲骨は骨盤の直線上にあり、骨盤を土台として体を通して連結されています。
外転位の肩甲骨の位置
両肩が下がり、肩甲骨が両側ともに外に垂れ下がるようになっています。
いわゆる「猫背」の姿勢になると、このように重力により肩甲骨は外転し、肩や背中の筋肉が常に緊張している状態になっています。
こういった姿勢を日常的にとっていると、主に以下に挙げる筋肉が凝りやすくなります。
肩甲骨が外転していると、この筋肉が凝る!
菱形筋は大菱形筋と小菱形筋があり、両方とも肩甲骨の内側(内側側)に付着し、収縮すると肩甲骨が内転する作用があります。
猫背で非常に過緊張になりやすく、凝りを感じやすい筋肉です。
※参考背中の凝りをほぐす方法
肩甲挙筋は、肩甲骨の上角に付着します。
収縮すると肩甲骨を挙上させる(引き上げる)作用があります。
細長く小さいわりに大きな肩甲骨を重力に抗して持ち上げる働きをしているので、非常に疲れやすく、凝りやすい筋肉です。
肩こりを無意識に自分でほぐしている時に触っている筋肉が肩甲挙筋の場合も多く、それほど凝りを感じやすい筋肉であるといえます。
僧帽筋は広く肩を包むようにして存在する、アウターマッスルと呼ばれる筋肉です。
僧帽筋は上部繊維、中部繊維、下部繊維に分かれます。
その中で、中部繊維は、肩甲骨の肩峰、肩甲棘に付着し、下部繊維は、肩甲棘に付着しており、肩甲骨に付着する筋肉の一つです。
収縮するといわゆる「肩をすくめる」運動となり、肩関節の挙上が行われます。
肩甲骨を動かす運動
リハビリにおける臨床でも、運動の合間に肩甲骨を動かし、肩こり解消を図ることがあります。
もし、誰か傍にいて、肩をほぐしてもらえる場合は、肩甲骨のモビライゼーションを行うと効果的です。

施術する方が肩甲骨をこの様に把持して、胸郭から引き離したり、上下に動かしたりすると、肩甲骨に付着する筋肉が動かされ、あっという間に肩こりが軽くなります。
※モビライゼーションについてはこちらに詳しく記述しています。モビライゼーションの方法
肩甲骨・肩甲帯は大変可動性の高い部位です。
動きとしては、単純に外転・内転、挙上・下制することもあれば、上方や下方に回旋することもあります。
それだけ柔軟性があり、可動性があるからこそ、不安定で肩こりの原因になりやすいのですが、逆に肩こりを解消するためにはこの可動性の高さを利用して、しっかりと動かすことが重要です。
もし、一人で肩こり解消の運動を行う場合は、以下の運動を行うことで、停滞している血行を循環させ、筋肉の凝りを解消することができます。
準備運動~大胸筋のストレッチ~
肩甲骨が外転している姿勢を普段からしている方は、胸の筋肉(大胸筋)が短縮、もしくは柔軟性が著しく低下していることが多くあります。
先ほどのチェックで、肩甲骨が外転している方は、大胸筋をストレッチし、肩甲骨の内転の動きができるように準備運動を行うことをお勧めします。
大胸筋をストレッチ方法は、壁に手を掛け、写真の様にグーッと体を前に進めると伸ばすことができます。20秒ほど伸ばせば結構です。
大胸筋が充分に柔軟性を取り戻せば、次に肩甲骨を内転させていく運動を行っていきましょう。
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肩甲骨引き寄せ運動
肩甲骨を内転させる運動です。
座っていても立っていても構いません。
写真のように両肘を曲げて、肘を体に付けて下さい。
そこから両手を外に開きます。
その時に必ず肘を体から離さないようにして下さい。
しっかり胸を開いて、肩甲骨が内側に動くのを感じながら行って下さい。
体幹側屈運動
今度は肩甲骨を上方回旋させます。
肩甲骨は肩関節を外転させると上方回旋しますので、このような運動をすると効率的に肩甲骨を動かすことができます。
コツとしては反対側の手で体幹を固定し、体の上半分だけ曲げるようにすると、より肩甲骨が動きやすくなります。

この肩関節の外転運動は日常生活でなかなかすることのない動きです。
その分筋肉も凝りやすくなるので、しっかりと肩甲骨が動いている感覚を感じながら動かして下さい。
まとめ
リハビリの臨床では、「何もしていないのに肩が凝って・・」と言う患者さんが大変多いです。
多くの場合、特別に作業をしていなくても肩が凝ります。
精神的緊張によっても肩周囲筋の筋緊張は自然に上がるし、猫背気味の姿勢によっても何もしなくても常に緊張しています。
構造上、どうしても筋肉の支持が必要なため、大変凝りやすい部位です。
根本的に肩こりになりにくい様にするには、姿勢を観察し、適切な部位の筋肉を伸ばしたり鍛えたりして、アライメント(配列)を整えていく必要があります。もちろん人によってその方法も異なります。
しかし、高齢の方で長年肩こりになりやすい姿勢で過ごしてきた方や、脊柱(脊椎)が変形している方は、筋肉を鍛えてもなかなか簡単に改善しないことも多いです。
だからといって諦めてしまうのではなく、普段から少し肩甲骨を動かす習慣を持って、適度に肩こりを解消しながら生活していくことが運動習慣を持つ良いきっかけになるのではないかと思います。
是非、肩が凝ったな~と思う時は上記の運動を試してみてくださいね。