筋緊張ってなに?痙性って?メカニズム、評価方法、筋緊張異常の治療方法を解説

筋緊張とは


筋肉力低下や筋緊張の異常、これらは全ての日常生活動作に大きく影響を与えるだけでなく、痛みを引き起こしたりもします。

しかし、筋緊張って一体何なのか、わかりにくいですよね。

そこで、筋緊張・筋緊張異常の定義、メカニズム、筋緊張異常の治療方法についてまとめました。 臨床で筋緊張緩和に使える技術にも触れています。

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筋緊張(筋トーヌス)とは?

まず、定義から確認していきます。

筋肉は分かりやすく言えばご存じの通り、ゴムのように弾性があり、適度に伸びたり縮んだりして筋力を発揮します。

生物が重力に抗して姿勢を維持したり、運動したりする際に、この筋肉を収縮させてすぐに活動するためには、伸びきった状態の筋肉では適度な張力を瞬時に発揮することはできません。

固すぎても同様です。

 

この適度な状態の筋肉を正常な「筋緊張」といいます

動作に備えて準備されている、筋肉のテンション(張力)が保たれている状態です。何もしなくても、ぼーっとしていても絶えず不随意的に(無意識に)僅かに筋肉は緊張しています。

 

この筋緊張は極めて運動課題に依存的で、休止状態の適度の緊張の他、運動の企図や肢位の変化、反射の状態、精神状態によって簡単に変化します

筋緊張のメカニズム

筋緊張は6つの機構によってコントロールされています。

  1. 運動野(Brodmann4.6領域)
  2. 基底核
  3. 中核(網様体)
  4. 前庭
  5. 脊髄
  6. 神経-筋の働き

1~4までは中枢のコントロールで、5.6は伸展反射による筋の緊張反射(例:膝蓋腱反射)の働きになります。

脊髄とニューロンの連結

骨格筋における遠心性の繊維は太いα(アルファ)繊維と細いɤ(ガンマ繊維)の2種類があります

α繊維は筋繊維に至り、運動ニューロンと呼ばれます。随意運動をする時に興奮し、筋繊維を緊張させます。

 

ɤ繊維は筋紡錘内の錘内筋繊維に入り、Ia繊維を介して内部の求心性インパルスを脊髄に送り、α運動ニューロンの興奮度をコントロールします。

 

ここらへんって学校でも習いますが、少し難しく、私は学生の頃全く理解できませんでした。

分かりやすく言えば、α繊維は一方通行で筋肉を緊張ー弛緩させるための信号を脳から末梢へ送っていて、γ繊維は筋肉の中の状態を感知してα繊維のコントロールや抑制も行う、司令塔のような役割も担っているという事です。

 

 

中枢からだけではなく、末梢の骨格筋の方からも筋緊張をコントロールしています。

求心性の繊維にはⅠ群、Ⅱ群(筋の触圧覚受容器から発生)、Ⅲ群(痛覚受容器から発生する)の3種類があります。

 

Ⅰ群には、比較的太い繊維で筋紡錘から出ているⅠa繊維と、腱紡錘から出ているⅠb繊維があります。

 

Ⅰaは筋紡錘の伸展によって情報を脊髄に送り、α運動ニューロンの働きを興奮させます。Ⅰbは腱紡錘の伸展によって逆に抑制させます。

このようなメカニズムで筋緊張はコントロールされています。

筋緊張緩和に使える臨床のテクニック~Ⅰb抑制とは?~

Ib抑制とは、上記の知識を活かした技術で、ターゲットの筋の腱部を圧迫して、Ⅰbニューロンを興奮させることで、α運動ニューロンを抑制し、筋緊張を低下させます。

大腿四頭筋の腱部が反応を得やすいので、大腿四頭筋腱を母指で4~5秒程度グッーと圧迫してみて下さい。筋緊張が亢進している方で試すと徐々に腱が伸張し、筋緊張が低下してくるのが分かると思います。

要領はダイレクトストレッチと同じですが、ダイレクトストレッチは筋腹を圧迫するのに対して、Ⅰb抑制は腱を圧迫します。

脳卒中後遺症で筋緊張亢進による疼痛がある方の場合、少し楽になって運動しやすくなったりします。私は結構頻繁にストレッチの中で使っています。一度試してみて下さい。

その他の筋緊張(筋トーヌス)に影響を及ぼす機構として、拮抗筋Ⅰa求心性繊維がα運動ニューロンの興奮を抑制する相反抑制、随意運動に伴ってα運動ニューロンを興奮させる皮質脊髄路など脊髄上位からの促通・抑制があります。

 筋緊張の異常とは?

筋緊張は亢進したり、弛緩したりします。

  • 亢進とは何なのか?
  • 弛緩とはどういった状態をさすのか?

を以下に説明していきます。

 

筋緊張って実は明確に臨床場面で評価・判断することは不可能です。

脳卒中の患者さんで発症直後であれば、筋緊張の状態によって筋肉の状態が変化していることは明らかなので、明確に判断することは可能です。

しかし、発症して2~3か月もすれば、筋緊張異常から派生した、筋・皮膚の短縮などの二次的な障害も混在することになります。

このうち、どこまでが筋緊張の異常なのか判断することは容易ではありません。

 

なんとなく捉えどころがない感じがする筋緊張ですが、実態もかなり掴みにくいものです・・。

亢進

筋緊張が亢進する代表的な疾患には、中枢神経疾患があります。

 

中枢神経疾患の筋緊張の亢進は質的には、

  • 脳卒中
  • 脊髄損傷
  • 脳性麻痺

でみられるような折り畳みナイフ様の抵抗感を示すものもあれば、パーキンソン病における固縮でみられるような鉛管様の抵抗感を示すものもあります。

 

筋緊張が亢進した状態には痙直と固縮の2種類に分類されます。

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痙直

痙直とは急激に関節を受動的に動かした時に起こる筋の抵抗のことで、筋の緊張が高まった状態のことです。

中枢系の疾患などで筋緊張が亢進している方に多いですが、患者さんの関節を勢いよく伸ばしたり、曲げたりすると、初めは抵抗が大きく、あるとところまで動かすと急に抵抗が軽くなることがあります。

この現象を折り畳みナイフ現象といいます。早く動かせば動かすほど抵抗感は強くなります。

 

なぜ起きるのか?(原因)

痙直は錐体路障害によって出現し、痙直状態は全ての筋にみられるのではなく、特有のパターンがあります。

これが、上肢では屈筋パターン、下肢では伸展パターンで脳卒中後遺症の患者さんに良く出現するパターンです。

ウェルニッケマン肢位

固縮

固縮には2種類あり、いかなる方向の運動に対しても初めから終わりまで一様・同一の抵抗感があり、ちょうど鉛の管を曲げたような感覚に似ているので、鉛管様固縮と呼ばれるものと、パーキンソン病でよくみられる、ガク、ガクと抵抗感が歯車を回転させるような感じの抵抗感のある状態のことを、歯車様固縮と呼ばれ、区別されます。

腱反射は固縮の為に消失もしくは減弱します。

固縮も全身一様にみられるのではなく、一般的にまず手首に現れることが多く、次いで肘、肩など四肢の近位部に発生するようになります

なぜ起きるのか?(原因)

これらの固縮は錐体外路の障害によって出現し、動作緩慢で無動状態になることが多いのが特徴です。

筋緊張の低下~弛緩~

亢進とは逆に、筋緊張が低下すると弛緩状態になります。他動時に抵抗感が著しく低下します。

筋腹を触診すると柔らかく、筋特有の抵抗感が感じにくくなります。

 

代表的な疾患は、

  • 小脳疾患
  • 脳性麻痺(弛緩型)
  • 脳卒中の急性期
  • 末梢神経疾患
  • ダウン症

などです。

 

筋緊張弛緩の症状は本当に様々で、小脳疾患では伸展の抵抗は普通ですが、屈曲時の被動抵抗が亢進します。

各種障害による筋緊張の変化を下記表にまとめます。

  伸展性 被動性 腱反射
錐体路障害 ↑(過伸展) ↑(弛緩性)又は↓(痙性) ↑又は↓
錐体外路障害 不変 ↓(固縮)
小脳障害 不変 ↑(弛緩性) – 
後索障害 ↑(過伸展) ↑(弛緩性)
末梢神経・筋障害 ↑(過伸展) ↑(弛緩性)

筋緊張検査について

安静時の筋緊張検査は、体が安静状態にあり、なおかつ精神的にもリラックスした状態が望ましいとされています。

座位や立位などの抗重力位ではその肢位を取った時点で筋緊張が亢進しますので(これを姿勢性筋緊張と言います。)、正確に筋緊張を評価することが困難となります。

 

筋緊張の評価の原則・基本は、触診・視診です。

  • 筋の抵抗感
  • 伸張性
  • 形態上の変化

視診により平べったい場合は弛緩、筋が盛り上がって見えれば筋緊張亢進の可能性があります。

しかし、これは筋ボリュームによって個別差が大きいのであまり過信しない方が良く、あくまで参考程度にします。

 

  • 筋の硬さ

触診によって筋肉の硬さもみます。これも臨床経験を積んで触り慣れていないとおそらくさっぱりわかりりません。私もそうでした。

筋力低下=筋緊張低下?筋緊張異常の見極め方

image

筋力が低下している筋肉って弛緩しているイメージがありませんか?

弛緩=筋力低下なのでしょうか?

 

実はそうでもないです。

なぜなら、筋緊張が亢進している状態でも筋力低下は起きるからです

 

ほとんどの場合弛緩=筋力低下で間違いないですが、実際はそうとも言い切れないです。

脳卒中後遺症の方を想像すれば理解しやすいですが、肘を伸ばそうとしたとき、痙性が高く、上腕二頭筋が筋緊張亢進していれば、肘伸展筋である上腕三頭筋の筋力は低下します。

 

どういうことかと言うと、一般的に言われる「筋力」とは、筋肉の収縮する純粋な力(筋出力)を指すのではなく、MMTの様に、収縮した結果、外力を持つ力(外の物体をどれだけ動かせるか)のことを言います。

よって、痙性により拮抗筋が過緊張状態にあれば、抵抗が増し、当然筋力は低下します。

 

こういった場合、筋力トレーニングをするよりもまず、ストレッチなどで拮抗筋の筋緊張緩和を図ることが重要です。

筋緊張の意味を理解すると、一概に筋力低下=筋力トレーニングとはならないことが分かると思います。

 

筋緊張異常が問題点に含まれると考えられる場合は、MMTで筋力低下が明らかな原因と断定出来ないのに、正常な動作ができない時です。

例えば、立脚中期で膝折れする患者さんの場合、立脚足の内側広筋の筋力低下が疑われます。

しかし、MMTで膝伸展のテストを行っても、大腿四頭筋の筋力は分かっても、内側広筋の筋力は分かりません。

膝伸展のMMTを行った結果、正常範囲内であれば、内側広筋の筋緊張の異常を問題点として考えます。

このような視点で筋緊張が問題点となるかを見極めます。

 

筋緊張に問題がありそうな場合、以下の筋緊張の検査・評価を行い、精査していきます。

  • 被動性検査(例:Modified Ashworthスケール:MAS)
  • 伸展性検査
  • 姿勢性筋緊張検査

などがあります。

被動性検査

被動性とは患者さんの関節を動かし、その時の抵抗感で筋緊張を判断する方法です。最も一般的で簡単に評価できますが、筋緊張の一部の部分を見ているにすぎません。

 

評価方法:受動的に色々な速さで関節を動かします。

判定:Modified Ashworthスケール(MAS)の評価法が有名で臨床でも良く使われます。グレードが6段階に分けられています。

「Modified Ashworthスケール(MAS)」

0 筋緊張は増加しない
1 関節の最終域でわずかな抵抗感があるか、ひっかかるような感じがある。
1+ ひっかかる様な抵抗感と、半分以下の可動域での最小限の抵抗

2

ほとんどの可動域で明確な筋緊張の亢進があるが、関節を動かすことは容易

3

明確な筋緊張の増加があり、他動運動が困難。

4

拘縮。

筋伸展性の検査

筋の伸展性とは、筋を受動的にゆっくり伸展させた時にどれくらいまで伸展するかの度合いを見るものです。

 

この検査の基本は一側を他側と比較して決めます。

一側のある部分が他側の同じ部分より伸展する場合に過伸展し、筋緊張低下を意味します。しかし、関節可動域制限が著明にある患者さんにはあまり現実的ではないかもしれません。

筋の伸張性の検査

  • 足の底背屈

背臥位、下肢伸展位で足関節底背屈させる。

 

  • 膝関節

腹臥位で両足を同時に膝関節屈曲させる。

 

  • 股関節・膝関節の屈曲

背臥位で股関節・膝関節を同時に屈曲させ、踵が殿部に付く程度まで曲げる。

姿勢性筋緊張検査

姿勢性筋緊張はある一定の肢位におかれた筋肉、が新しい位置に置かれた状態に適合する時の筋肉の緊張の状態を検査します。

 

検査方法:患者さんに立位・座位、臥位など様々な肢位を取らせて、四肢・体幹を他動的に動かして抵抗の感じを検査・評価します。

筋緊張の判定方法は3種類あります。

1.正常

速やかに肢位に反応し、直ちに筋の緊張の調整が行われる状態。

2.痙性・固縮

姿勢の変化が緩慢で、抵抗を示し、筋の調整が遅延する。

3.アテトーシス

姿勢の変化に対して、過度の抵抗感の欠如、関節の過伸展が見られる状態。

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治療方法について~筋緊張異常はストレッチで治るのか?~

脳卒中片麻痺の方で痙性が高い場合、筋緊張を緩和させるための治療として、セラピストはストレッチを多用します

研究によると、ストレッチもしくはアイスマッサージなどで筋緊張が緩和しても、一時的なもので、すぐに緊張が高い状態に戻ってしまう、と言われています。

※)アイスマッサージなどの筋緊張緩和に効果がある寒冷療法についてはこちら 「冷やして痛みを取る!」リハビリで行われる寒冷療法について

 

そりゃそうですよね、痙性が中枢系の器質的変化なら、療法士が皮膚や筋肉を動かすだけで治せるものではありません。

ならばストレッチやアイスマッサージは意味がないのか?

と言うとそうでもありません。

 

筋緊張を落とした状態で緊張の入りにくい動作を練習し、習慣化していくことで継続的に筋緊張を緩和させることは可能と言われています。

その時のコツは「運動イメージ」と「随意運動」です。

ストレッチだけでは不十分です。

緊張が高くて随意運動が上手く行えない方の場合、リラックスして緊張が緩む、というイメージをまず作ることが大切です。

 

その状態を患者さんが一人で維持できるように、自主トレとして習慣的に行ってもらうことで筋レベルの変化が起き、更に習慣的に筋緊張を落とした状態での随意運動を行えば、中枢神経機能の変化が望める、とされています。

まとめ

筋緊張について何となく理解して頂けたでしょうか。

 

私も学生の時はよく分からなかったのですが、やはり患者さんを触らせてもらって、筋緊張の変化を実際に触診で感じ取れる様になって初めて筋緊張というものが何となく理解できました。

今回の記事の基礎知識を元に、臨床に少し筋緊張を意識して望んでもらえると幸いです。

<参考文献>

筋緊張について詳しく知ると本当に臨床の考え方が全く変わります。オススメの一冊です。

 

 

次の記事は、 「脳卒中片麻痺の下肢装具療法について(下肢装具の種類・価格・選定方法など)です。

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