
理学療法士は最近になってやっと後輩の教育方法を見直していこう、という流れになってきました。
でも、まだまだ理想の指導方法には程遠いです。
今回はその指導方法について書いていきます。
全体の指導方針をどこに置くか?
まず決めるべきなのは指導方針です。
例えばあなたが所属しているのが病院で、有名な先生がいれば、その人からの「トップダウン」での指導方法となる事が多いかもしれません。
もし、有名な先生がいなければ、全体のレベルの底上げをしようと「ボトムアップ」の方針で経験年数の浅い人に濃い教育が施される事になるでしょう。
施設としては、教育の短期ゴールは、新人が入ってきてもすぐにレベルアップできる環境にして、「均等なレベル」を速く一定になるようにする事、のはずです。
CS(customer satisfaction=顧客満足)の観点からそうなるはずです。
サービスの質にバラツキがあるのは良くないです。
多くの施設はボトムアップ方式を”あまり深く考えずに”選択しています。
”新人教育”という言葉がある位ですから、教育はどうしてもボトムアップから入りがちです。
しかし、このボトムアップ方式には問題点もあります。
底上げ式ボトムアップ教育の特徴は減点方式
ボトムアップは底上げをしようという考えが先にあります。
なので、”出来ていないこと”に着目します。
出来ていないことを出来るようにすることが、全体のレベルを平均化することの近道だからです。
よって、”あの新人はあれが出来てない”という話が飛び交うようになります。
要するにあれがダメ、これがダメと、ダメなことばかり見るようになってきます。
これは、減点方式です。
ダメなことばかり見ていると、人の評価に減点、減点ばかりで”加点する”という視点が減ってきます。
そうするとどうなるか。
下の子たちは減点されないように、ボロを出さないようにしよう、という意識を意識せずに持つようになります。
こうして、オープンなコミュニケーションは阻害されていきます。
「下手なことは言わない」というクローズした、上と下で壁のある雰囲気が作られていきます。
で、上の人は意見を言わない下を見て、
「下は何も考えていない、気楽なもんだ。」
と思う様になります。
本当は色々考えてても、言わないだけです。
だって、変なこと言って減点されたら嫌ですから。
あなたの施設でも思い当たる節はありませんか?
教育とは人を正すことではない。
やがて、何も考えていない先輩だと、”あの新人”の素行全てが気に入らなくなります。
減点が多い新人の組織以外の活動や、生活にまで口を出し始めます。
果ては、思想とか、考え方とか育ち方にまでにも言及します。
もう、こうなるといじめに近い。
教育・指導という大義名分を掲げ、大の大人がいじめをしているだけの話です。
対実習生にもよくある話ですが。
こうなると、お互いそこから何もプラスのことは生まれなくなります
”教育”という一見純粋な言葉の雰囲気に乗せられ、”教育とは人を正すこと”だと何も考えずに漠然と思っている。
そんな人が多い。
正しいなんてものは本来どこにもありません。
正しいことがあると思っている人がいるとしたら、まず、知識がなく、常識を知らない人でしょう。
人を正せると思っている人も同様に傲慢です。
ただ、自分に合った奴隷を作りたいと言っているのと等しいことに気が付かないといけません。
真の目的を意識すると、教育とは”自分=組織を育てること”である。
”組織の基準に合った人”を作るのがこの場合の教育の真の目的です。
しかし、もし組織に合わない人が居たら、根本的にその人にアプローチすることだけ考えていては絶対にダメです。
だって、もし、その人があなたの思うように立派に成長しても、また同じ様な人が入ってきたらまた同じことを1からするのでしょうか?
これではずっーと同じことを続けなければなりません。
進歩がありません。
組織をある程度どんな人にも合う様にシステムを変えるという視点を持って教育した方が絶対に効率的です。
新人を組織に合わせるという視点と同時に、逆に、新人が合わないシステムを見直す、組織側をより最適化していくために教育を行うのです。
その改善案を汲み取れる場所が教育の場と考えておくべきでしょう。
新人達は、組織がより良い状態になるための改善案を提供してくれているのです。
皆が躓くところ、皆が頭を悩ませるところは組織のシステムに不備がある可能性が高いです。
「お前が悪いから治せ」とばかり言っている人って自分は全然進化しないでしょ?
組織も同じです。
加点方式の指導を
指導方針は加点方式にしていかなければなりません。
例えば、
・みんなの役に立つことや業務効率が上がることを提案する。
・仕事が早い、間違いが少ない
・勉強会によく参加する
・伝達講習をする
・患者さんからウケがいい
・宴会部長
・職員内でのムードメーカー
・いつでも笑顔で挨拶できる
何でも良いのですが、具体的にはこの様なことで加点されて、なんらかの形で本人にフィードバックされるのが良いと思います。
給料に反映させるのが理想ですが、そうもいかないでしょうから、表彰するとか掲示板に掲載するとかでも良いと思います。
とにかくオープンなコミュニケーションを目指しましょう。
「こんなの良くないですか?」
「こんなことやってるんですけど、良いですか?」
と気楽に下が上に言える教育方針を考えましょう。
まとめ
教育・指導は、やり方を間違えると全体の士気やパフォーマンスが落ちることになりかねません。
これでは本末転倒です。
企業では”見える化”と言って仕事や作業手順の標準化、マニュアル化が進められています。
メリットとして、誰でも同じ水準で仕事に取り組めるということと、どの手順で問題が起きたのか発見しやすいため、システムを見直すことが容易になるからです。
見える化=仕事の整理整頓と言えます。
次の時代は”言える化”が大切だと思っています。
次の時代に備えて柔軟に動ける体制をとるために、見える化で整理整頓した後、自由なアイデアを発言できる、発言したくなる様な環境を目指し、組織を”言える化”していかなければなりません。
「アイデアは上が考えるから、手足である職員は言うこと聞いて働いていればいい」というならそれでも結構です。
しかし、そんな古い考えの組織は瞬く間に時代に取り残され、自然淘汰されていくでしょう。
激動の現代を生き残っている企業はみんなアイデアマンです。
時代に合わせてアイデアをどんどん出して、トライアンドエラーしていかなければならないことを肝に銘じておく必要があります。