
大胸筋は胸の筋肉のことで、顔のすぐ下にあります。なので、人体の中でも特に目に付きやすい代表的な筋肉です。
大胸筋は私たちのようなリハビリ関係の仕事をしていなくても、ご存知の方が多い有名な筋肉だと思います。女性は美容、つまりはバストアップ、男性は厚い胸板を作るために鍛えることが多い筋肉だと思います。
今回はそんな大胸筋の解剖や筋トレ、ストレッチの方法について詳しく解説していきます。
トレーニング器具を一切使わなくても大胸筋を鍛えることができる!
男性ならかっこいい厚い胸板に憧れ、女性はバストアップの目的で大胸筋を鍛えてみようと思う方が多いと思います。ネットで大胸筋のトレーニング方法を検索してみると、平行棒が必要だったり、ダンベルを使っていたり、何らかの器具を使った方法を紹介している場合がほとんどです。
確かに、ベンチプレスなどで大胸筋は効果的に鍛えられますが、それを見て「自宅で手軽に行えそうにない・・」と思っている方も多いと思います。
また、最近は男性では「細マッチョ」が注目されており、ジムでウェイトトレーニングしてボディビルダーみたいなバッキバキの筋肉を付けるよりも、自宅で少し運動して引き締めたいという方も多いと思います。
そこで、今回は自宅で簡単にできるように、一切の器具なしで大胸筋を効果的に鍛え、ストレッチする方法をご紹介します。
大胸筋とは
大胸筋と一口に言っても、
- 鎖骨部
- 胸肋部
- 腹部
に分かれており、少し走行が異なります。
筋肉は収縮することで起始と停止を近づけることでパワーを発揮します。なので、当然走行が違っていれば、微妙にその作用も違ってきます。
大胸筋の解剖
筋肉について詳しくなりたいなら、解剖学は必須だと思います。
当ブログでは何度も書いていますが、起始・停止と筋肉の作用を頭に入れておくと筋トレするにもストレッチするにも役立ちます。数倍は効果が違うといっても過言ではありません。
大胸筋の起始・停止
- 「起始」
鎖骨部は、鎖骨の内側半分に付着しており、胸肋部は、胸骨及び第1~第6肋軟骨に付着しています。腹部の方では、腹直筋鞘前葉に付着しています。
- 「停止」


鎖骨部・胸肋部・腹部共に、上腕骨の大結節稜に停止します。
大胸筋の主な働き
大胸筋が停止している上腕骨~肩関節(肩甲上腕関節)は球関節であり、可動性が広く、自由度が高いです。なので、大胸筋が収縮すると、下のような多彩な作用があります。
- 肩関節を内旋する。
- 肩関節を内転する。
- 肩関節を屈曲する。
- 呼気を助ける。(呼吸補助筋)
大胸筋の神経支配
大胸筋は前腕神経(C5~C8)により支配されています。
大胸筋を鍛え、ストレッチする目的
大胸筋は正直、日常生活の動作上、特に大きな役割があるわけではなく、筋力が弱ったら腰が痛くなるとか、なにかしら困った事態が発生してしまうことは考えにくいです。
なので、大胸筋を鍛える目的として最も一般的なのは、機能上や動作上の問題改善ではなく、ほとんどの場合「見た目(外見)」のためです。
男性は厚い胸板になればそれだけでたくましく見えますし、スーツやTシャツなどのファッションも抜群に似合うようになります。女性は言うまでもなく、バストアップでより魅力的なスタイルになります。
また、大胸筋はリハビリ的な視点でいうと、実は筋力が問題になることは少ないです。それよりも、猫背(円背)になっている方によくみられるのが、大胸筋が短縮しているケースです。

大胸筋は胸から腕に付いている筋肉なので、短縮したり、柔軟性に乏しい状態になると、腕を上に上げにくくなってきます。
洗濯物を干す時などに腕が上に上がらない、という方もいます。
大胸筋をしっかりとストレッチしたりほぐしたりすることで肩が上がりやすくなる、というのはリハビリの臨床でもよくあるケースです。
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器具を使わない,大胸筋の筋トレ4つの方法
器具を一切使わずに自宅にあるものを使って大胸筋を鍛える方法をご紹介します。
腕立て伏せ(プッシュアップ)
腕立て伏せでも大胸筋を簡単に鍛えることができます。大胸筋を鍛える目的で行う腕立て伏せは、できるだけ腕を広げて行うことがコツです。
上腕を地面と水平になるくらい広げて腕立て伏せを行います。

こうして行うことで大胸筋の起始部と停止部がより離れた状態になるので、しっかり筋肉が動き、大胸筋に強い負荷を与えることができます。

女性の方や、筋トレ初心者の場合、負荷がやや強いので、膝を床について行う腕立て伏せも有効です。膝をついて行う腕立て伏せを1カ月ほど行えば、膝を付かなくてもできるようになると思います。
腕立て伏せをすると手首の関節(手関節)に負担が掛かり、痛む方もいると思うので(私も昔に手首を痛めてから腕立て伏せすると痛みます・・)、このようなプッシュアップバーを使うと手首の負担が少なくなります。
胸の前で両手の平を押し合う
立っていても、座った状態でも、姿勢を問わず簡単に行えるトレーニングです。
両手の平を胸の前で合わせてお互いに押し合います。
上述のように、大胸筋は上部~下部に分かれ、縦方向に広範囲にある筋肉なので、両手を押し合ったまま上にあげたり、下に上げたりすることで大胸筋の上部~下部まんべんなく鍛えることができます。
決して負荷が高過ぎる運動ではないので、女性にもお勧めの大胸筋の筋トレ方法です。また、自宅や職場など、どこでも手軽にできるトレーニング方法なのが便利ですね。私は車を運転しているときに信号待ちで行ったりしています。人目があると少し気になるポーズかもしれません。笑
壁バタフライ
大胸筋を鍛えるのに、上の写真のような「バタフライマシン」を使うとすごく効果的です。しかし、ジムに行かないと普通はこんなマシンは家にありません。
そこで、自宅でもできるバタフライ運動をご紹介します。
写真のように、壁に前腕を付け、この状態で壁をグッーと押し付けます。
このトレーニングでは、当然バタフライマシンのように壁は動きません。しかし、等尺性収縮という筋肉の収縮様式で、大胸筋をしっかりと収縮させることができます。
大胸筋がしっかりと収縮していることを確認しながら(胸を触りながら)行うとより効果的です。
フロントブリッジ
こちらも大胸筋を鍛える手軽な運動です。
大胸筋だけでなく、体幹前面の筋肉(腹筋群)を広範囲に鍛えられるので、体全体を引き締めるためのトレーニングとしておすすめです。
特に大胸筋にターゲットを絞ってフロントブリッジを行う場合は、少し両手の幅を広げて行うことで大胸筋を集中的に鍛えることができます。
大胸筋のストレッチ2つの方法
大胸筋をストレッチする目的には、
- トレーニング後のクールダウン
- 肩関節の機能向上
が主にあると思います。
大胸筋を鍛えた後に肩こりが酷くなる?
私もジムに通い、大胸筋を鍛えていた時期が過去にありましたが、大胸筋ばかりを鍛えていると、トレーニング後に肩こりが酷い・・という経験をしました。
これは、大胸筋が一時的に強く収縮することで、上腕骨が前に引っ張られ、肩回りの姿勢が変わってしまうためです。肩甲骨が外転し、肩こりになりやすくなってしまうのです。
そこで、大胸筋の筋力トレーニングを行った後でケアとして、必ず下記のストレッチを行うことをお勧めします。
1⃣
大胸筋は、上述のように、起始と停止が上腕骨と胸骨にあります。なので、それらを物理的に離すとストレッチすることができます。
上の写真のように壁に手を置いて、腕よりも体を前に持っていくことで大胸筋はストレッチされます。この時に、目線はストレッチしている腕と反対方向を向くことで、胸骨のある体幹が反対側に回旋され、効果的にストレッチすることができます。
2⃣
また、大胸筋は上腕骨を内旋させる働きもあるので、逆に外旋させることでストレッチすることもできます。方法は、下の写真になります。


床に上向きで寝て、手を握り、肘を90度に曲げた状態からこぶしを床に付けるように降ろしていきます。(肩関節外旋)
壁を使ったストレッチほど大胸筋を強く筋をストレッチすることはできませんが、普段猫背になっていたり、肩コリがひどい方はこの方法でも伸長感が得られると思います。
まとめ
大胸筋を鍛える方法とストレッチの方法を、自宅で手軽にできるものを中心にご紹介しました。
ジムに通い、色んなトレーニング器具を使う方がより効果的に鍛えられることに間違いありませんが、時間やお金の条件がそろわないとなかなか難しいもの。
そういった方は上の方法でも、充分大胸筋を鍛えることができるので、是非お試し下さい。