
政府が副業・兼業を普及・推進していることはご存知でしょうか。

数年前は副業というと、小遣い稼ぎで会社に隠れてコソコソするもの、という後ろめたいイメージがありましたが、これからはむしろ、
- 「俺、副業やってます!!ドドーン!!!」
という感じで、胸を張って会社にも声高らかに宣言したいところです。
何だか、このひっくり返り具合、幕末の”勝てば官軍、負ければ賊軍”みたいな感じにかなり似ていますね。
しかし、まだまだ世の中にはそういった情報をキャッチしていないマネジメント層(特に高齢の方)の方々もいるので、もちろん、職場の空気を読んで宣言する必要がありますよ。
私は、副業しているからどうとか見栄や表面的な形はどうでも良いと思っていて、今後は組織に頼らずとも「自分で稼げるかどうか?」が重要になってくると思っています。
間違い無く言えることは、これからは、副業・兼業とか本業の垣根がなくなっていくということです。
現在あらゆるコトやモノで起こっている、ボーダーレス化が働き方や仕事の面でも起きている、という認識は最低限持っておいた方が良いと思います。
全ての対価を得る活動が「個人ベースの仕事」として位置付けられるようになります。
実際、すでにここに気づいていて「どれも本業だ」というスタンスで複数の仕事をこなしている人も私の周りに沢山います。これはお金を頂く仕事をしているならごく当たり前の発想です。
ブログだって、「所詮副業だし…」と思っている人は大概上手く行きません。
この話の本質は、「なぜ政府が副業と兼業を今、推進しているか?」というところにあると思います。
そこを解説します。
今後、日本のGDPも労働者の給料も上がる見込みはかなり少ない
「失われた20年」と言われるように、戦後のモノ作りで世界レベルの経済大国に成り上がった日本が、最近は経済的成長がほとんどない状態になっています。(好景気時でも実質経済成長率が5%以下の低成長)
98年頃にグーグルが出現し、インターネットによる”産業革命”に匹敵するくらいのインパクトがある”情報革命”の波が世界的に押し寄せ、そこに上手く乗じたアメリカは成長を続けていますが、出遅れた日本は低迷してしまいました。
保守的でコツコツと協調性を重んじ、規則通りにやり続ける日本の国民性は「モノ作り時代」には適していたけど、情報革命にはちょっとそぐわない側面があったのかもしれません。

従業員の母体は会社であり、会社の母体は国です。
国が経済的に低迷していけば、会社も必然的に低迷する可能性が高い。そして会社が低迷すれば、国民の給料も上がりません。会社がグローバルな活躍をしていればそうでもないですが、日本の企業はそこが非常に弱いと言われているのが現状です。
政府は至る所で”危険シグナル”を発しているが、気付いているか?
私が働いている医療介護の世界でも、「地域包括ケアシステム」が数年前から政府によって謳われています。
これも本質はかなり似ていて、勘が良い人は既に気付いていると思いますが、すご〜く簡単にいうと、
- 「もう将来的に政府では面倒見切れなくなるのが分かってるから、各自治体や個人、コミュニティ単位で何とか医療介護をやってって!頼んます!!」
という話です。
要するに経済的にだけでなく、医療介護的な側面からみても、”自立した人”になることを政府から期待されている訳です。
「自立した人」とは何か?
経済的にも、医療介護でも、以前ほど国や組織が守ってくれる環境ではなくなっていくということですね。
”脱中心化”や”地方分権”が今後更に重要なキーワードになってくると思います。
私は理学療法士という、リハビリを通して人を自立させることを目標にする仕事をしていますが、「自立=完全に自分1人の足で立つこと」ではないんですよね。
- 「基本的には自分でやるけど、どうしてもできないことは、人に頼ることができる環境を構築しておくこと」
これこそが”本当の自立”です。
お風呂に1人で入っちゃうと滑って転んでしまいそうな高齢者にとって、本当の自立とはなにか?
無理して何とか1人で風呂に入る、ということだけが自立ではありません。
自分の体力を客観的に把握して、転んだら大変なことになりそうだ、とまず本人が自覚し、気付かなければならないでしょう。
そして、転ばないための体力作りの方法を理学療法士に相談してみて、当面の入浴に関してはケアマネージャーに相談してみよう!と考えることが本当の”自立した人”の思考です。(途中で”家族”を経由してももちろんアリです。)
つまり、本当の自立とは、
- 自身を客観的に俯瞰して捉え、
- 依存先を分散させ、
- できるだけリスクを減らし、
- 考えられる限り安心・安全に生活を送ること
だと思います
これは医療介護分野だけでなく、経済的にも同じですよね。
経済的に「自立した人」になるための手段としての副業・兼業である
上述の自立の定義を考慮すると、
- 収入が不安定で、勤めている1つの会社がいつ潰れるか分からない。
- 給料もこれから減っていくか、少なくとも上がる見込みはない。(ライフステージの変化に伴って出費は増えていくのに)
というのでは、経済的に”自立している”とは言えませんよね。実際、将来のことを考えると安心なんてできないはずです。
これが時流として、「副業・兼業推進の流れとなっている」ということです。収入源(経済的な依存先)を分散させ、できるだけ自立して生活する人になるということを政府からも求められている訳ですね。
医療界で言われる「インフォームド・コンセント」もそうですが、「説明責任があるよ」とわざわざ言わなければならない状況になっていることが本来かなり不自然なことです。
同じことで、副業だ本業だと線引きしていること事態も不自然なことであり、今後は、全て含めて「仕事」という定義になって行くはずです。
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組織と労働者が仲良くなっていくチャンスにしたい
副業や兼業の推進は、会社からすれば、以前の常識が全くひっくり返るような事態なので、実務的にどうすればよいものかと困惑しているところが多いと思います。
従業員側も、副業・兼業推進と聞くと「土日にアルバイトしてまだ働くのか…しんどいな…」くらいにしか思っていない人も多いと思います。
しかし、前向きに従業員と組織が手を取り合って、これからの厳しい時代を乗り越えていくためには、相互の立場の理解と、時流の本質的な部分の解釈を共有することが大切です。
組織からしたら、以前のように優秀な従業員を雇い続けるために高給を支払い続ける方法以外にも、従業員が他から自力で稼いで来れる労働環境を提供してあげるだけで人材の流失を防ぎ、組織のコストパフォーマンスが良くなる可能性も出てきます。いつの時代も悩みの種であった人件費を削減できるチャンスですよね。
その時に、他の組織がモタついている間に素早く変化に対応し、いち早くポジションを取ることが重要でしょう。優秀な従業員はもちろん、この副業・兼業推進の波をチャンスと捉え、素早く望む環境に移動するはずだからです。
従業員からしても、自分の実力を磨いていけば、所属する組織にほとんど経済的負担を掛けずに給料アップを図ることもできますよね。
”賞与を上げろ!”と、もうこれ以上出せないと言っている組織に文句を言うだけでなく、自分で賞与分を稼げる人間になって、他のところからボーナスをもらいましょう。
”セルフボーナス”ですよ、これからの時代は。
副業・兼業推進の波を活用し、上手くシステムを構築できれば、まさしくイノベーションを起こし、一段飛ばしで企業と従業員がお互いに大成長していけるチャンスです。
過去のお互いの遺恨を水に流し(笑)、企業と従業員が協力して、立ち向かって行かなければならない時代がやって来ていると思います。