認知症 高齢者の転倒予防のリハビリ「体を鍛えることより大切な転倒予防対策」

認知症,転倒予防


認知症の高齢者の方は転倒する確率が高いことが知られています。

臨床において、認知症がある方は体を鍛えるだけでなく、他の患者さんとは違った観点での転倒予防対策が必要です。

  • 認知症の方に関わる時、どういったことに注意すれば良いのか。
  • 体を鍛える以外、どういったリハビリをすればよいのか。

ご紹介していきます。

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高齢者の認知症の症状

認知の方のリハビリプログラムを考える前に、認知症について最低限知っておくべき症状をまとめてみました。

以下の症状が様々に交じり合いながら混在しているのが一般的な認知症です。中核症状を中心に、行動の変化、心理状態の変化が現れます。

中核症状

認知症の中核を担う症状です。認知症と診断されたらまずこの症状が出現していると思って下さい。

見当識障害

居場所が分からない、現在の身の回りの状況が理解できないために、不穏活動や暴言・暴力などの行動症状に結びつき、結果転倒に至ることがあります。

理解・判断力の障害

自身の身体能力を過信したり、危険を判断できない、気が散って歩行に注意を払えないなどが代表的な症状です。

床にごみが落ちていても、健常の高齢者であれば自分の体力では転倒しそうだからそのままにしておこう、などと適切な判断ができるものです。

しかし、認知症の方は、自分の体力の把握ができないので、ごみを拾おうとして転倒してしまったり、杖を持たずに歩いて転倒してしまったりします。

実行機能障害

指示に従わず、一人で危険なこと行ってしまったり、雨や雪などの環境の変化に応じた行動ができなかったり、歩行補助具や車いすを適切に使いこなせないなどの症状があります。

行動の変化~行動症状~

認知症 行動症状

中核症状や後述する心理症状をベースに、行動に変化が出てくるようになります。これが認知症の行動症状です。

徘徊

歩きまわり、疲労が増大し、歩行能力が低下していることが多いです。

他人から見ると意味なく歩き回っているように見えますが、本人の中では「物を探している」、「家に帰ろうとしている(現住所ではなく、昔住んでいた家、職場など)」など合理的な行動であることも少なくいです。

帰宅欲求

本人が思う「家」(過去に住んでいた家など)に帰ろうと無理に長距離歩いたりするようになります。頻回に見られる症状です。

暴言・暴力

意志疎通が上手くできなくなると、力で何とかしようとして暴力的になることがあります。

暴れた結果、自身が怪我をしたり、転倒したりします。男性に多い印象があります。

昼夜逆転

時間の理解が低下し、昼夜が逆転することも多いです。夜間、暗い廊下を歩いたり、日中寝不足で体調がすぐれない中で歩行するので、転倒しやすくなります。

失禁

トイレへ急いで行こうとしたり、何度もトイレへ行くため、転倒リスクは高まります。

心の変化~心理症状~

認知症

認知症の方は多かれ少なかれ心理症状も出現しています。

私は普段、臨床で認知症の方に接していますが、この心理症状の理解がとても大切だと感じています。

不安

何度も同じ動作を繰り返したり、同じ場所に行こうとされることがあります。

自分が理解力が低下していたり、見当識がないことに対して、頭では理解できないものの、何となく違和感を感じていて、それが不安感となって表れることも良くあります。

焦燥感

焦燥感により、興奮して衝動的な行動を取ることがあります。

その他

  • 抑うつ
  • 幻覚
  • 妄想

認知症高齢者の転倒予防 対策

リハビリの現場では高齢者の方が多いため、認知症の方も少なからず対象となります。

というか、かなり多いです。リハビリにおける臨床での認知症への対応を下記に説明していきます。

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何をおいても”環境設定”が一番大切

玄関、お風呂、廊下に手すりを設置する、段差を解消するなど、注意が逸れていてもつまずかない、体力が劣っていても転倒しない工夫をすることが大切です。

移動する範囲の床に物を置かない、絨毯を撤去するなど細心の注意で環境設定を行いましょう。

スリッパも履かず、置かない様にしましょう。

離床センサーを活用

介護保健制度を利用した福祉用具貸与(レンタル)で離床センサーを自宅にレンタルすることができます。

様々なタイプがあり、上記の写真は車椅子用の座布団タイプですが、購入となると、やはり良い値段がしますね。

ベッドの横に置くようなタイプはさらにもう少し高いようです。

やはり、認定を受けておられる方はレンタルされるのが一番良いかもしれません。

徘徊予防に玄関先に置くタイプもあります。

病院・施設などではごく一般的に利用されており、ぜひ自宅でも普及してほしいものです。

車いすのブレーキ、手すりを目立たせる

移乗動作

車椅子のブレーキレバーや手すりに赤いテープを巻いたりして目立たせることで自然に支持物を掴むように誘導して下さい。

車椅子はブレーキを忘れて立ち上がったり、座ったりすると車椅子が動いてしまい、危険です。

ブレーキを目立たせて、ブレーキを掛ける癖をつける様に指導して下さい。

転んでも怪我しにくい環境調整

  • 床にクッションフロアーなどの柔らかいものを敷く
  • 夜間など、ベッドの高さを低くしておく
  • ヒッププロテクターを利用する

特にヒッププロテクターはあまり一般的に知られていませんが、転倒による大腿骨頸部骨折を防ぐ福祉用具としてエビデンスもあり、非常に有効とされています。

購入を検討される方は、介護ショップなどで聞いてみるか、楽天などのネットでも購入できます。

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 ヒッププロテクターの有効性について

リハビリでの認知症の方の転倒予防の練習

転倒に関係する因子は筋力だけではありませんが、バランス練習や動作練習を複合的に行っていくことで、より転倒しにくい体にすることができます。

特に入院中の患者さんを診る療法士は自宅環境にアプローチすることが難しい場合が多いので、下記のバランス練習、動作練習を中心に転倒予防に介入することになります。

”独歩”での歩行練習

リハビリでは認知症の方は特に、普段杖を持って歩く方や歩行器を押して歩く方でも何も持たずに歩く(独歩)練習を行います

寝室で寝ていて、居間に忘れ物を取りに行く時に杖を持つのがめんどくさい・・というのは健常者でも良くあることです。

認知症の方が杖や歩行器を忘れて歩いてしまっても、ある程度転倒しない様に、あえて何も持たずに歩く練習をします。

 

独歩で歩けそうにない方でも、少し(数メートル・数秒でも)歩けるように是非練習して下さい。

歩き始めてから人が駆け付けるまでの数秒、転倒しない独歩ができるだけでも転倒予防効果は大きいと思います。

二重課題(Dual Task)

バランストレーニングとして、二重課題を行います。

具体的には、歩行しながら紙コップに水を入れてこぼさない様に歩いたり、計算をしながら歩く練習をします。

上述のように、認知症の方が転倒するのは、注意が自身の体から逸れた場合に多いですので、わざと注意がそれる状態を作って歩行が無意識で行えるように練習します。

二重課題って?

日常生活でも健常者は歩きながらスマホを見たり、何かを考えながらでも歩いて勤務先から自宅に帰ることができます。認知症の患者さんは、歩きながら会話をしたりするのが苦手で、歩行中に話しかけると歩行が止まってしまうことが多いです。

二重課題はDual Taskとも言われ、転倒予防のバランス訓練として有効とされています。

二重課題には運動課題、認知課題とあり、運動課題は上記のように水を入れたコップを歩いて運ぶなどの二つ以上動作をすることを言い、認知課題は歩きながら100から7を引いていく計算を行う”セブンシリーズ”などがあります。

転倒予防のためのバランス練習の基本は、「その人の生活に必要な動作を繰り返し練習」することです。

なので、私は臨床では不安が強い人には認知課題を重視して行ったり、動き回ることが多いせっかちなタイプの人には運動課題を重視して行ったりしています。

移乗動作練習

トイレから車いす、車いすからベッドなど、転落しない様に、車いすの操作、移乗動作方法の定着を図ります。

しかし、言語で「こうして下さい」などと言っても伝わらず、逆に混乱を招いたり、不安や緊張を強いたりして逆効果になることがあります。

言葉で伝えようとしても伝わらないことで、教えている方もイライラします。

そのイライラを患者さんが汲み取り、リハビリを拒否されるようになったり、暴言や暴力に発展したりしかねません。

 

認知症の方も必死に病気と闘っています。上手くできない自分を歯がゆく思っています。

ノンバーバルのコミュニケーションを意識して関わると意思疎通が行いやすかったり、動作が定着しやすいです。根気強く何度も何度も繰り返して体に正しい移乗動作を覚えてもらって下さい。

バーバルとノンバーバルの違い

臨床のリハビリで運動学習の面から言っても、イメージして動作を行ってもらうことが大切です。

よって言語による指示を療法士が出し、運動や動作をイメージしてもらうことが頻繁にあります。

リハビリは患者さんとどれだけ意思疎通できるかがむちゃくちゃ大事です。

移乗動作だけでなく、リハビリの目標を共有したり、装具を使う効果を説明したり・・

 

しかし、難聴がある方や認知症の方、認知症がなくても認知機能が低下している方に言葉で説明しても、なかなか伝わらないことがあります。

その時に大切なのが、ノンバーバルでのコミュニケーションです。

バーバルはそのまま言語でのコミュニケーションを差し、ノンバーバルは言語以外のコミュニケーションを指します。

私が誰かと話をしていて、相手がしきりに腕時計を見るしぐさをすると、私は「この人は早く会話を終わらせたいんだな」と思います。

これがノンバーバルのコミュニケーションです。

 

私がオススメする臨床で使えるノンバーバルのコミュニケーションの方法には以下があります。

  • 模倣(動作を自分がやって真似してもらう。車椅子駆動の仕方なども私は横で一緒に漕いで真似してもらいます。)
  • ×、○、OK、など指でするしぐさ
  • 力を入れてほしい(筋肉の収縮を促したい)ところを軽くたたく(タッピングとも呼ばれます。)

一度試してみてください。結構便利ですよ。

リハビリは機能訓練よりも動作練習を中心に

機能面の回復を図る筋力トレーニングは、目的を理解している患者さんであれば良いですが、目的を理解できない患者さんにとってはしんどい、辛いだけです。

無理に機能回復訓練を行い、拒否される臨床家を良く見ますが、そりゃそうです。

リハビリの意味もよくわからない人にとって、「なんかしんどい、辛いことをさせるために来る人」と思われるだけでしょう。

 

目的が理解できない患者さんの場合、動作の中で鍛えたい筋肉を動かすようなリハビリを工夫して行うべきです。

少し遊びの要素を入れるだけでも反応は大きく変わることが多いです。

何か遊んでいるうちリハビリになっている、それが理想です。

まとめ

認知症がある方の転倒予防のリハビリの知識をご紹介しました。

認知症の方の対応は根気強さが必要です。なので、お互いにストレスとなる関わり合いになってしまうことが少なくありません。

しかし、認知症の方も自分の病と闘っている、ということを忘れず、その人の望んでいることをできるだけくみ取り、希望を満たす(満たせない希望なら、何かしら代わりに満足になることを探す)様な関わりをしていくことで、無条件に信頼してくれるようになったり、リハビリに積極的に取り組んでくれるようになることもります。

 

いつも言っていることなのですが、”どれだけ患者さんのことを理解しようとするか”が大切です。認知症だからと言って、その人自身を診ないで病気だけを診る、自分勝手な接し方は避けたいものです。

筆者は転倒予防の書籍も出版しています。良ければこちらも参考にして下さい。

 当ブログから出版決定!書籍「100歳まで元気でいるための歩き方&杖の使い方」

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