働いてお金を得るということ「900円の重みと永遠の5分」


今はコンビニでアルバイトをする若者が減って、働く人を集めるために時給が過去最高額になっているそうです。




近所のコンビニを覗いてみると、特に大阪市内では若い人よりも中年以降の人や外国人がアルバイトしていることが多く、求人欄に書かれている時給もひと昔前よりかなり高くなっています。

色んな業界でアルバイトをして思うこと

私は現役の理学療法士ですが、この職業に就く前に、それはもう、色んな業種のアルバイトを経験しました。

  • パン工場での流れ作業
  • アパレル販売員
  • 餅屋の製造
  • 超高級ホテルでの清掃員
  • コンビニ店員
  • 登録制の日雇いバイト

などなど・・。

意図的にアルバイトで色んな業界を経験して、自分に向いている業界を見定めようと思っていたためです。

 

どれもこれも10代後半から20代前半に経験しました。

深夜のコンビニバイト

コンビニでは、私は夜勤で働いていました。夜の10時ころに出勤して、翌朝6時までの労働です。時給は当時900円だったと思います。

 

夜中のコンビニはほとんどお客さんが来ません。深夜2時から4時くらいまではお客さんが一人も来ない、というのが結構普通です。

そんなとき、私はバフマシーンというデッカイ専用の機械を使って丁寧に床にワックスを掛け、棚の商品を全部一度取り出して棚の奥の埃を取り、また綺麗に並べ直します。店中を徹底的に掃除して時間を潰すのです。

 

深夜のコンビニで一人で黙々と、本当にする必要があるのか疑問に思いながら隅々まで掃除していると、なんともいえない不思議な気分になることもよくありました。

 

夜勤帯は昼勤帯よりも時給が少し良いですが、それでも1時間の労働で得られる対価は900円です。

1時間夢中で掃除をして、埃まみれになりながら、気が付くと誰もいない店でポツンと一人。そうやって稼いだお金は900円です。

少し休憩しようと、店に置いてあるアパレルファッション系の雑誌を手に取り、ちらっと眺めると、1着1万円もする、何が良いのか分からないようなデザインのハイブランドのTシャツが「MUST BUY!」などと紹介されています。

明らかな現実とのズレ

時給900円で働く私が、そんなTシャツを気軽に買える訳がありませんよね。

Tシャツなどという布切れ一枚と、自身の労働力とそれに伴う苦労が明らかに釣り合っていない、と思いました。

 

1万円の物を買うには、この苦しい時間を最低12時間程味わわなければなりません。

あまりにも私が今生きている現実とはかけ離れた雑誌の内容に、ただでさえ深夜に一人ぼっちのコンビニで、余計に社会に取り残されたような感覚になりました。

 

正直、コンビニ店員にやりがいなど、浅はかな当時の私には持てるはずもなく、「小遣い稼ぎ」のためだけにやっていました。

お金を稼ぎたいと思ってやっているので、5分もそこにいるだけでとても長い時間に感じます。その場にいること自体がもはや苦痛で、当時の私にとっては「労働」なのです。

 

お客さんがたくさん来て、対応に追われているときは忙しいので5分くらいはすぐに経ちますが、深夜の誰もいないコンビニでの5分はまるで永遠のように長く感じます。

深夜のコンビニでアルバイトしたことがある方なら感覚的に分かると思います。

 

一刻も早く家に帰って、すぐさま布団で眠れたらどれだけ幸せなことか、何度も何度もそう思いました。

900円の重みと永遠の5分

私は、こういった感覚を他のアルバイトでも幾度も経験しました。

明らかに自身の労働力で得られる対価と周りの世界の基準が釣り合っていない、という感覚です。 違和感がかなりありました。

働いて苦労して得た数千円で、その苦労を上回るだけの幸せや満足感を得られるものを買うことはできないのではないか。

そうとしか思えませんでした。

 

アルバイトをして労働者の立場を経験し、一方で休みの日に消費者の立場を体験する。

それを繰り返していると、10の苦労をしてお金を手に入れても、それで買えるモノはせいぜい3程度の満足感しかなさそうだ、と何となく思ったのです。

 

私が感じていた感覚をわかりやすくするために、これを計算式にしてみます。

 

仕事をして報酬として金銭を貰って、それで必要なものを買って生活する、というごく当たり前の社会生活。

これは、例えると「10苦労-3満足=7苦労」という、どうしても苦労が残ってしまうという暗黙の計算式の元に社会が動いているのではないか、ということに気付いたのです。

 

つまり私は、「この先も、働いてモノを買えば買うほど苦労し、惨めな気持ちになるだろう」と思ったのです。

 

市場に出回っているもので、少し良いものを買いたいとなれば、この永遠の5分を一体何千万回耐えなければならないのか。

いつかは乗ってみたいと漠然と思っていた数百万円するカッコいい車を所有することなんて、夢のまた夢。

死ぬまで働いても一向に手が届ないのではないか。

 

そう思うと、一体誰が作ったのかも分からない、世の中の働いてお金を得る仕組み自体が、ただただ恐ろしかったのです。

 

これから先も私はこんな世界でずっと働いて、「生きていくために物を買っていかなければならないのか」と思うと、自分の人生がお先真っ暗であるかのように感じました。

 

今まで当たり前と思っていた、いや、少ないと不満にさえ思っていた親が与えてくれていたおこづかいは、こんなにも苦労して稼いだお金だったのか、そう思うと自然と申し訳ない気持ちになり、涙が溢れそうになりました。

辛い状況にいる若い人に希望を持ってほしい

アルバイトをしている今の若い人達も同じような経験をされているかもしれません。

 

この時の私は、働いてお給料としてお金をもらって、それで生活することがまっとうな社会生活であり、人間のあるべき姿だと思っていました。

そして、それは周りのみんなが苦もなく普通に行っていることで、それをこれ程にまで苦しいと思うのは、私が怠惰であるか、残念ながら私が社会不適応者だからではないか、と本気で思っていました。

 

しかし、時間とは不思議なもので、時が経てば自分は何も変わっていないつもりでも、勝手に物事への感じ方も変わってくるのですね。

 

確かに私は未だに仕事でひどいミスをしてすごく落ち込むこともあります。

でも、10年以上ほとんど休まずなんとか社会人を続けて来れていますし、今では”永遠の5分の恐怖”を経験することもなくなりました。

 

当時、私は自分に自信がなく、とりあえず社会に出て、いち社会人の端くれとして働き始めたものの、自分の仕事における能力も、労働という社会のシステムもよくわかっていませんでした。

正確に言うと、概念としては知っていても、体感的に「仕事とは何なのか?働いて得られるお金とは何なのか?」その意味がさっぱり掴めていませんでした。

 

「右も左もわからずとも、とにかくがむしゃらに働くしかないのだ。そしてお金を得る。それが仕事であり、ヒトの人生なんだ。」

そういった想いが勝手に暗い将来像を描かせていたのだ、と今になっては思います。

 

今では900円を手にするために冷や汗をかいて”永遠の5分の恐怖”に耐えなくても、正社員として働き、当時に比べて比較的手軽に、いや、気軽に買いたいものを買えるようになりました。

 

今の生活を振り返ってみると、当時よりも明らかに惨めな気持ちを味わうことも少なく、状況は良くなっており、当時思い描いていた未来ほど暗い生活を送っているわけではありません。

むしろ、当時では考え付かなかった程に幸せなのです。

 

だから、今若くて仕事やアルバイトなどの働くことで悩んでいる人も、いつかは思ってもいないほど幸せになれるかもしれない、ということを頭の片隅に置いておいて欲しいと強く思います。

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まとめ

900円の重みと永遠の5分。

 

あの経験があったからこそ、私は金銭的報酬以外に仕事を楽しむ術を必死で学ぼうと思えたし、稼いだお金を本当にありがたく想い、すごく大切に扱うようになりました。

そして、現在の自分の置かれている状況に、心から感謝の気持ちを持てるようになりました。

今では、あの経験は今の幸せを手に入れるためになくてはならない経験だったのだ、と思うこともできるのです。

今アルバイトをしている若い人たちは、自身の状況を、自身の苦労とその対価が明らかに釣り合わないと感じ、非常に苦しく思うときもあるかも知れません。

テレビのニュースでも暗い話ばかりで、とても未来に希望を持てないかもしれません。これだけ働いて月5万円か・・とため息をつくこともあると思います。

 

でも、あなたは今、とっても大切で貴重な経験をしている、と私は言いたいのです。

 

もちろん、無理やり苦労なんてしなくても良いですが、今、あなたたちはお金のような物質的で即時的なものを得るためではなく、もっともっと永続的で根底から大切な、かけがいのないものを得るために社会で勉強しているのです。

  • 働くとは一体どんなことか?
  • お金とは一体何なのか?

これらは、頭を使って、汗を流して、身体を動かして体験することで初めて腑に落ちて理解できるものです。時には痛みを感じるときもあるし、嫌なこともあるでしょう。でも、それを充分上回るだけの対価を得られるのです。

 

若い人たちには、今感じている悔しさや辛さを乗り越えて、必要以上に悲観的にならずに、自分が輝ける場所をどんどん積極的に探していって欲しいと切に願っています。

 

「未来は自分が思うより意外と悪くないかもしれない」

そういった気持ちを、改めて持ってほしいと自身の経験から思うのです。

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