
診療報酬改定の度に報酬が減っているリハビリ分野。その中でも現在では、訪問リハビリは給料が良い傾向があるため転職先として人気があります。今回は私がTwitterで集計したアンケートなども掲載しつつ、訪問リハの今後の行く末を考察してみたいと思います。
診療報酬改定の仕組み・時期
診療報酬は、介護保険は3年ごとに改定されます。医療保険は2年に1回です。
よって、6年ごとに介護・医療診療報酬の同時改定が行われることになります。
今までの経緯から推測すると、2年毎、あるいは3年毎のそれぞれの報酬改定で様子を見て、問題がなさそうであれば、6年に一回の診療報酬でどーんと大きく改定される可能性も高いです。
私のようなリハビリ職にとって、給料に直結する診療報酬の動向は非常に気になるところです。
(実際は、働ている職員の給料を決めるのは会社、病院などの組織なのですが、やはり影響は少なからずあるでしょう。)
そんな介護・医療の診療報酬同時改定が2年後の2018年(平成30年)に行われます。
色々な憶測が飛び交い、いつも改定前は情報が混乱します。
はっきりいって、どんな前情報も推測でしかないので、当たっていないことも多いです。
しかし、国の方針は昔から一貫しており、その方針を理解しておけば、大きく外れることはありません。
国の医療・介護の今後の方針
社会保障費というのは昨今の国にとっては悩みの種で、特に高齢者が増え、公的制度が充実している日本では年々増大しています。
で、当然国としては何とかして減らしたいわけです。
実際、医療分野は医師会などの力が強く、医師業務に関わる診療報酬などは安易に減らされることはほぼないと思いますが、政界に強いパイプを持っていない療法士関係の職種は「良いカモ」です。
カモがねぎを背負っているようなものです。
しかも、この分野は疾病に対する効果判定がしにくく、リハビリでの回復なのか、自然回復なのか、客観的に判断するとどっちとも取れる場合が非常に多いです。
よって、改正の度にと言っても良いくらい診療報酬は減らされてきました。
そもそも、国は、医師は疾病を治療するのが仕事と捉えられていますが、リハビリの場合、2次障害を予防するとか、早く社会復帰させるための職種と捉ています。実際その定義でほとんど間違いないと思います。
介護は要介護者の現状を維持するのが目標であったりします。
国として費用対効果が高い(そこを充実させればより病気の人が減り、将来的に医療・介護費用の削減ができると見込まれる)分野は、
- 医師
- 療法士
- 介護士
の順になるため、どうしても療法士、介護士の分野の診療報酬は減らされる傾向にあります。
しかし、これから日本の人口は減少(すでに2004年から人口は減りはじめています。)し、税収が減少することが見込まれている中、このままいくと社会保障費は上がり続ける可能性が高く、国としては、「もう、自分たちである程度何とかして下さい。」というのを、地方自治体などに指示し始めています。
いきなり明日から「もう知らないよ!」なんて言ってしまったら、反発が半端じゃないので、年々1%~2%程度診療報酬を減らしていきつつ、地方自治体・地域での社会保障制度の分業化を進めています。
将来的には国の負担を減らしつつ、地方自治体、あるいは要介護者の家族、あるいは地域の住民で「相互扶助」しながら生活してもらうように計画が進行しています。
その一つの大きな柱が「地域包括支援センター」です。
このセンターを中心に、ケアマネ、介護士、療法士、医師がチームを組んで、地域を訪問し、要介護者やリハビリが必要な方へ援助を行っていく計画です。
よって、未だに診療報酬が比較的下がりにくいと言われている訪問リハビリ分野は、その一端を担っているためにまだ国は少しは頑張ってもらいたいのでしょう。
特に危ないのがリハビリ分野では回復期病棟です。かなりの費用をつぎ込んだわりに効果が見込めないとして、削減、減少の方向に積極的に動いているのではと推測されます。
「別に病院で高いコスト払ってリハビリしなくても、家で訪問リハビリでやったらええやん。」
というのが国の言い分でしょう。
なので、現在、在院日数の短縮は回復期病棟の大きな課題となっています。
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訪問看護ステーション・訪問リハビリの種類
訪問看護ステーションは本来、名前の通り、看護師が自宅に訪問する事業所です。
しかし、それとセットでリハビリの需要がある患者さんのところに療法士が派遣されることになりました。それが思っていたよりも需要があり、訪問看護ステーションと言いながら、実情は療法士ばかりを派遣している「訪問リハビリステーション」のようなところが非常に多いです。
訪問看護ステーションにも大きく分けて2種類あり、
- 病院併設型の訪問看護ステーション
- 独立した訪問看護ステーション
があります。
現在、訪問リハビリの需要をほとんど担っているのは、後者の独立した訪問看護ステーションです。
しかし、今後は病院併設型の訪看に移行していくだろうと推測されています。
実際に、2015年の介護報酬改定で、独立した訪看の診療報酬は僅かですが、(307→302単位/回)下がっています。
独立した訪看は民間企業が行っていることも多いため、サービスの質もバラバラで、国の力が届きにくいためだろうと言われています。
そりゃ、医師の息がより強く掛かった施設(病院)の方がコントロールしやすいですよね。
しかし、現時点では、病院併設型の訪看は数が少ないため、需要を全てカバーすることができません。
なので、国としては本当は独立型の訪看の診療報酬をガーンと下げたいところですが、それらが経営難で潰れてしまうと、リハビリしたい患者さん達の反発にあうため、様子見でやや下げる、と言う程度に収まっています。
こういった経緯があり、今回の2018年の医療・介護診療報酬同時改定で、
- 「そろそろ来るんじゃないの?訪問リハ。」
- 「もう訪リハのアドバンテージは終わり。」
などと言われているのです。
2018年(平成30年)の医療・介護同時改定で訪問リハビリは診療報酬がどう変わる?
そこで、私も今後どうなるか全く分からないので、Twitterで以下の様にアンケートを取ってみることにしました。
「2018年(平成30年)の医療・介護同時改定で訪問リハビリは診療報酬が大きく下がる?」
教えて下さい。療法士の皆様、どう思われていますか?
「平成30年の医療・介護同時改定で訪問リハビリの診療報酬は大きく下がる?」— 未来のPT (@PT50139040) July 6, 2016
アンケート結果は、投票期間を7日に設定し、まだ2日残っていますが、
投票数78人中、
- 59%が「その通り!」を選択し、
- 19%が「まだ大丈夫!」
- 22%が「診療報酬の大幅減額ではなく、訪問日数制限などの締め付けが強化される」
に投票したという結果になりました。
約8割の方が、何らかの形で訪問リハが厳しくなると予想されているようです。
国の方針を考慮すると、当然の結果かもしれませんね。
「まだ大丈夫!」と答えた残りの2割の方に、なぜそのように思うのか意見を聞いてみると、
「高齢者が増え続ける2025年まで、病院併設型の訪問看護ステーションがその需要に答えられるだけのハード・ソフト面共にキャパが整わない。
よって、現状の訪看に頼るしかなく、潰すようなことをすると国も困る。」
という意見がありました。
実際に訪問リハが患者さんからの需要がものすごく高いのは事実です。病院や施設に通うのが面倒であったり、体力的にキツイ方に訪問リハビリはすごく人気があります。
アンケートの質問の文言にも問題があったのだと思いますが、私は、実際、まだ訪問リハビリを完全に無くす方向に積極的に動いてくることはないと思っています。
ただ、やはり、供給が過熱している都心部の一部の地域によっては訪問日数が制限されたり、診療報酬が少し減ったり、今までのような運営を行えなくなる可能性は高いのではないかと思います。
よって、「訪問リハのアドバンテージがなくなって、病院や施設のリハビリと大して診療報酬や儲けが変わらなくなる」というのが丁度よい落とし所ではないかと思います。
よって、訪問リハビリ業務を行っている療法士は、「給料が病院と同程度に下がる可能性もなきにしもあらず・・」といったところを覚悟しておかなければならないかもしれません・・。(私もです。)
何にせよ、このままではいけないと国は確実に思っていると思うので、何らかの制限や締め付けを行うことはほとんど確定と言ってもいいのではないでしょうか。
また、私たちは自分たちの給料目線で診療報酬の動向を気にしていますが、国民や患者さんたちは診療報酬が下がれば安く医療を受けられる可能性が高くなります。
社会全体としてみれば決して悪いことではありませんよね。
そういった目線も医療従事者は持っておくべきだと私は思います。
まとめ
今回の記事は何かのデータを参照したわけではなく、信頼が置ける私の周りの人から聞いた話を元に作成しています。
正確性には欠けるとは思いますが、「現場の生の声」という面で少しは価値があるのではと思っています。
正確なデータや本当の政府の思惑を知りたい方は、厚労省ホームページに書いてあるのでググってみて下さい。
これは私見ですが、ああいうホームページを私はあまり進んで読む気がしません・・。
小難しい上に、公式であるが故にオブラートに包んだような表現が多すぎて、正確に周辺の関係性や意図を掴むのにかなり頭を使い、時間を要するからです。
「訪問リハは気に入らんのじゃ!」って書いてくれていればすぐに「あっ、嫌ってるんだな・・」って分かるのですが。
私と同感な方は、今回の記事の内容で大まかな流れは間違っていないはずですので、少し頭に入れておくと、療法士仲間との飲み会の席で少し「それっぽく」話せたりすると思いますよ。笑