
政府主導の働き方改革の中でも、ワークライフバランス(仕事と生活の両立)という言葉が提唱されています。
また、それを受けてか、各企業のホームページを見ても「ワークライフバランスの支援」を掲げているところも増えてきました。
ワークライフバランスとは?
今更かもしれませんが、ワークライフバランスの定義を改めて確認してみると「人生において仕事と生活の両立を図ること」とされています。
そもそも、これらのワークライフバランスという言葉は、有名な「ブラック企業」などのキーワードと同じ時期に世間で聞かれるようになりました。
私の意見では、仕事と生活の両立を図るのがワークライフバランスである、というのは、「何をいまさら・・」と思う部分もあるのが本音です。
原点に返って考えてみると、本来仕事はあくまで人生の一部であり、幸せに生活するためのひとつの”手段”でしかありません。
改めてワークライフバランスなどという言葉が出てくること自体が少し不自然です。
往々にしてあることですが、時に手段はいつしか目的化してしまいます。
食べるために働くのではなく、働くために食べる、つまり”仕事をすることが目的のような人生”を送る人が特に男性に増えてきていたのです。
私たち療法士が日常的に接する方は高齢者が多く、高齢の男性と話をすると、「仕事で精いっぱいで妻と子供に何もしてやれなかった、寂しい想いをさせた。」と後悔する人もたくさんいます。(それぐらい家族想いの方であれば、本当に何もしていないことはないと私は思います。)
それほどにまでひと昔前は生活における仕事の割合が高かったのです。実際、私の世代でも「特に男は仕事をしてなんぼ」という意識が何となくあることは否定できない事実です。
では、なぜ今、改めてワークライフバランスが至る所で言われているのでしょうか?
ワークライフバランスが今注目されている訳
筆者は、ワークライフバランスという言葉が注目されている背景として、大きなものではテクノロジーの進化が挙げられるのではないかと思います。
今のようにメールやインターネット、クラウドサービスなどが普及していない時代の仕事では、たとえ、上司や取引先にちょっと報告・連絡をするだけでも電話を掛けたり、手紙を送ったり、それは手間の掛かることをしなければなりません。
しかし、今では会議では、いちいち全員が特定の一か所に集まらなくても自宅に居ながらでもSkypeを使えば済みますし、簡単な問題解決の相談であれば、チャットアプリを使えばすぐに多数の人に意見を求めることもできます。メールで上司への簡単な報告も済ますことも可能です。
クラウドサービスを使えばデータ容量の多い書類をわざわざ郵便やFAXで送らなくてもワンクリックで送信できます。
また、仕事で何か分からないことがあっても、図書館に行ったり辞書を持ち出したりする必要もなく、ネットで素早く情報を得ることもできます。
人類の働き方が大きく変わった時代は歴史上、過去にもあり、産業革命が分かりやすいと思います。今までの手作業でしていた仕事が機械でできるようになり、飛躍的に生産性が向上しました。
今、第二次産業革命ともいえる事態が起きているのではないでしょうか。
要するに、今までではどうしても効率が良くないため、ある程度の仕事をすると人生の内結構な時間を割く必要があったのが、今ではそれほど時間を割かなくても効率よく仕事ができる環境が整いつつあるのです。
ひと昔前はサービス残業なんて当たり前で、暗黙の了解としてそれが普通の仕事の内に含まれていたのは言うまではありません。サービス残業を無くそうなんて話は現実味がなく、考えることもできなかったはずです。今は真剣に議論され始めているのをみなさんも感じているはずです。
本当のワークライフバランスとは?
私はこの言葉を初めて聞いたとき「“今”自分が割いている仕事の時間を減らして、家庭や自分の充実した人生のために時間を割こう」という言葉であるかのように感じました。
しかし、よく考えると実際は少し違うのではないかと思います。
“ライフ”という単語が誤解を生む原因になっていると思うのですが、ライフは”生活”と訳することもできるし、”人生”と訳することもできます。
ワークライフバランスの単語のライフを生活と訳すと「”今”の生活で仕事以外の面を豊かにする取り組みを行うべきだ」と考えてしまいます。
しかし、実際は”人生”と訳すべきではないでしょうか。生活ではなく”人生と仕事の両立を図る”と考えると私はしっくりと来ます。
つまりは、今だけではなく、長い視点で見た人生と仕事の両立を図るための取り組みが重要だと思うのです。
人生のキャリアプランで、特に若いうちは、仕事に熱中してキャリアを構築するための勉強や実績を積むことも重要です。
これを「今」だけで考えて疎かにしてしまうと、後々になって、スキルや実績がないために生活のために非効率な仕事をせざるを得ない、ということにもなりません。
特に20代、30代はキャリアの形成において重要な時期であり、一時的に生活を忘れて仕事に没頭する時期があっても良いのではないか、それが却って長い目で見たワークライフバランスの形成に役立つのではないか、と思います。
将来したい仕事があって、そのために今どうしても勉強しておきたいことがある。または、実績を積んでおきたい仕事がある。
そのためには今の生活を一時的に後回しにしてでも、仕事に没頭して経験を積むことが重要かもしれません。
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間違ったワークライフバランスの例
例えば、あるサラリーマンが、新規部署の立ち上げに関わっているとします。
骨の折れることばかりで、休日もそのために仕事をしていることが多い。家で子供たちの相手をしている時間もありません。
そこで「ライフワークバランス」という言葉を聞いて、「そうだ、仕事は人生の一部だ」と改めて思い、仕事に割く時間を見直す。できるだけ今ある仕事を効率化しようとするでしょう。
しかし、いくら効率化しても後から新しく片付けなければならない問題は山のように出てきます。そうなると、それらを処理するための時間がどうしても必要になります。
そうすると「これではライフワークバランスも何もない・・そもそも、私は家庭のために働いているのだ。仕事のために家庭を犠牲にするのは本末転倒だ」と思い、上司に相談し、部署を立ち上げるチームから離脱してしまう。
これは本当のライフワークバランスを考慮した判断なのでしょうか?
私は違うと思います。
今後の長い人生で、自分のしたい仕事をするために、転職しようとしたとき、実績があるのとないのでは大違いです。
(参考)簡単で効果的!療法士の履歴書(自己PR)の書き方(第二新卒向け)
組織からチャンスを貰い、新規部署の立ち上げに関わることは、他の人では成し得ない大きな実績になるかもしれません。もし、今より効率よく稼げる分野に転職を考えたときにも、履歴書の自己PR欄に堂々と書ける素晴らしい経歴です。
こういったときには、その時は生活を少し後回しにしてでも、直面する仕事に一生懸命取り組んで実績を作った方が、逆に今後の人生において生活に余裕ができるかもしれませんよね。
後々の人生で良い仕事に就ける確率も高くなり、人生においてのライフワークバランスを考えた働き方になります。
ほんの1年間手を抜いてしまったために10年苦労する。
これでは人生のライフワークバランスを考えた働き方とは言えないと思うのです。
まとめ
あなたが今している仕事は、長い目で見て「ライフワークバランス」を考慮したものでしょうか?
人生のキャリア構築という視点からもライフワークバランスという言葉を捉えると、一時的に生活を後回しにして仕事に没頭することは、あなたの人生にとって非常に有意義なことかもしれません。
それが後々にあなたの人生を輝かせる財産となります。
今、将来の自分のために少し大変な環境で仕事を頑張っている方に少しでもこの記事が参考になることを切に願っています。