
高齢者になっても働きたいという人は、平成25年内閣府の調査では44%で、約半数の人が65歳以上でも働き続けることを望んでいるそうです。素晴らしいことですね。
高齢者の定義が70~75歳まで引き上げられる
2017年1月5日、高齢者の定義を従来の65歳から75歳に引き上げる旨の提言が日本老年学会から提言されました。
詳細の内容は、現状では65歳以上と定められている“高齢者”の定義を75歳~89歳とし、65~74歳を“准高齢者”、90歳以上を“超高齢者”と区別するとのこと。
理由は「昔よりも高齢者が身体的に若返っていることがデータ分析によりはっきりと分かってきたから。」だそうです。
・・・本当にそれだけでしょうか?
このご時世、国が医療費削減と年金受給年齢を引き上げたがっていることをみんな知っています。
国民医療費は1989年度の約20兆円から2016年度は42兆円を超え、約2倍になっています。今後何かしら国として手を打たなければならないことは明白です。
現在の医療費は、原則、
- 70歳未満は3割
- 74歳までは2割
- 75歳以上の後期高齢者は1割
負担になっています。
高齢者の定義を65歳から75歳に引き上げることで、75歳未満は全員現役世代とみなされ、ゆくゆくは医療費3割負担を目指しているのでは、と言われています。
また、現在の年金受給年齢は65歳ですが、75歳に引き上げると10年分の年金が削減されます。今後日本では高齢者がどんどん増えていくので、1人10年分の年金が浮けば、何兆円もの予算が削減できると推測されます。
高齢者はもっと長く働くようになる!
私がこのニュースで一番気になったのは、年金受給額が引き上げられることで、間接的に高齢者の働く期間が今後さらに長くなることがほぼ決定することです。
年金がもらえる年齢まで現役として働かないと、生活することが難しい人が多いのが現状でしょうから。
そもそも、貯金が充分にある場合でも、お金の心配なく老後生活を過ごすためには「いざとなれば働いて稼ぐことができる」というシステムが理想です。
平均年収が下がっている現在の日本の今後のことを考えると、もっと貯金できる人は減るだろうことが予測されるし、今後はさらにそういったシステムの整備が必要不可欠になってきます。
高齢者の就業率は年々増加傾向にある
現在、高齢者65~69歳の就業率は、男性が50.5%、女性が30.5%。参考)総務省統計データ
これは年々増加傾向にあり、政府の高齢者雇用促進計画が順調に進んでいる結果と見て取れます。

2013年4月1日に「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」(高年齢者雇用安定法)が改定され、以前は「60歳定年」だったのが、基本的に希望者全員を65歳まで雇用することが雇用主に義務付けられました。
ここで気になるのは、高齢者はどんなところでどんなふうに働いているのか?です。仕事を毎日している私達としては、電車通勤だけでも結構体力的にしんどいことも多いですよね。
さらに、
「年を重ねても現役と同じように働くって結構大変じゃないの??」
って思いませんか。
私は思います。高齢になって、仕事を続ける人はどんな仕事をどのようにしているのでしょうか?
高齢者の雇用形態
60歳以上の雇用形態を総務省のデータを参考に調べてみると、非正規雇用の雇用形態の割合は、
- 60~64歳で57.1%
- 65~69歳で74.4%
となっており、60歳を境に非正規雇用の割合が大幅に上昇しています。
厚生労働省の「国民生活基礎調査の概況」によると、他の年代の非正規雇用の割合は、
- 男性10代では非正規雇用率が約5割
- 男性20代前半になると3割
- 男性20代後半以降は1~2割程度
60歳代に入ると急激に非正規社員率が上昇していることが分かります。
「非正規雇用が4割」の陰に高年齢者雇用安定法の改正
「労働人口における非正規雇用の割合が急激に増えている!」というニュースを聞いたことはありませんか?
非正規雇用が増えると不安定な生活を送っている人が増えていることをほぼ意味し、巷ではアベノミクスがこういった事態を招いたという認識を持つ人が多いと思います。
しかし、調べてみると、非正規雇用者が労働人口の4割を超えた時期は、この高年齢者雇用安定法が改正された時期と重なります。
つまり、今までは定年だったのが、60歳以上の非正規雇用が増加し、結果として非正規雇用の全体の割合が増えたのでは?とも解釈できます。
そう考えると、一概に非正規雇用者が増えたことは悪いことではないのかもしれません。高齢者が希望通りに働ける環境が整ってきていると解釈することもできるからです。
高齢者はどんな仕事をしている?
高齢者の非正規雇用が増えた、ということを書きましたが、では、具体的にどんな仕事をしているのでしょうか。
内閣府平成26年度版高齢社会白書には、継続雇用された人の割合は81.4%と書かれています。
つまり、高齢者のほとんどは以前働いていた職場の仕事を高齢者になっても続けている、ということです。
体力がないと難しそうな仕事・職種でも、管理職や配置転換により、高齢者が働きやすい環境を提供する企業が増えてきています。
問題はないの?(課題)
物事には光と影の面が必ず存在します。
上述のように、日本では高齢者が働ける環境が名実共に揃ってきているのが現状です。しかし、問題・課題になっていることをあえて確認することで本当の高齢者の雇用の実情が見えてきます。
ちょっと考えてみましょう。
全ての人が高齢後も働ける訳ではない
就業先として「以前の会社で継続して雇用してもらう」という形で働き、給料をもらっている人が多いです。
これは「再雇用」という形で条件を見直して雇ってもらっているということなので、企業の規模によっては当然全ての人が再雇用してもらえない、ということもあるでしょう。
高齢者が全く以前やっていた仕事と関係のない仕事に就くのは大変困難で、だからこそ8割以上の人が再雇用されて働いている、という現実があります。
給料は下がる傾向にある
また、再雇用の際に時間の融通が利きやすい非正規雇用形態になることが多く、総じて給料は低くなる傾向があります。
高齢者以外にも影響がある
また、企業が高齢者を定年とされていた60歳以降も継続して雇うことで、
- 若い世代のポストが減る
- 企業が新入職員を雇いにくい
- 若い世代が経験できることが減る(成長の芽を摘んでしまう)
などの問題があります。
企業の業績は一定、もしくはやや下降線を辿っている中で、高齢者を再雇用することで、若年者とポストや職能経験、給料を奪い合う図式がさらに強くなる、とする傾向もあります。
今後の高齢者の雇用を考える
現在は現役世代の人の働き方も変わってきている最中にあります。また、上述の内容は日本だけのデータを元に考えた考察です。世界の状況も踏まえて考察してみましょう。
スポンサーリンク
ネットビジネスは高齢者に向いている?!
「ネットビジネスはうさんくさい・・・」
と思っている人も多いと思いますが、実際はそうでもありません。(もちろん月100万円簡単に稼げる!とか楽して稼げる”なんて謳っているところにはうさんくさいものもありますよ。でも、それはどのジャンルの仕事でも同じで一定数は存在しているのが普通です。)
ちゃんとしたビジネスとして運営しているところもたくさんあります。
ネット通販だって世に出てきた頃はみんな怪しんでいましたし、うさんくさい販売サイトも多かったです。同じようにネットビジネスもまだ最近社会に出てきたところなので、混沌とした状態ではあります。
リモートワークや副業(最近解禁するとの動きが世間的に強くなってきています。)、こういった形のネットビジネス系に高齢者が進出すれば、面倒な通勤もなく、体調を考慮しながら比較的自分のペースで進められます。かなり合理的だと思います。
ネットビジネスには、ほとんど無限ともいえる数々のビジネスモデルがあります。
主なものでは、
- サイト・ブログ運営
- クラウドソーシング
- コピーライター(ネット記事作成代行)
- 代行サービス(自身の技術・技能をネット上で販売し代行する)
- ネットショップ
などがあります。
自分の店を持ちたい!と思う人はネット上でなら、BASEというサイトを利用すれば、費用や専門的な知識がなくても、ネット上でショップが開けます。
また、モノを売らないフリーマーケット【ココナラ】 を使えば、絵を描くのが趣味の人なら自分の絵を売ったり、色々な持っている技術・スキルを販売することもできます。
私は実際に現在、こうやってブログを書いてわずかですが収入を得ています。
”子供叱るな来た道だもの、年寄り笑うな行く道だもの”
近い将来、私たちもいずれ老後を経験します。全く他人事ではありません。
今のうちからブログなどを書いて収益化の練習をしておくことで、自分が高齢者になっても収入を得るための手段を磨いておく、というのも一つの老後対策の手かな、と私は思っていたりします。
恐らく今ブログを収益目的も兼ねて運営している人たちはみんな近いことを考えているはずです。
よって、そういった人たちが高齢者になる30年後くらいにはネットで老後の主な収入を得ようとする人が確実にたくさん出てくるだろうと思います。
現時点では稀有な事例ですが、実際に現在でもすでにLINEスタンプの販売で収入を得ている高齢者もいるそうですし。
高齢者は体力的には以前の様にはいかないものの、”あばあちゃんの知恵袋”という言葉があるように、長年蓄えられた知識や経験は卓越しています。
若い人は今まで通り企業で働いて、それを支援するための、
- おばあちゃんの育児の知恵が書かれたがブログやサイト
- おじいちゃんの仕事の流儀やコツを語るコンテンツ
などがあれば非常に面白そうですし、ポスト争いや新卒の雇用減少に影響は出ません。
古来より世界中の国で、高齢者は口頭で伝統や生きるための知恵を下の世代に教えてきた歴史があります。
ネットという、口頭よりも爆発的にレバレッジの効く手段が登場して世に定着すれば、高齢者は文字通り”有り難い”知恵を授け
てくれる救世主的存在になり得ます。
今は、ネットのブログなどの情報発信で収益を得るビジネスモデルがGoogle(Googleアドセンス)によって提供されており、ほとんどそれしかなく、一択というような状態です。
※)このビジネスモデルは知っている人は知っていると思いますが、自身のブログサイトなどに広告を貼り、閲覧者が閲覧・クリックすることでブログ運営者にGoogleが広告収入を支払うシステムです。
今後、国がこういった視点を持って、政府がネットビジネスや広告収入のビジネスモデルを後押したりすれば、現存のGoogleアドセンスよりもっと収入の得やすいビジネスモデルが誕生するかもしれません。その頃にパソコンを使う高齢者が大半になっていれば、爆発的に広まる可能性もあると思います。
「今までの職業経験やコツをブログやサイトに書いて下さい!報酬をお支払いします!」
と言われたら、私が老後の生活資金どうしようかな、と悩んでいたら絶対書いてみると思います。家で孫を見ながら収入を得られるし、わざわざ遠くの勤務地まで毎日出勤する必要もありませんしね。
もちろん、多くの人に見てもらうためには読者の状況を踏まえた視点が必須なので、現在に通用しないような昔の知識を書くだけでなく、「現状を調べて、過去の経験を踏まえて書く」というような工夫が必要だとは思います。
そうなると、新しい世の中の流れを勉強しなければ記事を書けないし、思考をフル稼働するので、頭の体操にもなります。勉強のために若年者との交流も自然と生まれるでしょう。
メリットは一杯ありそうです。
また、ネットを使ったマッチングサービスを高齢者自身が考えることで痒いところにも手が届くサービスを提供できる可能性もあります。
この前の記事で書いた、相乗りマッチングサービス”あいあい自動車”などは現役世代が考えたものですが、素晴らしいと思います。
もっと困っている人達が手を取り合い、協力して問題を解決できるようなマッチングサービスが生まれると良いと思います。
その時に、今までは間接的だった高齢者の意見を直に反映したサービスが生まれる可能性も充分あると思います
高齢者自身が高齢者のために考えたサービスなら、今は顕在化していない需要を掘り起こすような細かな配慮の行き届いたものを考え出せるのではないでしょうか。
韓国では子供に老後のお金を貰っている人が多い
少し視点を変えて世界の事例もご紹介します。
韓国では高齢者は自身の子供の育児や家事を手伝って、子どもから生活のためのお金を貰っている高齢者も多いようです。他の国は公費(年金)などが高齢者の収入を占めることがほとんどです。
韓国は儒教の文化を持つ国なので、親や年配者を大切にする国ならではだとは思います。
日本も韓国程でないにしろ大陸文化の影響を多分に受けているので、今後は日本もそういった方向に流れていく可能性もなきにしもあらず、です。
実際に日本でも昔は子どもが働いて家にお金を入れる、ということが普通に行われていました。核家族の増大に伴いそういった風潮は自然と無くなってきているのが現状だと思います。
このモデルでは、結局子供世代の収入が安定しているかどうかが鍵を握っているのではないでしょうか。
高齢者が働くことでもっと素晴らしい世の中に!「仕事は最高のリハビリ」
高齢者が働き続ける世の中に変わっているというと、「いつまで働かせるんだ!」という声も聞こえてきそうだし、実際私のように現役世代は、「できれば老後はゆっくりしたいのに・・」と思っていると思います。私も含めて(笑)。
しかし、私は仕事柄、高齢者とたくさんお話しますが、仕事を持つということは、最高のリハビリになります。つまり精神と身体のために非常に良いことだと思います。
なぜか?
ストレスと言う言葉がありますが、ストレスって「負荷」のことで、仕事をしている状態はストレスを発生させることに他なりません。定時に出勤しなければならないし、間違えると周りの人に迷惑を掛けるし、緊張の連続です。
しかし、仕事をしていない人は「生活に張りがない」とよく言います。
ストレスが掛かって緊張している状態、つまりは仕事をしている状態、それこそがまさに「生活に張りがある状態」です。仕事をしていると自然と心と体に適度な負荷が掛かり、生活に張りが生まれます。
冒頭の部分で、高齢者は「約半数が働きたいと思っている」というデータがあることを書きましたが、その理由は多くは老後のお金の不安からだと思います。
しかし、実際は、
- 働いて社会や周りに少しでも貢献したい
- 生活に張りを持ちたい
- 自身の特技や知識を活かしたい
こういった気持ちが多分にあることは、高齢者と毎日話をする仕事に就いている私からすればデータなど見なくても明らかなことです。
まとめ
人間は”無い物ねだり”をしてしまいがちな生き物です。
働いている時は働きたくないと思うし、働かなくてよくなると逆に働きたいと思うのが人情かもしれません。
そういったことも踏まえると、究極的には、健康を維持し、定年を向かえても自由に働けて、嫌になったら辞めることもできる社会に向けて動いていくことが今から必要ではないでしょうか。
そのためには、だんだん高齢者が働ける環境にはなってきていますが、再雇用できない人の問題など、解決していかなければならない課題もたくさんあります。
これはなにも高齢者だけの問題ではありません。
今、「老後に不安がない子育て世代」なんていないんじゃないでしょうか?私も含めて。
そういった不安を少しでも解消するためには、既存の方法論だけに捉われず、ネットビジネスの今後の可能性を追求したり、色んな方向性を探っていく必要があるのではないでしょうか。
新しい可能性を真剣に探ることで、「まだまだ社会は良くなっていく!」という現役世代・若者のやがて来る未来への希望や閉塞感の打開にもつながります。
高齢者の問題を考えることは若者にとってもメリットがたくさんあります。高齢者にいずれ誰もが必ずなります。
どこまでいっても一本の線で繋がっているのです。
年齢に関係なく、皆が仕事を通して充実感や充分な収入を得れるシステム作りはまだまだ始まったばかりです。
私は明るい未来の予測だって考え方次第で十分にできると思っています。今後に期待ですね。