
私は30歳代男性ですが、20代の女性のリハビリを担当した経験が何度かあります。
何かと物騒な世の中です。男性理学療法士が若い女性の担当になった時に注意すべき点をまとめました。
「満員電車に乗ったら、両手でつり革を持っておけ・・」
サラリーマン歴40年の私の父の名言です。笑
痴漢冤罪(ちかんえんざい)から身を守るために、サラリーマンのプロフェッショナルである父が身に付けた「できる男の処世術」がこの言葉に集約されているのではないでしょうか。
何も冤罪は満員電車の中だけ注意していればよい訳ではありませんよね。
特に私達のように「身体を触る仕事」は、セクハラ・冤罪と隣り合わせであると私は常日ごろから危機感を持って臨床に臨んでいます。
昔のようにリハ職が「先生、先生」と奉られて、特別扱いされていた時代はもう終わっています。
(まだそんな感覚でいる療法士は多いように思いますが。)
これからはリハ職も冤罪に対して自衛していく術を身に付けていくことが必須になっていくでしょう。
リハビリの対象は多くが高齢者
私達がリハビリをする対象者はほとんどの場合が65歳以上の高齢者です。
しかし、ごくまれに20歳~30歳代の若い女性が入院して来て担当になることがあります。
理学療法士は体を直接触る仕事なので、どう接すれば良いのか、男性セラピストは少し戸惑ってしまう部分もあると思います。
私の経験を元に、どのように接すると変な誤解を招いてしまわないか、参考までに以下にご紹介します。
若い女性の入院原因で多いのは?
「どのくらいの確率で若い女性の担当になる可能性があるの?ほとんどないんじゃない?」と思った方も多いと思います。
まずはそこらへんを考えてみましょう。
ネットで検索してみましたが、20代は出産トラブルとバセドウ病で入院する方が多いとか。正直あまりリハビリの出番は少ない分野です。
私が5年回復期病院に勤めていて、若い女性が入院してきた原因はほとんどが以下でした。
- 交通事故
(車・バイク、自転車)
ごくまれに、
- ギランバレー症候群
(疫学:人口10万人に対して1.15人の発症率、平均年齢39.1±20歳)
の若い女性の方がいました。
45歳以上の女性であれば、脳卒中で入院される方も多かったです。
上述は病院の場合ですが、訪問リハビリでは先天性の疾患でリハビリを受けられる若い女性もいます。
若い女性を頻繁に担当することは決して多くはありませんが、担当する可能性が全くない訳ではありません。その時に慌てない様に、今のうちから少し考えておいても損ではないと思います。
交通事故、とくにバイクで転倒した場合には鎖骨を骨折することが非常に多い
若い女性は交通事故で病院に入院してくることが多いです。
しかも、バイクに乗っていて転倒すると、肩を地面に直接打っても、とっさに地面に手を突き出しても、強烈な衝撃が上腕骨を介して鎖骨に伝わり、鎖骨を骨折してしまう方が非常に多いです。
鎖骨が骨折した方は、その後整復して保存療法で治療される場合が多いです。
骨折した部位を整復・固定して鎮痛剤が処方され、経過観察しながら少しづつリハビリで周辺筋肉を動かしていきます。
しかし、鎖骨は呼吸をするたびに動く胸郭の一部です。息をするだけで痛む場合も多々あります。
そして、鎖骨の下には大胸筋があり、この筋肉が凝っている(過緊張状態になっている)ことも大変多いです。
そこで、高齢者であれば鎖骨の下あたりを徒手的にマッサージすることも多いのですが、若い女性の場合、安易にすべきではありません。
(もちろん、高齢者であれば安易にしても良いという訳でもないですが。)
セラピストの”セクハラ”ニュースが増えてきている
この前も「柔道整復師が施術中に若い女性の胸を触った」というニュースがありました。
最近こういった類のニュースが増えています。
私はニュースを見た瞬間、自身の経験から「交通事故で鎖骨骨折した患者だったんじゃないか?」と何気なく思い、本当に自身にいつ起こってもおかしくないニュースだな、と思ってぞっとしました。
どんな情報でもそうですが、自身が得る情報は受け取る時に自然にフィルターが掛かってしまっています。
これは私が同業者であるために、自然に施術者目線というフィルターを通してニュースを見てしまうがゆえに思ったことですが、事実はどうなのかわかりません。
施術者が本当にセクハラ目的で行為に及んだんだとしたら、本当にひどい話です。
被害女性が可哀想でなりませんし、この施術者は後世のセラピスト達に大きな負の遺産を残したことになります。
最悪の所業です。
そんな最悪の所業を何気なく行ってしまわないために、男性セラピストが若い女性のリハビリをするときに気を付けておきたいことを以下に記します。
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1.初めに男性セラピストが担当でも良いか患者さんに聞く
男性が担当すること自体にあまり良い気持ちを持たない女性も多いと思います。
私達の職場には女性のセラピストもたくさんいる場合が非常に多いです。
担当を他の女性セラピストに変わってもらうことができないか、上司や周りの人に相談してみるのが一番の得策だと思います。
2..マッサージ以外の方法を考える
職場のマンパワーの状態によっては、どうしても担当せざるを得ない場合もあります。
その場合でもマッサージはできるだけしないほうが良いです。
本当にそのリハビリにマッサージが必要ですか?
治療上、筋緊張を落とす必要がある場合、マッサージ以外にもストレッチなどで筋の緊張を落とすことは可能です。
- 臀部周囲
- 胸部周囲
は特にストレッチで緊張を落とす様にしましょう。
あとは、セルフマッサージの方法を自分自身でこのようにやりますと教え「テレビを見ながらでもこうやって胸をほぐしておくと良いと思います。」と伝えれば充分です。
惰性でマッサージをリハビリの繋ぎの時間に行ってしまっているセラピストも多いです。
マッサージの意義を考え直すよい機会になります。
3.どうしても触る必要がある場合は説明する
例えば、バイク事故でも転倒のしかたや衝突の状況によっては、脛骨・腓骨・大腿骨骨折や骨盤骨折をしている可能性も十分にありえます。
その場合は、リハビリで殿部周囲を触らないということはほぼ不可能です。
リハビリ上その必要性が出てくる可能性が非常に高い。
触る必要がどうしてもあるなら、きっちりと「なぜ触る必要があるのか?」説明してからにすべきです。
これって、本来は女性であれば年齢に関係なく行っておくべきことなんですよね。
年齢をいくら重ねようが、女性はいつまでも女性です。
デリケートな部分を触る必要がある時は、しっかりと説明してから施術すべきだと私はいつも思っており、実際にそうしています。
なので、若い女性だからといって特別に何かすることはなく、いつも通り説明して触っていました。
4.触る時は恥じずに堂々と!
個人的にはここが一番重要だと思います。
当たり前ですが、私達が患者さんに触らせて頂くのはリハビリするためです。
何も後ろめたいことはありませんし、恥じることはありません。
触る必要があるなら、しっかりと説明し、堂々と触って下さい。
変に若い女性だからと意識し過ぎて、オドオドしていると余計に気持ち悪く感じる女性が多いそうです。
周りの女性に聞いてみてもそのように皆さん口を揃えて言うし、私もそうだろうと思います。
まとめ
「リハビリは訴訟を避けるためにもエビデンスを提示する必要がある(リハビリの効果がなかったとしてセラピストが訴えられることが他国であるため)」
と言われていますが、セクハラ・冤罪対策はほとんど言われることがなく、不思議に思います。
こちらも同様に訴えられる可能性はあります。
悪気が無かったにしろ、相手がセクハラと認識したら、あなたに非があると思われても不思議ではありません。
当たり前のことかもしれませんが、そういったことにならないために、
- 担当を女性セラピストに変わってもらう
- マッサージ以外の方法を考える(本当にマッサージが必要かよく考える)
- 触る場合は説明をしっかりと行う
- 触るならオドオドしない!
という冤罪対策を意識しておくことがあなたと相手を守ることになります。
一度リハビリとセクハラ・冤罪について考えてみてはいかがでしょうか。