
私は医療従事者(理学療法士)でありながら、かれこれ15年ほどの喫煙歴を持ちます。
日々、患者さんに偉そうに健康のことをアドバイスしながらも、自身は禁煙すらできない情けない人間でしたが、今回ようやく禁煙に成功したので、その経緯をご報告します。
私は今回禁煙するにあたり、色んなネット上の禁煙サイトを見ましたが、どれも医療従事者としては「???」と思うところがあったので、ちゃんとした禁煙情報をここに記しておきたいと思います。
私の喫煙状況
まず、私の喫煙状況をご報告します。
今での喫煙状況によって禁煙成功率が大きく異なると思うので、参考にして下さい。
私の喫煙歴は、
- 20歳から喫煙開始
- 15年間、1日1箱半(30本)吸う
という状況でした。
私が煙草に興味を持ったきっかけは、ニルヴァーナというバンドのカート・コバーンというボーカリストをビデオで見たことがきっかけでした。
煙草を吸っている姿がめちゃくちゃカッコいいんですよねぇ・・・。

こんな姿に淡い憧れを持って吸い始め、始めはムセながらでも何ともない様な顔をして吸っていました。
あぁ、青い想ひ出・・・
しかし、私が煙草を咥えたところで伝説のロックスターになれる訳はなく、ただヤニ臭いニコチン中毒者になっていくだけでした。
理学療法士になってからは、病院勤務では基本的にどこでも敷地内禁煙です。
昼休みになると、急いでロッカーに駆け込み、制服から私服に着替え、ダッシュで近くの公園まで煙草を吸いに行っていました。
急いで吸って、また制服に着替えて病院内の社員食堂で昼ご飯を食べるのです。
忙しいこと忙しいこと・・・。
禁煙しようと思ったきっかけ
自身の経験から言うと、禁煙成功のためには、禁煙しようと思うきっかけが非常に重要だと思います。
私は前々から
- お金が持ったいない(煙草代およそ毎月1万8千円)
- 呼吸が苦しい気がする
- 臭い自分がイヤ
- 煙草を吸い過ぎると頭痛が酷い
などは常日頃から思っていましたが(恐らく多くの喫煙者は同じようなことを思っていると思います。)、なかなか禁煙には踏み切れませんでした。
これらの理由だけでは、思い切って禁煙できない人も多いと思います。
そんな私が禁煙するきっかけとして決定的だったできごとは、「家族でディズニーランドへ行ったこと」でした。
先月家族でディズニーランドへ行った時に「もうこれは煙草辞めないとあかんわ・・」と強烈に思いました。
ディズニーランドは「夢の国」です。
当然、煙草を吸って周りに副流煙で健康被害をまき散らす存在を野放しにはしておきません。
喫煙者はパーク内に数か所の喫煙ルームがあり、そこまでダッシュで走って煙草を吸いに行くしかありません。
もちろん、その間は待っている家族も身動きをとることができません。
なので、喫煙者が「夢の国」ディズニーランドに来た際には、頃合いを見計らって、
「20分で帰ってくるから!」
と残された家族に告げ、風の様に全速力で人ゴミの激流を駆け抜けて喫煙ルームを目指す必要があります。
喫煙ルームは異常なほど煙が充満しています。

「ごㇹツ、グㇹぉぉ!」
などと喫煙者同士の煙でムセながら、まるでお腹が空いた肉食獣が肉をむさぼるように煙草を吸っています。
脳裏には待たせている家族のことを想いながら。
そうこうしているうちに、
「しまった、残り5分しかない!」
早々に煙草を灰皿に捨てて、煙草の煙でまるで「燻製」となった喫煙者は、再び人ごみの中を走り抜けて家族を探しに行きます。
私はこれを数回繰り返すうちに、もう本当に心身ともに疲れ切って「もうこんなことしてたらあかんわ・・・」と思い、禁煙することにしました。
他にも、東京駅の地下に喫煙所があるのですが、人がやっと立てる程のスペースで、そこに5人だけ横に並べるようになっており、
- 狭い
- 臭い
- 苦しい
三拍子そろって喫煙者を苦しめます。まるで牢獄です。
もう本当に「私は何をやっているんだろう??」と思わざるを得ませんでした。
頭で理解するよりも、身を持って下らないことに時間を使っていると体験しないと禁煙しようと思わないと思います。
今までの私の禁煙 失敗歴
私も多くの喫煙者と同じ様に今まで何度か禁煙を試みては失敗を重ねてきました。
その経緯をここに記しておきます。
ニコチンパッチ(ニコチネル)
同じく喫煙者である父親が禁煙外来で貰って来たニコチンパッチ。
このパッチは、ニコチネルと言い、ニコチンを皮膚から吸収させることで、ニコチンを煙草から摂取する習慣を失くそう、というものです。
煙草が辞められない理由には、
- 身体的依存(吸いたいという衝動:ニコチン中毒)
- 精神的依存(何となくリラックスするなど)
があって、私は恐らく後者の精神的な依存が強いタイプで、煙草を吸っていると、何とも言えないリラックスした気分になるのが好きでした。
ニコチンパッドを使用すると身体的依存は確かに軽減して、そこまで”ニコチン切れ”の症状の「焦燥感」がありませんでした。
この時に意思が強い人であれば辞められるのではないかと思いました。
しかし、意志薄弱の私はニコチンパッドを身体に張ったまま煙草を吸うという愚行を犯してしまいます。(結構喫煙者あるあるだと思います。)
少々気持ちが悪いだけで、精神的なリラックス効果はありました。
よって、ニコチンパッドを使っても、「煙草には精神的なリラックス効果がかなりある!」と再確認し、また煙草への依存を強めてしまった私でした。
電子煙草
電子煙草とは、専用の液体リキッドを加熱して発生する蒸気を吸うものです。
煙草の葉を燃やして煙を吸う訳ではないため、体内に発がん性物質のタールが蓄積せず、ほとんどの液体リキッドにはニコチンも入っていません。
我が家に二人目の子供が生まれたときにこの電子煙草を購入し、決意新たに禁煙を試みましたが、煙草と全然違うんですよ。
煙草は吸った時に喉に心地よい(?)刺激があるのですが、この電子煙草は口の中に「煙草風の味」がふわっと広がる感じでした。
喉までガッと来ないんですね。
電子煙草を吸っても結局何か物足りない気がするんです。
逆に禁煙中は電子煙草を吸うことで煙草を強烈に思い出してしまうため、余計に吸いたくなったりもしました。。。。
書籍「禁煙セラピー」
というような、ライトマインドコントロール的な内容でした。
このようなマインドコントロールは大歓迎なので、私はまな板の上の鯉状態で、ガッツリとマインドコントロールされる気でいたのですが、結局、「この本を読みながら煙草を吸っている」という何とも皮肉で不思議な状況にいる自分に驚き、自分にあまり辞める気がないのではないか?という疑問が再び湧いただけでした。
本数を減らす
常に毎日30本くらい吸っていましたが、本数を1日2本に減らしている時期もありました。
昼休みと夕食後だけしか吸わないようにして、徐々に減らしていき、やがては自然に吸わなくなると思ったのです。
しかし、この2本の煙草が「何と美味しいこと・・・」
それはそれは美味しくて、この為に昼休みまで仕事を頑張っている自分がいました・・・。
本数を徐々に減らしていけば自然に煙草を辞めれるのではないか?と思う方もいらっしゃると思いますが、自身の経験から言うと全く逆で、もっと煙草への依存を強めてしまうと思います。
なんせ美味しくて堪りませんからね。
喫煙者が禁煙するとどんな感じなの?
煙草を吸っていない方はこの苦しみが分からず、
「ただ単に禁煙できないような奴は意思が弱いんだよ!」
って思われている方も多いと思います。
しかし、禁煙は正直意思でどうにかできるレベルを超えている気がします。
(だからこそいろんな薬が出ている訳です。)
喫煙者が禁煙して数時間すると、いてもたってもいられないような焦燥感を感じます。
そわそわして、何をしても手に付かないような感じ・・。
何かをしなければならないけど、できない、してはいけない、そんな感じです。
さらに数時間経過すると、頭の中が煙草のことで一杯になります。
もう何をしても煙草が吸いたい!と常に思っていると思います。
喉も乾いているような気がするし、なんだか体調がおかしくなったように感じます。
喉から手が出る程煙草が欲しくなってきます。
それほど強烈な禁断症状が出現します。
これが最低でも2~3日位続きます。
まぁ、地獄ですよ。
非常にしんどいです。
成功した今回の禁煙方法は「禁煙外来を受診すること」
今回は、我流でやらずにちゃんと禁煙外来を受診しました。
喫煙はもうこれは私からすると病気なんです。
辞めたいのに辞められない。自分の意識が、行動が制御できない・・。
お医者さんに助けてもらおうと思いました。
それくらい思っておかないと、絶対にやめられないと思いました。
禁煙外来に掛かる費用
大体12週間の通院で、1万9千円程掛かるとのことでした。
医療保険が適用され、3割の自己負担でこの額です。
私は月に煙草に2万円弱を注ぎ込んでいるので、正直この位の値段は全く気になりませんでした。
むしろ、これで煙草を辞めれるのなら、それ以降の煙草代が浮くので全然お得!と思っていました。
この金額設定は本当に上手いですね。
これで「損だ!」と思う喫煙者はほとんどいないでしょう。
禁煙外来に行ってする事
これはその病院によって違うと思いますが、私の場合をご紹介します。
受付したら、
- 呼吸機能検査(スパイロメーター・呼気の一酸化炭素濃度を計測)
- 禁煙宣言書に署名
- 医師とスケジュールを立てる
という流れで診察は進んでいきました。
心理学的な要素が結構関係していそうな流れでした。
私はとにかく薬(後述の飲み薬”チャンピックス”)が欲しい!と思っていましたが、ちゃんと通院一日目でチャンピックスが処方されました。
ということがありました。
メチャクチャ呼吸機能が弱っているだろうと思っていたのですが、スパイロメーターを測定してもらうと、以外にも実年齢マイナス2才でした。
「いや、意外とええやん!」
って思いましたね。
本当はここで
「実年齢+30歳で、肺機能は65才並です。」
と言われた方が、禁煙成功率は跳ね上がるのになぁ~とは正直思いましたが。
医師と禁煙スケジュールを立てる
スパイロメーターを測定し終わると、診察室で医師と禁煙のスケジュールを立てていきます。
私は禁煙外来に来る前から煙草を買っておらず、残り一本しか手持ちがありませんでした。
「これを最後にして禁煙しようと・・・・」
と自分が言いかけると、
「じゃ、今日それを粉々に折ってゴミ箱に捨てて下さい。」
と言われてしまいました。
「その方が心理学的には効果があります。」
とのことでした。
私は禁煙外来に来る前から、この一本で終わりにしようと心に決めていたのですが、医師からの思わぬ提案で面食らってしまいました。
結局、心理学的にも何なのかよく分からなかったし、もったいなかったので、当初の計画通り診察後にその一本を最後に吸って禁煙を開始しました。
禁煙補助薬「チャンピックス」について
私はこの薬が欲しかったから禁煙外来に行ったと言っても過言ではありません。
この薬は煙草を吸う事で出る神経伝達物質「ドーパミン」を緩やかに放出し、煙草が吸いたくなるという症状を抑えつつ、煙草を吸っても過剰にドーパミンが放出しなくなるので、喫煙してもそれほど充実感が味わえなくなる、という効果があります。
食後に飲む飲み薬です。
チャンピックスは、計画的に服用するために、始めの一週間は服用しながら煙草の本数を減らしていくという説明を処方された薬局で受けました。
その直前に、医師に「今日から辞めなさい」と言われていたので、
「話が違うやん・・・」
と思ってしまいました。
恐らく薬局と医師が連携できていないのでしょう。
薬剤師にその旨を話しましたが、話が通じなかった(この薬はこういった飲み方をします、の1点張りでした。)ので、もうええわと思って、私は
「今日から煙草を吸わない。しかもチャンピックスは1日一錠しか飲めない。」
という医師との約束と薬剤師の説明両方を守る形でやっていこうと、この時に心に決めました。
チャンピックスの実際の効果
実際に服用してみると、もう明らかに楽です。
上述の苦しい禁断症状の焦燥感みたいなものが、大げさでなく1/3程度になります。
朝飲むと、夕方から晩頃、特に夕食後に「一服したい」と脳裏によぎるようになるので、その頃にもう一錠飲むと、スゥッーっと嘘みたいに辛い症状が無くなって行くのが分かりました。
私はこれを飲み始めて、医学の進歩に心底感謝しました。
それ位効果がはっきりとわかる良い薬でした。
禁煙を開始するとあの耐え難い焦燥感が襲ってきて、無意味に部屋の掃除をしたり挙動不審な動作が増えてしまう私ですが、今回は何とか挙動不審にならずに済んでいます。
チャンピックスの副作用は実際どうなの?
チャンピックスには
- めまい
- 嘔吐
- 眠気
などの副作用がある可能性があると記載されていますが、私は特に目立った症状はありませんでした。
しかし、眠気はいつもより強い気がしました。
これは、ニコチンを摂取しなくなったことによるものか(ニコチンは交感神経を刺激して興奮作用があります。)、はっきりとわかりませんが、日中に少し眠気が強くなりました。
しかし、仕事や作業に支障をきたす程ではなく、空き時間に眠気が襲ってくる程度でした。
車を運転してはいけない、と書いてあるのですが、仕事で運転が必須の場合、そういうわけにもいかないのでは??と思います。
土日など仕事が休みの時に服用して眠気やめまいの有無を確認してから服用するのが良いかもしれませんね。
禁煙中に役立った禁煙グッズ
禁煙中はチャンピックスを飲みながら、それでも口がさみしいことがあります。
私はこれらの商品を思いっきり買い占めて禁煙に臨みました。
私も普段であればもったいなくて買わないですが、この時ばかりは禁煙が成功すれば充分ペイできるので、たくさん買い込んでおくと良いかもしれません。
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禁煙が成功した感想
「禁煙は根性!意思が強ければ大丈夫!」とかいうのは幻想です。
それで煙草を辞められる人は、恐らく精神的依存が少なくて、煙を深く吸い込まないタイプの喫煙者だと思います。
完全に中毒になっている以前の私の様な人は、もう医者に助けてもらいましょう。
チャンピックスのような薬を使えば本当に禁煙が楽です。
今では500円近くお金を出して煙草を買うのがもったいなくて仕方ありません。
これからは煙草代で浮いたお金を数か月溜めて旅行に行ったりと、夢が膨らみます。
禁煙して私が一番強く心から思ったことは、
「助かった~・・・」
でした。
- 病気(身体の心配)
- 金欠
- 時間の無駄使い
煙草を吸うことで心配で仕方なかったこれらの事柄から解放されて、助かった~・・・と心底思いましたね。
ぜひ喫煙者のみなさんは煙草から解放されて、本来の自分の身体を手に入れるために禁煙外来に通って欲しいと思っています。
その時に今回の記事が少しでも参考になれば幸いです。