
私は自宅に帰られる人の割合が85%にも及ぶ回復期の病院で働いています。
回復期病院の指標として自宅転機率は大きな影響力を持っています。
しかし、臨床で働く私達としては、「退院してからの患者さんのこと」が気になります。
家に帰ってからリハビリを患者さんが続けられるかどうか,です。
あるデータによると、70%以上の人が家に帰ってから自主トレをしない、と答えているそうです。
いくら病院で必死にリハビリをしても、帰って半年、1年もすれば鍛えた筋肉も元に戻ってしまいます。
1人で自宅で毎日運動を続けるというのはなかなか難しいものです。
私の取り組み
自宅退院される前に、自主トレーニングの内容をパソコンで写真付きで作成し、訓練メニューの中に取り入れています。
資料を作ってお渡しするだけだと、家に帰ってから、「こんな運動で良かったのかな?」と不安になる方も多いと思います。
訓練で取り入れ、体で覚えてもらうことで不安なく取り組みやすいと思っています。
ゲームで自主トレ
私は最近TEDにハマっていて、勉強がてらよく視聴しているのですが、「退屈な理学療法の代わりにゲームをしよう」という題でUPされている動画がありました。
担当理学療法士が、あらかじめその患者さんに適したプログラムを入力しておいて、自宅で楽しみながらゲームの中で理学療法士と一緒に運動ができるというシステムです。
考えてみれば、モーションキャプチャーなどの技術も向上しており、wiiなんかのゲーム機で運動をトレースしてくれるようにすでになっていますよね。
あとは、自分専用の訓練プログラムがあれば、毎日それを見ながら運動することができれます。
より自宅で運動しやすい環境が作れるかもしれません。
これからの高齢者はパソコン、ネットも使えます。ゲームとも相性が悪くはないでしょう。
既に日本でも開発に取り組んでいるところもあるかもしれませんね。
問題点は?
まず、常に病状は変わっていきますので、プログラムの更新はどうするか、が気になるところです。
あとは、プログラムの個別性をどう考慮するかです。
臨床でリハビリをやっていると、同じ疾患には大体同じ訓練をしますが、それでも、患者さんが置かれている環境や既往歴との兼ね合い、心理的なものが関係したりして、全く同じということはありません。
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どうすれば良い?
例えば、疾患の診断名と性別、運動のレベルを入力できるようにプログラムを作っておきます。
五十肩なら、肩関節を痛みのない範囲でテレビの前で(ゲーム機の前で)外転してもらいます。
その角度を機械が読み取り、その人の現在の五十肩の病状の程度をスクリーニングします。
あとは、基礎体力をスクリーニングするようなプログラム(立ち上がり動作とか)を入力しておけば、運動のレベルを決定できます。
プログラムの更新は外来のリハビリでデータを取り直すか、オンラインで症状の程度別に必要な運動プログラムがダウンロードできるようにしておけば良いかもしれません。
実際はどうなの?
理学療法士として、訓練の個別性は日々頭を悩ましているところです。
上述した通り、心理的な面も実際には多分に関わってくるため、遠隔でその人の体の状態を的確に掴むことは難しいかもしれません。
しかし、整形などの限られた疾患なら、対応可能かもしれません。
私はこのような新しい案にすごくワクワクします。
理学療法士の未来を明るいと思っている人は少ないと思います。
WEBの分野でもかなり他の業界よりも遅れていると思います。
逆に言えば、今後このようなWEB上でのリハビリが進化していくのではないでしょうか。
”e-ラーニング”の可能性
教育の分野でも言われていることですが、「e-ラーニング(オンラインでの学習)」は今後更に普及していくでしょう。
WEB上ではなく、実際に講習会で勉強する際ののデメリットは、
・費用が高い。
・移動手段・時間を確保しなければならない
特に地方在住の方は都心部でセミナーが開催されることが多いので、なかなか億劫ですよね。
・1度聞いて終わり。
WEBであれば、場所の確保や人件費などのコストが省けるので比較的低下で配信可能ですから、費用も安く抑えられるでしょう。
いつでも、どこでも気軽に勉強できるというメリットも大きいです。
受講した内容が理解できなければ、何度でも費用が掛からず受講することができます。
患者さんに自宅で運動して頂くにも、e-ラーニングは大変使えるのではないのでしょうか。
上記のデメリットは、”リハビリに通うのが面倒くさい”という患者さんとほとんど共通しているからです。
まとめ
今後、理学療法士もWEB上で運動指導を行っていく未来がやってくるのではないかと思っています。
しかし、「直接体に触って治療する」、「顔を付き合わせて会話する」という直の触れ合いは、理学療法士としては絶対に大切にしていかなければはならないことを忘れてはなりません。