変形性膝関節症の疼痛軽減・進行予防に”ホント”に重要な膝関節の安定化機構について

膝関節疼痛


変形性膝関節症の患者さんには臨床で頻繁に遭遇します。変形性膝関節症のリハビリにおいて非常に重要な要素である「膝関節の安定性」について、どういった要素を考慮して治療に臨めば良いのか説明していきます。




変形性膝関節症の疼痛

変形性膝関節症は日常生活動作に大きく影響を及ぼします。理由として、疼痛が強く出現することが挙げられます。

膝関節が変形している患者では、動作時に膝関節に体重が乗る(荷重すると)と疼痛を誘発します。

また、疼痛があると活動性が低下し、筋萎縮関節可動域制限などの二次障害が発生しやすくなります。

疼痛の要因は?

その疼痛の要因として、様々なものがありますが、主なものに「膝関節に加わるメカニカルストレスの異常」が挙げられます。

これを制御し、膝関節をより安定化させることが理学療法の治療目的として重要な場合が多くあります。

膝関節の安定化機構について

膝関節は、その機能として、体重を支持するための支持性に貢献するとともに、充分に可動することが重要です。

よって、臼蓋関節である股関節よりも適合性が低く、脛骨大腿関節は多軸関節、大腿膝蓋関節は平面関節です。

つまり、安定性を犠牲にして、関節の副運動「ころがり」と「滑り」が行いやすい形状になっています。

 

膝関節には、独自の安定化機構が存在し、機能解剖学的に、

  • 受動的要素
  • 能動的要素

があるとされています。

 

 

受動的要素としては、半月板及び靭帯(前十字靭帯及び後十字靭帯、内側・外側側副靭帯、関節包)などがあります。

関節半月は、脛骨関節面の内側と外側にそれぞれ1つずつあり、繊維性の軟骨でできています。(よってすり減ると回復しません。)

外側が厚く、内側が薄い水平面では内側半月はC型、外側半月はO型をしています。

膝関節の関節包は厚く、膝蓋腱、腓腹筋、半膜様筋などの筋腱と共に支持性を高めています。

特にその横に位置する腸脛靭帯は膝関節の屈曲・伸展時に膝を固定するように働き、膝関節10~30°屈曲位で最も緊張し、膝関節の外側の安定性を高める働きを持ちます。

 

 

能動的要素としては、筋の張力(大腿四頭筋など)があります。

膝関節安定化機構の内、能動的要素である筋の張力を改善することが理学療法においては非常に重要となります。

膝関節の安定化機能をがしっかりと働くようにアプローチすることで、関節内のメカニカルストレスを軽減し、疼痛の発生を抑制することができます。

また、膝関節安定化には、股関節や足関節の協調的な働きも非常に重要です。

などの働きがその鍵を握っています。

特にこれらの筋の活動は、歩行時の立脚初期時の膝関節の安定化に寄与しており、これらの機能が不十分であると、立脚初期に膝関節が外側にずれてしまうlateral thrust(ラテラルスラスト)が発生し、膝関節の内反を誘発してしまいます。

膝関節安定化のためのリハビリ治療では、

具体的には、

  • 内側広筋
  • 外側広筋

などの単関節筋の働きを増強するように筋力トレーニングを行っていきます。

膝関節のメカニカルストレス

ご存じの様に、日本人には内反変形している、いわゆる”O脚”の変形性膝関節症が多いです。

膝関節の内側が痛い
O脚(内反変形)

なので、物理的にどうしても内側広筋の筋張力は低下し、筋萎縮を呈することが多いので、その防止に努めることは非常に重要です。

 

また、膝に掛かるメカニカルストレスを考察すると、正常なアライメントの静止立位時には、体重の約50%が片方の膝関節に掛かることになります。

さらに、大腿骨の内側顆と外側顆はさらにその1/2ずつ負担しています。

体重が50㎏の高齢者であれば、静止立位時、立っているだけで、膝関節に25㎏の負荷、大腿骨内側顆と外側顆にはそれぞれ、12.5㎏の負荷が掛かっている状態です。

 

歩行時にはさらに何倍もの負荷が掛かります。歩行時の踵接地は外側より起こるため、床からの床反力は膝関節の内側を通り、内反のモーメントが生じます。

その後、足部の重心が足外側から拇趾と2趾の間を抜けて、足趾離地となるため、足部自体が内反方向へ運動することになります。

この内反モーメントが、歩くたびに膝関節内側を障害していくことになります。

 

よって、既にある疼痛を軽減するために安定化機構を強化するだけなく、以後の進行予防という観点でも膝関節の固定性を強化し、安定させておくことは重要であると言えます。

立位姿勢とアライメントの異常

また、膝関節のメカニカルストレスを考えるときに、立位姿勢とアライメントを観察することは非常に重要です。

多くの高齢者は、

  • 脊柱後弯
  • 骨盤後傾位

を取っていることが多く、

股関節と膝関節が屈曲位を呈している場合が多いです。

常に膝関節屈曲位でいると、ハムストリングスや下腿三頭筋の緊張が亢進しやすく、さらに屈曲傾向が強くなるという悪循環に陥ります。

また、立脚初期に出現するlateral thrust(ラテラルスラスト)は膝関節に内反方向のメカニカルストレスを与えるのみでなく、脛骨の内旋を妨げてしまいます。

これには足部の状態、具体的には足部の外反や足部アーチ構造の破綻なども原因になっている場合があります。

また、股関節の機能も運動連鎖として膝関節に大きく影響しています。

結局、膝関節の安定化機能を考える時には、膝関節だけを診るのではなく、腰部及び股関節から、足部に至る全身の協調的な働きを評価し、考えることが重要となります。

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実際の膝関節安定化のためのリハビリのアプローチ方法

膝関節疼痛

変形性膝関節症の症例で、私が実際に行ったアプローチの方法を参考までにご紹介しておきます。

 

その患者さんの場合、腰椎から足部に至るアライメント異常に着目し、関節モビライゼーションやマッサージなどの徒手療法を行いながら、メカ二カルストレス軽減を目的に、固有受容器の賦活も意識しながら筋力増強訓練を行いました。

 

筋力訓練の方法は、疼痛が強かったため、初めは等尺性のパテラセッティングを中心に行います。

その時に内側広筋を意識的に収縮させるようにしました。

 

しかし、動作時の疼痛は依然強かったため、膝サポーター(固定性重視で、三点固定、両側に支柱が付いたタイプ)を使用しながら動作練習で筋張力を高めつつ、固有受容器に刺激を与える運動をできる範囲で行いました。

人体の関節の中でも、膝関節は非常にメカニカルなストレスが掛かりやすい関節です。

メカニカルストレスが掛かりやすい理由や、それを補うための安定化機構を理解しておくと、非常に多い、膝関節に疼痛を訴える患者さんにもスムーズに対応することができます。

是非参考にしてみて下さい。

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