
脳卒中は、後遺症が残りやすいことももちろん問題ですが、その再発率の高さも大きな問題です。今回は脳卒中の再発と予防についてご紹介していきます。
脳卒中の再発率
脳卒中とは、ご存じのとおり、脳血管障害の総称です。再発率を考える時に、脳梗塞と脳出血とでは少し違います。
また、基礎的疾患による脳卒中の危険因子の有無によっても違ってくるので、それらを加味した上で説明していきます。
脳梗塞の再発率
脳梗塞は、全体の20%の患者が再発する可能性があるとされています。
初回発作2年以内にそのうちの48%が起こり、年間を通した再発率は5.4%と言われています。
さらに、5年では20~40%、年間では3~8%の再発率です。
再発例では、50%以上が初回発作後2~3年で再発すると言われています。
他の基礎疾患、慢性の心房細動・高血圧を併発している場合
初回発作時も、心房細動がある場合は、ない場合と比べて脳梗塞発症のリスクは5倍にもなります。いかに心疾患をコントロ-ルするのかが重要です。
慢性の心房細動を有する症例では、初回発症後、1年目の再栓塞率が13.3%、その後は年4%の栓塞率と言われています。
年齢や他の危険因子の合併状況などを勘案して、積極的に抗凝固療法を行うことが望ましいとされています。
その他、心不全を有する場合は初発のリスク4倍、高血圧3倍、虚血性心疾患は2倍と言われています。
脳出血の再発率
脳出血の再発率は、2~20%程度で、年間の再発率は2.9%とされています。
脳出血 再発の特徴
脳梗塞の再発は脳梗塞が90%以上を占めているのに対し、初回発作が脳出血の場合では脳梗塞は半数を占めていることです。
脳出血を発症した場合、脳梗塞を再発する可能性もあるため、薬剤などで予防を図っていくことが非常に大切です。
脳卒中は再発予防が大切
上述の様に、脳卒中は再発率が比較的高い病気です。発症したら、再発しないように、予防をしておくことは必須です。
脳卒中再発予防のために、
- 薬物療法
- 危険因子の治療
- 生活習慣の改善
を軸として行っていきます。
薬物療法
再発予防のための薬物療法としては、
- 抗血小板療法
- 抗凝固療法
があります。
これらは初発の際の発生機序を考慮して選びます。
血小板の血栓が大きく関係するアテローム血管性脳梗塞では抗血小板療法を、心原性脳梗塞では抗凝固療法を用いるのが一般的です。
抗血小板療法について
脳梗塞や一過性脳虚血発作(TIA)の再発予防で行われることが多いです。
多くの方が服用しているアスピリンは、脳血栓の発生を30%抑制すると言われています。
しかし、ラクナ梗塞には予防効果が認められなかったとする見解もあります。
よって、脳出血の原因にもなり得るラクナ梗塞の再発予防では、血管管理を重視して、安易にアスピリンが処方されない場合も多いです。
抗血小板剤 「アスピリン」とは?
大量投与では、アスピリンジレンマや胃腸障害が起こる可能性があることから、低用量投与(40~100㎎/日程)が望ましいとされています。
アスピリンと似た名前で、バイアスピリンがありますが、腸溶剤のため、胃腸障害が少ないとされています。
※)アスピリンジレンマとは、アスピリンの投与量により血栓形成抑制効果が減弱したり、増強されたりする現象のことをいます。投与量によって、全く逆の作用が見られる場合があります。
アスピリン以外の抗血小板剤では、
- プレタール
- パナルジン
などが広く使われている薬剤です。
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抗凝固療法について
抗凝固療法で一般的に使われているのがワーファリンです。血液をサラサラにして、固まりにくくします。
医療従事者なら一度は聞いたことがある薬だと思います。
服用している場合、易出血となるため、外傷や打撲(内出血)に注意が必要です。
ワーファリンの作用に影響する薬剤と食べ物を以下に参考までに記載しておきます。
- 作用増強する薬剤
消炎鎮痛剤
抗生物質
抗うつ剤
アロプリノール
キニジン
- 作用減弱するもの
副腎皮質ホルモン
リファピシン
フェノバール
- ビタミンKを含む食品(減弱作用あり)
納豆
青色野菜:パセリ、しそ、三つ葉など
クロレラ
など
危険因子の治療
脳卒中の危険因子は先ほど少し触れましたが、
- 高血圧
- 糖尿病(DM)
- 心疾患
が主になります。
高脂血症も病型によっては危険因子になります。喫煙や過度の飲酒もできる範囲で辞めておいた方が無難です。
危険因子の治療に大きく関係するのが、生活習慣です。以下に説明します。
生活習慣
食事・運動
食事療法が糖尿病や高血圧、高脂血症などの合併症予防の基本であることはご存じだと思います。
具体的には、
- 食塩の摂取量は1日7g以下
- カロリー摂取は体重当たり25~30kcal/日
が良いと言われています。
また、脱水も脳梗塞危険因子となりうるので、運動後や就寝前の飲水は大切です。
運動については、継続して行うことが大切なので、毎日の運動量、具体的には万歩計で計測した歩数や訓練内容をノートなどに記載するとよいと言われています。
飲酒・喫煙
喫煙は脳梗塞発症リスクを2~4倍高くし、1合以上を毎日飲酒する方は脳卒中のリスクを高めることが知られています。
疾患の管理
高血圧
高血圧は脳血管障害の最大の危険因子です。
しかし、初発の場合は特に注意して降圧しておくことが望ましいですが、再発予防としては見解が分かれるところです。
血圧が低すぎても脳梗塞を再発しやすいとも言われており、病前の血圧の80~90%程度の血圧にしておくことが望ましいと言われています。
可能であれば、130/80㎜Hg程度をコントロール目標にすると良いでしょう。
しかし、夜間には血圧が低下し、脳梗塞のリスクが高まることから、動脈硬化によるアテローム血栓性脳梗塞の再発予防には140~150/85~90㎜Hg未満に維持するのが良いとされています。
一方で脳出血の再発予防としては、拡張期血圧の増加に比例して再発率が高くなるため、できる限り低めの血圧に抑えた方が良いとされています。
どの程度の血圧管理がその人にとって適切かと言う判断は医師が行います。
夜間の過剰な血圧の低下を避けるためにも、24時間、自宅で血圧が簡単に計測できるような環境にしておくことが大切です。
糖尿病(DM)
糖尿病は再発リスクを2~3倍に増加させます。動脈硬化の促進因子であるためです。
糖尿病患者においても、血圧の管理が再発予防に有効です。
まとめ
脳卒中は再発率が高いことが知られています。
多くの患者さんは医師の処方によって再発予防のための薬剤が処方されています。しかし、稀に自身の判断で適量の服薬を行えていない方もいるため、注意が必要です。
再発予防のためには、服薬や生活習慣の見直しなど、総合的な視点が必要です。