
電動車椅子は、非常に便利な移動手段です。使い方によっては、「効果抜群のリハビリ機器」になります。
「移動手段を持つこと」は社会的生活を営む人にとって、日常生活を送る上で根底を成す重要なものです。
何らかの障害があり、歩行が困難な方は、電動車椅子を使用して移動範囲の拡大を検討することをおすすめします。
電動車椅子とは
電動車椅子には様々な種類があります。
様々なものが混在していますが、
- 自操できるもの
- 介助用のもの(押してもらう)
で分けると理解しやすいです。
自操用の電動車椅子では、
- 標準型(ジョイスティック型)
- シニアカー
- 簡易型
があり、
介助用では、
- 標準型
- 簡易型
が主な種類となります。

道路交通法では電動車椅子も車椅子と同じ、「歩行者」の扱いになるので、それに準じたルールを守る必要があります。
セニアカータイプなどはメーカーによっては対人対物の保険も任意で加入することもできます。
今回は、その中でも最も普及している自操型の電動車椅子3種類(標準型・シニアカー・簡易型)をご紹介します。
自操用 標準型(ジョイスティック型)電動車椅子
ジョイスティックやハンドルを操作して、自ら操縦して乗る電動車椅子です。
写真のタイプは身体障がい手帳を給付されている方が、市町村の給付を利用して屋内外での移動用に使用されていることが多いです。
バッテリーが内臓されており、モーターで駆動します。
ジョイスティックレバーを倒した方向に、倒している間だけ動きます。
手を離すと止まります。倒す角度によって、出るスピードが変わり、目一杯倒すと最大で時速6㎞程度の速度が出ます。(目安としては、成人男性の平均歩行速度がおよそ時速5㎞と言われています。)
ジョイスティックを取り付ける角度を微調整したり、左右両方の肘置きどちらにも取り付けができるので、片麻痺の方など半身に麻痺がある方や手指に問題がある方でも使いやすいように工夫されています。
価格
こちらのタイプは介護保険法でレンタル対象になっていません。
購入すると、40万円~50万円程度の費用が必要になります。(オプションの有無によって増減します。)
障害者者福祉の補装具費支給制度対象となっているので、障害者手帳を持っている方は市町村に問い合わせると、¥329.000まで1割負担で給付されます。(市町村民税課税世帯の場合。)
なので、40万円の電動標準型車椅子を購入するのであれば、32900+(40-329.000)=103.900円の負担額という事になります。
ケースによって上下する場合がある様ですので、正確な価格は市町村の窓口に問い合わせて確認して下さい。
とりあえず、このような形の電動車椅子の購入を検討されている方は、
- 介護保険でレンタルができない。
- 市町村で給付が受けられる場合がある。
ということを覚えておけば良いと思います。
バッテリーの充電・交換が必要
バッテリー駆動なので、その都度家庭用コンセントから充電が必要です。
写真のモデルでは、一回の充電で約30㎞走行可能とのことです。(カタログ値のため気温や路面状況によって当然上下します。)
さらに、バッテリーが消耗品であり、レンタル対象の商品ではないため、400回の充電、もしくは、製造年月日から2年を経過したものは自費で買い替える必要があります。
自操用セニアカータイプ(ハンドルタイプ)
この様なタイプも電動車椅子の一種で、「セニアカー」や「シニアカー」と呼ばれます。
価格
スズキのセニアカー(写真のもの)で約40~50万円で販売されています。
中古車市場も存在しており、ネットショップ(中古専門店コトノハシニアカー)では、15万円前後の価格で同商品を販売しています。
介護保険で要介護認定を受けている方は、福祉用具貸与の項目でレンタルすることができます。
レンタル価格はおよそ月々1500~2500円程度です。(同商品でも業者によって価格は異なります。)
購入するとバッテリーの交換、故障時の対応など全て自分でしなければならないので、要介護認定を受けている方はできればレンタルする方が望ましいです。(レンタルでは消耗品と過失ではない故障時の対応を業者が行ってくれます。)
セニアカーを使うのに適した人は?
セニアカーは、上述の標準型電動車椅子よりも横幅が大きく、普通は店舗の中に入っていくことはできません。
目的とするお店に付いたら、店の外にセニアカーを止めて、歩いて中に入る必要があります。
よって、杖などを積んでおいて、それを取り出して店の中で使う、という方も多いです。
(杖ホルダーもオプションで取り付けることができます。)
セニアカーに乗る場合は、目的地での移動手段も考慮して、少し自力で歩行を行える方の方がより適しているのではないでしょうか。
自操用 簡易型電動車椅子
自操用 簡易型電動車椅子とは、フレームなどの基本構造は普通の車椅子と同じで、バッテリーとモーターを標準型・もしくはモジュール型車椅子に簡易に取り付けたものを言います。
よって、適応となる方は、
- 旅行に行く時など長距離歩かなければならない時のみ電動車椅子を使用したい。
- マンション住まいなどで、電動車椅子を置いておくスペースがない。
です。
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電動車椅子の置き場所について
電動車椅子を導入する際に問題となりやすい点が、乗らない時に置いておく「置き場所」の問題です。
上述の標準型電動車椅子は自宅内でも乗って使っている方がほとんどだと思いますが、セニアカータイプのものは、自宅近くに止めておかなければなりません。
マンションなどでは、自転車置き場などに置く必要がありますが、家の玄関からそこまでの移動をどうするかという問題もあります。また、マンションによっては置いてはいけない場合もあります。(管理者に確認することをおすすめします。)
さらに、いたずらや盗難が不安で駐輪場などには置きたくない、という方も多いです。
私の経験では、身体状況や周辺環境を考慮して、電動車椅子に乗って買い物に行けば、活動範囲が広がる可能性が高い方でも、電動車椅子の置き場所が確保できないために導入の話が流れてしまったことが何度もあります。
yahoo!知恵袋などでも電動車椅子の置き場所に関する質問も多く、マンションの管理者にお願いして特別に共有部分である玄関前の廊下に置かせてもらっている方など様々です。
電動車椅子を導入する場合、どの種類でも、「どこに置いておくか」考えて導入を検討する必要があります。
その際に、こちらの簡易型の電動車椅子は折り畳めるために、置き場所の問題で他の電動車椅子よりも有利です。
軽い分安定性はやや落ちる
標準型の電動車椅子は重さ約60㎏前後、セニアカーは写真のスズキの商品で83㎏ですが、簡易型の電動車椅子は写真のものでは31㎏です。
(ちなみに普通の電動車椅子でない自操型車椅子は18㎏程度のものが多いです。)
持ち運びを考慮されているため、簡易型の電動車椅子は軽量です。
これはもちろんメリットなのですが、道路を走行する際には、歩道に斜めに乗り上げてしまった時に軽い分、ふらつきやすくなります。(車椅子は段差に対して垂直に進入するのが基本です。)
安定性は他の電動車椅子よりも若干劣ってしまいます。
価格
簡易型電動車椅子は40万円前後の価格のものが多いです。
簡易型と言う割に結構高価ですね。
こちらの商品も介護保険での福祉用具貸与の対象商品となっているため、介護保険で要介護認定を受けている方はレンタルを利用されることをおすすめします。
レンタル価格の目安はおよそ月2000円程度です。(業者・商品によって価格は異なります。)
まとめ
電動車椅子には、
- 標準型
- シニアカータイプ
- 簡易型
このうち標準型以外は介護保険での福祉用具貸与項目であるため、要介護認定を受けている方はレンタルすることができます。
バッテリー交換や故障の対応を業者に行ってもらえるので、レンタルする方が長い目で見るとおすすめです。
また、セニアカータイプは中古車も出回っており、比較的安く購入することもできます。
簡易型タイプは折り畳めて持ち運べるため、電動車椅子を導入する際に問題となりやすい置き場所の問題で他の電動車椅子よりも有利です。
私の担当する患者さんでも、「歩けるようになりたいから電動車椅子は使いたくない」という方が多いです。
なぜそう思うのか聞いてみると、「外出の際に歩かないとリハビリにならないから」とのことです。
しかし、電動車椅子を使うことは、リハビリにとってデメリットになるものではありません。
なぜなら、外出できないからと家にいるよりも、電動車椅子を使ってでも外出した方が日中の全身の活動量は飛躍的に上がるからです。
買い物に行って、「今日のご飯は何にしよう?」と考えたり、店の中をできる範囲で歩いたり・・。
充分に歩けるようになるまでリハビリを行いながら、日常生活の外出で電動車椅子を使用して、活動範囲を広めるという方法の方が、「満足に外出できない」というストレスを溜めるこも少なく、活動量も上がるので、逆にリハビリに力が入る場合も多いです。
もし、「電動車椅子を使うのは歩けない人である。」と思っている方がいるならそれは間違いです。
本当はもっとカジュアルなもので、「外出をしやすくするもの」という認識でも良いのではないか思います。
もちろん事故には充分注意して下さいね。
電動車椅子もあくまで道具なので、使い方次第では「効果抜群のリハビリの道具」となります。
この記事を参考に是非検討してみて下さい。