サルコペニアの定義・予防とリハビリにおける運動「サルコとロコモと廃用の違いって?」

サルコペニアとロコモ、廃用症候群の関係


「サルコペニア」とは、ギリシア語で「サルコ=肉」と「ぺニア=喪失」という意味を掛け合わせ、筋肉の喪失を意味する造語です。




最近では、リハビリ職の勉強会でも頻繁にサルコペニアをいう言葉が使われるようになっています。

サルコペニアとはいったいどんな状態で、どうすれば予防することができるのでしょうか。

サルコペニアの定義

「サルコペニア」は、1989年にRosenbergという研究家が提唱した言葉です。

 

サルコペニアは上述の様に、ギリシア語で筋肉の喪失を意味することから、全身性の「筋肉量の低下」を意味します。

 

この言葉が注目されるようになったのは、昨今の少子高齢化の時流と、社会保障費の増大と少なからず関係があります。

サルコペニアとロコモティブシンドローム、廃用症候群の違いは?

  • 「サルコペニア」
  • 「ロコモティブシンドローム(ロコモ)」
  • 「廃用症候群」

これらの言葉は混同して使われがちです。

これらを区別するには、対象としている部位を理解することが必要です。

 

ロコモティブシンドローム(運動器症候群)は、サルコペニアが「筋」だけを対象としているのに対して、「運動器全般」を対象としています。

 

運動器とは筋肉の他に、

  • 関節
  • 軟部組織(靭帯など)

を含めた組織の総称です。

 

よって、

  • サルコペニア=筋
  • ロコモティブシンドローム(ロコモ)=筋+運動器(関節+骨+軟部組織)

に問題があるかどうかによって、呼び方が変わってくるということです。

サルコペニアとロコモ、廃用症候群の関係

さらに上位の概念として、廃用症候群があります。

 

廃用症候群は、筋はもちろん、運動器も、内臓、神経、精神機能を含む脳の働きまで、全身すべてに不活による影響が出た状態のことを言います。

 

よって、廃用症候群の対象は、

  • 廃用症候群=筋+運動器+内臓機能+精神機能+その他(皮膚の異常など=褥瘡など)

となります。

全ては運動不足による体への弊害を広く知らしめるための言葉

廃用症候群は1950年代に提唱された言葉です。1)

サルコペニアは上述のように、1989年に提唱されました。

ロコモティブシンドロームは、2007年に日本整形外科学会が提唱した言葉です。2)

 

つまり、時間軸上は、

廃用症候群→サルコペニア→ロコモ

と提唱されていことになります。

 

廃用症候群は、他の二つと比べて名前から症状をある程度誰でも想像できます。

「廃用症候群という病気があります。みなさん動かないとこんなことが起きてきますよ」

と世の中にその言葉が知れ渡るにつれて、みんな「動かないとダメなんだ。」と一応納得はします。

 

しかし、この廃用症候群と言う言葉はあまりにも対象が広すぎて漠然とした認識になりがちです。

少し認知機能が落ちてきただけで、廃用症候群と捉えられなくもないからです。

(実際、歳を重ねると誰でも少しは認知機能が落ちるのが普通ですよね。)

 

そこで、サルコペニアといって、今度は運動器の中でも主要な器官である、「筋肉のみを対象」とした運動のための言葉が作られました。

サルコペニアという言葉は、上述の様にギリシア語を組み合わせた造語なので、廃用症候群ほど聞いた人にインパクトがなく、聞いてもすぐに忘れてしまう人が多いと思います。

 

なので、あまり一般的に広く知れ渡わず、専門分野の人の基礎知識として知られる程度の言葉でした。

 

 

しかし、日本では、昨今の社会保障費の増大による国の困窮によって、「病気を発症する前に予防する」ということが強く謳われるようになってきます。

 

そのなかで、

  • 「サルコペニアをより分かりやすく、キャッチーなネーミングにしたい」
  • 「より皆に伝りやすい名前にして、運動しないことによる体への弊害を注意喚起したい」

と考えられました。

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そこで、「ロコモ」つまり、「ロコモティブシンドローム」が2007年に日本整形外科学会により提唱され始めるに至ったのです。

さらに、人が動きにくくなることと、疾患の発症リスクが高くなる原因の多くが「運動不足」によるものということが分かっていたので、対象を「筋肉」だけにせず、「運動器」とすることで、全身的な運動を推奨するようになりました。

 

なので、運動器を全て含む障害の「ロコモ」の概念を広く普及させ、疾病予防のための運動習慣を持つことを勧めることで、ある程度疾患を予防することができると思われました。

 

しかし、実際にはそう簡単ではありません。

 

 

運動器の骨幹を成す筋肉は体内の栄養素で作られます。

 

なので、ロコモの概念を知り、積極的に運動するだけでは実は足りなくて、多少の栄養学の知識も必要です。

ただ運動量を増やすだけでは、効果的に筋肉を付け、動ける体=加齢に伴う疾患に掛かりにくい体にならない、ということが分かってきたのです。

実際、寝たきりの方は特に栄養に問題を抱えていることが多いです。

 

サルコペニアはこの「筋肉を作るための栄養」にも言及しており、そこで改めてサルコペニアの概念が注目されるようになりました。

 

ロコモは日本整形外科学会が作った言葉なので、この筋肉の「栄養」に対することには言及していません。(内科の分野になるからでしょうか。)

本当に疾患を予防するためにはそれぞれの概念を組み合わせる

運動器の動かし方や運動方法は、「ロコモ」で検索するとネットでたくさん出てきます。

それに合わせて、サルコペニアの栄養についても学んでおくと、なお効果的に筋肉を付け、廃症症候群を予防することができます。

ロコモとサルコペニアがセットで語られることが多いのも、そういういきさつがあるためです。

ひとつの概念だけでは、効果的なものになりえません。

 

ロコモで運動方法や習慣を作り、サルコの知識で栄養をしっかり摂るようにすることが最善の策になります。

サルコペニアの栄養の基本的知識と予防

サルコペニアの栄養

ここではまず、サルコペニアでの栄養の知識について述べておきます。

 

まず、通常、筋肉は運動による刺激やタンパク質、 アミノ酸等の摂取によって維持、増加します。

人間は一日の間に筋肉の合成と分解を繰り返していますが、成長期ではこの合成と分解のバランスがプラスとなり、十分な量のタンパク質の摂取と運動により筋肉は増加していきます。

 

ところが、高齢者では、運動や食事の摂取等の刺激に対する感度が低下することに加え、食事量、とくにタンパク質(アミノ酸)摂取量や運動量が減少しやすく、筋肉の合成量が低下し、合成、分解のバランスが崩れてしまいます。

これが、加齢による筋肉量の減少の仕組みです。

 

この現象により全身の筋肉量が低下した状態をサルコペニアと言います。

よって、 筋肉をつけるための食事がサルコペニアの予防法の大きな柱を成すものとなります。

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まずはカロリーをしっかり摂ること

実は肝臓は、絶食時等に糖新生により、アミノ酸等からブドウ糖を作り出して、血液中に供給します。

すなわち、カロリー不足の状態では、筋肉はすぐに異化してタンパク質を分解してしまい、筋肉量の減少が起きてしまうのです。

よって、まずは十分なカロリーを摂取することが大事です。

 

70歳代男性で1日に必要なカロリーは1850kcal、70歳代女性で1550kcalと言われています。

最低限これを下回らないカロリーを摂取します。

 

もちろん、ご存じのとおり、過剰なカロリーの摂取は肥満の因子となります。

並行してしっかりと運動を行うことが大切なのは言うまでもありません。

筋組成に関わる栄養素を摂取する

以下の栄養素をしっかり意識して摂取することでサルコペニアを予防することができます。

 

  • ビタミンD

カルシウムの吸収促進による骨粗しょう症治療の作用が有名なビタミンDですが、実は筋肉にも、筋組織内のビタミンDレセプターを介して作用するといわれています。

十分量を摂取することで筋力増強、転倒予防、骨折予防のエビデンスがあります。

※参考 転倒予防の基礎知識

 ビタミンDが多く含まれる食品: 魚類に多い。いわし、鮭、さんま。ほししいたけなど。また、日光浴により体内で合成されるので、日光浴もおすすめです。 ビタミンDの組成に日光浴

  • タンパク質、アミノ酸

筋肉をつくる元になるタンパク質は、アミノ酸から体内で合成されます。

必須アミノ酸はヒトの体内で十分な量を合成できないので、栄養分として摂取しなければなりません。

必須アミノ酸の中でも分岐枝アミノ酸(BCAA)でが重要で、

  • バリン
  • ロイシン
  • イソロイシン

 を充分量摂取することが推奨されています。

BCAAを多く含む食品:大豆類、鳥肉(鳥胸肉)、マグロ(赤身)、たらこ、チーズ、牛乳など

 

  • ビタミンB

ビタミンB群、特にビタミンB6が筋肉の合成を促進するのに必要です。

ビタミンB6を多く含む食品: 牛や豚、鶏のレバー、魚の赤身、ピーナッツなど

リハビリでのサルコペニア予防のための運動方法

サルコペニア予防のためのもう一つの大きな柱が、運動です。

 

運動の種類として、

  • 有酸素運動
  • レジスタンストレーニング

が推奨されています。

 加齢にかかわらず、長期にわたる有酸素性運動のト レーニングによって最大酸素摂取量、ミトコンドリア酸化系酵素活性、グルコース代謝に関連したインスリンの感受性の改善などの効果が認められている。

一過性のレジスタンス運動を行うと、 運動後1時間から2時間後にタンパク質合成速度が安静時と比較して有意に増加する。

基礎老化研究 35(3);23-27,2011

レジスタンストレーニングとは、筋肉に一定の負荷をかけて筋力を鍛えるトレーニングのことを言います。

従来の”筋トレ”とほぼ同じ意味ですが、”レジスタンス=抵抗”の意味のため、ダンベルやチューブを使って負荷を強くした運動のことを指す場合が多いです。

まとめ

加齢に伴う体の老化を予防するためには、サルコペニアやロコモ、廃用症候群の知識を複合させて予防に取り込むことが必要です。

 

運動の方法は割と昔から色々と言われており、皆さんある程度の知識はすでにあると思います。

しかし、筋肉に関わる栄養や食事についてはまだ知らない方も多い印象を持っています。

サルコぺニアの栄養の知識が是非とも知れ渡り、より元気で過ごされる方が増えると良いと思います。

 

<参考>

1)

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