マッサージはしない方が良い?「リハビリでのマッサージの効果と実際に行われている方法」


臨床におけるリハビリテーションでは、あまりマッサージは手技として積極的に行われないことが多いです。

その場でのリラクセーション効果はありますが、根本的な治療にはならない側面があるためです。

しかし、本当にそれは正しいのでしょうか?

マッサージの生理的な効果・方法をきちんと確認し、必要に応じて使っていくことをお勧めします。




マッサージとは

マッサージは、徒手にて身体面を擦り、もみ、叩くなどのリズミカルな力学的刺激(圧と伸長)を生体組織に与え、

  • 皮膚
  • 循環
  • 代謝

などに反応を起こさせて疾病の治癒を促す理学療法の手段の1つと定義されています。

マッサージの効果(生理的作用)

マッサージによる力学的な刺激は身体組織に生理的作用を及ぼします。

皮膚組織に対する作用

血管運動神経への刺激は皮膚の末梢血管の拡張に作用し、皮膚温度を高め、発汗も促します

外傷による皮膚と皮下組織の癒着に対してマッサージを行うと、癒着を軟化させる作用があります。

整形疾患で皮膚組織の瘢痕化はよく臨床でもみられ、皮膚の柔軟性低下による関節可動域制限がある場合、マッサージは非常に有効な手段となります。

筋肉組織に対する効果

筋の緊張を和らげ、静脈の還流を促し、蓄積した疲労物質を排出しやすくします。

このことによって筋肉の血流が改善し、酸素・栄養素が供給され筋の収縮力が高まると言われています。

当たり前ですが、筋繊維自体の増強は起こりません。

こういった機序から、一次的に運動のパフォーマンスを上げるためにスポーツ選手の試合前にマッサージが用いられることもよくあります。

循環器に対する効果

リンパと末梢毛細血管内の圧刺激は表在・深部のリンパや静脈間の還流を促し、うっ血や浮腫の軽減を促します。

結果、血管運動神経の刺激は血管を拡張させ、酸素と栄養の循環を促し、代謝にも良い影響を及ぼします。

このことは酸素消費を増やすことにもつながります。

神経系に対する効果

表在と深部の感覚受容器を刺激し、反射・反応を促します。

軽い圧刺激は疼痛の緩和や緊張を弛める効果があり、臨床では心理的側面が身体機能に多大な影響を及ぼすため、マッサージの心理的作用も軽視できないものがあります。

マッサージの方法

マッサージの方法

マッサージの具体的な方法は以下になります。

これで全てではなく、実に様々な方法があります。

方法についてはあまり細部にこだわらなくても、要は「筋組織に刺激を与え、血流を促すこと」がその主な方法になります。

軽擦法

表面に軽く圧を加えながら末梢から中枢部に向かって血管やリンパの走行に沿って求心性に手を滑らせ、元に戻すという動作を繰り返します。

 

後に説明する強擦法よりも加える圧が軽く、皮膚の表面を滑らせるようにして循環を流すことに主眼を置いたマッサージの方法です。

さらに、軽擦法には手のどの部分を使うかによって以下の様に分類されます。時と場合によって使い分ける必要があります。

  • 手掌法
  • 母指法
  • 二指法
  • 指背法

などがあります。

強擦法

施術者の母指または示指と中指などの指腹部を患部に直角に当て、一定の圧を加え皮膚とともに移動させる手技です。

外傷、筋肉、関節および関節周辺に病的滲出物が貯留している例の軽減や癒着した組織を剥離させる目的で行われます。

軽擦法よりも「グイッ」と指を皮膚にめり込ませて行うマッサージ方法です。

手掌揉捏法

揉捏とは、「もむ、こねる」という意味です。

擦法が「こする」方法なら、こちらは「つかんでこねる」様にしてマッサージする方法です。

 

施術者の手指で筋肉をゆっくりと握り(掴み)、圧を加えながら、筋繊維の方向と直角の方向に筋肉中の血液を絞り出すように行います。

主に、外傷後、筋肉、関節及び関節周辺に病的な滲出物が貯留している症例の軽減や、癒着した皮膚組織を剥離させる目的で行います。基本的に末梢から中枢へ向けて行っていきます。

 

前腕や下腿などの比較的大きな筋肉の部分に対して行われることが多いです。(掴みやすいため。)

こちらも擦法と同じように、部位によって指を使ったり、手掌で行ったりします。

圧迫法

いわゆる「指圧」です。

母指や示指、中指で施術部1点に集中して圧迫を加える方法です。

神経や筋の興奮を抑えるために抑制的に作用し、神経痛やけいれんなどに効果的とされています。

時間は1~5分程度圧迫すると良いとされています。

その他

その他には、振戦法と言って手指や手掌で圧迫を加えながらリズミカルに振動させる方法や、手掌で叩く叩打法などがあります。

しかし、技術的に難しく、施術者の疲労が強いため電動式の機械を用いて行われることが多い、とされています。

 

機械は”マッサージャー”と言われる市販の以下の写真のようなものが手に入りやすく、使いやすいと思います。

しかし、私はリハビリでこのような機械を使用している人を実際には見たことがありません。

少しググってみると、”家庭で効果的にマッサージャーを使うと、脳卒中片麻痺の方の痙性抑制に効果がある”とする情報もあったので、私も機会があれば試してみたいと思います。

マッサージの臨床への応用・適用

上述のマッサージの各種方法は以下の様な例に対して適応となります。

関節可動域制限のある例

  • 関節拘縮、軟部組織の癒着、皮膚組織の瘢痕の剥離に対しては強擦法、揉捏法が適用されます。
  • 中枢疾患による筋痙直、ギプス除去後の筋、腱の短縮に対しては軽擦法、揉捏法、圧迫法が適用されます。
  • 骨折後や手術後、患部の血行障害、阻血による浮腫、腫脹などには軽擦法、揉捏法、圧迫法が適用となります。

疼痛や循環障害がある例

  • 四肢の切断端痛
  • 慢性関節リウマチ
  • 関節症
  • 骨折、脱臼、捻挫、打撲
  • 関節形成術後
  • 末梢神経麻痺
  • 神経炎後
  • 神経痛
  • 筋筋膜性疼痛や浮腫軽減

なども軽擦法、揉捏法が適用となります。

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肺・呼吸理学療法への応用

肋間筋や脊柱起立筋の筋弛緩のために、または排痰を促すために胸部や胸背部に対して軽く叩くようなマッサージを行うこともあります。

長期臥床高齢者や患者の例

マッサージには心理的効果も見逃せないものがあります。

その特性から、筋緊張を緩和し、運動療法参加への動機付けを高めるために用いられることもあります。

 

実際に私は臨床でマッサージを患者さんと信頼関係を築くためにも利用します。

何度も臨床で経験していますが、マッサージを一切しないセラピストでリハビリ拒否が出ていた患者さんが、私に担当が変われば、前任者よりも確実に信頼を得ることができています。

 

少しのマッサージでお互い気持ちよくリハビリができそうなら、マッサージを積極的に行うのも良いと思います。誰も損しませんから。

スポーツ障害に応用

捻挫、打撲、いわゆる肉離れ、筋疲労に対して強擦法、揉捏法が行われます。

上述の様に、筋収縮力を上げる効果もあるため、パフォーマンスを一時的に上げる目的で用いられることもあります。

マッサージの禁忌

  • 皮膚に創傷、発疹、炎症のある場合
  • 皮膚感染性の疾患
  • 腫瘍
  • 神経炎の急性期

には禁忌となります。

臨床でのマッサージの実際の方法

強擦法や圧迫法が主に使用されていると思います。

特に中枢性の疾患がある患者さんで痙性が高い場合、圧迫法でターゲットの筋肉の筋腱移行部辺りに圧を加えると、筋緊張の亢進が抑制されるケースは臨床でも頻繁にみられます。

 

手掌法では圧が分散し、面積の広い部分にマッサージを行う場合は良いですが、臨床では多くの場合、特定の筋を狙って行うので、必然的に母指法、二指法など手指を使うことが多いと思います。

 

指腹でこれらの手技を行うと、手指のDIP関節(第一関節)にかなりの圧が長時間加わるため、痛くなることがあります。

また、手指や上肢の力だけで圧を加え続けるのは筋力・体力的にも無理があります。

 

 

お勧めの方法は、マッサージの方法

上記の写真のようにして上から自分の体重を乗せる様に圧を加えたり、擦る方法です。

この方法で圧迫を加えると、DIP関節に直接圧が掛からず、関節の負担が少ないです。

 

マッサージする機会の多い、腰背部(脊柱起立筋など)、肩甲帯部などは患者さんに腹臥位になってもらい、上からこの方法で自重を利用してマッサージすれば、指を傷めることなく、体力もそれほど必要としません。

 

下腿部や大腿など狭い面積の部位で上述の方法が使いにくい場合は、以下の様に、

手掌圧迫法

マッサージの臨床での実際の方法

写真に示した掌底部を使えば、狭い部位にも効果的に圧を加えることができます。

まとめ

不思議なことに「マッサージは臨床で行わない」と胸を張って言うセラピスト(療法士)も多いです。

  • 「リハビリ業界のためにならない」
  • 「意味がない(患者さんのためにならない)」
  • 「私達はマッサージ師ではない」

というのがその主な理由のようです。

 

しかし、私は患者さんが求めていて、継続的ではないにしろ、その場で効果が出るなら、運動をする前に少し行うくらいであれば問題ないと思っています。

 

リハビリの時間全てマッサージだけ、というのでは時間がもったいないと思いますが、目的に応じて効果的に使っていけば良いのではないでしょうか。

何でもかんでも「マッサージはダメ、しない!」というのは思考が停止しているだけのことで、あまり賢明とは思えません。

 

 

例えば、少し極端な例ですが、私達が歯医者に行く時に「麻酔はしない」って言っている歯医者なんて絶対に行きたくないですよね。

もし、仮にそれが歯科業界にとって大切なことであったとしても、その歯科医が「私は麻酔医ではない!」とか思っていたとしても、そんなこと患者さんには一切関係ありません。

 

自分(達)の都合を患者さんに押し付けるのか、自分の都合よりも患者さんの治療(気持ち)を優先させるのか、よく考えないといけないと思います。

 

「できれば痛み無く施術してほしい」

 

これはどこの業界の患者さんにとっても当たり前のことで、リハビリテーションでも例外ではありません。

そして、実際に私達セラピストがその場で行える疼痛を緩和する手技・テクニックの一つとして、「マッサージ」はかなり手軽で効果的です。

抜群に費用対効果(治療時間と疼痛緩和効果)が高いのがマッサージです。

 

  • 動作のパフォーマンスを一時的に上げるため
  • 疼痛を軽減して苦痛・無理なく動いてもらうため(代償動作を抑えるため)
  • 疼痛や過緊張により乱れたアライメントを整えて、目的の筋に収縮が入りやすい運動を行うため

など、マッサージを効果的に使える場面はいくらでもあります。

 

意味のあるマッサージを行っていけるように、患者さんの全体像を捉えることが最も大切なことではないでしょうか。

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