関節リウマチのリハビリ まとめ「評価から実際のリハビリ,リスク管理のコツ」

関節リウマチ,リハビリ


リハビリを受けられる方でリウマチの既往を持つ方は多いです。疼痛が出現しやすいリウマチに、どのようなリハビリをしていけば良いのでしょうか?まとめてみました。




関節リウマチとは

関節リウマチとは、原因不明の全身性炎症性疾患です。進行性の破壊性、非化膿性関節炎が主症状です。50歳前後をピークとして20~70歳の広範囲の年齢層の女性に好発します。

発症の多くは潜伏性で、手指の小関節や肩・膝などの大関節、あるいは四肢の漫然とした痛みやこわばりを自覚し、徐々に関節の炎症症状が出現します。

多発性かつ対称性の関節炎が慢性化し、滑膜を有する可動関節が主に障害されます。運動器官が症状の主な発現部位になるので、

  • 動作の不安定性
  • 易転倒性(易骨折性)
  • 骨粗鬆症
  • 炎症・疼痛

などが特に問題になることが多く、運動器不安定症の原因疾患の一つに含まれます。

他にも、

  • 易疲労感・全身倦怠感
  • 食欲不振
  • 体重減少
  • 微熱

などの不定の全身症状も伴うこともあります。

全身性の炎症症状が続くと、痛みにより能力障害が著明に出現し、多くの場合、特にQOL(生活の質)が低下します。

関節リウマチのリハビリの基本的な考え方

慢性で進行性、多発性の特徴を有するRA(rheumatoid arthritis:関節リウマチ)の理学療法は、まず医師からの情報(全身の活動性、各関節のX線所見、服薬状況、禁忌事項等)を取得してから、評価・治療を開始します。
評価は、

  • 初回
  • 中間
  • 最終

で行い、朝のこわばりや薬物の影響を考慮して同一時間帯で行うのが良いと言われています。(リウマチの症状は一般的に朝に強く出ます。)

また、ROMテストは原則として自動運動で評価しますが、関節のend feel(最終域感)を確認する場合は他動運動で評価します。

そして、ADLテストは「しているADL」と「できるADL」の両方を判定します。

プログラムの作成は機能障害・能力障害のみではなく、心理状態、家庭や職場の役割なども踏まえて立案します。

問題点は障害を改善すれば能力障害が改善するもの挙げて、主要なものから列挙していきます。

理学療法の内容は問題点を解決するための最善と思われる方法を選択しますが、訓練の中で適宜見直しが必要です。目標について、まずは、中間評価あるいは最終評価まで到達可能な短期目標をあげていきます。

チームアプローチが大切

リハビリではチームアプローチがあり、カンファレンスは必要不可欠です。

その際に理学療法士は患者の全体像や主要な問題点、解決方法をチームに提示します。その時に医師や作業療法士に助言や援助を受けることも必要です。

リウマチの場合、特に服薬状況や全身状態の管理が大切なので、チームアプローチの意識を強く持つことが重要となります。

入院中の患者さんであれば、看護士に、自宅であれば家族に、朝・晩でどのように症状が違うのか、服薬の状況によってどのように容態が変化するのか最低限確認しておきます。

関節リウマチの病期の分類(評価)

以下に、リウマチの基本的な評価に使用されるSteinbrokerの分類(スタインブロッカーの分類)を記しておきます。

   steinbrokerの分類
ステージ1 初期
  • X線写真上に骨破壊はない。
  • X線学的オステオポローゼはあっても良い。
ステージII 中等度
  • X線学的に軽度の軟骨下骨の破棄を伴う、あるいは伴わないオステオポローぜがある。軽度の軟骨破壊はあっても良い。
  • 関節運動は制限されても良いが関節変形は無い。
  • 関節周辺の筋萎縮がある。
  • 結節及び腱鞘炎のような関節外軟部組織の病変はあっても良い
ステージⅢ 高度
  • オステオポローゼの他にX線学的に軟骨及び骨の破壊がある。
  • 亜脱臼、尺側偏移、あるいは過伸展のような関節変形がある。
  • 線維性または、骨性強直を伴わない。
  • 強度の筋萎縮がある。
  • 結節及び腱鞘炎のような関節外軟部組織の病変はあっても良い。
ステージⅣ 末期 繊維製あるいは骨性強直がある
それ以外はステージIIIの基準を満たす。
   ※オステオポローゼ・・日本語で”骨粗鬆症”のこと

”Steinbrokerの分類”に応じたリハビリ

リウマチ重症度分類、Steinbrokerの分類で、X線写真上に骨破壊がないStageIでは全身の安静と適度な運動、疼痛関節の保護を目的にした動作指導が中心となります。

StageIIになると筋の萎縮や疼痛のために筋力低下が予想されれば、積極的に筋力増強訓練を行っていきます。

また、手指に腫脹などがあれば変形予防のために、鞄を肩に掛けて持つなどの手指に負担が少ない生活指導を行います。

そしてROM制限のある関節に対しては疼痛のない範囲でROM訓練を行います。

 

StageIIIでは中~強度の筋力低下が出現するため、積極的に筋力の改善を図ります。

ROM制限のある関節に対しては慎重にend feelを確認し、関節面の滑り、関節包の短縮等を見極めながらROM訓練を行ってきますこの時期では理学療法を積極的に実施することで機能障害を改善し能力障害も軽減することが期待できます。

 

StageⅣになると関節が強直しており、残存機能の維持と能力障害の介助量を軽減するため、家屋調査・環境調整も検討していきます。※参考 療法士が退院前の家屋調査で見ておくべきポイントを場所別に詳しく解説

関節リウマチの機能状態の改訂分類基準(ACR)

また、日常性生活に焦点を当てて分類する、ACRも同時に評価しておくと状態が掴みやすいでしょう。以下に記載しておきます。

   関節リウマチの機能状態の改訂分類基準(ACR)
クラス1 日常生活を常に行うことができる。
クラス2 普通の身の回りの事、仕事はできるが余暇は制限される。
クラス3 普通の身の回りのことができるが、仕事や余暇は制限される。
クラス4 身の回りの事、仕事、余暇をすること全て制限される。

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関節リウマチのリハビリ

いかに疼痛と関節の変形・破壊を進行させない様に運動をして、筋力の維持・増強を図っていくかが問題となります。

筋力低下および可動域制限に対しての運動療法

疼痛は生体の防御反応であり、リウマチの場合、筋力低下の原因は関節の疼痛が強く充分に力を入れられない場合と、動かさなかったために起きる不動による廃用症候群に伴う筋萎縮や筋力低下があります。

そのうち前者の疼痛が強く充分に力を入れれない場合は、見かけ上の筋力低下です。その場合、筋力増強訓練は痛みの出にくい等尺性の運動を行います。

最も力を入れやすい角度を工夫して、筋力を維持的に行いながら生活指導を徹底し、温熱療法を併用しながら疼痛が軽減するのを待ちます。

一方で、後者の廃用症候群に伴う筋力低下では積極的に筋力増強運動を行う必要があります。注意点は、訓練を行った後、および翌日まで新たな痛みが残らないようにすることです。

また動揺のある関節の筋力増強訓練は、関節へのストレスを装具やサポーターで軽減しながら行うと関節の負担は少なくなります。

関節リウマチの関節痛は生体の防御反応のためのセンサーであり、疼痛は必要な感覚です。

生体において「疼痛という警報が発動されれば、運動を制御すべきである」という見解もあります。痛みと共存しながら運動を進めなければなりません。(疼痛について詳細は、こちらの記事「慢性疼痛とは?」に記載しています。)

関節可動域に関して

筋力訓練だけでなく、ROMなどの関節運動を行う際にも疼痛が出現する場合があります。ROMの際には、

  • 疼痛
  • 関節周囲組織の緊張の増強
  • 関節包内運動や関節運動の減少

に伴う拘縮と、

  • 関節アライメント異常
  • 異常運動

など関節破壊による変形や不安定性が出現します。つまり、拘縮による低可動性と、変形による不安定性あるいは異常可動を伴う過可動性(動きすぎる)ことが混在している状態です。

 

対処法は、まず、関節破壊により骨が変形する疾患なので、アライメント異常などがないか、X線所見で骨破壊の部位や程度を把握します。

次に、他動運動で疼痛が増強しない運動方向を確認しながら運動を行います。関節面を引き離しながらマイルドにゆっくり動かし、関節可動域の改善を図ります。

このとき、同時に主動作筋を筋収縮させ、拮抗筋の緊張を抑制しながら行うことも疼痛が出にくく、有効とされています。

※参考 PNFアプローチの基礎知識と基本テクニックの概要をリハビリの臨床で応用できるように説明

 

基本的には、RAのリハビリにおけるROM運動は、

  1. 関節疼痛に起因する筋スパズム
  2. 関節包内運動に対するアプローチ

を主軸に行います。

筋スパズムに対しては、筋マッサージ・ストレッチが有効です。一方で、関節包内運動では急性炎症や不安定性のある関節には行わないようにします。

変形の予防

リウマチの変形の好発部位は、上肢が手関節と手指であり、下肢では足や足趾です。

発生機序に関しては局所の炎症症状の中の腫脹の影響が大きいと言われています。腫脹の程度を確かめながら変形を予防する対策を立てていきます。

変形の予防のための対応は、腫脹している関節の安静と温熱療法を行い、関節包や靭帯の緩みを防止する方法があります。

次に変形予防のための運動療法のコツとしては、

  1. 筋力増強訓練は、当尺性運動で関節を中間位に保持させ最大収縮を行わせる。
  2. 関節可動域訓練は関節に新たな疼痛が出現しない範囲でゆっくりと動かす。特に筋の短縮が出現している筋にはマイルドに伸長するように心掛ける。
  3. 生活動作ではしてはいけない運動については代替の動作を指導する。あるいは生活スタイルを調整して、全身の安静と運動量を指導する。

が挙げられます。

また、変形や痛みを予防するために、日常生活で関節保護の観点を持つように勧めます。原則として、

  • 手指関節など小関節に大きな負担を掛けない(自助具などを活用する)
  • 同じ肢位を長時間続けない

ことが大切になります。

リスク管理

RAのリハビリにおけるリスク管理として、疼痛を誘発しないような関わりが重要ですが、特にリスクが高いのは頸椎環軸椎の亜脱臼、及びそれによる手指のしびれ感です。

環軸関節の脱臼は生死に関わるため、末期のリウマチの患者さんを診る時は、必ず頸椎環軸関節のX線所見を確認し、医師に指示を仰いでおく必要があります。

この段階で配慮する点は、

  • 頸椎カラー(下写真)を常用する
  • 高い枕、柔らかい敷布団を避ける
  • 起き上がりの際に後頭部を持ち上げない

ことです。

 

次に骨粗鬆症を併発・合併している場合は、椅子などに座るときにはゆっくり座るなど、脊椎の圧迫骨折の予防も大切です。

合併症では肺線維症による動作時の息切れや倦怠感がある場合は、運動負荷量、および運動姿勢に配慮して息切れを起こさない範囲で行います。また僧帽筋などのリラクセーションや呼吸訓練も必要になってきます。

ADL指導

リウマチは病態の日内変動があります

入院中の患者さんであれば、例えば入院中に朝にこわばりが強く動きにくい様であれば、それに応じた対応を退院後も指導していきます。

洗濯や掃除を昼に行う、買い物ではできるだけ重いものは家族に持ってもらうようにする、または、押し車などを併用し、荷物を乗せる、などです。

RA患者の心理面への配慮も必要

全身の疼痛の持続や関節機能障害による自己不能感は、抑うつや精神的不安を増長しやすく、一般の人に比べて抑うつ傾向が2~4倍になるとされるデータもあります。

医学的診療におけるRA患者のニーズは、

  • 薬物療法とその副作用の説明
  • 疾病の推移(進行)に関する詳細かつ具体的な説明
  • 真摯に意見を傾聴してくれる

にあるとする研究もあります。実際に私の臨床経験でも、当てはまると思います。RA患者へのリハビリにおいて、対話の必要性・重要性と心理面への配慮も当然考えておくべきことだと思います。

まとめ

リウマチにおけるリハビリにおける注意点をまとめると、

  • 障害の早期発見や早期の対応で起こさなくても済む、機能障害や能力障害を未然に予防する。
  • リウマチは進行性であるため、患者さんの状態は常に変化していることを念頭に置き、観察を怠らないようにしてプログラムを適宜修正する。
  • リウマチにおいて、問題解決できる問題と、できない問題を明確に線引きし、患者さんにしっかりとその説明を行い、理解を得ながらアプローチしていく。

となります。

リウマチのリハビリは愛護的に行うことが最も重要であり、関節の構造の理解や関節への負荷の高い運動など、理学療法士の専門分野である領域に密接に関わっているため、的確なリハビリ及びアドバイスができるように心掛けたいものです。

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