理学療法士・作業療法士はまだまだ充分に世間で認知されていない仕事です。
一般的に怪我や大きな病気をしないと実際に関わることが少ない職種ですし、仕事の対象が筋肉でや動作なので、扱うものが目に見え難く、漠然としていて、人にも説明しにくいということもその要因としてあるのではないでしょうか。
しかし、この「扱うものが漠然としている」ということは、私達働く側にも大きく影響を及ぼしていると思っています。
今回はどのように影響しているか説明していきます。
扱うもの形によって働く側の意識は影響を受ける
例えば、IT企業で働く人はパソコンの知識はもちろん、最新のガジェットや、新しい機械に対して興味があったり、抵抗が少ないはずです。
スポーツ系のブランドショップのシューズ販売をしているなら、シューズ関連や、服、アパレル関連、健康分野、スポーツ分野に興味がある人が多いでしょう。
仕事をする時に、「対象を愛する」ことは、自然なことです。
自覚しているかは別として、必ずそういう意識になります。
シューズ販売員がシューズを見るのも嫌、という状態になれば、確実に転職していると思いませんか?
仕事への興味≒対象への興味と言えると思います。
私達は、大きく分けると「人間」を対象としていますが、それでは殆どの仕事がそうで、この仕事を考える上であまり参考になりません。
私達独自のものと言えば、やはり筋肉とか日常生活動作を対象としていることが挙げられると思います。
不定形の対象を扱う仕事
対象を深く理解することで、仕事の質は上がります。
しかし、私達の対象は筋肉と言っても人体に約600個もあり、動作ともなれば、肢位など様々な要素で変化し、捉えどころのないものです。
それらを全て理解するのはとても困難です。
要するに変幻自在に変化するものを捉えてアプローチして、結果を出していかなければならない所に、
この仕事の難しさがあるのではないかと思います。
私達は、このことを理解していないと、大きな勘違いをすることになることにも気付いておかなければなりません。
例えば最近はかなり減ったと思いますが、理学療法には一般の人が聞くと何とも怪しいと思わざるを得ないような手技が存在します。
私が実習生の頃には、地方の病院に行った友達から、
「頭に手をかざして、なんちゃらを調節することでパフォーマンスが上がると教えられた。」
などという話を聞いたことがあります。
頭に手をかざして治療するって・・超能力?
これらの怪しい雰囲気のものは他にも沢山聞いたことがあります。
なぜ、こんなに怪しいものが病院で堂々と最近まで行われていたのか。
これは仕事の対象が変幻自在で、捉えどころのないものであることに起因しているのではないかと思います。
例えば、先程のシューズショップの店員は、足に手をかざして靴を売ろう、などと考えることはないはずです。
対象が固定化されており、具体的なものだからです。
リハビリの仕事の対象を曖昧に認識している人は、頭に手をかざし治療している理学療法士を見て、「すごい」と思ってしまうかもしれません。
そこまで怪しい手技は例外かもしれませんが、未だに怪しいなと思うことはよくあります。
例えば、疼痛に関して、先輩が
「何であの人の疼痛の原因が分からんねん!」
と後輩に怒っているのを聞いたことがあります。
疼痛に関しては、理学療法士・作業療法士よりも専門としているのは医師であり、学校でも専門的に勉強しているはずです。
異常姿勢や、運動に伴う筋原性の疼痛に関しては、確かに医師よりもアドバンテージがあるかも知れませんが、
これも学校では専門的に習っておらず、独学の範囲のものなので、分からないから悪い、という訳ではないと私は思います。
この先輩が何を目的にこのようなことを言ったのかは分かりませんが、
疼痛に関しては、筋肉や動作と絡めて、運動学上の観点で自分で調べた上で、専門家である医師に確認・相談するという手段を取ることが本来のPTの仕事だと思います。
もし、本当に理学療法士・作業療法士が疼痛に対して医師に勝ってアプローチ出来るのであれば、それはかなり突出したアピールになるはずで、医師よりも求められる仕事になる可能性もあります。
もし、そうであれば、現在の先細りの業界の状態にはなっていないと思います。
不定形の対象を扱うことの危うさ
このように、職域を間違った方向に漠然と拡大解釈すると、「怪しい」と思われるものにどんどん近づいていってしまいます。
先程述べたように、理学療法士・作業療法士は物理的な対象に絞ると、筋肉と日常生活動作を対象としています。
これらに関しては、他の職種に侵されにくい「聖域」だと思います。
出来ることと出来ないこと、これを明確に区別することはどんな仕事をする上でも大切です。
しかし、拡大解釈も正しく使えば、理学療法・作業療法の職域の拡大に有効だと個人的には思っています。
具体的には、対象とする範囲を物理的なもの(身体機能、筋力、動作など)から、
心理的なもの(コーチングの技術などの信頼関係構築の技術)、
環境的なもの(安全な生活環境の整備や職場復帰のための援助)に拡大していくと良いと思います。
筋肉に特化していくと他にもアスレチックトレーナーなどライバルが沢山います。
理学療法士・作業療法士は、日常生活の専門家として、心理的な関わり合いや理想的な環境を提供する方面に特化していくと良いのかなと思っています。
今、地域でのリハビリが注目されています。
訪問リハビリでは、患者さんの家の隅々まで調べて、日常生活の細かい動作まで介入します。
こんなに他人の奥深くの日常にまで介入出来る仕事って実はかなり少ないと思います。
私だったら、信用できない人とか、付き合いが浅い人に家に入って貰いたくないし、細かい生活の動作とかをアドバイスされても聞き入れません。
対象を今の日常生活動作から広げていって、「日常生活」としても良いかもしれません。
そうすれば守備範囲が広く、身体的なリハビリと介護予防だけでなく、その他のアドバイスから総合的にライフプロデュースとも呼べる提案が出来るかもしれません。
付加価値を持つ仕事ができるかどうかが大切
私が一つ考えているのは、お金の相談もでき、仕事の相談もできる信頼の置けるリハビリの先生という立場です。
今後の社会の動向を踏まえると、病気をしてて、お金と仕事に困る高齢者が増えてくるのではないかと思っています。
高齢化社会の到来で、国の医療・介護の補助制度もどんどん縮小していくでしょうし、医療技術は進歩し、皆が長生きする時代になって、歳を取ってもお金と仕事に対する需要が高まってくるでしょう。
例えば、パソコンでネットが使える高齢者も増えてきますから、ネットで収入を得る方法を一緒に考えても良いかもしれませんし、今までに蓄積されたキャリアをこれからの時代に合わせて、どうやって活かすかを考えても良いかもしれません。
ネットの技術革新により、様々な情報が楽に手に入る時代になってくると思います。
しかし、お金と仕事や自分の体に関することって、ネットで気軽に相談しよう、という気にはなかなかなりませんよね。
やっぱり信頼の置ける人に直接聞いて貰いたいと思うのではないでしょうか。
私のブログのタイトルである”不安をリハビリ”するとは、人生内で最も多くて強い不安である、健康とお金と仕事に関するアドバイスが出来るPTが将来的に活躍できるのではないか、との見解から付けました。
もちろんそのためには専門的な知識が必要です。
私は、キャリアとお金に関する資格の取得を考えています。
とにかく、私は、今までのやり方では理学療法士・作業療法士は厳しい時代になってくるのではないか、という危機感をすごく持っています。
何かしら付加価値をつけて、より良い仕事が出来るようになる方向に動いていけたら良いですね。