
医療保険や介護保険の保険制度上で働く私達療法士にとって、事務処理はなかなか労力のいる大変な仕事です。
事務処理は生産性が低い
私が以前病院で勤務している時も、リハビリに伴う事務処理には大変な労力がかかっていて、そのために専属の事務職員を雇おうかと言う話もありました。
でも病院経営ってそんなに楽ではないので、結局却下になり、パソコンに詳しい人が作業の一部をエクセルやマクロを使って自動化することで落ち着きました。
病院のリハビリであれば翌日の患者さんの予定を組む作業、カルテ記載、計画書、報告書、居宅介護支援事業所では提供表、サービス計画書など毎月ルーチンで作成する書類は山のようにあります。
ここだけの話、ケアマネさんは月末になると少し不機嫌になる方もいます。(笑)
大体、この業界に限らないでしょうが、事務処理に労力や資源を割くのって効率的ではありません。
生産性が低いんです。
私が一年目の頃は、リハビリした後のカルテを紙に下書きして、それを先輩に見てもらって、また書き直して・・って残業までしてやっていました。
ゴーサインがでるまではカルテを書かせてもらえないんです。
ある程度は仕方ないですが、そこに執着して時間をかけるのって少し違う気もします。
カルテは少し話が別で、人が書く必要があると思いますが、ルーティンで行っている事務処理をできれば自動化し、本来の業務である「患者さんを診る」ってことに集中したいですよね。
そのために私達は資格を取ったのですから。
事務処理ロボット「Robo Staff」
企業向けに事務処理を自動でやってくれるロボットが市場にとうとう出てきました。
株式会社Sprout upが、「Robo Staff」という事務処理用のロボットサービスを2015年12月14にリリースしました。
参照)sproutUp HP
サービス内容を一言で説明すると、PCのブラウザやExcel、データベース操作などを自動化してくれるというものです。
使い方は簡単で、プログラミングやマクロなど専門的な知識は必要なく、記録ツールを立ち上げ、そこで自動化したい作業を登録します。
作業は逐次ツールに記録され、フロー図が表示されます。
完了後、出来上がった記録を微調整していけば、オリジナルのロボットが完成する、ということです。
同じ作業を繰り返したい場合はロボットにお任せで大丈夫です。
実行日時を事前に予約しておき、その時間に実行させるといった使い方も可能だそうです。
導入価格は初期費用はなく、月額最低利用料金が7万5000円からだそうです。
25時間分の利用権がついており、25時間を超えた分は時給3000円。常時使いたい人向けに月額プランもあるのだとか。
この価格設定の目安になっているのは派遣社員の人件費です。
確かに人を雇うより少し安い、というのであれば導入したい企業はたくさんあるでしょうね。
ロボットだから仕事も間違えないし、処理も早いし、余計な経費が掛かりません。
あと数年もして、CPU・サーバーの処理速度が上がって、さらにコストも下がれば、普及していかないわけがないと言っても良いくらい画期的な商品だと思います。
事務員の仕事が奪われる?
この話を聞いて、「事務職がなくなる?」と思う方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、そうでもないですよ。
今までルーティンで行っていた事務処理に取られていた時間をロボットに任せることで、事務員さんは、作業効率の良い方法を見つけてロボットのプログラムに組み込んだり、外部からの依頼への電話やメール対応などの作業はしなければなりません。
全ての事務員さんの作業がなくなることはありえません。
煩わしい仕事の負担が減って、よりクリエイティブな仕事ができるようになる、という解釈で良いと思います。
生産性向上による恩恵は時代を変える
機械化が進めば、ルーチン作業や、生産効率の悪い仕事は機械に任せて、どんどん新しい価値を創造することに人の労力を使えます。
最近は時代の流れが早いと言われますが、これは、機械化の恩恵・テクノロジーの進化により、社会全体の生産性が向上しているためです。
昔の営業マンは「足で稼いでなんぼ」の世界と言われ、どれだけ靴がすり減ったかを自慢するような風潮があったそうです。
(元営業職のうちの親父が言っていました。)
しかし、今そんなことをやっていると「生産性が低い、効率が悪い」と言われるのではないでしょうか。
昔の営業の常套手段、飛び込み営業なんて、買う見込みもあるかわからない人にむやみにアプローチするのは効率が悪いと言わざるを得ません。
未だに飛び込み営業をしている会社もありますが。
今ならネットで広告を出して、それに興味を持った人を見込み客にしてアプローチするなど、少し考えれば色んな効率の良い方法があります。
今、ブラック企業がテレビ・ニュースでよく話題に上がります。
昔、私達の祖父の世代が現役の頃、ブラック企業なんて言葉はなく、「仕事は辛いもの」という感覚に耐えて、慣れていくことが、「社会人になる」ということを意味していたのだと思います。
残業代が出ないなんて当たり前、肉体労働なんて当たり前、下の意見が通らないのは当たり前。
今ならメール1つで済むことでも、手紙を書いて郵送して、返事を待ってってやっていたはずなので、当然仕事が回っていく速度が今より断然遅いはずです。
それで残業もしない、となったらホントに仕事が回りませんよね。
そんな世界でがむしゃらに仕事をしてきた世代が今の高齢者の世代だと思います。
実際に一度その世代の方に仕事について聞いてみて下さい。私が聞いた限りではそう答える方が多かったです。
同時にイクメンと言う言葉も定着してきていますが、裏を返すと、昔は家庭を顧みないで働くお父さんが多かった、ということです。
それはよく言われている様に、男は仕事をしていれば良いという時代の風潮のせいもあったのかもしれませんが、実は、それくらい労力・時間を使わないと仕事をきっちりこなすことが難しかったのかもしれませんよね。
父親で子供と関わりたくない人って少数でしょう。
できれば関わって成長を見守りたい、と思うのが普通です。
きっと、当時そうやって家庭を顧みず仕事に打ち込んでいた父親だって、本当はもっと家庭に尽くしてあげたかったのかもしれません。
そう考えるとなんだか悲しいですよね。
このように仕事の効率ってプライベートの時間にも大きく影響しますし、そこを改善できればプライべートの時間が変わります。
プライベートの時間が変われば人生が変わり、価値観が変わる。
価値観が変わる人がたくさん出てくれば、大きな波となってその時代の風潮・雰囲気も変わっていきます。
今が正しくその波の中にあります。
まとめ
人の本当の能力ってすごいんですよ。
どんなダメって言われている人でも、すごいんですよ。
うまく引き出せず、発揮できていないだけで。
色んな人の生活に深く関わる仕事をしている私は、心からそう思いますよ。
それは、仕事で本来全力で取り組むべきところに時間を割けないから・・かもしれません。
何でも自分の努力不足のせいにする人が多いですが、私は時と場合によっては環境のせいにしても良いと思っています。
環境が変われば人が変わるのは、ごく当たり前の話です。
もっとその人が持っている能力を最大限に発揮できる職場や環境を作るために、作業の効率化の一つとして仕事をこういったロボットに任せてしまうという発想は、今後どんどん普及していって欲しいですね。