
本日2016年1月20日に読売新聞で、「介護保険、調理など軽度者向けサービス見直しへ」という記事が公表されました。それについて思うところを書いてみたいと思います。
以下にその一部を引用します。
厚生労働省は、介護保険制度で「要介護1、2」と認定された軽度者向けサービスを大幅に見直す方針を固めた。
具体的には、調理、買い物といった生活援助サービスを保険の給付対象から外すことを検討する。膨らみ続ける社会保障費を抑えるのが狙いで、抑制額は年約1100億円、約30万人の利用者に影響が出る可能性もある。2月にも始まる社会保障審議会で議論を開始。年内に改革案をまとめて、2017年度にも実施に移す。
日常生活の手助けが必要な軽度者が介護保険を利用して受けられるサービスは、ホームヘルパーが自宅に来て、トイレの介助や調理などを行う「訪問介護」や、施設に通って運動などをして過ごす「通所介護」などがある。引用)読売新聞 2016年1月20日
いよいよ来たか、軽度者への規制・・という感じですね。
「困る人もたくさん出るのは分かっているのに、厚生労働省は何考えてるの?」と思う方も多いでしょう。
実はそこにはあまり知られていない保険制度上の縛りが存在します。
医療保険と介護保険は根本的に違います。
医療保険と介護保険の両方に携わって仕事をする私達療法士は両方の保険について混同して捉えてしまいがちです。
でも実際には医療保険と介護保険は似て非なるものです。
医療保険は混合治療が禁止されており、民間企業の参入・サービスの提供は違法になります。
一方で、介護保険は介護保険サービスと保険適応外のサービスを民間企業が同時に提供する混合治療が許可されています。
今回の件において、要するに厚生労働省は軽度者を見放したのではなく、「民間企業のサービスに任せる」と言っているのだろうと推測されます。
それが正しいのかは一旦置いといて、真意はそういうことでしょう。(ばっさり、ざっくり行き過ぎな感はありますが・・。)
地域包括構想もそうですが、あれは地域(自治体を含む)に任せる、という案です。
今回のも同じで、軽度の高齢者を民間企業に任せるという話です。
実際、生活援助系の民間企業のサービスは充実してきており、任せても大きな混乱はないだろうという判断があったのではないかと思います。
そういったサービスを行っている企業は介護保険制度の陰に隠れて今まであまり日の目を見ませんでしたが、今後大きく注目される可能性が出てきました。
人口が作る未来
未来は不確定要素の塊です。いえ、もう言ってしまうと、不確定要素しかないです。
では未来予測の精度を上げるためにはどういった手段が有効かと言うと、より確実なものから派生して考えていくことが基本的な考え方になります。
なので人口を元に制度などを変えていくことが多い。
人口は予測外の戦争が起きたり、伝染病が流行らない限り、まあ間違いないと判断され、ここから派生して未来に向けての取り組みがなされます。
で、このまま行くと日本では高齢者は向こう20年間増え続け、そのあとに人口比率の乖離が解消され、現在よりも大きく人口の減少した日本になります。
なのであと20年乗り切れば、今回廃止されるかもしれない生活援助系のサービスが復活する可能性も無くはないです。
まとめ
患者さんがこの話を聞き、何考えているんだ国は!とご立腹の方がたくさんいらっしゃると思います。
私達は一緒に感情を共有し、共感してあげることも必要ですが、制度に深く関わるものとして、もう少し先を見て冷静に判断・対応していきたいと個人的には思っています。
はっきり言って、今後20年、どんどん目に着くところ(予算が大きいところ)の特に介護分野の公的負担を減らそうとしてくるでしょう。
しかし、その影で、今まで介護保険制度の陰に隠れて日の当たらなかった民間企業のサービスの質が問われるようになっていっているはずです。
そこに注目してみて下さい。そうすると将来に感じる閉塞感を冷静に捉えることができます。
これからは制度が変わってただ、反射的に何でだ!現場のことを分かっていない!と思うだけではなく、その先にある、保険制度外の一般企業のサービスにも焦点を当てて患者さんへのサービス提供を熟慮していく必要があるのではないかと思います。