
業界初の電子カルテシステムがパッケージ化されて販売されてから約10数年、電子カルテが次の段階へと進もうとしています。
今回は医療界におけるビッグデータ活用と電子カルテのことについてご紹介します。
カルテは、どこでも、誰でも見れる情報へと進化していく途中
コンピュータの高速処理化、大容量化に伴い、ビッグデータが色々なところで活用され始めています。
外国に比べてIT化が10年遅れていると言われる日本の医療界。
電子カルテの次世代化により、医療界のビッグデータ化が促進すれば、今までの医学の常識が変わって飛躍的に進歩する可能性があります。
カルテを再利用が可能な貴重な情報として集積し、どこでも誰でも閲覧できる情報にしていく構想が進められています。
「ビッグデータ」って何?
例えば身近な所では、私のブログをインターネットで見ていると、表示される広告に、昨日欲しいなーと思って検索していた洋服が出てくる、アマゾンで買い物すると購入履歴やポイントがすぐに表示される、これらもビッグデータを活用した一例です。
とてつもない量のデータを高速で更新し、蓄積していく「膨大なデータの塊」がビッグデータです。
ビッグデータを集約し、活用することで、今まで以上に利用者のニーズに合ったサービスの提供、業務の効率化を図ることができると期待されています。
アメリカではこのビッグデータを利用した防犯システムがすでに稼働しています。
シアトル、ニューヨーク、ロサンゼルスの警察でもビッグデータ活用による治安対策が実施されており、特にロサンゼルスではめざましい改善効果が報告されていて、強盗が33%、暴力犯罪が21%、窃盗が12%も減少している。1)
たとえば、犯罪発生率を地域ごとに分けてデータを集めることで都市の中で最も危険なエリアがわかるようになります。
FacebookなどのSNSの更新やチェックインの状況、不登校の状況、犯罪者の医学的所見、購買データ、街頭の防犯カメラの記録など、小さなデータを膨大に集めて解析することで、警察は「犯罪が起こる前に」あらかじめ手段を講じておくことができます。
具体的には犯罪が起こる確率が高い地域をパトロールすることであらかじめ犯罪が発生するのを防いだり、抑止することも簡単にできるようになります。ビッグデータを解析することで未来を予測することができるという、良い例だと思います。
すごいですよね。膨大な量の過去の情報の集積と分析で未来が分かるようになるということです。
将来的には犯罪を起こす前の犯罪者をデータ解析で割り出して逮捕することができる可能性もあるそうです。なんだか恐ろしい気もしますが。
次世代電子カルテはどう変わる?
今はまで私達が使っていた電子カルテは患者の情報を記録・保管するためのものが大半でした。
最近になって、病院内の様々な部署で入力されたバラバラの情報が、一人の患者の情報として統合するというのが当たり前になってきましたが、次世代のカルテはそのデータを他の病院・施設・地域と連携・活用することを目指しています。
患者さんは一旦病気になると、急性期病院→回復期病院→在宅での介護サービスの利用→維持期の病院→施設など、病状も変化しながら取り巻く環境も刻々と変化していきます。
その中で、情報をスムーズにやりとりするためには、電子カルテに入力した情報をどの病院・施設・地域でも共有できるようにする必要があります。
情報が共有できるようになると、次の段階として集積した情報の解析が進みます。
多くの疾患は似通った症状を示すことが多いのです。
その情報を集積すれば、医師が診断せずとも、ビッグデータと照らし合わせることで自分で簡易的な診断も可能でしょう。
治療法も「この治療法を行って何%の確率でどの程度どんな症状が改善した」ということが参照でき、自分で簡易な治療なら行えるようになるでしょう。
ここまで行くと少し先の話になるかもしれません。
現段階では「情報の共有」の段階で、医療情報って個人情報の塊なので、なかなかうまく行っていなかったようです。
しかし、昨年位からやっと電子カルテがみんながすぐ見れる、と言う状況になりそうな気配が出てきています。
医師会が動き出した
東京都医師会は2015年11月、都内の地域包括ケア実現への第1段階として、富士通とNECのシステムの相互連携を推進することで、病院-診療所間、あるいは在宅医療の多職種間での情報連携を進め、地域包括ケアシステムの実現を目指す。2)
実際、私が以前働いていた病院でも退院時に書く退院サマリーは封筒で郵送していましたし、情報のやり取りに関して内部ではそこそこIT化が図られていましたが、外部とのやりとりとなるとホント古典的でした。基本紙媒体の郵送です。
でも考えてみると、今後はパソコンやスマホなどのデバイスを日常生活で積極的に触っていた世代が高齢化してきます。
さらに一般の人も医療系の情報に簡単に触れることができるようになってきているので、自分の病気のことを詳しく調べ、専門家並みの医療知識を持った一般人がいても何らおかしくありません。
医療従事者同士だけが情報のやりとりをするのではなく、患者さん自身も自分の健康管理の為に血液データの結果を保管したり、血糖値などの経過を閲覧できるシステムがあった方が絶対良いですよね。
次世代の電子カルテが普及すれば、今は至る所で地域連携の為に病院同士で交流会や勉強会を開いたりしていますが、直接時間をかけて会わなくても、ネット上で情報交換が可能となります。
まとめ
地域医療・リハに力を入れていくなら「情報の共有」は最低限必要で、それができるようになるとビッグデータ解析の道が少し開けてきます。
患者ごとの医療情報が簡単に手に入り、閲覧できる環境づくり、まずはこういったベースとなる部分の整備が必要ではないでしょうか。
私が現在行っている訪問リハビリでは、なかなかその人の病状の経過・歴史を追うことは現状では難しいです。
本人に聞くか、家族に聞く、ケアマネに聞く、くらいです。でも、やはり実際のところは血液検査の結果や、過去の画像を見ないとはっきりとは掴めません。
また、訪問リハビリのカルテはまだほとんどのところが紙媒体で行われており、情報の共有・解析とは程遠い状態です。
スマホやパソコンで、簡単に情報を閲覧し、地域、ひいてはその人自身が自分の健康管理に役立てたりできるようになると社会的にも意義深いものになりますね。
(参考1.:ビッグデータを活用した犯罪捜査 2.日経テクノロジーオンライン)