
リハビリでのトレーニングにおいて重要なトレーニングの概念、CKCとOKCについてご紹介します。リハビリでより成果を出したいなら必須の知識です。また臨床で役立つ、それぞれの違いとリハビリでの使い分け方もご紹介していきます。
リハビリでのトレーニングの方法には大きく分けて2種類あり、
- ベッド上で寝て行う筋力トレーニング
- 立って・又は座って動作を行う筋力トレーニング
があります。
簡単に言ってしまうと、
- ベッド上で行うトレーニングのほとんどがOKC
- 立って行うトレーニングがCKC
だと思ってもらってほぼ間違いありません。(厳密に言うと少し違う場合もありますが。)
CKC(Close Kinetic Chain)とは

CKCとは、閉鎖性運動連鎖と言われ、四肢の末端が固定された状態で行う運動のことです。
代表的なものは自重による負荷運動で、多関節運動の動きに対応しています。簡単に言えば、「地面に足を付けて行う運動」がCKCの運動です。
- スクワット
- 踵上げ
- お尻上げ(ヒップアップ)
などですね。

特徴
CKCでは共同的な筋収縮が起こることで関節の動きを安定させます。
但し、アライメント(筋・骨の配列≒姿勢)が少し崩れるだけで目的とする筋肉に収縮が入らないので、個別の筋を狙って筋トレをするのは難しいという側面もあります。
CKCの運動では関節の圧迫力、筋肉の共同収縮によって求心性受容器の活動が増加して、筋肉だけでなく、関連する神経の賦活も促すことができます。
つまり、身体全体の動かし方を学習する効果もあるので、単純に筋力を強くするだけでなく、練習する動作を円滑に(スムーズに)行えるようになる効果も望めます。
健常者においてはOKCよりも、CKC=自重を使ったトレーニングの方が筋力増強効果が大きいとの報告もあり、リハビリの臨床では最近特に注目されている運動方法がCKCトレーニングです。
OKC(Open Kinetic Chain)とは

OKCは、開放性運動連鎖と言い、逆にOKCは四肢の末端が固定されておらず、末端が自由に動く状態での運動のことです。
単関節運動の動きに適しています。
写真のような側臥位での股関節外転運動の他、
- 座位での膝屈伸展運動
- 歩行での遊脚相(地面から足が浮いていて、前に振り出す時)
などがCKCの運動に該当します。
特徴

同時収縮が乏しく、日常生活の動作でOKCの運動は少ないですが、上肢の運動はほとんどOKCです。
なので、上肢を使った作業の専門家である作業療法士の専門学校では運動連鎖の概念を習わないそうです。(昔に聞いた話なので、今はどうかわかりません・・)
単関節運動になるので、CKCの様に、神経の賦活や多関節の複合的な使い方は学習できませんが、目的とする筋肉に個別にアプローチしやすいことが特徴です。
狙った筋肉を鍛えやすいというメリットがあります。
リハビリトレーニングにおけるCKCとOKCの違い・使い分け方
運動連鎖の特性の違いを理解し、CKCとOKCを適切に使い分けることは大変重要で、その後のリハビリの成果に大きく影響します。
リハビリにおいても、トレーニングをするときに経験を積んだ療法士なら間違いなく運動連鎖を考慮してOKCとCKCのトレーニング方法を使い分けているはずです。
では、実際の臨床ではどのように違いを考慮し、使い分けるのでしょうか?
1.疾患を考慮する
機能低下、もしくは動作不全に陥っている原疾患を考慮する必要があります。
整形外科疾患でリハビリをしている方は、まずはOKCで弱っている筋肉にターゲットを絞り、直接働きかける方が良いでしょう。
その方が効率良く目的とする筋肉に働きかけることができます。
逆に、中枢系の疾患でリハビリをされている方は、動作自体が上手くできないことが多い(筋肉を上手く使ったり、協調して使うことが難しい)ので、CKCで個別に特定の筋力を鍛えても動作が改善しないことも多いです。
著明に弱っている筋肉があって、動作ができないのであれば、OKCでまずは筋肉を鍛え、その後にCKCで動作の中でその筋肉を上手く使う練習を行うと良いでしょう。
リハビリ業界では、一昔前の「筋力至上主義=筋力があれば動作はできる、という考え」の名残りが未だあります(特に最近の療法士ではなく、昔に免許を取得した療法士に多いです。)が、ひたすら筋力トレーニングをして、筋力だけを付けても動作を改善できないことも多いです。
動作の中で鍛えた筋肉を有効に使う方法もCKCで再学習していくと、より効率的に目的とする動作が安定して行えるようになります。最近では人が運動を学習する過程(運動学習)も解明されつつあり、筋力がある程度あれば、あとは動作を円滑に行えるように動作練習をした方が良いと言われています。
年齢の若い、整形外科疾患でリハビリを受けている方はCKCで動作を練習する必要性は少ないかもしれませんが、高齢の方で中枢系の疾患の既往がある方は、CKCの運動で動作改善を図るべきだと思います。
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2.筋力を考慮する
例えば、高齢者の方は立ち上がり動作が上手く行えない方が多いです。
様々な原因がありますが、もし、下肢筋力の低下により立ち上がり動作が困難となっている場合には、動作を反復することで、立ち上がり動作の効率的な動作方法の再学習と、大腿四頭筋などの筋力訓練になります。
しかし、このようなCKCの運動は、基本的に自重を使ったトレーニングですので、自重に耐えきれないほど下肢の筋力が弱い方は、代償動作が出現し、非効率的な動作を再学習してしまったりして、逆効果になりかねません。
この場合、私はベッド上でOKCのトレーニングである「キッキング」を行ってもらいます。

キッキングを漠然と「下肢の運動」として行っている療法士も多いですが、これは立ち上がり動作をCKCで疑似的に行うための運動です。

なので、踵は地面を擦るようにキックしてもらって、充分に下肢筋力が付いてくれば、立ち上がり動作にトレーニング方法を切り替えてトレーニングを実施するとスムーズににリハビリが進む場合も多いです。
立ち上がり動作だけでなく、負荷がやや高いCKCトレーニングで大きく姿勢が崩れてしまう、もしくは動作自体が困難な場合、OKCで目的の筋肉を鍛えてからCKCの運動をすると、効果的にトレーニングを行うことができます。
3.リハビリの目的を考慮する
運動学習という概念があります。
参考)運動学習について
人が運動をする時に、
- 認知段階→
- 連合段階→
- 自動化段階
と一連の過程を経て運動が形成・表出されます。
認知段階では目的とする動作を正確に認知・イメージし、連合段階でどんな動作をどのように行うのか試行錯誤され、自動化段階で無為意識的に動作が行えるようになると言われています。
リハビリをする目的は、大半の場合、日常生活が元のように送れる様に日常生活の動作を改善する目的で行われます。スポーツリハなどはパフォーマンスを上げるために行われたりしますが、それでも、フォームを覚えるときにこの運動学習のが概念が考慮されているはずです。
運動学習の概念を考慮すると、筋力を鍛えるだけではダメで、問題となる動作を日常生活で自動化して行えるようにリハビリを行う必要があります。
なので、療法士がアライメントを修正することで動作が円滑に行えるのであれば、その修正した働きをする筋肉をOKCで鍛えて、正しい動作を反復して行うCKCの運動を中心にトレーニングした方が結果が早く出やすいです。
「生活リハ」といわれる分野がありますが、日常生活動作を改善したいなら、日常生活動作の中で鍛えるのが一番早く求める結果が出やすいです。(当たり前のことですが。)
逆に特定の筋力を付けたいのであれば、その部位を鍛えるOKCの運動を行う方が簡単で結果が出やすいでしょう。
よって、何を目的にトレーニングするかによって使い分けると良いと思います。
まとめ
リハビリやトレーニングの分野において大切な概念、
- OKC=開放性運動連鎖
- CKC=閉鎖性運動連鎖
の意味と、臨床での使い分け方をご紹介しました。
リハビリやトレーニングできる時間は限られています。短時間で最大の結果が出せるように、CKCとOKCを上手く使い分けて、しっかりと訓練内容を練ってからリハビリに取り組むようにしたいものです。