
誰もが使いやすいユニバーサルデザインの道具を一緒に考えませんか?今回は「誰でも参加できる便利なモノづくり」を行う”think minority(シンクマイノリティ)”をご紹介します。
「障がい」ってなんなの?
リハビリに関わる方や実際に障がいをお持ちの方は、「障がいって一体なんだろう?」と真剣に悩んだことがあると思います。
世の中には、加齢による筋力低下をはじめ、脳卒中の後遺症による片麻痺などなど、何かしらの疾患・原因があって、その他大勢の方々と同じように体が動かせない方もいらっしゃいます。
一般的には、
- 腕が動かせない=腕の障害
みたいな認識でいる方もたくさんいると思います。
しかし、「障がい」の概念は時代とともに変遷しています。
【障がいの概念の変遷】
医学モデル・個人モデル | 社会モデル | |
障がいとは?(定義) | 健康ではない、普通ではない | その人の個性、合理的配慮の不足 |
社会適応の手段 | リハビリ、訓練 | 社会側の改革、環境的配慮 |
社会保障制度の課題 | 医療、福祉 | 意思決定、権利擁護 |
現代では、個人・医学モデルではなく、社会モデルでの障がいが問題になっています。個人にアプローチするだけでなく、社会に対してもアプローチしていく必要があります。
「障がい」って実はこれからの世の中に絶対必要なものなんです。社会が次のステージに行くために、避けて通れない大きな課題なのです。
なぜでしょうか?
実は、”本当に良いモノはない”
21世紀は「成熟社会」と呼ばれます。
今では生活の中にあらゆる便利なモノが溢れ、比較的安価に購入することができます。100円均一ショップに行けば生活に必要なほとんどのものが手に入りますよね。
しかし実は、少し視点を変えると、今の社会では足りないものばかりです。障害がある方にとっては使いにくいものばかりなんですね。
例えば鞄。
今はインターネット通販でカバンも手軽に手に入るようになりました。安価なものでも十分使いやすいし、デザインの良いものが沢山あります。
しかし、「片手で使える鞄」となるとかなり数が限られてしまいます。多くの鞄に付いてるチャックも片手だと開けにくいですよね。
さらに「片手で使える鞄の中で、気にいったデザインのものを選ぶ」となると、それだけでもう「そんなものない!」となってしまいます。つまり、モノが溢れているのに一部の人たちにとってはモノがほとんどないんです。実に不思議な状態。
誰もが使いやすい”ユニバーサルデザイン”
障害がある方も使いやすい鞄などの道具をしっかりと考えてデザインし、開発・販売すると、それは新しい画期的な、誰もが使いやすい商品になります。
そういったデザインが設計された商品のことを”ユニバーサルデザイン”商品と呼びます。
わかりやすい例では、街中にある自動ドアがそうです。
障がいがある方でも誰でも簡単に使えて便利ですよね。テレビのリモコンも元はチャンネル操作がしにくい身体の不自由な方のために開発されたものだそうです。これもわかりやすい例ですね。
ユニバーサルデザインは、モノが溢れた成熟社会である日本で、さらに進化した”これからのモノづくり”を支える考え方になります。
”think minority(シンク マイノリティ)”
今回私が記事を書いたのは、障がい者を中心とした(もちろん健常者も使いやすい)ユニバーサルデザインの商品を開発・販売している理学療法士の国宝さんとお会いしてきたからです。かなりのイケメンです。
国宝さんは、会社を立ち上げて「全国誰でも参加できる」モノづくりをされています。障がいがある方も使いやすい道具を開発するのに、障がいのない人ばかりが集まっていても良いアイデアが生まれる訳はありません。
実際に障がいがある方が参加できる環境を作り、その中で皆の意見を取り入れてより良いものを開発するために日夜努力をされています。
今回事務所に伺ってお話を聞いたのですが、今はモノづくりに関わるデザインを勉強されているということでした。デザインの専門書が20冊くらい無造作におかれていて、2週間で読んだそうです…。
お話をお聞きすると、何より熱意がすごい!知識がやばい!笑。
“think minority”のミーテイングの動画を見ていただければわかりますが、商品のアイデアを出す会議では皆さんすごく楽しそうです。
ミーティングは「楽しく、ワイワイ」やらないと色んなアイデアは生まれません。思わず笑っちゃうような、ぶっ飛んだアイデアももちろん大歓迎です。国宝さんも「一度来て頂ければ絶対に楽しいです!!」と声を大にしておっしゃっていました。
実際、参加者へのアンケート結果も高評価です。

“think minority”ミーティングでは、障がいがある方も参加するので、実際の生の声を聞くことができます。これは必ず大きな気づきがあるはずです。ミーティングによってはリハビリ・介護福祉職だけでなく、デザイナーさんなども参加されているそうなので、異業種交流として知見を深める場所として参加してみても良いかもしれません。(座学だけの勉強会に行くより、よっぽど実地勉強になるのではないでしょうか。)

日本全国に実際に国宝さんが訪れ、色んな地域で”think minority”ミーティングを開催し、そこで意見を集約、メーカーに実際に意見を持っていき、商品の開発・生産を行う全国規模・参加型のプロジェクト、それが”think minority”です。
障がいがある方だけが使いやすいのではなく、誰もが使いやすい、つまりは成熟社会以降、1段階進化したこれからの商品を開発する場に、誰もが参加できるって凄い素敵ですよね。
国宝さんは欲しい商品を実現するために一番ハードルが高い部分である、メーカーとの商談・制作、販売を受けおってくれて、自分たちで考えた商品が実際に形になるというのだから驚きです。
リハビリの現場で働いている私としても、「こんな道具あったら良いんじゃない?」と思うことはたくさんあります。皆さんのユニークなアイデアが実際に形になり、販売される場所、”think minority”。みんなで集まって意見を出し合い、作り上げた商品が、実際に自分の手に取って日常生活で使える…考えただけで嬉しいですよね!
お会いした際、国宝さんは、お忙しい中時間を割いて下さり、私に「視座」の話をして下さいました。
どの視点から世界を眺めるか、それで目標が決まり、「当たり前の基準」が決まる。国宝さんが見ている視座は世界進出。だから大量の専門書を短時間で読むことも「当たり前」なんですね。私は「凄い!」を連発していましたが笑。その度に国宝さんは「いや、普通ですよ」とおっしゃっていました。それこそが視座の違いなのでしょうね。
すごく優しい方で、最後は私の人生相談みたいな話にも真剣に答えて下さいました。ぜひ、皆さんも直接国宝さんに会って色々話をして下さい。
まとめ
私は障がいって個性の1つだと思っていて、腕が動かしにくいから障がいがあるとは思わず、社会の中で腕が動かしにくい人が活動がしにくい環境が実際にあって、それが”障がいを作っている”と思っています。
つまり、個人の中に障がいがあるのではなく、社会の中に障がいがあるのです。
障がいや強い個性を持った方が気軽に参加できず、今の体制にマッチした人たちだけしか参加できない社会は、とても窮屈で不便、不自然な形(デザイン)に感じて、すごく違和感があります。
どうしても数の少ない(母数が少ない)、障がいがある方の意見は、大量生産・大量消費前提の社会では声が届きにくい現実があります。しかし、これからの日本は人口も急激に減っていきます。あと150年くらいしたら、ちょうど近代化が始まる明治時代程度の人口ボリュームに落ち着くと予想されています。
モノづくりも昭和の人口急増時代の大量生産・大量消費モデルから脱却し、より質を高める努力をしていかなければなりません。
“think minority”はモノのデザインを考えるだけでなく、モノの開発・販売を通して社会のデザインそのものを変えていきます。
つまり、「社会そのものを本来の在るべき形に戻していく、社会的規模のリハビリテーション」といえるのかもしれません。私が国宝さんの”think minority”にすごく興味を持ったものは、そこに大きく共感したからだと思います。
“think minority”に参加してみたい方は、以下のLINEより「シンクマイノリティ参加希望」とメッセージをお気軽にお送り下さい!※詳細は追ってご連絡致します。
※think minority代表 国宝孝佳さんのTwitterアカウント「https://twitter.com/kokuho_mono」