
私はどちらかというと、職場で先輩よりも後輩と仲良くさせて頂くことが多く、理学療法士で、現在の職場を辞めたいと悩んでいる後輩に相談を受けることが良くあります。
理学療法士の退職理由にはどういったものがあるのでしょうか。実際に私が後輩から聞いた退職理由を挙げてみます。
退職理由をそのまま伝えてよいのか?
私も回復期から訪問看護ステーションへ転職する際に、退職時の理由を考えて悩んだ経験があります。
実際、「この退職理由で良いのかな?」と悩む場合も多いと思います。
考え抜いた挙句、結局、私は当初の予定通り、建前ではなく、本音の退職理由を職場に伝えました。
当時私が働いていた病院は、給料以外はすごく良い環境で、収入面だけが辛いということを退職前の面談でお伝えしたのです。入職時にはなかった家族ができた私にとって、この職場でずっと続けていく未来が見えなくなってしまったのです。
つまり、私の職場への不満は、考えてみるとこの一点のみだったので、比較的スムーズにことが運びました。
しかし、上司と関係性が悪化していたり、経営者の方針が不満な場合などの問題で退職する場合はこうはいかないかもしれません。
円満退職を目指すべき
もともと、理学療法士が退職する時、組織にとっては収益が減る可能性が高いです。私たちのリハビリ業界は、リハビリの回数をこなすことで診療報酬が頂き、それが収益になります。そうなると、退職して頭数が減るとそれだけでリハビリを行える回数が減ってしまいます。
理学療法士は年々増え続けていると言われていますが、再び雇用して人員の穴を埋めるには、求人広告を出したり、組織としてもそれなりに費用を掛けて何らかの対応が必要になります。
現場レベルでも人手が減ることで、自分がこなしていた仕事が他の人の負担になることも多いでしょう。
極論では、急に辞めたいと言ってきた職員の穴を埋める方法を考え、体制を整えておくことは組織経営のリスク管理の内の一つで重要だと思いますが、それでも、雇われているこちら側としては気が引けます。
「これまでここで一杯勉強させて貰ったし、良い仲間も沢山できた。」
多くの人が現在の職場にそういった感想を持っていると思います。それでも退職したいと思うのは、他にどうしても譲れない何らかの理由があるからではないでしょうか。
まずは、自分の心の中の「どうしても譲れない何らかの理由」をちゃんと見据えることが大切でしょう。
そして、今までお世話になった組織に気持ちよく送り出してもらえるよう、円満退社を目指すべきだと思います。
理学療法士の主な退職理由
私が後輩から聞いた退職理由(現在の職場を辞めたいと思った理由)を以下に挙げます。
- 人間関係
- 給料
- 現在の職場ではしたい勉強ができない
- 引き抜き(友人・知人にデイサービスや訪問看護ステーションの立ち上げで呼ばれた)
- 周囲の物理的環境の変化(結婚・親の介護などで地元に帰る、あるいは引っ越しすることになった)
- 結婚を機に寿(ことぶき)退社(女性の場合)
注:)多い順ではありません。
退職したい理由は、ほとんどがこの中のどれかでした。以下に詳しく説明していきます。
1.人間関係
人間関係の悩みは、理学療法士やセラピスト業界の人間だけでなく、多くの社会人が抱えていると思います。
上司は組織を維持するために、部下を動かすことも仕事のひとつです。時には厳しいことを言わなければならないこともあるでしょう。
部下はそれに納得できず、かといって反抗することもできず、悔しい想いをしたり・・
まず、人間関係で悩んでいる場合、直属の上司に相談するとよいでしょう。
それでも環境の改善が望めない場合、ある程度我慢するか、我慢するのが難しければ、配置換え(関連施設など)などを希望するしかありません。
辞める、というのはこれらのどの選択肢も無くなってからが良いのかなと個人的には思います。
2.給料
私のように家族が出来たり、周囲の環境が変わってくると、どうしても今の給料では心もとない場合もあると思います。私の場合だと、プライベートの家族と職場への恩を測りにかけているような感覚になりました。
しかし、給料に納得がいかず、そのまま続けていても、モチベーションは上がりにくいです。長い目で考えると、職場にも迷惑をかけることになるかもしれません。
そう考えると、退職して、他の自分が望む職場に移る方がお互いのためになると思いました。私の場合、そもそもなぜ仕事をしているのか?という問いを改めて確認する良いきっかけにもなりましたね。
仕事をする理由は金銭的なものだけでなく、もちろんたくさんあります。
- 社会貢献
- 社会との接点
- 家族を養うため
- 自分の能力を試したい
- 自己実現
などなど。
その中でも、この職場に居続けることで、何ができなくて、何ができるのか?を明確にしておくことが必要だと感じます。
3.勉強したいことが現在の職場ではできない
理学療法士の場合、この理由で退職する人が非常に多いです。
回復期の病院であれば、地域でリハビリをしてみたい、勉強してみたい、などです。実際、回復期での病院だけの知識だと、その後も続く患者さんの生活の一部しか見ることができません。
勉強したいという退職理由は、前向きな印象を持たれ易いため、決して悪くはない退職理由だと思います。
4.引き抜き(友人・知人にデイサービスや訪問看護の立ち上げで呼ばれた)
他の職場から引き抜きがあった場合、現在の職場よりも良い条件・待遇を提示されることも多いと思います。
現在の職場としてはこれは面白くないかもしれません。今より給料が良い職場に移ることは労働者としては当然と言えば当然ですが、組織に育ててもらった恩を感じてしまいます。
私個人の見解としては、極論では、自分のどっちがやりたいのかという気持ちが一番大切だと思います。立ち上げに関われるのは今、この時しかチャンスがないかもしれない。そう考えるなら、そっちに移って経験してみるのも良いかもしれません。
上述のように、違う職場に心が移ったまま、現在の職場で働き続けることは、双方にとって良いことではないからです。
5.周囲の物理的環境の変化(結婚・親の介護などで地元に帰る、あるいは引っ越しすることになった)
この退職理由は充分退職理由になるし、悩むことはないでしょう。そのまま上司に伝えて大丈夫です。
もう職場に通うことが難しいということなので、これは仕方ないはずです。
6.結婚を機に寿退社
結婚を機に専業主婦になる、あるいはパートをするために退職する、という後輩もいました。この時も特に引きとめられることなく退職していました。
どんな退職理由でも引きとめられる可能性はある
冒頭で私は本音で退職理由を告げたと書きましたが、これは「どんな退職理由であろうと引きとめられる可能性がある」ということが分かっていたからです。
確実に言えるのは、引きとめられる前提で退職理由を考えた方が良いとうことです。
具体的にどうやって引きとめられるのか?以下に挙げてみますね。
給料が不満
「もう少ししたら上げる予定だからもう少し待って!」などと言われる場合もあります。これを聞いて、現在の職場に残ると、ズルズルとそのままの給料で行くことも多いです。
人間関係が不満
「なにも辞めなくても・・・その人がいないところに配置換えするよ?」と引きとめられることがあります。配置換えしたところでも合わない人が出てtくるかもしれませんね・・。
勉強したい
「うちで働きながらでも勉強できるよ!今度訪問リハビリステーションを立ち上げる予定だから、やってみない??」
などと引きとめられる場合もあるでしょう。
引き抜き
「立ち上げに関わってそれくらいの給料だと少ないでしょ。大変だよ。うちならそこまでは出せないけど、今まで通り働いてもらえれば、少し給料上げられるかもしれないよ。」
別に立ち上げに関わらない引き抜きでも、「給料を上げる」という話が出てきてもおかしくありません。
結局本音で語るのが一番
こうやって考えていくと、ほとんどの退職理由が引きとめられる可能性があることが分かります。
寿退社と引っ越し、地元へ帰るなど、物理的に職場に通うことが不可能になった場合のみ、引きとめられないと考えておく方が無難でしょう。
なので、退職理由を何と伝えればよいのか?とで悩んでしまうこともありますが、結局は辞めるという本人の意志と、本音の理由を伝えるのが一番だと自身の経験から思います。
もちろん、なんでも本音を話しても良いという訳ではなく、組織に失礼のないように伝えなければなりませんが。
給料を退職理由にするのも良いと思います。実際、それで辞めていく人が多いと思いますが、建前で「勉強したいことが変わった、ここではそれができない」という人もいます。
でも、それだと、すぐにボロが出ると思います。それなら「給料が低いから」という本音の理由の方が良いでしょう。
例えば、回復期の病院で働いていて、地域リハビリに興味が湧いてきたなら、別に職場を変えなくても、休日にNPOでアルバイトかボランティアでもして地域でリハビリの勉強をすることもできます。
本当に勉強したいなら、環境にそれほど左右されずに、すでに初めているはずです。
ボランティアで働いて、それでも物足りない、という話であれば理解できますが、そうでなければ、「別に働きながらできるんじゃ?」と思われたり、「本当かな?」と建前の理由だということに気付かれてしまいます。
それでも、本音の理由が言いにくい場合は、セラピスト専門の転職サイトに登録すると、無料で相談できます。退職理由もアドバイスがもらえたりするので、ぜひ有効活用して下さい。
このブログでは何度もお伝えしているのですが、私もリハ職専門転職サイトの、
を2つに登録し、すごく納得のいく職場を紹介してもらっています。
まとめ
人が成長していけば、以前は満足していた職場に馴染まなくなってくることも当然あります。就職した当時はマッチしていても、いずれマッチしなくなってしまうのです。
当然時代が流れていくので、組織も変わっていきます。今まではトップダウン型の活動が多かった組織も、今はプロジェクトやチーム形式の活動が増えてきています。
これはまさしく時代の流れの影響を受けている証拠です。
組織も変わっていきますが、当然、個人も変わっていきます。私のように結婚したとか、子供ができたとか、分かりやすい変化がなくても、確実に変わっていきます。
例えば、Twitterを始めた、など、何気ない私生活の行動が、その人の価値観を少しづつ、気付かない内に変えていきます。
組織と個人の変化は時代の変化をベースに変わっていくのです。今から職場で使ってるパソコンをワープロに変えよう!ってなる組織なんてないですもんね。笑
よって時代の流れが速くなればなるほど、組織も個人も早くどんどん変化していくようになるので、昔みたいに石の上にも3年とかいうのはもう遅すぎるんですね。
若者の数が減少し、労働者が不足してくると、人材の流動性が高まってきます。それは供給が飽和すると言われているリハ業界も同じだと思います。むしろ、国家資格保有者は転職しやすいので、余計に転職する人が増えるかもしれません。
今後、リハ業界でもどんどんその時の自分に合った職場を探して転職していく人が増えていくでしょう。
変化は成長の証です。職場を変えることは実は重要ではなく、まずは自分が変化していくことが重要だと思います。そのために、職場を変えるという方法が必要な場合もあるのではないでしょうか。