リハビリの専門家が説明する,大腿四頭筋の筋トレとストレッチの方法

大腿四頭筋


”大腿四頭筋”という名前はみなさんも聞いたことがあると思います。人体の筋肉の中でも非常に有名な筋肉です。




大腿四頭筋は太ももの前面にある非常に大きな筋肉で、運動やダイエットにおいて重要な働き・機能を持っています。重力に抗して活動する人にとって無くてはならない筋肉といっても良いでしょう。

詳しく見ていきましょう。

大腿四頭筋とは

実は、大腿四頭筋は1つの筋肉の名前ではありません。腸腰筋と同じようにいくつかの筋肉の総称です。

大腿四頭筋は、

  • 大腿直筋
  • 内側広筋
  • 中間広筋
  • 外側広筋

の4つの筋肉を総称した名前です。図で確認しましょう。

大腿四頭筋

大腿四頭筋 中間広筋
中間広筋は他の3つの筋肉の下に位置します。

これら4つの筋肉は互いに隣接しており、停止部はすべて同じです。よって、大腿四頭筋と一括りで呼ばれます。

大腿四頭筋は”quadriceps(クアドリセプス)”とも呼ばれ、英語でクアッドは”4”という意味です。リハビリの臨床では略して”クワド”と言われたりします。

大腿四頭筋の解剖(起止・停止・走行)

大腿四頭筋を構成する4つの筋肉の起始・停止を確認しておきましょう。

大腿四頭筋に限ったことではありませんが、筋肉の起始停止をざっくりとでも良いので頭に入れておくことで、筋トレやストレッチをより効果的に行うことができます。

  • 大腿直筋
【起始】腸骨(下前腸骨棘、寛骨臼の上縁)
【停止】脛骨(脛骨粗面)
【支配神経】大腿神経
【主な機能】膝関節の伸展、股関節の屈曲
  • 内側広筋
【起始】大腿骨(上部3/4)
【停止】脛骨(脛骨粗面)
【支配神経】大腿神経
【主な機能】膝関節の伸展
  • 中間広筋
【起始】大腿骨(上部3/4)
【停止】脛骨(脛骨粗面)
【支配神経】大腿神経
【主な機能】膝関節の伸展
  • 外側広筋
【起始】大腿骨(大転子、粗線外側唇)
【停止】脛骨(脛骨粗面)
【支配神経】大腿神経
【主な機能】膝関節の伸展

・・・・起始停止を見てもなかなかピンとこないですよね。

頭に入れやすいように少し整理してお伝えします。

起始部について

大腿直筋のみ腸骨の下前腸骨棘、つまり骨盤から起始しています。その他の2つの筋肉(内側広筋・中間広筋)は大腿骨から起始しています。外側広筋は大腿骨の外側にある、大転子より起始しています。

停止部について

停止部は4つともすべて脛骨粗面に付着しています。脛骨粗面とは、この部位のことです。

脛骨粗面
膝のお皿(膝蓋骨)下縁から指2本分下の骨が隆起している部分です。

この脛骨粗面の直上を打腱器などで軽く叩くと、膝蓋腱反射が誘発されます。これが臨床などでよく行われる深部腱反射検査の代表的なものになります。

参考) 深部腱反射って何なの?意義・目的,実施方法と臨床での実際

作用の違いについて

大直直筋は他の3つと少し毛色が異なり、

  1. 股関節
  2. 膝関節

の2つの関節をまたぐ2関節筋です。

なので、他の3つの筋肉は膝関節を伸展する作用しかありませんが、大腿直筋のみ股関節を屈曲する作用があります。

大腿四頭筋の触診

大腿四頭筋を触るのは簡単です。人の体を前から見たときに「ふともも」と言われる部分の中心部を指させば、そこが大腿四頭筋です。それぐらい触りやすい表層の筋肉で、複合筋としては人体最大のボリューム・体積を持つ筋肉です。

しかし、大腿四頭筋の4つの筋肉を個別に触りたい場合、少しコツがいります。

以下に触る方法をご紹介します。

  • 大腿直筋

大腿直筋は骨盤の腸骨の下前腸骨棘に起始しているので、そのやや下を触って股関節を屈曲させると力強く収縮します。

  • 内側広筋

内側広筋は膝を伸ばす際に最終可動域付近(約15度)で強く収縮します。さらに股関節を外旋させた位置で膝を伸ばすと力強く収縮します。

  • 外側広筋

外側広筋は股関節を内旋させて太ももの外側を触ると分かりやすいです。

  • 中間広筋

中間広筋は大腿直筋の下層にあるため触れません。

リハビリの臨床で注意して診る頻度

この中で、リハビリの臨床で触る機会が多い順に挙げると、

  1. 大腿直筋
  2. 内側広筋
  3. 外側広筋

になります。

 

大腿直筋は、2関節筋なので、運動時に過負荷となりやすく、痛みを訴えるかたも多いです。痛みの元になる運動を探るときに触診しながら運動して、収縮の程度を確認したりします。

 

内側広筋は、萎縮していることが多く、また変形性膝関節症の方にとって膝の安定性を高めるために鍛えることが多い筋肉です。萎縮の程度を確認したり、膝関節を鍛える後述のパテラセッティングなど行う際に内側広筋がちゃんと収縮しているか触診して確認します。

 

外側広筋は、同じく変形性膝関節症の方に痛みを訴える方が多いので、痛みの状態を確認するときによく触診します。

中間広筋は大腿直筋の直下にあり、触診しようと思ったことがありません・・。普通はあまり意識されることは少ない(はず)です。

 

この順位は、それだけで人体にとっての大腿四頭筋の4つの筋肉の重要性を示していると思います。大きな機能の違いはありませんが、少し走行が変わってくるだけで痛みが出やすかったりするものです。

大腿四頭筋の機能

基本的に大腿四頭筋は膝関節を伸展する作用があります。しかし、実際、厳密には4つの筋肉それぞれ微妙に作用は違います。

 

まず、特徴的なのが、大腿直筋です。

この筋肉だけ骨盤より起始しており、収縮すると股関節を屈曲させる作用もあります。

また、膝関節を伸ばす筋肉といっても、スクワットのように、抗重力位で体を支えているときに膝を曲げる動作を行っても大腿四頭筋は力強く収縮します。

 

これは、遠心性収縮(エキセントリック)といって、筋肉の長さ自体は縮まりながら収縮する筋肉の収縮様式によるものです。

日常生活の動作では普通に筋肉を収縮させることよりも、この遠心性収縮の方が頻繁に使われています。大腿四頭筋も動作上の主な役割としては、「重力に抗して膝を伸ばす」ということが最も大きいでしょう。

内側広筋の重要な機能「スクリューホームムーブメント」

大腿四頭筋の機能を語る上で、内側広筋の果たす役割も抑えておくできでしょう。

膝関節を伸ばすと、普通はただ”曲げ伸ばししているだけ”だと思っている方が多いと思いますが、実は、膝を伸ばしきる少し前(約15度前)に下腿の脛骨が外旋します。

膝から先の下腿部が外側に僅かに(およそ7度)捻じれているのです。

 

立ったときに全体重が掛かる膝関節が折れてしまわないようにするために、最後に下腿を外旋させ、ちょうどねじを締め込むようにロックする機能が自然と働くようになっています。この作用を”スクリューホームムーブメント(SHM)”と言います。

 

このSHMを働かせるためには内側広筋の働きが重要になります。

上述しましたが、内側広筋は、このように大腿部を外旋させることで触診しやすくなります。

股関節外旋

触りながら収縮を確認して頂ければわかると思いますが、最終伸展域のちょうど15度付近で最も固く収縮します。

 

膝を伸ばした時に少しねじって、より固定性を高める働きを補助する筋肉として内側広筋は重要な役割があります。

リハビリの臨床では、膝関節手術の術後や廃用症候群で寝たきりの期間が長い方は、大腿四頭筋の中でも遅筋繊維が多い内側広筋が弱って萎縮してしまっていることが非常に多いです。

大腿四頭筋を鍛える目的

大腿四頭筋を鍛えたり、ストレッチしてケアする理由には主に以下の理由があります。

大腿四頭筋は「第二の心臓」?

心臓

大腿四頭筋はその特性により、「第二の心臓」と呼ばれたりもします。ふくらはぎがそう呼ばれることともあります。

これは、重力の影響でどうしても下肢部に血液が集まりやすいので、下肢の大きな筋肉を総称して「第二の心臓」と呼ぶためです。

心臓とは血液をポンプし、全身に巡らせる役割がある臓器です。同じように、筋肉にも血液をポンプさせる働きがあります。

筋肉は収縮したときに、血液をぎゅっと送り出します。静脈の中に弁があり、筋肉の収縮によって送り出された血液は逆流してこないようになっています。

 

大腿四頭筋はその筋ボリュームの大きさと収縮力の力強さから、収縮するとたくさんの血液を全身に巡らせる働きがあります。

体温は血流に乗って全身を巡るので、寒く感じるときにスクワットなど以下にご紹介する大腿四頭筋を鍛えるトレーニングを行うと、すぐに血流が良くなって全身がポカポカするのが実感できると思います。

冷え性の改善、予防にもつながります。

大腿四頭筋を鍛えるとダイエットに効果的?

大腿四頭筋の特性として、人体最大の面積を持つ筋肉なので、鍛えることで基礎代謝を上げやすくなります。

また、他の細かい小さな筋肉を鍛えるトレーニングよりも簡単に行える粗大な運動が多く、ダイエットのための運動を継続しやすい、ということも一因として挙げられると思います。

大腿四頭筋が短縮すると背中が曲がる?

円背

大腿四頭筋のうち、大腿直筋は骨盤と膝関節の下の脛骨粗面に付着しているため、短縮してしまうと、立ったときに体を引っ張られ、起こしにくくなってしまいます。

立ったときに体を乗せる土台となる骨盤が前に倒れてしまいやすくなるのです。これはリハビリの現場において高齢者の方で活動性が下がった方に大変多くみられる症状です。

 

高齢者の方で、どうしても猫背になってしまう方は大腿四頭筋をしっかりとストレッチして伸ばすことで体を起こしやすくなることもあります。

大腿四頭筋を鍛えると膝痛の緩和になる

変形性膝関節症の方などは、大腿四頭筋を鍛え、膝の保護・緩衝作用が強化されることで膝関節痛の緩緩を図ることができます。

変形性膝関節症がある方は、膝関節が変形し、骨の位置がずれているため、大腿四頭筋が正常なテンションで保たれず、収縮もしにくいため、弱りやすい傾向にあります。

リハビリの臨床でも、変形性膝関節症により膝に痛みがある方が、実際に3カ月などの長期的な期間、大腿四頭筋を鍛えると、痛みが改善することは頻繁にあります。

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大腿四頭筋の筋力トレーニングの方法

大腿四頭筋は上述の通り、股関節屈曲+膝関節伸展の複合動作で鍛えることができます。さらに4つの筋肉を選択的・個別に鍛えたい場合は少し工夫が必要となります。以下にご紹介します。

スクワット

スクワットは筋トレの王道ともいわれる非常に優れたトレーニングです。

大腿四頭筋だけでなく

など、人間が抗重力位で活動するために重要な筋肉を総合的に鍛えることができます。

<スクワット>

スクワット

方法大腿四頭筋を鍛えたい場合、スクワットの方法は、体幹を曲げず、まっすぐにしたまま沈み込むようにしゃがむ動作を行うことです。

注意点:体をお辞儀するように曲げながらスクワットを行うと、股関節伸ばす筋肉である大殿筋が優位に活動してしまいます。また、膝関節への負担が強くなるので、特に変形性膝関節症や膝関節に疼痛がある方は体を垂直に保つようにしましょう。

フォワードランジ

ランジもスクワットと同様に非常に優れたトレーニングです。基本的にスクワットと同じ要領で行います。

<ランジ>

フォワードランジ

方法:立った状態から鍛えたい方の足を一歩前に踏み出し、前に出した方の足にグッ‐っと体重を”ゆっくり、しっかり”と乗せ、大腿四頭筋を十分に収縮させましょう。

下の写真のように自分で大腿四頭筋の収縮の程度を触診しながら行い、限界まで固くなるように体重を乗せて行います。

ランジ、触診

触診をしながら筋トレをするのは非常にオススメで、継続していれば筋ボリュームの変化を自分で感じることができます。筋トレは継続しなければあまり意味がありませんが、そのモチベーションを維持・向上しやすくなります。

見た目だけを基準にしてでダイエットのための運動をしていても、最低でも1カ月は運動を継続しなければならないでしょう。

しかし、触診しながら筋トレを行えば、1週間程度続ければ、年齢にもよりますが、敏感な人であれば筋肉の固さが変わってきているのを実感できます。

踏み台昇降

踏み台昇降はスクワットと同じように膝の屈伸運動を含み、さらに有酸素運動の要素が強く、よりダイエットのために大腿四頭筋を鍛えたいと思っている方におすすめです。

<ステップ(踏み台昇降)>

踏み台昇降

方法:階段や踏み台などで昇って降りる昇降動作を繰り返します。

注意点:コツとしては、リズミカルに階段を昇降すると、筋トレというより有酸素運動の要素が強くなるので、筋トレをメインで行う場合は、ゆっくりと行うことです。体重をしっかりと足の裏に乗せ、ゆっくりと膝を伸ばしていくことで大腿四頭筋に遠心性の収縮が起き、より筋力増強効果が期待できます。

パテラセッティング

パテラセッティングはリハビリの臨床で良く行われますが、負荷は軽めの大腿四頭筋のトレーニングです。パテラとは”膝のお皿”、つまり膝蓋骨のことです。

膝蓋骨 パテラ
膝のお皿をパテラ、もしくは膝蓋骨(しつがいこつ)といいます。

どちらかというと、大腿四頭筋を収縮させる感覚を掴んだりするイメージトレーニングとして行うと良いでしょう。また、内側広筋を選択的に鍛えたい場合にも臨床でよく行われる方法です。

<パテラセッティング>

パテラセッティング 方法

方法:上向きに寝て、膝の下にクッションやタオルを挟み、それを床と膝の後ろで押し潰すように膝を伸ばしていきます。20秒程度伸ばした状態を保持しながら大腿四頭筋をじっくりと収縮させてください。

注意:できるだけ足先も写真のように上に向けましょう。その方が四頭筋の収縮が強く出ます。

股関節を外旋させた位置で行うことで内側広筋を優位に働かせることもできます。逆に、内旋して行うと外側広筋が優位に働くようになります。

選択的に繊細に個別の筋肉を収縮させて鍛えたい場合に有効なトレーニングです。詳細はこちらにも書いています。

 変形性膝関節症のリハビリに効果的!10倍効果が出るパテラセッティングの方法

レッグエクステンション

”レッグエクステンション”とは日本語にすると、足を伸ばすことです。その名の通り、膝を曲げ伸ばしするだけの非常に簡単にできる運動です。この運動は負荷は軽めですが、高齢者などでも転倒する危険性が少なく、安全に取り組みやすい運動です。

できれば、スクワット・ランジや階段昇降などの運動(自重を使って、遠心性の収縮が大腿四頭筋に入る運動)の方が筋力増強効果は高いです。

<レッグエクステンション>

レッグエクステンション

方法:椅子やベッドに腰かけて足を曲げ伸ばしします。

注意点:筋力増強効果を狙うには負荷の調節が大切です。最低でも10回膝を曲げ伸ばしできるだけの重さの重錘を足首に巻き負荷を調節して行いましょう。(10RM)それ以上続けて運動ができる重さのものであれば、筋力増強効果は望みにくくなります。

大腿四頭筋のストレッチの方法

立位と寝て行う方法があります。

リハビリの臨床では、

  1. 立位や歩行中に身体が曲がってしまう方
  2. 膝関節痛がある方
  3. 大腿四頭筋に起因する痛みがある方

に対して、頻繁に大腿四頭筋のストレッチを行います。

立って行う大腿四頭筋ストレッチ

<立って行うストレッチ>

立位,大腿四頭筋ストレッチ

方法:立位でストレッチしたい方の足を曲げて、手で足首を把持します。

注意点:膝関節の変形がある方は膝を深く曲げると痛みがある場合があります。そういった場合は行わないで下さい。

寝て行う大腿四頭筋ストレッチ

<寝て行うストレッチ>

大腿四頭筋ストレッチ

方法:膝を目いっぱい曲げて、その上に寝転びます。

注意点:無理に膝を曲げ過ぎないで下さい。寝て行う方法は負荷のコントロールが難しいので、膝関節や腰に痛みがなく、上述の立位でのストレッチで伸長感が少ない方向けです。

まとめ

大腿四頭筋は、

  • 大腿直筋
  • 内側広筋
  • 中間広筋
  • 外側広筋

の総称で、主に膝関節を伸展する働きがあります。人体の筋肉の中でも最大のボリュームを誇り、人体が重力に抗して活動するためになくてはならない筋肉です。

  • ダイエット
  • 膝関節痛の緩和
  • スポーツのパフォーマンスの向上

など鍛えたりストレッチして機能を向上させることで様々なメリットがあります。

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