
みなさんは何のために仕事をしていますか?
私なんかは、理学療法士という仕事を志したきっかけが「社会貢献」なんで、人の役に立って喜ばれたい!っていう想いが強いです。
でも、実際はそんなのただの綺麗事で、対価としてそれなりに給料を貰わないと家族は生きていけません。私だって、妻と娘にかわいい靴や服を買って、おいしいものを食べさせてあげたいです。
実際、「現実はそんな簡単で生易しいものじゃないよ」って思う方も多いと思います。特に私の親父みたいにガムシャラに働いてきた世代にそんなことを言うと、鼻で笑われます(笑)。
「綺麗ごとで飯が食えるか」と。
形に囚われない。起業、学歴、肩書き。色々あるけど、私は結局は精一杯自分の力を活かして社会貢献している人を尊敬します。形はあくまでそのための手段でしかない。無条件で社長が偉い、政治家が偉いというのは社会的影響力が簡単に個人では持てなかった過去の時代の価値観です。
— 未来のPT (@PT50139040) May 3, 2017
私もその通りだと思うんですけど、できれば、純粋に利益度外視で人の役に立ちたい、って思っている人が活躍する世の中になって欲しいと思うんですよね。
これは、あくまで理想ですが。
でも、理想を追い求めるからこそ、夢も希望も湧いてくる訳で、理想を思い描くことは幸せな人生を送るために必須だと思うんです。
そこで、どうやったらこれからのリハビリ業界で「好きでこの仕事を続ける人が増える」業界になるのか考えてみました。
私は無償でも働くセラピスト、それが私たちの職業の最終理想形態だと思います。
賢者は歴史に学ぶ
自身の経験に学ぶ人はどうしても独りよがりな視点になりがちです。それと合わせて歴史から客観的に学ぶことで、初めて客観的な視点を伴った合理的な思考ができると思います。
— 未来のPT (@PT50139040) May 3, 2017
私の経験上、セラピストは自分の経験からきちんと学んでいる人は多いですが、過去の歴史を詳しく知っている人って少ない印象があります。
これは個人的にはラピストの職業平均年齢が低いことも関係していそうな気がしていますが、大局的な視点を持とうと思ったら、歴史に学ぶことが必須だと思います。
この前の記事でも書きましたけど、市場に求められることが職業になり、仕事として成立するので、市場が何を求めているのかを知ることと、これからどう市場が変わっていくかを察するためには歴史のパターンを知っておくとすごく参考になります。
リハビリも資本主義下のサービスの一つ。お金儲けしないと話にならない。
- 健康に寄与する
- 自立支援を促す
- 疾患から回復し社会復帰を目指す
色々なことがリハビリ業界では理念として掲げられていますが、結局は経済、つまりはお金儲けができないと成り立たないのが現状です。
自立支援を本当に掲げるのならば、リピーターを求めてはいけません。一期一会のリハビリを提供すべきでしょう。でも、実質は、リピーターを得るために介護・医療福祉業界の組織はあらゆる手段・方法を講じ、莫大なコストを掛けて、収益が出にくくなり、喘いでいます。
国の財源が枯渇し、診療報酬が下がってリハビリにおいて自立支援の要素が今より強く求められるようになる近い将来では「リピーター」になってもらってはダメで、一期一会のリハを提供することが良しとされる。よって今までのやり方、ビジネスモデルでは経済的に回せない。
— 未来のPT (@PT50139040) May 3, 2017
クライアントのサービス提供を充実する目的でお金を割くために組織は、
- 売上げを上げる
- 運営コストを下げる
これらのうち一方、あるいは両方を必死で追及しなければなりませんが、介護・医療業界の場合は、まだ自費サービスを充実させていない組織も多く、その場合は国の定める診療報酬が下がれば、自然に売り上げが下がっていきます。
よって、診療報酬が下がると、必然的に運営コストを下げてより質の高いサービスを提供していかなければならなくなります。
一番に目を付けられるのは言うまでもなく、「人件費」です。
国の財政状況や時勢を鑑みれば、診療報酬が下がっていくことは容易に想像が付きます。
リハビリのサービスは診療報酬が一定なので、サービスを提供する回数が重要になりますが、それも今後積極的に制限されていく可能性が高いでしょう。
つまり、本来のリハビリの理念である、「自立支援」が国によっても推進されていく可能性が高いです。その方が、国の財政と国民にとっては良いことです。安価にリハビリが受けられるようになるのですから。
本来はこれは喜ばしいことです。理念とビジネスが合致するのです。
しかし、これに単純に喜んでいられないのが、私たちのようなセラピスト(労働者)とその所属する組織です。
介護保険の要介護認定者が「自立認定されたらサービスが受けられなくなるじゃないか!」と口にしていることを現場で聞いたことがあるセラピストも多いと思いますが、私達も全く同じような矛盾を抱えており、実際に、「診療報酬を下げて貰ったら困る」、「自立しないでいつまでも治療に通ってもらわないと困る」という現実があります。
これは、どこの治療院も公には言わないと思いますが、絶対に心の中では思っているはずです。リピーターを作り出さなければ経営が成り立たない場合も多いです。というか、ほとんどそうではないでしょうか。
資本主義下の企業は「お客様のために」とあらゆる快適な環境を提供するために膨大なコストを掛けます。そして、それが必須であると思っています。しかし、顧客の自立支援を目的とする企業・NPO法人はあえて何でも用意せず「顧客自身で環境を整える力」を育むサービスを提供します。
— 未来のPT (@PT50139040) May 3, 2017
資本主義下において良い意味で使われることの多い「リピーター」とは依存状態にある人のことを指します。自立支援を行うサービスを提供するなら、逆に「リピーターを作らないこと」が1つの目標になるかも知れません。
— 未来のPT (@PT50139040) May 3, 2017
本当の自立支援をビジネスにするなら売り上げに期待しないことが必須になる
逆に依存を生み出し、サービスのリピーターになってもらい、継続してお金を稼ぎたいなら「私が触れば膝の痛みが取れる。それしかない」という状態をクライアントに提供することです。今のリハビリ業界はこの矛盾に葛藤しているように思えます。
— 未来のPT (@PT50139040) May 3, 2017
こう考えると、私たちのような治療業やセラピストがそれをビジネスをする場合、お金を稼ぐことと自立支援を理念とすることは相反するので、大きな矛盾を抱えていることになります。
他の業界、例えば家電メーカーなどが行っているようなビジネスの戦略をそのまま医療・介護福祉業界に持ってくると、当然この矛盾の壁にぶち当たります。
そして、そこは曖昧にされたまま突き進んできた経緯があるように思います。
でも、国の財政もとうとう貧迫していくことが確定し始めている現在、もうこの状態を長く続けることは現実的に難しくなってきています。
それでは、どうしていけばよいのでしょうか?
もう、私たち労働者はこの仕事を辞めて、それこそ家電メーカーにでも再就職した方が良いのでしょうか?
一刻も早く、沈む船から逃げ出すべきなのでしょうか?
そんなことはありません。
介護福祉系の組織が生き残るには”人件費を減らすこと”
先ほど、組織が利益を出すためには、大きく分けて、
- 売り上げを上げること
- 運営コストを下げる
に大別されることを書きました。
診療報酬が下がり、リハビリの回数制限も強く求められてくると、国からの診療報酬で売り上げを上げることは難しくなってくることは自明です。
よって、まず組織が取るべき策は、
- 自費で売り上げを上げる
という方法が必須でしょう。
その時にも運営コストができるだけ掛からない方法を模索しなけければなりません。
ネットなど最新のテクノロジーを駆使し、ビジネスモデルを熟慮しなければならないでしょう。
旧来のようにモノが必要なサービスは必ず莫大なコストが必要になります。モノを売ったりするのではなく、「価値や経験」を提供する視点が必要です。
市場はモノ至上主義から経験至上主義へ移行中。一方的に与えるのではなく共に経験し、お互いに経験を得る。今後の優秀なセラピストは自立させられるセラピストに尽きる。
— 未来のPT (@PT50139040) April 28, 2017
今後は爆発的に個人でできることが増えていくので、例えばコーラを売るよりコーラを作る知識を売った方が良い世の中になっていく。リハビリもその観点さえあれば、自立を促す効果的な社会インフラになっていく。
— 未来のPT (@PT50139040) April 28, 2017
一方的になんでもこっちがお膳立てして提供する旧来のビジネスモデルではなく、Uberのようなマッチングサービスなど「お客さんが足らない部分を補完する」ことでサービスとして成り立つものが、コストを掛けないで運用できるものの代表ではないでしょうか。
運営コストを下げる上で最も厄介なのが人件費でしょう。
掛けるコストが最も高いのに、下げることは非常に困難です。だからTwitter見てても「働かない奴はやめろ」みたいな発言をしている社長も多いのでしょう。笑
でも、今後、自費でサービスを提供し、そこそこの利益を出していない組織は人件費を下げるしか方法がなくなってくると思います。
カルロス・ゴーンが日産を立ち直らせたように、大量解雇は現実的ではありませんが、たとえ反発が強かろうと大量減給を覚悟するしかない、と既に思っている経営者は多いと思います。
来年の2018年の医療・介護同時改定なんかは良いタイミングになりますね。
実際に、今後医療福祉業界の労働者の給料は下がっていく可能性が極めて高いと思います。
働く不幸の元「労働者と組織の依存関係」を解く方法
労働者と組織は共依存関係にあります。どちらも、給料を貰わなければ生活できない、労働者を雇わなければ運営できないからです。
そもそも、これが労働における不幸の元凶のような気がします。
労働者は給料を上げろと言い、組織は上げると自分の取り分が下がって運営が難しくなってしまいます。「社員と一丸になって働く」などと普段豪語する社長も、ここでは社員と敵対している訳です。
- 労働者:「サービス残業を無くせ!」
- 組織:「無くしたら利益が出ない!」
ここらの対立も最近過激化というか表層化してきましたね。すごく不毛です。
ネットを見ていても、経営者側に近い立場の人はサービス残業は必要だと主張し、平社員の立場の人は企業がまるで殺人鬼かのように罵っていたいりします。
共に依存している関係性にあるのですから、本来はお互いに妥協点を見つけて、両方が歩み寄って努力するしかありません。これは夫婦でも同じですね。
このお互いの共依存関係から抜け出さないと、幸せな労働というのは成立しません。
”嫌々させられている仕事”というものほど不幸でつまらない、生産性の低い、効率の悪いことはないと思います。
これを”させられている”という感覚を拭い、主体的にしていると思い込ませるための洗脳が新人研修であったり、他にも色々方法がありますが、もう消費者も労働者も立派に知恵を付けているので、それでは簡単に騙せない時代になっているんですね。
人は誰かに何かを依存すると必ず不安が生じます。親、会社・・不安から離れて安心して幸せに生きるためには、主体的に人生を送ることが必須です。親から離れても生きて行ける、会社から離れても自分でお金を稼げる。自分の頭で考えて自己責任の上で自分で行動できるようになると幸せが見えてきます。
— 未来のPT (@PT50139040) May 3, 2017
しかし、今だに企業はその方向性を続け、労働者と対立しても、「なら辞めれば良いだろ」という主張をする人もいます。
嫌なら辞めろと従業員に言うような社長は、果たして、そんなことを言うから、いつまでも”嫌々働く生産性の低い社員”しか集まってこないことに気付いているのでしょうか。
労働者は複業を始め給料が下がる準備をしよう
医療福祉業界の労働者は特に、今後所属する組織が今までのやり方を続けるだけなら、給料が増える見込みはほぼ0だと思って、個人で複業を始めてリスクヘッジをしておきましょう。
月5万円でも稼げれば、本業の給料が来月から5万円減ることになっても、今まで通りの生活を続けることができます。生活が安定するということですね。
収入減を分散させればさせるほど、不況や景気に影響されずに、安心して生活することができます。
複業もできれば短期的に収入を得るだけを目的とせず、長期的にキャリアを育てるようなものを選び、本業以外の専門性も楽しく稼ぎながら追求していきましょう。
参考)理学療法士・作業療法士の副業におすすめ!簡単にできる副業の方法「非常勤・ネット」 まとめ
今いる組織に「給料が少ない」と不平不満を言ったり、将来の給料を不安に思うこともあると思いますが、本来はキャリアは自分で考えて育てていくもので、努力もせずに組織が育ててくれるものではありません。
今の時勢で、今生活するだけの給料を与えて貰うこと、それ以上を一つの組織に求めるのは無理があります。
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組織は人件費を下げられる体制を整える
そもそも、もう一つの組織に属する給料だけで家族全員を養うことが難しくなってきています。
共働き世帯が増えてきているのはそういう背景もあるのだと思います。
今後は、世帯だけでなく、個人、例えば夫だけでも二つの組織に属するような働き方が一般化していくと思います。そして、一つの組織の給料が15万円、もう一つが15万円という少ない給料でも世帯が生活していける社会を目指していくべきでしょう。
これで共働きしていれば、世帯収入は60万円で家族5人ぐらいなら充分です。
企業ではコストも掛かるし、付随業務も増えるし、生産効率がどうしても下がる。経営者も従業員もやりたくないこともやらないと組織を維持できない。これからは働き方も個の時代と言われているのはそういった側面が認知されたから。旧来の縦型組織の形態は過去のものになる。その予兆は至る所にある
— 未来のPT (@PT50139040) April 27, 2017
- 共働き世帯の急激な増加
- サービス残業問題の表層化
- 副業解禁
ここらの労働環境の変化はこうなっていくための世の中の流れを示唆しているように思います。
そして、今後は組織も副業や複業を禁止するのではなく、組織も積極的に支援するほうが賢明でしょう。
労働者が給料を下げても他の組織から稼ぐように支援すれば、生活できないと文句を言われることもありませんし、従業員の家族を路頭に迷わせるのではないかという心配をしなくても済みます。
運営コスト削減の要である、人件費削減もしやすくなります。
今までは何でも大きくしていくことが企業の運命でしたが、今後は、できるだけ規模を小さくし、細々とやっていく組織が増えるでしょう。
組織にとっては売り上げを上げることが重要なのではなく、利益を上げることが最も重要なはずですから。
特に私たちのような業界は、本来、価格設定を高くしても容認されやすい、そのサービスを受けたら確実にその後の人生が変わってしまう、誰の人生でもとても大切な健康に関するものを提供する業界です。
大量生産・大量消費の100円均一みたいな業界とは違います。
ちゃんと価値があるものが提供出来るのならば、客の数は少なくとも、高価に設定して企業規模を小さく運営するビジネスモデルが適しているように思います。ライザップのような感じですね。
これからの組織の理想は従業員が”1番のファン”
今までは従業員と敵対する関係性を築いて来た組織が多いように思いますが、これからは 従業員自信が何よりも熱烈なファンである組織が伸びていくでしょう。
企業理念を明確に掲げ、それと志を同じくする人を集めるのです。
莫大な広告費を掛けなくても、ファン(従業員)が勝手にSNSで宣伝してくれるようになれば最高です。昔にはできなかったことですが、今なら可能ですよね。
生産性も高く、創造的な意見をくれる従業員が働く職場が理想です。しかし、これは従業員と組織が今までの売り上げを取り合いするような関係性を続けているのでは厳しいと思います。どうしてもお互いに敵対心が出てきてしまう。
しかし、実は、従業員はお金がもらえれば、それで納得するはずです。
しかも、それは1つの組織からではなく、別に2つの組織からでも良いはずなのです。他の企業で儲けさせる方法を教えてあげることが熱烈な従業員を集め、小コストで利益を出して運営する1つの方法となっていくかも知れません。
今働く従業員はほとんどの人が将来に不安を持っていると思います。
組織でも積極的にリスクヘッジするために複業を推進し、安心してキャリアを従業員が自分で育てられる環境を提供できれば最高ではないでしょうか。
まとめ
たぶん、本当に優秀なセラピストは、少し極端な表現ですが、タダでもこの仕事をする人だと思います。 給料が少なくてもやりがいを感じ、この仕事のために一生懸命自己研鑽する人。
それは間違いなく良いセラピストです。ほおっておいてもどんどん自分で成長していくことでしょう。
将来的には私が上に述べたように社会が変化し、一つの組織から例え安い給料しかもらえなくても、バリバリ希望を持って働くセラピストが増えて欲しいと思っています。
そして、各自が複数のキャリアを同時進行で育て、ゆくゆくは自分の好きなことで稼げるようになれば、組織との共依存関係から抜け出すことができ、今のように”サザエさん症候群”みたいなことで苦しむ人も減ってくるでしょう。
”働く”ということの意味合いが変わって、早く、みんなが幸せに働く世の中になって欲しいものです。