理学療法プロセスとは一体何なのか?統合と解釈と考察の違いは?


理学療法士の臨床での基本となる考え方、「理学療法プロセス」について詳しく解説しています。




私は臨床に出て6年(執筆時)になりますが、改めて「理学療法プロセス」が重要だと思うことが多いので、ここでもう一度確認・再考してみたいと思います。

実習生や新人の方は、「理学療法プロセスが大切だ!」と目上の先輩に言われることも多いのではないかと思います。

でも、なぜ大事なのか、噛み砕いて語られることは少ないように感じます。

理学療法プロセスとは何か?そして、なぜ重要なのか?について分かりやすく説明していきます。

理学療法プロセスとは?

  1. 情報収集
  2. 問題点抽出
  3. 統合と解釈
  4. 目標設定
  5. 治療計画の立案
  6. 治療計画の実行
  7. 検証

という流れを得て、リハビリにおける治療を行っていきます。

どの項目もとても奥が深く、私も概念自体は理解しているつもりですが、本当に一つ一つの項目全て完璧なのかと問われると正直微妙なところです。

 

多くの理学療法士は、この概念をまず、机上で学校で習い、次に実習など臨床場面で実際に患者さんを前にして体験していきます。

理学療法プロセスをより理解するために

実習生は理学療法プロセスを、何か療法士に特別な考え方、専門性の高いものだと思っている方も多いのではないかと思います。(私も実習生の頃はそうでした。)

しかし、実際は、決して専門性の高いものでもなく、一般企業でも使われている問題解決のためのプロセスの一つの形を、リハビリの臨床に合わせた形に変化させただけです。

難しく考えると余計に難しく感じてしまうものです。”普通にみんな使っているもの”と認識しておくと、ハードルが下がるかも知れませんね。

プロセスが存在する意味

ロジカルシンキング(論理的思考)という考え方をご存じでしょうか?効率的に問題を解決するためには、ロジカル(論理的)な思考方法が必須です。

別に何でも些細なことがで良いのですが、何か問題があって、それを解決しなければならない時、理学療法プロセスのような「フレームワーク=思考の枠組み」を使わず、漠然と、何となく解決策を導き出して対処すると、

  • 情報収集が偏る(バイアスが生まれやすい)
  • 問題自体(前提条件)を正しく捉えていない→答えも出ない
  • 時間が掛かる(非効率的)
  • 再現性に欠ける(次に同じ問題が起きたときに同じように解決できない)

など問題が噴出してしまいます。

このような問題をリハビリにおける臨床で避けるために、臨床上の問題を形式化して型(フレームワーク)にはめて考えるために理学療法プロセスは存在します。

理学療法プロセスはフレームワークのひとつである

理学療を勉強する者なら、Google scalarを一度は使ったことがあると思います。

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Googlescalarトップページ「巨人の肩の上に立つ」

トップページには「巨人の肩の上に立つ」と書いてあります。

これは、「巨人の肩の上に立てば、より遠くまで見渡せる=見えないものが見えるようになるということです。

 

つまり、Google scalarで文献を検索し、先人が積み上げてきた膨大な量の知識を使う事で、いきなり高い視点で物事を捉えることができるという意味です。

 

理学療法プロセスも同じで、まさしく知識のある先人がリハビリにける臨床の問題解決のために、より効率的に、より確実に問題を解決するために考えられて、編成したものです。

理学療法プロセスという”フレームワーク”を使うことで、

  • 思考の幅が広がる
  • 情報収集の方向性が見える
  • 情報の整理方法が理解できる
  • 問題解決が効率的(早い)
  • 再現性を持った解決策を導ける

というメリットが知識のない人でも簡単に得られます。効果的に活用しない手はありません。

理学療法プロセスの実際の考え方

「実際に臨床に出て、ベテランと呼ばれる、10年も20年経っている療法士は、リハビリをする時に毎回必ずこのプロセスを意識しているのか?」という疑問を持つ実習生や新人の方も多いと思います。

しかし、実際のところ、ベテラン療法士がこの順番をきっちり何も見ずにスラスラ言えるかは別として、無意識にこのプロセスを通して臨床で患者を診ていることは間違いないと思います。

なぜなら、臨床の問題を解決する際には、必ずこのプロセスを考慮しないと問題解決ができないからです。

(正確にはできないことはないですが、結果も出にくいし、遠回りで効率が悪い事ばかりしてしまう可能性が高いです。)

 

ここでもう一度理学療法プロセスを確認してみましょう。

<理学療法プロセス>

  1. 情報収集
  2. 問題点抽出
  3. 統合と解釈
  4. 目標設定
  5. 治療計画の立案
  6. 治療計画の実行
  7. 検証

患者の何かしらの臨床上の問題を解決していくことが私たちの仕事です。

よって、臨床では患者固有の問題を専門的知識を持って見つけて治療していくことになる、ということは説明しなくてもお分かり頂けると思います。

問題を的確に見つけるために理学療法評価を勉強するのです。

情報収集

なので、まず、患者の問題はどこにあるのか?を考えなければならないのですが、そのためにはまず患者の情報を収集しなければ問題自体を掴むことはできません。

よって、問診などの手段を使って、問題がどこにあるのかを探るために情報収集をします。

 デキる療法士は”患者さんマニア”リハビリの臨床における情報収集・問診の項目と重要性

 

そして、情報を収集していくうちに、問題はここにありそうだな・・ということが何となく分かってきます。

問題点抽出

次に、情報取集をして、ここに問題がるのかな?と思った問題点を明確にしていくために、理学療法評価を行っていきます。

評価をして、きちんとそれが問題点であると判明しない限りは、ただの推測に過ぎませんし、臨床経験が浅いうちは間違っている可能性も非常に高いです。

臨床経験を積むと経験からある程度”見当”をつけることができるようになるので、格段に効率が上がります。

 

よって、事前に行った情報収集に基づいて、実際に関節の可動域や筋力などの評価を行っていきます。もちろん、動作分析などでADLの評価も行っていきます。

できるだけ数値化したり、問題点を定量化、把握しやすくしておくことで、後のプロセスを辿りやすくすることができます。

統合と解釈

次に得られた情報を整理して、リハビリの目標を設定するために統合と解釈を行っていきます。

「統合と解釈と考察はどう違うのですか?」

と実習生に聞かれることが多いのですが、「考察」はあくまで自分の考えをまとめる作業であり、「統合と解釈」は、事前に行った評価項目を繋げて、まとめて解釈をする作業です。

 

「統合と解釈」の場合は、解釈をする際に文献などを読んで客観的視点を加味し、独りよがりの見解=解釈になっていないか確認しておく必要があります。

「考察」の場合は、ただの自分の意見なので、そこまでの妥当性・客観性は求められないことが多いです。

 

しかし、これも明確な線引きがあるわけではなく、実情は実習生の場合は”バイザーが答え”であることも多いので、バイザーに”考察と統合と解釈を書いてこい”と言われた場合は、その違いを確認するようにして下さい。

 

その時に、安易に「違いはなんですか?」と聞くと気難しいバイザーの場合機嫌を損ね、「自分で調べろ!」となることもあり得ます。(経験済み)

「私は考察と統合と解釈の違いを~のように考えていますが、先生も同じ考えでしょうか?」という風に確認するとよいと思います。

 

正直、回りくどくてめんどくさいなぁ・・と思うと思います。しかし、社会に出てから、こういった聞き方が出来るのと出来ないのでは周りの人の評価はけた違いに違ってきます。

そして、別に実習生でなくも、社会人は普通こういった「相手の機嫌を損ねない」聞き方ができるようになっていくもの。これも社会勉強だと思って頑張って下さい。

 

リハビリにおいて、機能障害すべてにアプローチすことは時間的制約もあり、不可能です。

また、疾患によってはアプローチしても徒手的に療法士が皮膚の外から触るだけでは改善が困難な機能障害もたくさんあります。

統合と解釈では、まず、その人の何を改善していけばどう生活が変わるのか、そしてその機能障害は改善が可能なのか、優先順位を付けて後に考える治療計画のアウトラインを作っていく作業と言えます。

目標設定

リハビリの目標を設定していきます。

まず、最終的な目標(LTG)を決定し、そのために達成していかなければならないマイルストーン(ショートゴール:STG)を設定していきます。

STGを踏んでいけば、自然にLTGに到達するような目標が理想的です。

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治療計画 立案

患者さんの様態を加味し、実際にどのように治療計画を進めていくのか具体的に計画を立てます。

治療計画 実行

計画を実行していきます。

ここまでくれば、理学療法プロセスを意識するよりも、治療内容について深く考えていくことがメインになってくると思います。

検証

理学療法プロセス

リハビリの臨床では、再評価などを適宜行い、治療計画と治療計画の実行、つまり、治療内容が妥当かどうか、常に検証していく姿勢が必要です。

実は、臨床ではこの検証作業が非常に大切です。

一度プロセスを考案、実行したくらいで患者さんの全てが良くなっていく、なんて簡単なものではありません。

何度も何度も考えて実行して検証していく姿勢が無ければ、リハビリでの臨床ではとても結果を出すことができないと思います。

PDCAサイクルと呼ばれるものがありますが、同じようにプランを立てたら、実行し、効果判定を行い、再度工夫・修正して実行していきます。

その繰り返しが臨床でのリハビリだと思います。仮説と検証、それこそが臨床そのものです。

私の経験では、仮説と検証を繰り返していくことで本当に少しずつ問題の本質に近づいていける、という肌感覚があります。そして、臨床経験を重ねていくとそのサイクルが若干短くなってきている気はしています。

まとめ

理学療法プログラムは特に専門的なものでもなく、一般的に広く用いられている問題解決のためのフレームワークの一つの形であり、臨床で患者さんの問題点を正しく捉え、解決していく時に、意識するしないに関わらず必須のものです。

臨床経験を重ねていくと逆に特別意識しなくてもできるようになり、曖昧になってくる部分でもあると思うので、もしリハビリで行き詰った時は再確認してみるとよいかも知れませんね。

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