脳卒中片麻痺の「クロートゥ」の原因と治療法

クロートゥ


脳卒中片麻痺の方で、内反尖足に続いて多いのが”クロートゥ(Crow Toe)”です。

クロートゥでは、麻痺側の足の指がギューッと丸まってしまい、自力で伸ばすことができなくなってしまいます。

なぜこのような現象が起こるのでしょうか?またどのようにすれば治療できるのでしょうか?

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クロートゥとは?

クロートゥ

クロー=crowは英語でカラスのことを意味し、トゥ=Toeとは足趾の意味です。

クロートゥとは、足の指が自身の意思に反して、曲がったまま伸びなくなってしまった状態のことを言います。

クロートゥの原因

原因は大きく分けて2つあります。以下に簡単にご紹介します。

原因1.神経・骨の異常

足の指に通う神経が怪我や突き指など何らかの原因で障害されると、足趾が曲がったままになって、伸びなくなることがあります。

また、子供に多いのですが、何らかの原因によって足指の骨が正常に発達できない場合、クロートゥになります。

原因2.筋緊張亢進・関節拘縮

脳卒中片麻痺の方に多いのがこちらの筋緊張の異常と関節拘縮によるものです。

脳卒中の特徴的な症状として、筋緊張の異常が挙げられます。

参考)筋緊張そのものについては 筋緊張ってなに?

  脳卒中の筋緊張が上がる原因については 内反尖足の原因とエビデンスに基づく治療法

 

筋緊張の異常が影響を及ぼすのは足趾も例外ではありません。

さらに、伸展パターンといって脳卒中片麻痺の方の足は、特徴的な姿勢を呈する場合が多いです。

 

その時のパターンの中に、足趾の屈曲が入っており、少し力んだり、ちょっとした動作を行おうとして足に力を入れると足趾が屈曲してしまいやすくなります。

この状態で普通に生活をしていると、足趾が伸びきることが少なくなり、関節が固くなりやすく、足趾が伸びにくい、という悪循環に陥ってしまいます。

クロートゥの何が問題か?

それでは、クロートゥが起きると日常生活の中で何が問題となるのでしょうか。

問題1.立位バランス能力の低下

人が立位を取っている時、前方に重心を移す際に、足趾が屈曲し、体を支えることで、前方へ倒れてしまうことを防いでいます。

クロートゥを呈している方は、足趾が伸びて体を支えることができないため、特に前方方向へのバランス能力が著しく低下します。

結果、すぐに転倒してしまったり、立位・歩行時に恐怖感が拭えないという事になります。

足趾のバランスやその鍛え方について詳細はこちら) 足趾を鍛えてバランス能力を鍛えるには?

問題2.歩行効率の低下

クロートゥを呈していると、以下の2つの原因で歩行効率が低下してしまいます。

フォアフットロッカー機能の破綻

正常歩行時では、フォアフットロッカーという現象があります。

フォアフットロッカー
引用)観察による歩行分析

これは歩行中に足が体よりも後ろに行った際に、足趾の付け根の部分を支点にして、体を前に運ぶように歩行中に働く力の向きを切り替えるメカニズムです。

正常歩行では、意識せずとも歩行中にこのメカニズムが働き、効率よく”体を前に運ぶ”ことができます。

しかし、クロートゥがあると、足趾の付け根を支点にして、力の向きに前に切り替えようとしても、足趾の屈曲によって止められてしまいます。

 

よって、歩行中に推進力を得るための大切なメカニズムである、”フォアフットロッカー”が機能せず、非効率的な歩行になってしまいます。

ウィンドラス・トラス機構の破綻

足部には、アーチ構造があります。皆さん良くご存じの土踏まずがその一部です。

アーチ・足部の解剖の詳細はこちら) 足部の構造・アーチとは

 

足趾はこのアーチ構造を機能的に働かせるために重要な役割を担っています。

 

正常歩行では、歩行中、踵を着く瞬間、必ず足趾を伸ばして地面に着地します。

歩行周期 イニシャルコンタクト(IC)

足趾を伸ばした状態では、足底腱膜がバネの役割を果たし、足部への衝撃を和らげます。

ウィンドラス・トラス機構
足の指が伸びることで足部は柔らかく、曲がることで足部は固くなる。 引用)観察による歩行分析

逆に、

ターミナルスタンス

歩行中に足が後ろに行くとき(立脚後期=Tst:ターミナルスタンス)では、足趾が屈曲し、地面をしっかりと後ろに蹴り出すために、足部は固くなり、そのエネルギーを効率的に地面に伝えます。

 

クロートゥによって足趾が機能しなくなってしまうと、これらの機能が破綻してしまいます。

結果、踵が接地した時の衝撃を緩和することができず、地面を後ろに蹴りだす力も弱くなってしまうため、歩行効率は著しく低下します。

結果、歩行中にエネルギーを大きく消費するため、すぐに疲れてしまうことになります。

問題3.足の指の痛み

例えば入浴時、お風呂場でクロートゥが普段より強く出てしまう方が多いです。

これは、装具がお風呂場では使いないことに加えて、滑りやすい場所では転倒の恐怖から精神的緊張が強くなり、それに伴って筋緊張も上がるためです。

 

強く症状が出てしまう方は、床に足趾がめり込むように強く屈曲し、足趾の痛みがある方も多いです。

クロートゥの治療・対処法

それでは、このやっかいなクロートゥをどうやって改善していけば良いでしょうか。

 

これには、内反尖足の様に治療の教科書である「ガイドライン」がありません。

 

しかし、原因を理解すると、治療法・対処法が見えてきます。

 

クロートゥの原因は、上述の様に、脳卒中片麻痺の方の場合、筋緊張の亢進によるものが大きいです。

 

なので、「筋緊張を抑制すること」が治療法になります。

しかし、痙縮のガイドラインにもあるように、基本的には脳卒中の方の筋緊張の異常は不可逆的で、中枢性のもののため、根治することは難しく、対処療法が主体となります。

  • 筋弛緩系の内服薬を服用する
  • ボツリヌスなどの筋肉の緊張を緩める薬剤を筋肉に注射する
  • ストレッチや関節可動域訓練を継続して行い、痙縮が強くならないようにする

が痙縮を抑制するのにガイドラインで認められたエビデンスのある治療法です。

参考)痙縮・内反尖足のガイドラインについてはこちらで確認して下さい。 脳卒中片麻痺の内反尖足の原因とエビデンスに基づく治療法

 

しかし、内反尖足との違いは、足趾のクロートゥの場合、立位でのバランスや足首の強さによってもクロートゥが強く出ることです。

もちろん、内反尖足も原因は筋緊張の亢進によるもので同じなのですが、足趾はより末梢の器官で、足部よりも軽い力で大きな影響を受けてしまいます。

 

例えば、感覚障害があり、足底の触覚が低下していると、「足が浮いている」ように脳が感じるため、足趾の緊張が強まり、クロートゥが出やすい傾向があります。

感覚が正常であっても、麻痺側の足にしっかりと荷重ができない方も、「足が浮いている」状態に近い感覚があるため、クロートゥが出やすい傾向にあります。

 

なので、リハビリの臨床では、クロートゥの治療として、バランス練習を行ったり、適宜、バランスを適正に保つための筋肉や関節、感覚入力に対してアプローチを行います。

 

具体的には、

  • 麻痺側への荷重練習(足裏の感覚を刺激+足の支持性アップによる荷重量の増大を図る)
  • 歩行動作の改善
  • 装具の使用

などで対処していきます。

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クロートゥの治療1.麻痺側への荷重練習

荷重練習といっても多種多様で、一概には言えませんが、ここでは、基本的な例を挙げてご紹介します。

 

歩く前に、立ち上がり動作が多くの場合必要になります。

普段の生活で立ち上がり動作を行う時に、

立ち上がり動作
高齢者、片麻痺の方など筋力が低下している方に多い立ち上がり方

足の筋力が低下していると、このような立ち上がり方をされる方も多いのですが、足に荷重が掛かりにくいため、足の筋緊張が上がりやすくなってしまいます。

このような立ち上がり動作を行い、筋緊張が強くなった状態で歩くと、当然クロートゥが出やすくなります。

 

そこで、リハビリでは、麻痺側の足をわざと椅子に近づけて、麻痺側の足に荷重が掛かりやすいように誘導した状態で立ち上がり練習を反復して行います。

これは、麻痺側下肢の筋力を鍛えるためと、生活動作の中での立ち上がり動作をこのように定着させるためという二つの目的があります。

立ち上がり動作
右片麻痺の場合

クロートゥの治療2.歩行動作の改善

正常歩行では、それほど力む必要なく、前に進むための推進力を得るためのメカニズムが自然と働いています。

参考) 歩行のメカニズム・歩行周期について

 

しかし、身体に何らかの異常があると、このメカニズムが破綻します。

歩行動作中にどうしても力んでしまう動きが入っていると、筋緊張が上がりやすく、クロートゥが出現しやすくなります。

 

脳卒中片麻痺の方によくあるケースが、麻痺側下肢を振りだす時にグッと過剰に力が入り過ぎてしまうケースです。

 

歩行中、正常歩行では、それほど力を入れなくても前に足が振りだされる仕組み・メカニズムが働いていますが、身体的に異常があるとこのメカニズムが働かず、筋肉の力に頼って足を前に振りださなければならなくなります。

 

当然、グッと力を入れると筋緊張が亢進しやすく、内反尖足やクロートゥが出現しやすくなります。

 

なので、そういった症状がある方の場合、どうすれば楽に振出しが行えるようになるのか考えます。

 

具体的な例では、歩行中に股関節を伸展し、ターミナルスタンス

足部が体よりも後ろに持ってこれる(上の写真の姿勢)ようになれば、振出しの時に振り子の原理を使って足を前に出すことができるようになるので、過剰な力がそれほど必要ではなくなります。

 

そのために、その人の何が問題で歩行中に股関節伸展が行えていないのか精査し、アプローチしていきます。

また、体幹部分に麻痺がある方は、歩行中に体幹をしっかりと固定できないため、麻痺側の末梢部分、足趾に過剰に力が入っている場合もあります。

そういった方には体幹トレーニングを行ったりします。

参考) コア(体幹)トレーニングの方法

クロートゥの治療3.装具の使用

プラスチック製短下肢装具 PAFO

このような装具を使用し、荷重がしっかり乗っても足首が固定されている状態を作ってから(荷重を乗せても怖くない状態)、上述の様な荷重練習やバランス練習を行っていくことで立位・歩行動作時に、足部の筋緊張が上がりにくくなり、結果、クロートゥの改善がみられる場合があります。

 

クロートゥが強く出ている方には、指枕といって、小さい枕をウレタンなどで作り、装具の足底面の指が当たる部分に取り付けて指が屈曲してこないように工夫する場合もあります。

 

装具の中には、足底面のつま先(前足部)部分が切り取ってあるものもあります。

これは上述のフォアフットロッカーを活かし、歩行効率を上げるための処方です。

前足部のカットは、クロートゥがある方には適切な処方ではなく、余計に足趾が屈曲してしまう可能性があります。

(前足部があると曲がった足趾の先が当たって痛いと言う場合は例外です。)

 

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まとめ

クロートゥは内反尖足と同じ、脳の機能が障害されたことに起因し、筋緊張の異常に伴って起こる場合が多いです。

 

しかし、内反尖足よりもクロートゥの方が部位として末梢であり、より繊細に荷重の仕方や精神的緊張、寒冷刺激などに過敏に反応します。

 

なので、逆に言うと、少し荷重の仕方を変えたり、発症から時間が経ち、麻痺した体に慣れてくると動作時の精神的な緊張が軽減し、クロートゥが軽減する場合も多くあります。(慢性期で関節拘縮が起きている場合は別で、まず拘縮を治療しなければなりません。)

 

治療者によって様々な見解がありますが、私は治療方法を選択するポイントは”一時的なものかどうか”であると思います。

 

荷重の仕方(立ち方や動作の方法など)を教わり、少しいつもと荷重方法を変えれば確かにクロートゥは軽減しますが、その教えて貰った動作の方法を、毎日継続して生活の中に取り入れて行うことができるか?ということが重要だと思います。

 

毎日自分でできる方法を教えて貰ったら、それを続けていくうちにクロートゥは気にならなくなることが多いです。

 

患者側がクロートゥがなぜ起こるのかという原因を知っていると、治療者・治療法に混乱させられることなく、患者が主体性を持って治療法を選んでいくことができます。

 

脳卒中に限らず、どんな疾患でも、まず原因は何か??というところを確認してから治療法を選択していくと良いでしょう。

今ではネットで情報収集が簡単にできます。

参考) 治療法は患者が選ぶ時代へ「疾患の原因が分かるサイト 治療note」

 

そして、原因を調べ、理解した上で、治療者に「原因はなんですか?」と聞いてみると良いと思います。(少し意地悪に思えますが、自身の身を守るためです。)

適切な答えが返ってこない場合、その治療者の行う治療法はイマイチ効果的ではない場合が多いと思います。

 

原因が分かっていないのに治療することはできないからです。

 

インフォームドコンセントに始まり、セカンドオピニオンなど、患者が治療者・治療法を選ぶ時代に今後ますますなってきます。

これは喜ばしいことですが、その反面、責任が伴います。

 

以前の受け身の治療ではなく、積極的に自分に合う治療法を選んでいく必要があり、そのための情報収集も必要になります。

自分の身は自分で守るという意識と行動が今後強く必要になってくるのではないかと臨床で働く私は思います。

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