脳卒中片麻痺の「歩行時の膝折れ」の原因と効果的な改善方法

脳卒中片麻痺の膝折れを防ぐ方法


脳卒中片麻痺がある方に、「歩行時に膝折れする、もしくは膝折れしそうで怖い」という話をよくお聞きします。

今回はそんな方に、膝折れの原因と膝折れを防ぐ方法についてご紹介します。

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膝折れとはなにか?

「膝折れ」はあまり一般的な言葉ではないので、まずは膝折れの定義を確認しておきましょう。

ここでは、立位や歩行時に、麻痺側の下肢のグッと体重を乗せると、”カクッ”と膝に力が入らず、折れてしまう現象のことを「膝折れ」と定義します。

 

脳卒中片麻痺の方で、運動麻痺があり、ふともも(大腿四頭筋)ふくらはぎ(下腿三頭筋)の筋力が上手く発揮できないとこの膝折れが起こってしまいます。

膝折れの何が危険か?なぜ”怖い”のか?

膝折れが起きてしまう方の中には恐怖感を強く持っている方も多いです。

 

歩行、もしくは立位を取っている時に転倒してしまうと、特に高齢の方では大腿骨や脊柱を骨折したりすることがよくあり、転倒により骨折してしまうと入院しなければならず、寝たきりのきっかけになることも多いです。

 

転倒する原因には、私が臨床で聞いた話で多かったものには、

  • 階段で足を踏み外す
  • ちょっとした段差につまずく
  • 風呂場、洗面所で滑る(濡れた床で滑る)
  • 自転車などの乗り物に衝突される
  • 自転車に乗っていて転倒する
  • めまい
  • 低血圧
  • 貧血

などがあります。

 

めまいや貧血は少し例外として、これらの原因の多くは、転倒する時に物理的につまずいたりしたとき、体勢を立て直すことができれば、転倒せずに済みます。

つまり、一般的な転倒要因では「危ない!」と思った後、一瞬の間隔があった後に転倒することがほとんどです。

 

しかし、膝折れは少し違います。

 

私も臨床で何度か膝折れする方を診させて頂いたことがありますが、膝折れの場合、危ない!と思った瞬間にはもう転倒しています。しりもちをつきます。

 

体重が膝に乗った瞬間に膝折れが起き、そのままおしりから崩れ落ちてしまうからです。

よって、ゼロモーション(予兆動作なし)で突然転倒してまう、という危険さが膝折れの場合にはあります。

 

膝折れに恐怖感を持っている方は大変多く、このゼロモーションで転倒してしまう恐怖を一度経験してしまうと、「膝折れはいつ起きるか分からず、突然やってくる」という感覚が強いため、歩行すること自体に恐怖感や不安が強くなってしまうことがあります。

膝折れの不安・恐怖感を失くすために

歩くことが体に良いことは充分分かっていても、膝折れによる恐怖感があると気軽に散歩に出かけるわけにもいきません。

 

そもそも人が感じる不安や恐怖は”わからない”ことが原因で生じる場合も多いものです。

 

まずは、膝折れの原因を知ることで少し不安も和らぐと思います。

膝折れの主な原因

まずは膝折れの原因を把握しましょう。

 

脳卒中片麻痺の方の場合、

  • ふとももとふくらはぎの筋力低下(大腿四頭筋と下腿三頭筋の運動麻痺)
  • 体を反らさないと麻痺側の足が前に出ない(歩行メカニズムの破綻、腸腰筋・大腿四頭筋などの股関節屈曲筋群の筋力低下あるいは運動麻痺)

が主な原因になります。

(もちろん人の体は千差万別なので、他にも原因はありますが、臨床で特に多いものを挙げています。)

ふとももとふくらはぎの筋力低下(大腿四頭筋と下腿三頭筋の運動麻痺)

ふとももとふくらはぎの筋力が低下していると、単純に体を支持するだけの力が膝にないため、体重を支えきれず、膝が曲がり、膝折れしてしまいます。

体を反らさないと麻痺側の足が前に出ない(歩行メカニズムの破綻、腸腰筋・大腿四頭筋などの股関節屈曲筋群の筋力低下あるいは運動麻痺)

膝折れの原因

また、歩行中、足を振りだす際に体を反らす癖がある方も膝折れが起きやすくなります。

 

体を反らすと、膝関節は曲がる方向にモーメント(物理学で物体を回転させる力の大きさを表す言葉)が掛かるため、膝折れしやすくなります。

 

しかし、この体を反らして歩くという一見すると正常ではない歩行の癖も、普通、その人自身の体の中では統制が取れた最適な運動であるはず、です。

つまり、片麻痺で足が出ないのに、歩行して足を振りだそうとすると、そのような戦略を取らなければそもそも歩くことができないのです。

仕方なくそのような方法を取っている場合がほとんどです。

 

よって、この場合の問題は「体を反らすこと」にあるのではなく、「体を反らさないと歩けないこと」が本当の問題ということになります。

要するに、「単純に体を真っ直ぐにして歩けばよい」という問題ではないのです。

 

歩行メカニズムが正常に機能していれば、足を振りだすのにそれほど筋肉の力を必要としませんが、脳卒中片麻痺で運動麻痺がある方の多くは、歩行メカニズムがどこかしら崩れてしまっています。

参照※ 専門家はリハビリで歩行動作をどのように見ているか?歩行のメカニズム

 

なので、その場合は腸腰筋や大腿直筋などの股関節を屈曲させて足を振りだす筋力を鍛えると、それほど体を反らせずに足を振り出すことができるようになります。

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膝折れを防ぐ方法

原因を知ると対策が見えてきます。

 

上述の原因を考慮すると、

  • ふとももとふくらはぎの筋力を付ける
  • 体を反らさなくても歩行時に足が振り出せるように股関節屈筋群を鍛える

ことが膝折れを防ぐ方法になることがおわかり頂けると思います。

 

しかし、これでは結局、「筋トレをする」という、ごくごく一般的な話になってしまいます。

(ちなみに、膝折れがある方にお勧めの筋トレ方法はスクワット、もしくはランジです。詳細はこちら 効果的なランジトレーニングの方法

根本的に膝折れを失くすには結局はそれしかないです。

 

「なんだそんなことか・・・当たり前じゃないか」という声が聞こえてきそうです。

なので、今回は筋トレ以外で膝折れを防ぐ方法を三つご紹介します。

 

三つとも私が膝折れがなかなか改善しない患者さんに臨床で使っている方法なので、上手くできれば確実に効果があります。

足底板による補高

足裏、つま先の指の根元(下イラスト参照)にクッションを入れると、立位や歩行の時に膝が伸びる方向にモーメントがかかり、膝折れしにくくなります。

足底板挿入位置

膝折れを防ぐ方法

足先を上げると、膝は伸びる方向にモーメントが働きます。

足裏に挿入するクッションは、百円均一ショップで売っている下の写真のようなものをカットして使うか、同ショップで売っている耐震対策用のジェルマットでも結構です。

これを靴の中に貼り付けます。(室内歩行での膝折れを防ぎたい場合はルームシューズを用意する必要があります。)

補高

百円ショップで売っている補高に使える商品

コツとしては、数㎜程度の薄いものから試していくようにすることです。

数㎝もあるものだと、足の裏が地面に綺麗に付かなくなり、逆に歩きにくくなってしまうし、バランスも変わってしまうので、危険な場合もあるため注意が必要です。

 

私は臨床で試している感覚だと、5㎜を超えると、歩行しにくくなる方が多いです。

5㎜以下の厚さのクッションとなるもので試してみて下さい。

サポーター

上述の様に、膝周りの筋肉が弱くなると、膝折れしやすくなります。

膝サポーターを使用することで、ある程度即時的な膝の固定性向上を図ることができます。

 

膝折れを防ぐ目的でサポーターを選ぶ時の基準は、

  • 筒状のものではなく、ベルトで締め上げることができるタイプのもの

が良いです。

 

少し強めに絞めることで、より強固に膝を固定させることができます。

筒状のかぶせるタイプのもので、ピッタリのサイズではなく、少しでもご自身の足より大きいのものだと、保温効果程度しか望めません。

足が冷える方には良いかもしれませんが、膝折れする方や、メカニカルな物理的ストレスが原因で膝の痛みがある方にはあまり効果的ではありません。

下肢装具

PAFO

下肢装具の写真のようなもの(PAFOもしくはシューホーンと呼ばれます。)は、足関節を保護する(固定性を上げる)ものだと思われている方も多いと思います。

 

しかし、実は膝折れにも効果があります。

 

運動連鎖と言う概念があります。

簡単に説明すると、それぞれの関節や筋肉は互いに連携しているという概念です。

 

例えば、立っている状態から両膝を曲げてスクワットしてみて下さい。

その時に膝はもちろん曲がっていると思いますが、同時に足関節(足首)も曲がっているはずです。

このように、一つの動作を行う際には必ず各々の運動器が影響しあって動作を行っています。

 

もちろんこれは歩行中も例外ではありません。

足関節が弱く、体重を乗せるとすぐに足関節が曲がってしまう方の場合、それにつられて膝も曲がってしまうことがよくあります。

この様な下肢装具を使用して、足首の固定制を上げ、足関節を曲がり(背屈)にくくすることで、膝折れが出にくくなることは臨床では頻繁にあります。

※参考 リハビリで使われる脳卒中片麻痺の下肢装具の種類・価格、効果など解説

各種道具を使うのが先か、膝折れしない様に筋トレするのが先か?

こういった道具に頼ってしまうと、「いつまでたっても筋力が付かず、膝折れが無くならないのではないか」と心配される方もいらっしゃると思います。

 

実際に臨床でも「各種道具を使うのが先か、膝折れしない様に筋トレするのが先か?」と聞かれることが多いです。

結論から言うと、道具を使いながら筋トレを続けることが一番効果的です。

 

道具を使わないと、どうしても膝折れの恐怖などから体を使う量(活動量)が減ってしまい、筋力が付きにくいことが多いです。

はじめは道具に頼っても良いから、とにかく安心して歩ける、もしくは動ける状態をつくり、その状態からプラスして筋トレをする方が、筋トレだけをひたすらするよりも絶対に早く効果が出ます。

 

これは私の臨床経験からも間違いないです。

 

道具に頼るのが心理的にイヤだという方もいらっしゃると思います。

始めは少し抵抗があるかも知れませんが、道具を使って、必要がなくなれば無くしていけば良い、という考え方ができればスムーズにリハビリが進むのではないでしょうか。

まとめ

最近私はFacebookで脳卒中の既往がある方々のグループに参加させて頂いております。

 

その中で「膝折れをどうやって防ぐか?」という話題が出てきたので、思ったよりもたくさんの方が悩んでおられることを知りました。

 

そんな方に少しでも参考にして頂ければ幸いです。

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