リハビリの専門家が考える,効果的・効率的な”ウォーキングの方法”

ウォーキング


患者さんと一緒に歩く、いわゆる”歩行練習”はリハビリにおける臨床で最も頻繁に行われる練習と言ってもよいでしょう。

この歩行練習を行っている時、療法士は実に色々な効果を狙っています。この知識はウォーキングにも活かすことができると思います。

今回はウォーキングの効果と、効果的なウォーキングの方法や距離・時間についてご紹介します。

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まず初めに、歩行についてのメカニズムを基礎知識として知っていると今回の話と頭の中で繋がりやすいと思います。

こちらの記事を参考にして下さい。

 専門家はリハビリで歩行をどのように見ているか?理学療法士の歩行の知識まとめ

歩行は極めて精巧な動作

私達が普段何気なく行っている歩行は、実に精密な神経と筋肉の協調によって上手くコントロールされています。

 

一つの歩行に関わる関節が少し動きが悪くなるだけで、一見して「何か変」と分かるくらいに効率が低下し、歩くことが大変になってしまいます。

 

それだけ、歩行をすることは人体にとって大きな仕事であり、様々な効果があることが推測できると思います。

ただ歩くだけでなぜ体が良くなるの??

歩行は、我々人間にとって実に日常的で、無意識に行われている運動のひとつです。

「歩くこと(ウォーキング)は健康に良い」

もはやこれは一般的に広く知れ渡った常識です。

 

リハビリの臨床でもこの考えにならい、実に良く患者さんと一緒に歩きます。

私は以前勤務していた病院で歩数計を使用して、1日に患者さんとどのくらい歩いているのか計測したことがありますが、

大体1万5千歩は平均して1日に歩いていました。

 

恐らく療法士は皆その位毎日歩いていると思います。それくらいリハビリでは「ウォーキング(歩行練習)」は頻繁に行われています。

 

私の母親はケアマネージャーをしているのですが、訪問リハビリにくる療法士がいつも利用者さんと散歩しに行くだけだと言って不満そうにしていることがありました。

「リハビリで本当に散歩しているだけで体が良くなるの??」

イラスト

 

一般の方はそう思っても仕方ないですよね。

 

また、実際に療法士でも新人の方は歩行の効果をあまり深く知らずに「ただ歩いているだけ」のリハビリになりがちです。

私も昔はそうでした。

 

なので、以下に理学療法士がどんなことを考えてウォーキング(歩行練習)を行い、リハビリを行っているのか書いていきたいと思います。

ウォーキングの効果

まず、この記事では”歩行”を日常生活で使われる言葉、”ウォーキング”と呼ぶことにします。

その方がイメージがしやすいと思います。

 

ウォーキングは、運動の種類としては、

  • 抗重力位(重力に抗して体を支えている肢位)の運動
  • 全身運動
  • 有酸素運動

に分類されます。

これらの運動の性質を知ることが、ウォーキングの効果を知ることになります。

抗重力位での運動効果

廃用症候群のリハビリ

 廃用症候群の予防とリハビリ

にも書きましたが、抗重力位を意識して取ることは生物として大変重要です。

 

”寝たきり”いわゆる廃用症候群を呈すると、この抗重力位を取ることが大変困難になります。

生物は抗重力位を取ることで全身のバランスを上手く調整しています。(無重力状態の宇宙で過ごす宇宙飛行士を想像すると、その弊害が理解できると思います。)

 

 

人体は地球上で常に1Gの重力に抗して姿勢を維持しています。

 

抗重力筋と呼ばれる、姿勢制御のための筋肉が活発に働き、立位や座位姿勢を重力に抗して維持します。

よって、抗重力位を取るだけで、姿勢を維持するために多くの筋肉が働いています。

 

主な抗重力筋は、

などです。

ウォーキングは、まさに重力に抗して体を前に運ぶ動作です。

よって、ウオーキングを行うとこれらの筋を実に効果的に鍛えることができます。

 

それぞれ筋肉を個別に鍛える方法を各リンクに貼っています。

人体のどこにある筋肉かなどイラスト交えて解剖学的にも解説していますので興味がある方はどうぞ。

全身運動・有酸素運動

有酸素運動として、ウォーキングは実に手軽に行える運動です。

 

抗重力運動が筋肉を効果的に鍛えるなら、有酸素運動は、内臓、心肺機能の強化に大変有効です。

 

そもそも、運動には無酸素運動と有酸素運動があります。

無酸素運動とは?

ウェイトトレーニング

わかりやすく言うと、”グッ”と瞬間的に息を止めて力を入れて単発的に行う運動が無酸素運動です。

ジムで行う、ウェイトトレーニングが分かりやすいと思います。自宅で行われるような、いわゆる”筋トレ”も無酸素運動ですね。

 

無酸素運動は、筋力を鍛えるために効果的な運動と言われています。瞬間的に強い力が必要な時は、筋肉に貯めておいたグリコーゲン(糖質)を主にエネルギーとして使います。

酸素を必要としないので、短時間しか運動できませんが、使用する筋肉を効果的に鍛えることができます。

有酸素運動とは?

ジョギング

継続的で比較的弱い力が筋肉にかかり続ける時は、エネルギー源として体内に蓄えられている体脂肪を燃焼させて使います。

その時に酸素が必要です。これが有酸素運動です。

20分以上続けることで脂肪燃焼が効果的に起こると言われています。

 

ジョギングやウォーキング、自転車漕ぎなどが代表的な有酸素運動です。

筋肉を鍛えると言うよりも、酸素を消費しながら体内のエネルギーを燃やす作用が強いため、ダイエットや心肺機能の強化に向いています。

ダイエットには無酸素運動と有酸素運動両方が必要

無酸素運動は、

筋肉をつくり、基礎代謝を上げるために有効な運動方法です。

 

有酸素運動は、

体内の脂肪を効果的に燃焼させ、心肺機能を強化します。

 

両方がそろって痩せやすい体質を目指すことができ、ダイエット効果が期待できます。

一方に偏ると効率の良いダイエットにはなりにくいです。

ウォーキングのその他の効果

主に中高年者での調査ですが、ウォーキングは、「うつ病」「認知症」予防にも効果的とされ、特にメンタルヘルス分野での効果も注目されています。

 

実際に、歩くと「気持ち良い」と感じる方は多いと思います。

屋外を散歩すれば、吹き抜ける風や足に伝わる振動、弾む呼吸など、様々な刺激が脳に入力されます。

それは、心地よい疲労感と共に、脳をリフレッシュさせうる適度な刺激になります。

ストレス発散により、免疫力強化の効果もあると言われています。

他にも「動脈硬化」「メタボリックシンドローム」の予防などにも効果が見られており、厚生労働省のメタボリックシンドローム対策として出されている運動指針の中でも、「速歩」が薦められています。

療法士が考える、効果的なウォーキングの方法!

リハビリで歩行練習≒ウォーキングを行っている経験から、どのようなことに注意すれば、上述のウォーキングの効果を高めることができるか考えます。

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1.歩行速度を上げる

臨床のリハビリでは歩行速度を時間と距離から計測して、頻繁に歩行練習の効果を測定します。

歩行の安定性は歩行速度と比例するので、歩行速度が速いほど、歩行動作に習熟しているということが分かります。

 

歩行速度を上げてウォーキングを行うと、

  • 使用される筋肉への負荷が高まる。
  • 心肺機能をより効果的に鍛える。
  • 歩行のリズムを掴み易くなる≒疲労しにくい。

などのメリットがあります。

歩行速度を上げるには?

歩行速度を上げるコツ

歩行速度を上げるためには、主に2種類の方法があり、

  1. ピッチを上げる。(距離当たりの歩数を増やす=回転を上げる)
  2. 歩幅を大きくする。

があります。

 

このうち、ウォーキングでしっかりと関係する筋肉を鍛え、関節を動かすには、2の歩幅を大きくする方法がおすすめです。

歩幅を大きくするコツ

歩幅を大きくするために気を付けると良いことは以下の4つです。

  1. 踵から地面に付く
  2. つま先で地面を蹴る
  3. できるだけ股関節の動きを意識する(大股)
  4. 腕を大きく振る

 

まず、踵から地面に接地することで、ロッカーファンクションという、効率良く歩くために重要な人体のメカニズムが働くようになります。

踵の骨が丸いのは、このロッカーファンクションのヒールロッカーを効果的に働かせるためと言われている位です。

ランチョ・ロス・アミゴス IC ヒールロッカー
踵を支点にして下腿が効果的に前に振りだされます。1)

膝が曲がっていたり、足首が固いと、上手く踵から接地することができずに、足の裏で接地し、歩くたびに”パタン、パタン”と音のする歩行になってしまいます。

これでは、足底を着くたびにブレーキを掛けているのと同じなので、歩行速度を上げるためには相当のエネルギーが必要になります。効率が悪いです。

 

 

次に、つま先で地面としっかりと後ろに蹴るように意識します。

つま先で地面を蹴ることで推進力を得るため、という効果ももちろんありますが、つま先で蹴ろうと意識すると、股関節を伸展させる角度が大きくなります

 

人体の重心は静止立位で骨盤(第2仙骨のやや後方)に位置するため、歩行中に股関節をしっかりと伸展させることで骨盤が自然と前に運ばれ、効率よく前に体を運ぶことができます。

これを意識することは、3.の股関節の動きを意識することにも繋がってきます。

 

4.腕を大きく振る効果としては、重心を安定させ、歩幅を大きくするのに役立ちます。

歩幅を大きくすればするほど、骨盤は歩行中に傾きやすくなるため、上体がぶれやすくなります。

 

上体がぶれると、足を大きく動かすことはできません。

陸上選手なんかは、足よりもまず上体を鍛えます。まずぶれない上体をつくらないと、絶対に足を速く動かせないからです。

 

歩行中に腕を大きく振ると良いと言われているのは、そうすることで、重心の位置を適度に調整することができるからです。

腕を大きく振るようにすると、上体が安定し、効率よく大股で歩行することができます。

2.歩行のリズムを一定にすることで長距離歩行できるようにする

有酸素運動としてウォーキングに脂肪燃焼効果を狙うなら、最低20分位以上のウォーキングを続ける必要があります。

 

歩行のリズムを一定にすることで、効率良く人体の歩行のメカニズムが機能するため、無駄に疲労しにくく、長時間歩行しやすくなります。

先ほどの大股で歩くことが、歩行のリズムを一定に保つコツになります。

 

ピッチを上げて歩行速度を上げる方法では、やって頂ければ分かりますが、すぐに疲労感が強くなり、長距離歩くのは大変だと思います。

小股でスタスタとピッチを上げて歩く歩き方では、上述の歩行のメカニズムが働きにくくなり、無駄な労力が使われやすくなってしまいます。

 

大きく足を出して踵から接地し、股関節を大きく前から後ろへ動かすことで人体の本来の歩行のメカニズムが働きます。

 

ちなみに、成人男性の平均歩行速度は時速約5㎞と言われています。

しかし、実際にはもう少し遅い方の方が多いと思うので、平均歩行速度は4.5㎞位に思っておくと良いと思います。

しかし、身長や年齢、性別や体力によって個人差が大きいです。

 

スマホのアプリで簡単に計測できるので、一度測ってみると良いかもしれません。スマホには基本的に加速度計の機能が付いているので、以下の様な無料のもので充分です。

3.最低でも歩く距離は3.0㎞は欲しい

平均歩行速度4.5㎞で、1分間で歩ける距離は、およそ75mです。

 

これを最低20分間続けるとすると、75×20=1500m(1.5㎞)となります。

 

なので、ウォーキング時間の一応の目安は20分間、距離の目安は1.5kmです。

 

都心部の一駅間の距離がおおよそ1.5㎞間隔なので、都心部に住んでいる方はそれが良い目安になると思います。

地方在住の方はスマホで地図アプリで確認し、1.5㎞先の目標物を定め、折り返し地点にすると良いと思います。

 

目安は始めは3㎞にします。

1.5㎞先の目標物を折り返して帰って来ると3㎞になります。

 

20分間の歩行で脂肪が燃焼され始めますが、そこからが脂肪燃焼のスタートです。

20分で辞めてしまうとダイエット効果は少ないです。

 

なので、折り返し地点に1.5㎞を設定し、折り返して家に帰ってくることで合計3㎞、時間ではおよそ40分程度歩くことで効果的なウォーキングになります。

まとめ

リハビリにおけるウォーキングでは、その人の疾患や体力に合った距離や時間、目標を設定して行います。

 

今回の記事は”個別性”を考慮せずに一般的なベースの部分のみの知識をお伝えしています。

その分内容としては濃くありませんが、参考にして頂ければ幸いです。

当ブログから転倒予防の書籍を出版しています。良ければ参考にして下さい。

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<引用1・参考文献>

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