高次脳機能障害「失行・失認とは?」評価方法と判別のコツ


脳の機能が何らかの原因により障害されると、実に不思議に思える症状が出現することがあります。

そのうちの一つが失行・失認症状です。

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失行・失認とは

失行は、「行為を失う」と書くように、身体機能には何ら問題がないにも関わらず、日常的に行っていた習慣的な行為を行うことができなくなってしまうことを言います。

一方、失認とは視覚、聴覚、触覚、体性感覚など感覚にはなんら問題がないのに、対象物を適切に認識できなくなってしまう、認識障害のことです

 

まずは、その中でも臨床上比較的頻度が高く、日常生活や職業上にも支障をきたしやすい観念運動失行と観念失行、構成障害、半側空間無視(USN)の症状についてご紹介します。

観念運動失行

物品を使用しない、意図的な習慣動作や物品を使う真似をさせたときに動作が困難となるもので、これは言語命令に限らず模倣でも出現します。

例えば、普段、歯を磨くことは可能ですが、「歯を磨く真似をして下さい」、「さよならと手を振って下さい」などの指示を理解することができなくなります。

観念失行

単一あるいは複数の日常物品の使用に対して起こる障害であり、対象物品の認知や目的行為を理解しているのにも関わらず、実際に物品を使用すると誤って使ってしまいます。

例えば歯磨きであれば、歯ブラシを見れば、「歯を磨くもの」と理解することはできますが、実際に歯を磨こうとすると、耳に歯ブラシを入れようとしたりします。

 

物品の概念や使用する際の順序を間違えてしまうことを指します。

構成障害

複数の物の組み立て、絵を描くなど物事を構成する課題において、個々の動作自体には誤りはないが、形態を構成する際にその空間的位置づけを誤る現象です。

視覚と動作の過程の障害による行為障害とも言えます。

臨床ではこれら以外にも知的能力や視空間認知能力の力など認知面の障害との合併率が高く、それらも含めて広く構成障害と呼ばれることも多いです

半側空間無視(USN)

大脳半球損傷と反対側の空間的認知の障害です。

左右いずれの空間でも起こりますが、通常左半側空間無視のほうが重症です。視覚の無視が一般的ですが、聴覚、身体覚などにも起こることがあります。

 

日常生活では食事の際に左側のものを食べ残したり、無視側から話しかけられても気がつかない、車椅子を漕いでいる時、あるいは歩いて移動している時などに左側の物にぶつかったり、気づかなかったりします。

無視のタイプとしては、視覚的に認知するときに無視が起こるものと、行為遂行時に無視してしまうものがあります。

その他の失行・失認症状

その他にも、様々な失行・失認の症状があります。

肢節運動失行

ポケットに手を入れる

運動麻痺や筋緊張の異常、知覚障害などがないにも関わらず、ボタンをかける、ズボンのポケットに手を入れる等の習熟された巧緻運動が稚拙化し、その遂行に時間がかかります。

着衣失行

衣服の袖に手を通すネクタイを結ぶなどのような日常の着衣動作が困難になるなるもので、衣服の上下、裏表、左右などを自分の体に合わせて着ることができなくなります。

脳梁失行

自動的運動や模倣は可能ですが、言語命令に対する左手の反応のみが障害されます。

視覚失認

統覚型視覚失認

視野・視力は充分で、光の強弱、対象の大小、色彩の識別などは可能ですが、形態を認知できない状態です。

連合型視覚失認

形態認知は可能ですが、その意味を理解することができない状態です。

この2つの型の違いは模写(図形を写す)課題で判別できます。

統覚型では模写ができないのに対し、連合型は模写は出来るが何の絵か判断することが出来ません。

半側身体失認

自己の半身に対して無関心になり、まるで半身が存在しないかのように行動します。運動麻痺を伴うことが多く、四肢が不自然な肢位にあっても無関心です。

体性感覚障害を伴う場合と伴わない場合とがあります。症状だけ見て厳密に半側空間無視と区別することは困難です。

相貌失認

相貌失認

身近な人や有名でよく知っている人の顔が認識できない状態です。

自分の妻や子供さえも識別できなくなりますが、声を聞くとすぐに認知可能であり、また髪型や服装で認知する場合もあります。

触覚失認

触覚、痛覚、温度覚、深部感覚などが正常であるにも関わらず、触れることのみではその物品を認知できない状態のことです。

前頭葉損傷による行為障害

失行上の分類には含まれませんが、前頭葉損傷では極めて印象的な病的現象が出現することがあります

道具の強制的使用

自分の目の前に置かれた日常物品を意思とは関係なく使用してしまう状態です。これは右手のみに起こり、左手はこれは制止しようとするが止められないという奇妙な現象が起こります。

なお関連症状として、道具の脅迫的使用があり、両手を協調させて起こる使用行為があります。

拮抗失行

自分の意思に応じた右手の行為によって誘発された、意思とは無関係の左手の行為のことです。最も特徴的な場合には、右手の行為を制止、あるいは反対の行為を行うため目的行為が行えない状態となります。

他人の手兆候

私は臨床でこのケースを確認したことはありませんが、左手が自分の意思とは無関係に不随意的な運動を起こし、右手がこれを制止しようとします。これらの症状の責任病巣及び出現部位については未だはっきりされていません。

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失行・失認の評価

これらの失行症状には失語症が合併していることが多いため、最初に指示が伝わっているかどうかを確認する必要があります。

したがって失語の程度を検査し、それを踏まえた上で口頭命令、模倣、ジェスチャー、物品使用に対する検査を行い、どの課題で誤るかによってタイプ及び重症度を判断する必要があります。

 

臨床的にはいずれの要素も含んでいることが多く、はっきりとは分類することは難しいです。課題ができた、できないで判断するのではなく、どのように反応したかを注意深く観察・分析することが大切です。

構成障害

4つの積み木の組み立て、花の絵の模写、自発的な作画などにより評価します。

これらの課題は失行の要素以外にも認知障害や半側空間無視(USN)の影響を受けやすいです。

 

また右半球損傷と左半球損傷では誤り方も異なると言われており、誤りの位置(上下左右)だけではなく誤りの性質(積み木の位置、向きが違う、位置が違う等)も注意して評価する必要があります。

半側空間無視(USN)

臨床で非常に多い症状です。車いすを自走、あるいは歩行していても左側の壁にぶつかったり、食事の際に左側に置いてある食器のものだけ手を付けていなかったりすることが多いです。

USNを評価する際にまず気をつけなければいけない事は半盲との鑑別です。

半盲は視野障害によるものなので、認識された視野内にある対象物の無視は起こりません。これに対してUSNでは、視野内であっても(見えているにも関わらず)、対象物の無視が起こります。

評価・テストとしては、

  • 2点発見
  • 線分抹消
  • 線分二等分
  • 視覚消去法

などが有名です。

二点発見

二点発見

上図の様な紙を提示し、「この紙の中で黒い点はいくつ見えますか」と質問します。二つと答えた場合は、二点を直線で結んでもらいます。

一つと答えた場合は、もう一つの方に被験者の手を持っていき、直線を結んでもらいます。

線分末梢

線分末梢

上図のような紙の線を「×」で消していきます。USNがある場合、左側の線に気づきにくいため、消去できずに残ってしまいます。

線分二等分線

線分二等分

上図の様な紙を提示し、10㎝の線を引いておきます。被検者に、紙を見せ、丁度真ん中に線を引いてもらいます。USNがある場合、右側に真ん中が寄ってしまいます。何㎝寄ってしまっているか記録しておくことでその後の回復の目安にすることができます。

紙を置く位置や首の向きなども関係するので、再現性を高めるために、

  • 紙を机の中心など、同じ位置に置く
  • 座る位置や首をまっすぐにして患者に見てもらう

などの配慮が必要です。

視覚消去法

約1m離れたところで視野を確認し、左右の検者の指を動かして、どちらの指が動いたかを被験者に口頭で答えてもらうか、指をさしてもらいます。

右、左、両側同時をランダムに3回づつ行います。

 

これらのテストのうち、2点発見法で誤る場合が最も重症であり、視覚的消去法で誤るのが最も軽症です。

 

このような課題の違いのほかに、体幹の左右回旋が無視の程度に影響与えることもあるため注意が必要です。上述の線分二等分などの評価を行う際にも、体が課題に対して回旋していると、左回旋により無視が改善し、右回旋により無視が増大します。

まとめ

以上、失行、失認の種類とその評価法について述べました。

しかし、これはあくまでも検査場面の評価であり、臨床では机上の検査では問題がる状態でも、日常生活では机に置かれた食事を残さず食べるなど検査と日常生活場面での解離が見られることも多いです。

したがって検査結果だけではなく、普段の生活状況などを踏まえて総合的に判断する必要があります。

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