「リハビリにおける運動学習とモチベーション・フィードバックの効果について」パフォーマンスを最大化するために


リハビリをする目的は人によって個別に異なりますが、全体的に言えることは「パフォーマンス」を最適化・最大化することが目的でもあることです。
今回は患者さんの「パフォーマンスを上げる」ことに着目して、運動学習の要素である、モチベーションとフィードバックについてまとめてみました。

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運動技能の獲得には「練習」が必要不可欠です。これは年齢に関係なく共通する大原則です。
 
これを意識せずリハビリをしている人はいないでしょう。
 
通常は、練習回数を増やせば増やすほど、運動学習が進みパフォーマンスが向上する、と思われています。
 
 
しかし、単に練習を繰り返すだけでは効果的にパフォーマンスは向上しません。
リハビリの定義を「パフォーマンスを最大化させること」と仮定すると、どのようなことに注意すれば良いのでしょうか。

 パフォーマンスを最大限発揮するために

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結論から言うと、これだけは外せない、というものが3つあり、
  • 自己の目標を意識している事(目標設定と共有)
  • パフォーマンスの結果を知ること(フィードバックがあること)
  • パフォーマンス向上への動機付けや欲求があること(モチベーション・意欲)
が重要な要件となります。
 
繰り返される練習の効果は主に、
  • パフォーマンスの時間短縮
  • 正確さの向上及び誤りの減少
  • 複雑な課題への適用性の向上
  • 課題遂行の注意努力の減少
となって現れます。
 
そして、パフォーマンスの改善・向上は、個人が自己の運動、あるいは特定の手がかりにどれだけ注意を払っているかによって左右されると言われています。
 
いわゆるフィードバックを得るために、どのような手がかりを持つか、また、その手がかりをどれくらい、またはどの様にして意識して運動を練習できるか、が大切だという事です。

 目的を意識&共有

練習は、目的を意識したときに効果が大きくなります。
 
そのため訓練では目標を設定して適切な動機付けを考え、患者さんはその適切な指示に従うことが大前提として必要となります。
 
ひとつの運動や動作を決まりきったものとして、反復しているだけではただの時間の浪費です。

 リハビリにおける目標設定

運動学習の観点から考えると、練習の目標について、その動作をできるようになることが目的なのか、あるいはパフォーマンスレベルを維持しようとしているのかを分けて考える必要があります。
 
後者の、パフォーマンスレベルを長く維持したい場合、過剰学習(over trainig)が効果的であると言われています。
過剰練習とは、一定の学習完成基準に達した後にも訓練を反復させることです。
 
例えば、回復期の病院で、リハビリに一生懸命取り組み、自宅に帰る前にトイレ動作ができるようになったとします。
 
動作が何とか完成した後、その後も自宅に帰ってからもできるだけ長く、その動作レベルを維持して欲しければ、その動作ができるようになってもしばらくは続けて練習を行った方がパフォ-マンスを長く維持できるという事です。

 モチベーション(動機付け)とフィードバック

パフォーマンスは状況によって変化します。単に能力や技術だけの問題ではありません。
パフォーマンスに影響を与える因子のうち、モチベーションの占める割合は大きく、重要です。
 
モチベーションは2つの基本的な機能から成り立っています。
1.覚醒レベルの上昇
これによって活発な反応や行動が可能になります。
2.行動を特定の目標に方向付ける働き
の2つです。
 
パフォーマンスに対して、モチベーションと技能は相乗効果を示します。
つまり、パフォーマンス=モチベーション×技能と言えます。
 
 
 
しかし、運動学習ではモチベーションの効果は環境や個人の性格だけでなく練習内容によっても左右されます。
意外に感じる方もいらっしゃるかも知れませんが、モチベーションが高過ぎると、ダメな場合があります。
 
 
高度のパフォーマンスに最適なモチベーションは中等度です。
課題内容が複雑になるとモチベーションが低い方が成績は良好となります。
細かい作業などは覚醒が高い、興奮状態ではパフォーマンスが下がることは体感的に理解できると思います。
 
課題の難易度によってそれに対応したのモチベーションのレベルが必要で、考慮する必要があります。
また、精神的緊張や不安の程度によってパフォーマンスは大きく変化します。精神的緊張や不安は覚醒レベルを高めるからです。
 
 
覚醒は深い睡眠から極度の興奮状態までの連続した変化で現れます。
 
 
ある点までの覚醒レベルの上昇はパフォーマンスの向上もたらしますが、それ以上になるとパフォーマンスは逆に低下することがあるので注意が必要です。
 
 
 
まとめると、
  • 注意や集中、分別や判断、細かい運動の制限等が必要とされる課題では覚醒レベルは中等度以下を目安に考えると良い。
  • 筋力、持久力、速さが求めらる課題では、高い覚醒レベルが良好なパフォーマンスを得やすい。
となります。
 
技能レベルが高くなると、覚醒レベルが上昇し、パフォーマンスの低下は起こりにくくなります。
これが一般的に言う、技能の「習熟」です。

 モチベーションの種類

モチベーション(動機付け)は、大きく分けて2種類あります。
  • 内的動機付け
個人的な理由によって、喜びや満足を感じる場合、自己実現や自己関与のこと。
  • 外的動機付け
物的報酬や賞賛、個人のニードなどを利用する。
 
両者を比較して、外的動機付けは効果が持続的であり教育的にも好ましい、と言われています。
企業が仕事の対価として支払う給料もこの外的動機付けですよね。

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 フィードバック(Feed Back)・知識の結果(KR)とは

モチベーション(動機付け)と並んで運動学習の重要な要因に、よく言われる、フィードバック(Feed Back)あるいは結果の知識(KR)があります。

 
 
この「フィードバック」って言葉、リハビリ業界では頻繁に使われていますよね。学生のレポートの添削の際にもよく使われています。
 
フィードバックの機能は2つあり、
1.運動遂行の手引き(参考)となり、運動に制限を与える。
2.その後の運動を改善するために有用な情報を与えること。
であり、学習フィードバックとも呼ばれます。
 
KRには情報、動機付け、強化の働きがあり、子供や大人、個人や集団など、どんな場合でも学習やパフォーマンスの向上に役立つと言われています。
 
バスケットボールがゴールに入った時の身体運動の感じ(フィーリング)、指導者の賞讃あるいは指摘などの外在的フィードバックは、運動課題を遂行している最中のフィードバック情報(内在的フィードバック)を強くします。
 
 
また、運動課題に対する初心者と熟練者ではフィードバック情報の意味は違ってきます。
 
例えば、テニスでサーブ信をする時、初心者はボールを打った直後ボールがどこに行くのか、よくわからないのが普通です。
初心者において、自分のショットを観察して得られるフィードバック情報は、次のサーブを調節するのに役立っています。
 
一方、熟練者はサーブ中の微妙な調節を行うのに、固有感覚情報を利用して腕の運動軌道修正します。
 
 
運動学習の過程では、色々な感覚器からのフィードバック情報が重要な役割を果たしています。固有感覚の情報によって運動の空間的・時間的変化が捉えられます。
 
同時に、運動に伴う視覚や聴覚・触覚などの外受容器からの情報も大切です。
 
 
 
多くの運動技能は試行錯誤を重ねて徐々に獲得されます。
この運動学習の過程はR(Response:応答)とS(Stimulus:刺激)の差を検出して、これを近づけていく過程を通して学習が行われてます。
 
運動はRで始まり、SとRの間に差がなければ、一連の運動は円滑に遂行される、ということになります。
熟練者はこの差が少ない、ということです。
 
フィードバック機構に障害があったり、RとS間に差があるときは、1つずつ運動を確認してから次の運動パターンを修正する必要があります。
 
そのため、運動はどこかぎこちなくなってしまいます。

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ゴルフや野球のスイングのように、1秒もかからず完了する動作の場合、フィードバック機構による運動の調節は時間的に不可能です。
 
これらの運動では内部モデルによるフィードフォワード制御が利用されています。
 
 
練習では初めに固有感覚情報を利用したフィードバック制御が重要であり、さらに運動の正確さを高める時に視覚情報が利用されます。

フィードバックを効果的に行い、よりパフォーマンスを高めるために

「目隠しをして、体を動かしてモノの適切な位置決めを行う」という課題では、実験者が被験者にパフォーマンスの結果を知らせると成績が向上するそうです。
 
誤った情報が与えられると検査は同じ過ちを繰り返します。KRを1試行毎に与える方が学習効率は良いとされています。
こまめにフィードバックを入れた方が効率よく運動を修正していくことができます。
 
しかも、「間違っているか正しいか」という漠然とした情報を伝えるのではなく、誤っている方向や程度を具体的に教える方が効果的です。
 
 
これも練習中の運動と同時(運動中)か、あるいは運動終了後に与えるのが効果的です。
 
被験者は自己のパフォーマンスの具体的にどこが間違いかを知り、運動のどこをどう修正するのかを考えます。
 
被験者が、自己の固有感覚情報利用して、運動の誤差修正を行えるようになればKRは不要になります。
こうなると、いわゆる「熟練者」となる、ということです。

まとめ

 リハビリにおいて、機能面に着目することも大切です。
 
しかし、ただ単に運動や動作を繰り返すのではなく、どのように運動学習がなされ、どうすれば動作を効率よく獲得できるか、を考えてみることは非常に大切です。 

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