股関節 内転筋群の解剖・ストレッチの方法3種類とその目的


股関節の内転筋群には、6つの筋があります。それぞれの筋の解剖を理解して伸長感を意識してストレッチを行っていきます。

内転筋群の解剖、効果的なストレッチ方法についてご紹介します。




股関節 内転筋群の解剖

内転筋群はその名の通り、股関節を内転する作用が主です。

立った状態で言うと、閉じる方向に足を動かすと、「股関節の内転」という運動になります。

 

内転筋群には、

  1. 長内転筋
  2. 短内転筋
  3. 大内転筋
  4. 小内転筋
  5. 薄筋
  6. 恥骨筋

6つの筋があります。

それぞれ解剖図を見て理解を深めていきましょう。

長内転筋

長内転筋

長内転筋は内転筋群の中で薄筋に次いで長い筋肉で、恥骨結節の下から起始し、大腿骨粗線中央1/3部の内側唇に停止します。

支配神経は閉鎖神経(L2-L4) で、栄養血管は閉鎖動脈。

股関節の内転と屈曲に作用します。

短内転筋

短内転筋

短内転筋は長内転筋のすぐ後ろに起始する筋 です。 恥骨下枝、恥骨体から起始し、 長内転筋と同じ大腿骨粗線の上1/3部の内側唇に停止します。

支配神経は、閉鎖神経(L2、L3) で栄養血管は閉鎖動脈で、股関節の内転、屈曲に作用します。

大内転筋

大内転筋

大内転筋は、恥骨下枝、坐骨結節、坐骨下枝から起始し、 深部(筋性)は大腿骨粗線の内側唇に停止し、 浅部(腱性)は大腿骨内側上顆(内転筋結節) に停止します。

支配神経は、深部は閉鎖神経(L2-L4)、浅部は脛骨神経(L4)、栄養血管は閉鎖動脈で、股関節の内転、伸展、外旋に作用します。

小内転筋

小内転筋

小内転筋は、恥骨下枝から起こり、大腿骨粗線の内側唇に停止します。支配神経は、閉鎖神経(L2-L4) 、作用は股関節の内転、外旋、わずかに屈曲にも作用します。

薄筋

薄筋

薄筋 停止

薄筋の起始は、 恥骨下枝結合下方の恥骨下枝で、大腿骨粗線の内側唇と脛骨粗面内側(縫工筋及び半腱様筋の停止腱と合体して鵞足を形成します。)に停止します。

支配神経は閉鎖神経(L2、L3) 、作用は股関節の内転、屈曲と膝関節の屈曲、内旋です。

 

薄筋は内転筋群の中で唯一の二関節筋です。二関節筋は人体の姿勢制御に大きな役割を持つ重要な筋肉です。

恥骨筋

恥骨筋

恥骨筋は恥骨上枝、恥骨櫛 から起始し、大腿骨の恥骨筋線、大腿骨粗線の近位部に停止します。

支配神経は大腿神経で、栄養血管は閉鎖動脈 です。

股関節の内転と外旋、わずかに屈曲にも作用します。

股関節 内転筋群の特徴

内転筋群の作用を見ていると、股関節の屈曲、外旋にも作用する、とあります。これは内転筋群の特徴でもあり、理解がしにくいところでもあります。

 

内転筋軍は上述の通り、骨盤と大腿骨に付着します。そして、骨盤と大腿骨の位置関係が正中位にある時は上述の働きをします。

しかし、股関節は大きく動く関節です。よって、その動き(股関節の屈伸具合)によっては股関節内転筋群は、

  • 股関節の屈曲・伸展
  • 股関節の内旋・外旋

にも作用することになります。

これを理解するために、例を出すとすると、歩行動作が分かりやすいのではないでしょうか。

歩行時は立脚初期、つまり足を前に振り出して踵を地面に付けたとき(イニシャルコンタクト)は股関節屈曲位ですが、立脚後期(ターミナルスタンス)には股関節伸展位になります。

股関節内転筋群の起始・停止を考えると、股関節屈曲位で内転筋群が働くと股関節を外旋させ、股関節伸展位で働くと内旋させるという、まったく逆の働きが起こります。

 

内転筋群の作用・効果は、股関節(骨盤と大腿骨)がどの位置にあるのかによって違ってきます。

動作上で股関節の内転筋群の働きを確認する場合は、内転筋群起始・停止だけでなく、

  • 骨盤と大腿骨の位置関係

を考慮する必要があります。

内転筋群のストレッチ

内転筋に限らず、どの筋でも目的を持ってストレッチすることが大切です。

内転筋をストレッチする目的にはどんなことが考えられるのでしょうか。

内転筋をストレッチする目的

内転筋は骨盤に起始しているため、骨盤の制動に大きな役割を持っています。

よって立位、歩行での安定性の向上がストレッチする目的として挙げられます。

 

変形性股関節症や、骨盤帯の筋に何らかの問題がある患者さんの場合、内転筋の柔軟性が低下していることも珍しくありません。

また、固くなって筋が短縮すると骨盤が傾くことになり、トレンデレンブルグ徴候を招いたりもします。

 

特に股関節の外転筋の筋力が低下していたり、問題を抱えている場合、内転筋の柔軟性が低下していることが多いです

これは、人は歩行及び立位時に骨盤を固定することで、重心の位置を固定し活動することに起因します。

 

つまり、外転筋で体重を支えきれないために骨盤が側方へ逃げてしまうのを内転筋群が収縮して補い、骨盤を固定する代償動作が生じるため、柔軟性が低下して固くなってしまいがちです。

また、生体の防御反応として、痛みがあると、体を丸める方向に自然と力が入ります。

そうすると股関節は内転筋群に力が自然と入ってしまいます。

 

ストレッチにより、内転筋群の柔軟性を取り戻すことで立位・歩行・動作時の骨盤の安定性の向上を図ることができます。

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内転筋群のストレッチのポイント

内転筋群のストレッチの方法を3種類ご紹介します。

 

上述の解剖を理解することで分かる、内転筋群の解剖学的な特徴は、

  1. 内転筋群6筋は全て骨盤に起始すること
  2. 薄筋のみ二関節筋で膝の屈伸にも作用すること

です。

 

よって、内転筋群をストレッチするうえでのポイントは、

  1. 骨盤の位置に注意すること(特に前後傾、回旋)
  2. 膝伸展位で薄筋がストレッチされること(膝の屈伸によって伸びる筋肉が異なる)

です。

立位でストレッチする方法

立位で行う内転筋ストレッチ

立位で足を大きく開き、写真の様に内転筋群をストレッチします。

この時、

  • 骨盤を前に倒すようにして固定すること(おへそを地面に向ける)
  • 足先を必ず前方向に向けること(股関節を内旋させること)

がコツです。

足先を横に向けてストレッチすると、ハムストリングスのストレッチになってしまいます。必ず足先を前に向けて行って下さい。

座ってストレッチする方法 2パターン

座位で行う内転筋ストレッチ

座って写真のような方法でも内転筋群をストレッチするができます。

体を前に倒しながら、膝を地面に近づけるように倒していきます。

 

このストレッチの方法を実施する時のコツは、

  • 背中を丸めるのではなく、骨盤から前に倒すようにすること(へそを地面に近づけるように体を倒していくこと)

です。

 

またこの方法では膝を曲げているため薄筋はストレッチされません(上述の薄筋の起始停止を確認して頂くとご理解頂けると思います。)

 

座位で薄筋をストレッチする方法は下記になります。

座位での内転筋ストレッチ2

この方法でのコツは、

  • 目線を反対側に向け、軽く体を捻るようにすること
  • 足先を前側に向け、股関節を内旋させた状態で行うこと

です。この時も骨盤の前傾を意識してコントロールすることでストレッチされる程度(負荷)を変えることができます。

疼痛がある場合、「ダイレクトストレッチ」も有効

内転筋のストレッチの方法を3種類ご紹介しましたが、硬くなった内転筋をストレッチで急激に伸ばすと、痛みを訴える方も非常に多いです。

疼痛があるのにストレッチを無理やり行うと、防御収縮と言って生体の反応として筋肉が強張ってしまうため、ほとんどストレッチすることはできません。

そういった方には、ダイレクトストレッチを行ってからストレッチを行うと、愛護的に比較的疼痛が出にくいです。

ダイレクトストレッチって?
ダイレクトストレッチとは一般的にいわれる「マッサージ」のことと理解してもらえれば良いですが、筋腹を上から指で押すことで筋肉を直接指圧して伸ばすことを言います。

マッサージは筋肉の血流を改善する目的で行われることが多いですが、ダイレクトストレッチは筋を伸張する(伸ばす)ことだけを目的に行われます。

自分で自分に行う場合は、痛い部分、重だるい部分を伸ばすようにグッと指圧すればOKです。

しかし、他人に施術する場合は問診をしながら、筋肉の固くなっている部分を触って分かる程度の触診の技術(というか感覚でしょうか)が必要です。

その際にも解剖の知識があれば簡単に筋肉に触ることができるので、覚えておくと良いでしょう。

まとめ

股関節内転筋群は、人体が活動するためにとても重要な筋肉群です。

内転筋群には6つの筋があり、全て骨盤に起始を持つため、骨盤の安定性に大きな役割を果たしています。

ターゲットにする筋によって、膝を曲げたストレッチと膝を伸ばしたストレッチを使い分ける方がより効果的にストレッチすることができます。

是非参考にしてみて下さいね。

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